はぁ、とため息を洩らして、ソフィーは未だ快楽の余韻に浸っている手足を、  
どうにか動かした。のし上がっていたハウルは心得たように彼女の上から下りて、  
今は隣に伸びている。  
「ソフィー……」  
甘ったるい猫なで声で、ハウルがソフィーの体を抱きこもうとした。  
しかし、彼女は長い巻き毛の残像だけ残して、腕を逃れてしまう。  
「……何それ」  
不満げに唇を尖らして、ハウルは新妻の髪を引っ張った。きゃぁっと声を上げて  
ソフィーが起き上がった。  
「何するのよ!」  
赤い(彼女が言うには赤がね色の)髪と同じくらいに顔を真っ赤にして、  
ソフィーがハウルをにらみつけた。  
「痛いじゃないの!」  
「あんたが大人しくしてないから悪いんだろ?!」  
同じように顔を赤くしたハウルも、起き上がって正面から食って掛かった。  
二人はしばらくの間無言でにらみ合っていたが、素っ裸でいい合いを  
するのも何だか情けなくなって、すぐにベッドに倒れこんだ。  
 
「……別にね、あんたが嫌だから抱きしめられたくないわけじゃないのよ」  
ソフィーがぶっきらぼうな口調で呟いた。ハウルは視線だけで問い返す。  
「……ただね、最近、体がその……太ってきた気がするの」  
ソフィーは真っ赤だった。ハウルは毒気を抜かれたようにぽかんとしている。  
「ご飯とか、食べ過ぎた覚えもないし、怠けていたわけじゃないのよ?  
だけど……服も少しきついし、腕とか、腰とか………」  
言葉が尻すぼみになるように、ソフィーの顔も下を向いていった。  
「あんただって、牛みたいに肥えた奥さんなんて、嫌でしょう?」  
おずおずと訊ねてきたソフィーに対して、ハウルは数秒の沈黙の後に思い切り  
吹き出した。それからげらげらとけたたましく笑う。  
「あはははは!あんたにも、そんな可愛い所があったなんてね!」  
「ちょっと!あたしは真剣なのよ!?」  
逆上したソフィーの動きを止めるように、ハウルは彼女の頬にキスを落とした。  
喚いていた口がぴたりとつぐまれる。  
「嬉しいよ、そんなにまで僕のことを愛していてくれたなんてね!」  
「ちょ、調子に乗らないでよ!誰があんたなんか!あたしはね、  
あんたみたいなぬるぬるうなぎ……」  
大嫌い、と言葉を紡ごうとした唇は、ハウルの口にふさがれていた。  
長い長い口付けで力の抜けたソフィーの体を、ハウルはぎゅっと抱きしめる。  
 
「……あのね、奥さん。あんたは太ったわけじゃないんだよ。  
あんたは元々痩せていただろう?それこそ子供みたいな体つきでさ。  
でも、それが成長して、今は立派に女らしくなった。  
解る?今のあんたは、ものすごく魅力的だ」  
完璧な美貌の持ち主に、蕩けそうな顔でそこまで言われて、嫌がる女は  
そういないだろう。ソフィーも例にもれず、ぽぉっと頬を染め、目を潤ませている。  
「……今のままのあたしでもいいの?」  
「今のあんたがいい―――もちろん、子ねずみちゃんだった頃のあんたも好きだし、  
きっとまん丸に太っていたとしても愛しているよ。  
ソフィーがソフィーなら、それでいいよ」  
にこり、と浮かんだ微笑は目もくらむほどに綺麗だった。  
そう言ってあげたかったけれど、意地っ張りな口からは本心とは  
逆の言葉しか出てこない。  
「やめて頂戴、そう甘やかされてちゃ、あたしがどんどん駄目になってしまうわ!」  
「だって、あんたを甘やかすのが僕の楽しみだもの!」  
楽しみを奪うの?と全く持って邪気のない顔で言われ、ソフィーは天を仰いだ。  
しかし、ハウルは気にせずに、彼女に覆い被さった。  
「………何するの?」  
「運動すれば痩せるから、お手伝いをしてあげようかと思って」  
「…………お節介」  
「優しさだろう?」  
飄々と言い返され、ソフィーは思い切り顔をしかめた。彼のキスの雨が降ってくる。  
「……あんたの優しさって、時々物凄くうっとうしいわ………!!」  
ソフィーの呟きをやり過ごし、ハウルは薄紅色に染まり始めた体を、きつく抱きしめた。  
 

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