ソフィーの朝は早い。夜明けと共に、というのは少しばかり大げさだが、  
それでも早い時間に目を覚ます。今日も今日とて彼女は目を覚ますと、  
ふるりと身震いをした。  
「さむ……」  
むくりと身を起こした彼女は、がらんと開いたベッドの左側に溜息をついた。  
寒いと言うのは、意外と気温だけの事ではないのかもしれない。  
「おはよう、今日も元気かしら?」  
日課となっている挨拶を口にしながら、ソフィーは腹部に手を当てた。  
じんわりと感じられる暖かさに微笑み、彼女はすっと立ち上がって身支度をした。  
少し急ぎ気味に階段を下れば、とんとんと音が立つ。  
マルクルを起こさないかしら、と心配していると、ソファーの上に転がっている  
人影を見つけた。  
「まぁ」  
短く声を上げると、ソフィーは影の持ち主に駆け寄った。  
主はすぅすぅと安らかな寝息を立てている。  
 
「ハウル」  
ソファーの上に丸まっている夫を、ソフィーが揺り起こした。  
んん、と小さな寝言を発し、ハウルが眠たげに瞼を開けた。  
「あー……ソフィー」  
「あー、じゃないわ。風邪引いたらどうするの?寝るならちゃんと  
ベッドで寝てって言っているでしょう?」  
むっとしたように頬を膨らますソフィーに、寝ぼけ眼のハウルは思いっきり  
笑み崩れた。彼は可愛い新妻を抱きしめると、大きく息を吐いた。  
「あー、ほっとした。やっと帰ってきた気がするよ」  
「………一人寝をさせておいて、よく言うわ」  
拗ねた様に呟くソフィーを、ハウルはさらに抱きしめた。きゃ、と悲鳴をあげ、  
彼女は身をよじる。  
「苦しいわ!ちょっと、やだ……赤ちゃんがいるのよ?」  
その一言に、ハウルはぱっとソフィーを離した。あまりの勢いに、ソフィーが  
ぐらりと身体を傾げる。  
「うわぁごめん!ソフィー、大丈夫?」  
「もう!しっかりしてよ、お父さん!」  
怒ったように喚くソフィーに、ハウルがおろおろと謝った。しかしすぐに破顔し、  
けたけたと笑い合う。  
仲睦まじい若夫婦の様子に、カルシファーは砂でも吐きかねない勢いで  
げっそりとした溜息をついた。  
 
そんな朝のやりとりを遮るように、ノックの音が響いた。二人の動きが  
ぴたりと止まる。  
「誰……かしら?こんな朝早く」  
「うん……座ってて。僕が出るよ」  
不思議がるソフィーを椅子に座らせ、ハウルが玄関に向かった。  
カルシファーに目を向けると、彼はごうっと火炎を上げた。  
「カルシファー、誰だか解るか?」  
「別に、敵ではない。若い―――女だ!」  
ハウルが勢いよく戸を開いた。立っていた人間を見止め、彼ははっと息を呑む。  
「レティー?」  
「義兄さん……」  
驚くハウルに、レティーは弱弱しく微笑んだ。レティー、の名にソフィーが  
飛び出してくる。  
「レティー!」  
玄関先に現れたレティーの姿に、ソフィーはよろめいた。レティーが着ていたのは  
いつものチェザーリの制服ではなく、地味な濃紺のエプロンドレスだった。  
しかし、それもずたぼろに引き裂かれ、胸元が大きく開いている。  
髪も振り乱され、かなり荒れ果てた様相だった。  
「あぁ……おねえちゃん」  
そう言ったきり、安心したのかレティーはその場に倒れた。ソフィーが悲鳴を  
上げる。朝の空気には不釣合いな、不穏な空気が流れた。  
 
「ねぇ、レティー。どうしたというの?」  
ソフィーの夜着に着替え、客間のベッドに寝かされたレティーが目を瞬かせた。  
対峙しているソフィーは、思いつめたように妹を見つめている。  
「あんなにぼろぼろになって……ねぇ、どうしたの?」  
それにあの服、とソフィーは眉根を寄せた。くたびれた服はレティーが眠っている  
間に繕われ、今は椅子にかかっている。  
「………お姉ちゃん」  
低い声で、レティーが呟いた。ソフィーと目を合わせないまま、  
早口にまくしたてる。  
「お願いが一つだけあるの。あのね、あたしがした事のせいで、怒ったり、  
ましてや誰かを憎んだりして欲しくないの。あたしは、全部自分でそれがいいと  
思ってしたから、だから、その―――」  
何か悪さをしたときに先に言い訳をするのは、小さい頃からのレティーの癖だ。  
ソフィーは母親のように落ち着き払って、わかったわ、とだけ答えておいた。  
「……あたし……王宮で働いていたの」  
ソフィーが目を瞠った。レティーは言いにくそうに何度も唇を湿らせ、  
そしてやっと搾り出すように言った。  
「………ジャスティン王子殿下の、侍女として働いていたの」  
 
その台詞に、ソフィーが凍りついた。レティーは未だに俯いている。  
「全部、殿下の所から逃げてくるときに起こったことなの」  
「何故!」  
ソフィーが金切り声を上げた。レティーが不貞腐れたようにそっぽを向く。  
「どうしてカブの所に?ねぇ、あなたカブに何をされたの?無理やりだったの?  
カブは何を考えているの?ねぇ、ねぇ、ねぇ!」  
ソフィーが興奮したように喚きたてる。レティーは溜息をつくと、傲慢なまでに  
まっすぐな瞳で姉を覗き込みながら答えた。  
「ご所望を受けたから王宮に上がったの。でも、殿下が婚約されるから、  
あたしはもう要らないでしょう?だから、解任を求めたら―――その、激昂されて」  
語尾がどんどん尻すぼみになりながらも、懸命にレティーは説明した。  
ソフィーは額に手を当てて天を仰ぐと、あぁ、と低い声でうめいた。  
「信じられない!何を考えているの?!あなたも、カブも!!」  
わんわんと響く高音に、レティーは眉をひそめた。ソフィーは怒りに顔を  
真っ赤にさせながら、椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。  
「許せない!カブに直接訊いてくる!」  
 
「待って!」  
レティーが慌ててソフィーを呼び止めた。血の上りきった姉が勢いよく振り返る。  
「お願い、あの人悪くないの!それにね、あたしがここにいるの、ばれたら困るの」  
「信じられない!なんでこの期に及んでカブをかばえるの!汚らわしい!」  
軽蔑するように吐き捨て、王宮付魔法使いの細君は王子の籠姫をひと睨みすると  
足早に部屋を出て行った。  
 
リビングのあたりで、姉と義兄が言い争っている声が聞こえる。  
レティーは溜息をつきながら、ベッドを降りた。  
サイドボードの引き出しをあけ、紙とペンを取り出して文字を書き付ける。  
そして身支度を整えると、そっと窓を開けた。幸いにして客間は一階にある。  
抜け出すのはたやすい。  
「お姉ちゃん、ごめんなさい」  
ぽつりと呟き、レティーは軽々と窓を飛び越えていった。  
長い金髪が、月夜に煌めいた。  
 
 
あなたは太陽、私は月  
夜が明け始めているわ  
もう、二度と泣いたりしない  
あなたはいつもここにいるわ  
愛はまた再び蘇るから  
 
 
王宮の中庭を、一人の女が大股に歩いていく。きっと表情を引き締め、  
口を真一文字に結んだ彼女を、衛兵達は遠巻きに眺めていた。  
白っぽい銀髪が印象的な彼女は文句なしの美人なのだが、何分怒り狂っている  
ためにその迫力と言ったら凄まじいまでだ。  
「あの、失礼ですがお嬢さん」  
一人の勇気ある衛兵が彼女に声をかけた。振り向いた彼女は一瞬驚いたように  
目を見開いたが、でもすぐにきつい顔つきに戻った。  
よくよく見れば、彼女はまだ若く、女と言うには少し足りない位の少女だった。  
「何かご用でしょうか?どなたかと、お約束を?」  
「ジャスティン王子殿下に面会を要求します」  
女は厳しい視線でこの哀れな衛兵を射抜きながら答えた。衛兵は少しばかり  
不思議そうな顔をして彼女に訊ね直す。  
「お嬢さん、失礼ですがもう一度―――」  
 
「ジャスティン王子殿下に会わせなさい!」  
するどい一喝を受け、衛兵は首をすくめた。彼女は苛々と肩にかけていた  
ストールを直しながら無愛想に言った。  
「ソフィー・ジェンキンスが来たと言えば解るはずよ」  
「はぁ、ジェンキンス―――え?」  
衛兵は間抜けにも女をじろじろと見直した。彼女は呆れたように溜息をもらすと、  
髪をかき上げた。  
「私はハウル・ジェンキンスの妻です。隊長さんはどなたかしら?」  
いきなり正体を明かした要人の細君に、衛兵達はうろたえた。女は冷ややかに  
彼らを見つめると、名乗り出てきた一人の男に向けて冷たく言い放った。  
「ジャスティン王子との面会を要求します。夫には話をつけてあるわ。構わないわね?」  
にっこり、と彼女が微笑んだ。可憐、と形容すべき顔からは、そこはかとなく  
どす黒いものが漂っている。人が良くてどちらかといえば気の弱い隊長は、  
こくり、と頷く他この場を収める方法を持ち得なかった。  
 
 
王子はひどく波立った気持ちで、目の前であーだこーだと喋り続ける小男を  
眺めていた。彼は王子の花嫁になる娘の家の秘書で、今日は婚約パーティーに  
ついての説明に来たと言う。しかし、さきほどから彼の口から流れてくる言葉と  
言えば彼の仕える家の一人娘のことばかりで、彼女がどれほど美しく、  
いかに情に深く聡明で、今回の結婚を喜んでいるかと言うことばかりだった。  
まだ会ったこともない娘には何の感情ももてないというのが王子の意見だったが、  
彼にはそれも通用しないらしい。あるいは、ちっとも娘に会いに来ようとしない  
王子に、彼の「姫君様」の売込みをするために無視しているのかもしれない。  
平和協定のために嫁いでくることになったのは、この国の有力貴族の令嬢で、  
国王の姪に当たる娘らしい。王子より5つ年下の彼女は美しく聡明で、  
心優しい上に芸術に明るいと評判だった。だからこそこの政略結婚の切り札として  
白羽の矢が立ったのだが、そんな事は王子にしてみればどうでもよかった。  
「すみませんが、私にも立て込んでいる仕事があります。  
また、明日にしていただけませんか?」  
耐え切れず、王子は柔和な微笑を浮かべながら男の話を遮った。  
男は赤面し、ぺこぺこと頭を下げながら執務室を出て行った。  
遠ざかる背中を見送りながら、王子はどっかりと椅子に座りなおした。  
高々と足を組み、大きな溜息をつく。  
「レティー!お茶を入れて―――」  
 
叫び、王子ははっとしたように振り返った。レティーは昨日出て行ってしまったのに。  
「……習慣と言うのは、怖いな」  
一緒に暮らしたのはたったの二ヶ月ほどにすぎなかったのだが、  
それでも彼女の存在は大きく王子の中に根付いている。  
彼は苦笑すると、前髪をクシャリとかき上げた。  
王子が感傷に浸っていると、突然激しいノックの音がした。王子は苛々しながら  
立ち上がり、戸を開ける。  
「失礼いたします、ジャスティン王子殿下!お客様でございます!」  
「誰だかは知らないが、今日はもう面会の予定は―――」  
護衛隊長は気弱な目をして王子を上目遣いに見ていた。王子は彼をにらみ、  
彼の背を覗き込む。小さな頭が、ひょこりと現れた。  
「こんにちは」  
立ちはだかった女は花の様な微笑を浮かべていた。彼女は小首を傾げながら  
王子に問う。  
「お時間、よろしいかしら?」  
「―――ソフィー・ジェンキンス夫人をお連れいたしました!」  
隊長が間抜けなタイミングで客人の名を告げた。ソフィーは悠然と微笑みながら  
王子を見ている。嫌な汗が瀬を走り抜けるのを感じ、王子は喉を鳴らした。  
 
「久しぶりね」  
通された応接室のソファーに身を預けながら、ソフィーが無感情に言った。  
王子は視線を下げたまま、彼女と向かい合っている。  
「………子供」  
「え?」  
「産むことに、したんですね」  
弱弱しい笑顔を浮かべながら、王子が言った。よくよく見れば、ソフィーの腹部は  
わずかだが膨らみ始めている。  
「ええ、私の思い過ごしだったみたい―――すごいの、毎日信じられない位に  
浮かれちゃって」  
「想像に易いですね」  
二人の顔に、一瞬かつてのような親しさが浮かんだ。しかし、すぐにソフィーが  
顔を背けてしまう。  
「―――話が、あるの」  
「……レティー、ですか?」  
それ以外にあるわけがないのを知りつつも、王子はそう尋ねずにはいられなかった。  
ソフィーはすっと冷めた瞳で彼を一瞥し、厳かに頷いた。  
「一体、何が目的であの子を巻き込んだの?」  
 
ソフィーの言い方は質問と言うよりは単純に非難しているだけだった。  
王子は切なそうに目を伏せている。彼女は大きな溜息をつくと、一転して  
弱弱しい様子で囁いた。  
「あの子は、本当にいい子なのよ?ねぇ、どうしてあの子なの?」  
ソフィーの苦悩はとまらない。まるで、この世の終わりのような顔で大きく頭を振る。  
「あの子………昨日の晩に家を出て行ったわ……結婚するそうよ」  
その一言に、王子が凍りついた。唇をわななかせながら、どうにか言葉を紡いだ。  
「あの……誰と?」  
「……チェザーリのお客さんだった、裕福な方だそうよ。私もよくは知らないの……」  
二人は揃って頭を抱えた。レティーは何をやらかすのか解らない。  
もちろん、ソフィーに比べて彼女は世渡りも上手く立ち回りも器用だが、  
何せ年若い娘だ。思いつめた先の行動は、殆ど恐ろしいまでに純粋ですばやい。  
「…………結婚なんてやめて」  
ソフィーが搾り出すように呟いた。  
「お願い!あの子を連れ戻すにはそれしかないの!」  
ソフィーの大きな目には涙が滲んでいる。妹の身を真剣に案じている様は  
健気であり、王子は手助けしたくてたまらなかった。  
しかし、自分の置かれた立場を考えればそうも行かない。  
「―――申し訳ありません。ソフィーの願いでも、それは出来ません」  
王子が小さな声で答えた。ソフィーがばっと顔をあげ、泣きながら彼を睨みつけた。  
立ち上がり、服を握り締めながら唇を噛み締める。  
「………私、一生あなたの事を恨むわ……」  
王子が腰を浮かした。しかし、ソフィーは彼を拒絶するように身を翻す。  
絶望に落ち窪んだ瞳は、最後まで王子をにらみつけたままだった。  
 
「――――絶対に、許さない!!」  
 
去り行くソフィーの背中を見送りながら、王子は深い絶望に包まれていた。  
つい最近まで彼女こそが王子の世界の全てだった。彼の女神を傷つける事など  
出来まいと思っていたのに、自己防御の為に彼女を傷つけた。  
もう、彼女の心が自分に注がれる事はないだろう。きっと、永遠に。  
「………恋を失うのは、悲しいものですね」  
苦笑いと共に呟いた言葉に、王子は少なからず動揺していた。  
今や彼の心をかき乱す女性はただ一人。太陽の面影を持つ、明るくて意地っ張りで  
はつらつとした笑顔を持つ少女以外にいない。それほどまで、彼女は自分の中で  
確固たる物となっている。だというのに、心が重たく沈んだ。  
初恋の女性、と言うものはこんなにも感傷的な気分を与える存在なのだろうか。  
 
「ジャスティン王子殿下」  
戸口から、サリマンの声がした。王子は慌てて身繕いをし、ドアをあける。  
「ごきげんよう」  
そう言ったサリマンは一人の少女を伴っていた。慎ましやかに俯いた彼女が、  
そっと顔を上げる。  
「ごきげんよう、ジャスティン王子殿下。突然の訪問を不躾だとお思いでしょうが、  
どうかご容赦ください」  
 
殆ど銀色に見える淡い金髪の少女は、澄んだ声で向上を述べた。  
嫌味なく整った顔立ちに利発そうな茶色い瞳が印象的だった。  
「どうしても姫君さまがあなたにお会いしたいと」  
サリマンの声は静かだった。そして冷淡に響いた。おそらく、王子が  
侍女を追いかけて婚約を破綻にさせないために、自分を牽制するつもりなのだろう。  
「お会いできて光栄です、姫君さま」  
ジャスティン王子は微笑んだ。少女も美しい微笑を浮かべている。  
その顔が、初恋の少女のそれにかぶる。清楚で聡明で気高く、それでいて優しい。  
第一印象は、完璧だった。  
「あらあら、あまりに姫君さまが美しいので驚いていらっしゃるのね」  
サリマンの声がいつになく粘っこく響いた。王子が逃げられないように、  
彼女はこの少女を選んだのだろう。褒められた事に少女は戸惑い、  
ちょっとはにかんだ様に笑った。  
「………ええ。お美しい、方ですね……」  
呆然と呟いた台詞に、少女の顔がぱっと明るくなった。花の咲くような、と  
形容するのにふさわしい表情だった。太陽が雲にかげるイメージが、  
不意に脳裏を掠めた。  
張り裂けそうになる胸を抑えながら、王子は小さく息をはいた。  
 
 
婚約パーティーの準備は滞りなく進み、招待客達がぞくぞくと王宮にやって来た。  
協定を結ぶための婚姻であり、また王の血縁ではあるが民間人と隣国王宮の  
結婚であると言う事で、パーティーはこの国、挙式は隣国でという形で落ち着いた。  
「………まだ、怒っている?」  
王宮にある私室の中でソフィーの身支度を手伝いながら、ハウルが上目遣いに訊ねた。  
彼女は顔を上げたまま、鏡を覗きながら髪の毛を結っている。  
「―――いいえ。だって、あなたは絶対にこのパーティーに出なきゃいけないし、  
そうなった以上は私も行かないといけないもの。仕方ないわ」  
そう言うと、ソフィーは手早く髪に飾りを挿した。小さい宝石をあしらった  
コームが、結われたシニヨンの根元あたりで輝く。  
「……随分、物分りがいいね」  
ハウルが苦笑した。初めてパーティーへの出席を求めた時は、クッションを  
手当たり次第投げながら喚き散らしたと言うのに。  
「―――だって、ジェンキンス夫人は物分りがよくなきゃ。わがままは、  
言っちゃいけないの」  
ソフィーがまっすぐにハウルを見上げた。いくら王宮付魔法使いに就任したと  
言えども、彼はまだ若い。周りの人間達にいい印象を与えておかねば  
ならない時期だろう。  
 
「………ごめんね」  
ソフィーが静かに首を振った。すくりと立ち上がり、ドレスの裾を検分する。  
妊婦である事を考慮して、ちゃんとそれ用のコルセットを用意したのだが、  
もともと華奢だったのが功を奏したのか、そうそう重たい感じはしないし  
落ち着いたモスグリーンのドレスもよく似合い、彼女はどこからどうみても  
完全な淑女だった。  
「でもね」  
今度はハウルのシャツにタイを通しながら、ソフィーが呟いた。  
「神様って、なんて不条理な事をするのかしらって思うの。どうして、  
愛し合っている二人を、身分だなんてしょうもないもので隔て引き裂くの?」  
ソフィーの声は潤んでいた。綺麗に化粧された顔も、悲壮感にくすんでいる。  
「………そういう運命の元に生まれてしまった事を恨むしかないよ。  
でも、もしもカブが本気でレティーを愛しているなら、打破する策はいくらでもある」  
ハウルがソフィーを抱きしめながら囁いた。縋りついた彼女は、重たい溜息をつく。  
「………私は幸せよ」  
「……うん」  
「………ねぇ、私がレティーの幸せを祈るのって、傲慢なのかしら?」  
「…………うん」  
ソフィーが泣きそうに顔をゆがめた。涙を流す事はなかったが、それでも  
苦しそうにハウルにしがみついている。それから随分と長い間、  
二人は抱き合ったままだった。  
 
 
「こんばんは、ジャスティン王子殿下」  
現れた魔法使いの姿に、王子は目を瞠った。ハウルは一応王宮付魔法使いという  
立場上、地味な魔法使いの制服を着ていたが、彼自身の美貌はちっとも  
損なわれてはいなかった。  
「……こんばんは。お一人で?」  
訊ねられ、ハウルは肩をすくめた。王子が掌で額をおさえる。  
「我が麗しのジェンキンス夫人に会えるのを、楽しみにしていたのに!」  
芝居がかった物言いに、ハウルは明らかにむっとしたような顔になった。  
「一言余計じゃないか、カブ」  
「あぁ、そうですね―――我が麗しのソフィーが正解」  
ハウルの瞳が凶暴なまでに凍りついた。解りやすいこの魔法使いの様子に王子は  
けらけら笑いながら、彼の肩を叩いた。  
「冗談です」  
「当たり前だ」  
物騒な顔つきだったハウルが、ようやく力を抜いたように息を吐いた。  
王子は緩く微笑むと、静かに視線を下げた。  
 
「それで、本当にソフィーは?」  
「僕の部屋。挨拶もそこそこに出て行ったよ。身重っていうのは随分優遇  
されるんだね!一言ことわっただけで、みんなにこにこしながら休め休めって」  
ハウルが溜息と共に言った。王子が苦い笑いを浮かべる。  
「確かに」  
「僕だって、こんなことしていないでソフィーと部屋に引っ込んでるほうが  
ずっといい」  
「同感ですね」  
何気なくそう言った王子を、ハウルは非難するように見つめた。  
王子が微苦笑を浮かべる。  
「何です、いきなり」  
「……レティーの話、聞いただろう?」  
「………ええ」  
王子が呟くように答えた。ハウルは彼を睨み、苛々と睫を伏せながら続けた。  
「あんたが蒔いた種だろう?どうにかして片をつけてくれよ―――こんな幕切れ、  
いくらなんでも酷すぎる」  
ハウルの声は常日頃の冷静さを欠いていて、子供っぽく響いた。  
王子は相変わらず微笑んでいる。  
 
「レティーはどうなる?あの子は、どうなるんだ?」  
「………私が、憎いですか?」  
王子がハウルに尋ねた。その声は穏やかで、純粋に疑問に思っているようだ。  
「―――憎いよ。レティーは大切な義妹だから」  
「……じゃあ、何故?なぜここで私と仕事を?」  
今度は少しばかり尖った声を出して王子が訊いた。魔法使いはかすかに  
首を振ると、まっすぐに王子を見た。  
「理由は一つだ。僕には妻がいて家族がいて、それにもうすぐ子供も生まれる。  
守るべきものがあるんだから、そのためなら嫌な仕事だっていくらでもする。  
それだけの覚悟は出来てるさ」  
きっぱりといわれた言葉に、王子は目を瞠った。強い瞳、靭い言葉。  
自分にはないもの、欲しくてたまらない「なにか」。それを持ち得る彼は、  
満ち足りたような顔をしていた。  
「………ずるいなぁ」  
くすくすと笑いながら、王子は髪をかき上げた。ふわりと巻き毛がおどる。  
「そんな風に言い切れるだなんて……幸せそうで、ねたましいなぁ」  
明るい、冗談めいた口調で王子がハウルに言った。しかし、彼の瞳は落ち窪み、  
今にも泣き出しそうに震えていた。  
「…………婚約、おめでとうございます」  
臣下、滞在中の彼つきの魔法使い、そしてこの婚約の後見人としてハウルは  
言祝ぎを述べた。王子は泣き笑いのような顔を浮かべると、ありがとうとだけ呟いた。  
 
会場が突如わぁっと沸いた。本日の主役である、王子の婚約者が現れたのだ。  
クリーム色の品のいいドレスを来た彼女は、初々しい様子で、それでも誇りを  
持って王子の元に歩み寄ってくる。  
「ジャスティン王子殿下」  
「こんばんは。あなたは、今宵も輝くばかりにお美しい」  
手の甲に王子のキスを受けながら、少女はぽっと頬を染めた。  
傍らに立ったハウルを見止め、彼女は可愛らしく首を傾げる。  
「あら、こちらの方は?」  
「はじめまして。ハウエル・ジェンキンスと申します。以後、お見知りおきを」  
ハウルも胸に手を当て、彼女に敬意を表した。少女ははにかみ、ドレスの裾を  
つまんで腰を折った。  
 
「お噂はかねがね。とても、優秀な魔法使いだと」  
「―――あなたも。噂に違わずお美しい」  
そう言われ、少女は照れたように微笑んだ。その顔が愛妻のそれと重なり、  
ハウルは目を瞠る。非難するように王子を見ると、彼は困惑したように  
視線を下げていた。  
「それでは、私はこれで。ごゆっくり、パーティーをお楽しみください」  
居たたまれなくなって、ハウルは早口に別れを告げると群衆にまぎれた。  
少女はふふ、と微笑みながら王子を見上げる。  
「素敵な方でしたね―――仲がおよろしいのですか?」  
「ええ―――奥方ともども、個人的な友人です」  
「あぁ、一度だけ見かけた事がありますわ。銀の髪の、お美しい方でした」  
ささやきをかわす二人の様子は初々しく、さも仲睦ましげだった。  
まるで絵画のような様に、招待客たちは溜息を洩らす。  
 
そして、その何本もの視線のうちに、ひどく傷ついたような目が一つあった事に、  
王子は気付いていなかった。  
 
「あら、あの―――叔父様!」  
少女が突如声を上げた。面食らう王子をよそに、群衆の中にいた一人の紳士が  
振り返る。  
「叔父様、来てくれたのね!ありがとう!」  
少女は心底嬉しそうに笑った。紳士は40をいくつか越したばかり、といった様な  
年恰好で、ひょろりと背が高くて額が広い。そしてその茶色の瞳はひたすらに  
穏やかで、身分の高い貴族であるには違いないのに、ひどく異質な存在だった。  
「もちろんだよ、可愛い姪っ子の婚約パーティーだからね」  
紳士も微笑みながら応える。彼は王子に向き直ると、深々と礼を取った。  
「お会いできて光栄です―――この度は真におめでとうございます」   
王子も薄く笑うとありがとう、と小さく応えた。少女が気をきかせ、王子に  
耳打ちする。  
「この方は私の父の弟です。小さい頃から、とても良くしていただいてますの」  
その言葉に、王子はようやく肩の力を抜いた。どうやら、彼は伯爵に当たる  
人物らしい。しかし、取り澄ましたような所はどこにもなく、親しみやすさと  
穏やかさが魅力的だ。  
「あら、叔父様。そちらはどなた?」  
少女が気安く尋ねた。紳士はあぁ、と照れたように笑うと、背中に隠れるように  
立っていた娘を前に押し出した。  
 
「恥ずかしながら、私にも良縁が訪れてね―――レティー・ハッター嬢だよ」  
王子は、全身から力が抜けていくのを感じ、どうにか歯を食いしばってそれに  
耐えた。目の前には、赤味の強い金髪をきつく結い上げ、淑女然とした  
立ち姿の娘が一人。  
「お綺麗な方ねぇ……!どちらでお知り合いになったの?」  
少女が感嘆の声と共に訊いた。紳士は照れたように頬を掻き、娘をちらりと見る。  
彼女はしとやかな微笑を浮かべて、かすかに顎を引いた。  
「彼女はついこの間まで町の菓子屋の看板娘でね……ふらりと立ち寄ったときに  
見初めたんだ。初めて見た瞬間から、あぁ、この人と結婚しようって思ってね」  
紳士は年の割には純朴な所があるらしい。王子は胸焼けを覚えながらどうにか  
微笑を貼り付けた。少女は嬉しそうに笑っている。娘は、毅然とした態度を  
崩さなかった。  
パーティーの度、彼女の姉君は完璧な淑女として振舞っていたのに、彼女は  
どこかぎこちなく痛々しい様子だった。  
 
「………ジャスティン王子殿下」  
その晩、初めて娘が口を開いた。紅を引いた珊瑚色の唇が、やけに目に付く。  
「ご婚約、おめでとうございます」  
 
そう言ったとき、彼女は笑っていなかった。大きな瞳に涙をため、  
それでも精一杯に王子を見据えている。  
精一杯、と思った瞬間にすべて合点が言った。ソフィーと比べ、レティーは  
世渡り上手のイメージが強かったのだが、むしろ彼女の方がずっと不器用にしか  
生きられない人種だった。ソフィーがいつでも凛としているのは、例えどこに  
いようと自分の価値観を曲げないからであって、レティーは強い意志と周りを  
読もうとする力の葛藤が若さゆえにか少しだけ覗き、それが痛々しく見える。  
 
「レティー……」  
 
鏡のようなこの娘の名を呟いたとき、彼女は遂に涙を流した。身を翻し、  
たっと駆け出す。紳士が声をあげ、一礼してから彼女の後を追った。  
少女はぽかんとしている。  
「………どうなさったのかしら?」  
少女に囁かれても、王子は返事をしなかった。否、出来なかった。今、口を  
開いてしまえば、溜まっていた涙が堰を切ったように溢れてくるだろうから。  
だから、王子はきつく唇を噛み締めたまま、一人震えていた。  
 
 
宴は佳境に差し掛かり、いよいよ華やかな雰囲気が濃くなった。  
誰もが美酒に酔いしれ、この婚姻を声高に祝っている。  
しかし、玉座にいる王子はひどく沈んだような顔をしていた。子供のように  
そわそわと視線をさまよわせ、かと思えばじっと扉を見つめたりしている。  
「――――――か、殿下」  
だから、名前を呼ばれた事にも王子は気付けなかった。はっとしたように顔を上げ、  
傍らの少女を見直せば、彼女は随分困ったような顔をしていた。  
「……申し訳ありません。少し、疲れてしまって……」  
取り繕うように笑う王子に、少女は口元を持ち上げ、すぐに前を向いた。  
凛とした横顔のまま、口を開く。  
「……あなたに出会う前、私は自分を月だと思っていました」  
 
少女の思いもよらない告白に、王子は目を瞠った。彼女はしゃんと  
前を見据えたまま言葉を紡ぐ。  
「そして、あなたこそが私を照らしてくれる太陽だと―――でも、違ったわ」  
王子が驚き、彼女の手に触れた。しかし、少女は誇り高く彼の手を振り払い、  
目を伏せた。  
「あなたが輝いていたのは、あなたを照らす誰かがいたから。  
あなたも月だわ。私と同じ」  
少女の声は静かだった。そして、まっさらで穢れがなかった。王子は目を閉じ、  
苦しそうに呟く。  
「―――すみません、私には……」  
「行って下さい」  
「………すみません」  
搾り出すような声で囁かれた言葉に、少女がやっと振り返った。まっすぐに  
王子を見据え、静かに微笑む。  
「……これは、優しさなんかじゃありません。私のエゴ。だから、行って。  
誰かに照らされて、明るく輝くあなたが好きなんです」  
少女が微笑んだ。初めてで会った時と同じく、完璧な微笑だった。  
王子は一歩足を踏み出し、すぐに彼女の手をとりしっかり見つめた。  
「………あなたは、私にとって大切な人です―――これは、私の何が嘘でも真実です」  
少女の微笑は崩れなかった。彼女は生粋の誇り高き姫君だった。  
彼女は王子に握られた手をすっと離すと、彼の背をそっと押した。  
王子は泣きそうな顔で一礼すると、たっと駆け出した。  
金色の巻き毛がふわりと浮き、その残像はいつまでも少女の脳裏に焼きついていた。  
 
 
あなたは太陽、私は月  
一つの空を分かち合う  
それなのに、どうしてたった一夜で、  
こんなにも遠くなる?  
 
 
王宮の廊下を走りながらも、王子は途方にくれていた。会場を抜け出したはいいが、  
レティーの行方はわからない。もしかしたら、もうここを立ち去ったのかも  
しれない。あの紳士と一緒に。  
「―――っ」  
それでも、王子は足を進めるのをやめなかった。とにかく、レティーを  
探し出さなければならない。  
「レティー?レティー?」  
叫びながら、王子は尚も走る。ふと気がつき、中庭に飛び出る。中庭には  
様々な花が咲き乱れ、その香りがむわりと重たく香っている。  
この中庭は、いつかレティーを連れてきた場所だった。あれは暖かい夜で、  
レティーは薄物一枚と言う出で立ちだったからだろうか、何度もくしゃみを  
していた。しっかりしているようで抜けていて、腕をさすりながらも王子の  
差し出した上着を受け取らなかった意地っ張りなレティー。  
「レティー!レティー!」  
王子は声の限り叫んだ。やがて声は枯れ、掠れた色を帯びたとしてもその叫びは  
止まなかった。溢れ出る涙が後ろに流れていく。全身が熱い。  
「レティー!」  
 
中庭の中心にある東屋に、その人はいた。彼女はびっくりしたように  
目を見開いたまま、泣きながら走ってきた王子を凝視している。  
「………どうしたの?」  
レティーは心配した風に首を傾げ、東屋の入り口まで早足にやって来た。  
「何かあったの?どこか、怪我したとか……」  
レティーの声はいつも通り落ち着いていて、安らかだった。王子はその事に  
自分の中で緊張が解けるのを感じた。  
「………あの、そのままでいいので、話を聞いていただけませんか?」  
涙を拳でぐいと拭いながら、王子が大声で尋ねた。レティーが歩みを止める。  
「それで、あの……もし、あなたが今から言う事を不愉快に思ったり、  
煩わしく感じたりしたら……このまま、立ち去ってくださいませんか?」  
王子の願いに、レティーは目を剥いた。呆れたように溜息をつき、額に手を当てる。  
「―――随分勝手なのね」  
「……すみません」  
仕方ないわね、とレティーは肩をすくめた。それから、母親のように落ち着き  
払って頷く。王子は軽く呼吸をすると、まっすぐに彼女を見つめた。  
「………結婚、しないで下さい」  
言われ、レティーが眉をひそめた。王子は唇を何度も噛み締め、切れ切れに  
言葉を続ける。  
「その……だって、あの方と結婚したら、あなたはまた色々大変な目に遭うし  
……それに、随分年上だし……それに、知り合って日も浅いだろうし……」  
 
「―――そんなの、あなたが気にする事じゃないじゃない」  
レティーの声は冷ややかだった。王子は傷ついたように視線をそらす。  
「ご婚約中の王子殿下は、侍女風情の縁談に口出ししている場合じゃ  
ないんじゃないかしら?」  
レティーの声に潜む強い拒絶に、王子の胸は張り裂けんばかりに痛んでいた。  
彼の様子を見、娘は残忍な笑いを浮かべながら言い放った。  
「あなたには、何一つ関係ないことだわ」  
「―――そんな言い方、ありますか?」  
余りに冷たいレティーの言葉に、王子は頬を赤くしながら反論した。  
二人の間に火花が散る。彼女はふんと鼻を鳴らすと大声で王子に怒鳴りつけた。  
「あなたが勝手過ぎるからよ!ねぇ、どうしてあたしにつっかかってくるの?!」  
レティーの強い言葉に、王子は俯いた。彼女は眉間に皺を寄せると、ドレスの  
裾をつまんだ。さっと背を向ける。とろけそうな黄金の満月に、その姿が映った。  
逆光でシルエットのみが浮かび上がる。これを逃したらもう二度と彼女が帰って  
こない気がして、王子は東屋に続く石段を駆け上がり、彼女の細い腕を掴んだ。  
「―――あなただからですよ!」  
 
振り返ったレティーは、目を瞠ったまま固まっている。王子は大きく方を  
上下させながら、殆ど怒鳴りつけるように言った。  
「あなたが、あなただからですよ!好きだからですよ!あなたが、大事だからです!」  
石のように動かなくなかったレティーを抱きすくめ、王子は溜息を付いた。  
欲していた体温に、心臓が拍動しているのを煩いほどに感じる。  
「………あなたがいたから、だから、私はどうにか生きてこれた……だから……」  
「……だから?」  
レティーがようやく口を開いた。ぽそりとした呟きは、どこまでも儚くか細い。  
「……あなたのいない世界は、生き難いのみです――――あなたがいれば  
どんなにいいかと毎日考えていました……だから……」  
そこで、王子はレティーの肩を自分から引き離した。彼女の瞳を覗き込み、  
はっきりとした声で言う。  
「戻ってきてください」  
レティーの瞳が凍りついた。王子は気にせず、泣き出しそうに震える声で続けた。  
「………これを言うのは嫌なんですが……寂しいんです、あなたがいなくて」  
あまりに開けっぴろげな告白に、レティーは驚くとか喜ぶとかよりも、単純に  
呆れていた。しかし、腹のそこからじりじりとこみ上げてくる喜びと感動には  
勝てず、しっかりと王子と目をあわせ、目元をほころばせた。  
 
「――――あなたみたいにしょうもない人に、愛想を尽かさないのは、  
きっとあたし位のものだわ」  
レティーが泣き笑いの顔をしながら呟いた。声が潤んでいる。  
王子も泣きそうな顔で、何度も何度も頷いた。  
「…………そんな物好き、あたしだけなんだから」  
二人は引き寄せられるように抱き合った。きつくきつく、互いに腕をまわす。  
涙は溢れていたが、二人は幸せそうに笑い合っていた。満月の照らす東屋は、  
まるで夜明けのように明るく輝いていた。  
 
あなたは太陽、私は月  
運命の神様の導きで共にいる  
愛が燃える空に、光の輝く空に  
 
そこから生まれてきたの  
陽光と、月光から  
 

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