ここはウェールズ。
長女も大学に行く時代。
ソフィーは朝からてんてこ舞いでした。
何故って、今日はソフィーの家庭教師が始めて家に来るからです。
先生は近くの大学院の方、ということでしたが、粗相が合ってはいけないと、
もう朝からずっと家の掃除に精を出していました。
ソフィーは高校3年生で、後数ヶ月で大学受験です。
彼女は生真面目で努力家なのですが、自力で解くには中々難しい問題もありました。
そこで母親のファニーが、家庭教師になってもらえるような人を探していたのですが、
先日とうとうよさそうな方が見つかった、というわけです。
ソフィーはお金が掛かるしいいわ、とファニーへ言ったのですが、ファニーは首を縦には
振りませんでした。
いわく、「長女だからって学が無いと、どこへもお嫁にやれないでしょう?」
ソフィーは亡くなった父親がやっていた帽子屋を継ぐつもりでしたので、その言葉には
驚きました。
しかし結局は、ファニーに押し切られるように、ソフィーは承諾したのです。
49 名前:家庭教師×生徒2 投稿日:2005/07/25(月) 18:35:26 ID:xeeonhjA
約束の時間になりました。
ソフィーはドキドキしながら居間をウロウロします。
「ソフィー、落ち着きなさいよ」
そうやってファニーに宥められても、ソフィーは緊張からか落ち着けません。と―――
ピンポーン。
インターホンが鳴りました。
ソフィーは早速、「どちら様でしょうか?」と声をかけました。
「先日、家庭教師のお話をいただきました、ジェンキンスと申します。」
男の人にしてはやや高めの声が響きます。
ソフィーはドアを開けました。
「どうぞ、お上がりになって下さい、ジェンキンス先生。」
「やあ、初めまして、きみがソフィー・ハッターさん?ハウエル=ジェンキンスです。
ハウルと呼んで下さい。」
青年はそういってにこりと微笑みました。
ソフィーも釣られて微笑みます。
ハウルはソフィーに促されるまま家へ上がります。
「じゃあ、早速で悪いんですが、お部屋へ行きましょうか、ソフィーさん」
「はい!」
ソフィーとハウルは並んで二階のソフィーの部屋へと上がっていきました。
…その様子をニヤリと見つめるファニーを残して。
ハウルの指導はソフィーを納得させるのに、十分すぎるほどでした。
さすが、ファニーが探して見つけてきただけあります。
彼の説明もさることながら、その声にもどこかしら色気があるようで、ソフィーをうっとりとさせます。
しかしソフィーは今まで誰とも付き合ったことが無かったので、男性には余り免疫がありませんでした。
学校は女子高だったせいもあるかもしれません。
ですから、ハウルとの勉強時間が終わると、かなり疲れていました。心拍数はかなり上がっています。
それを感じたハウルが尋ねました。
「ソフィーさん、どうかした?初日だし、ちょっとペースが速かったかな。」
「いいえ、先生。そんな事はないんです。先生の教え方があんまりお上手だからびっくりしてしまって。」
男性だから…とは言わずに、ソフィーはごまかしました。
「ありがとう、ソフィーさん」
「いいえ」
クスクスと笑う少女に、ハウルも優しく笑いました。
「じゃあ、また来週、よろしくお願いしますね、先生!」
「うん、よろしくね、ソフィーさん。」
そうやって、一日目は何事も無く過ぎて行ったのです。
そうして、ハウルが家庭教師になって数週間が経とうとしていました。
彼が家庭教師になって、初めての期末テストが終わり、もう夏です。
ソフィーは弾む気持ちでハウルを迎えました。
「今日は、先生。今日は見せたいものがあるんです!」
満面の笑みでソフィーは言いました。
「どうしたの?ソフィー」
いつの間にかハウルは「ソフィーさん」から「ソフィー」へと呼び方を変えていました。(もちろん、ファニーが
いるときはさん付けでしたが)
ソフィーは持っていた紙切れをハウルの目の前へと見せます。
「期末テストが返ってきたんです!ほら、今までどうしても数学で満点なんて取れなかったけど、初めて
満点が取れました! 」
「やったね、ソフィー!! 」
ハウルは勢い余ってソフィーへ抱きつきました。
ソフィーも子供のように(実際、コドモでした)はしゃぎ、ハウルの首に抱きつきます。
「先生のおかげよ! 本当にありがとう!」
「ソフィー…」
突然、ハウルの熱っぽい声が聞こえ、ソフィーはびっくりしました。と同時に、頬に柔らかな感触を感じます。
それは、ハウルの唇でした。
驚いたソフィーは、「きゃっ」と言い、ハウルを突き放そうとしました。
しかし、ハウルは離れません。
「せ…先生…?」
ソフィーは自分の心臓の音が、どんどん大きくなるのを感じました。
「ソフィー、ごめんね、いきなり。あんまり嬉しかったから、つい…ね。」
ぱっとハウルは手を離しました。
ソフィーは恥ずかしさの余り、下を向いて黙ってしまいます。
ソフィーのそんな様子に、ハウルは目を細め、手を彼女の頬にやりました。
ソフィーの体が、びくりと震えます。
「ソフィー」
ソフィーの弱いあの声でささやきました。
「は、はい…」
ソフィーは聞こえるか聞こえないかの声を出します。
「あの、迷惑だったらごめんね、ぼく、君の事好きになっちゃったみたいだ。」
そのときのソフィーの顔は、きっとタコよりも、トマトよりも真っ赤だったに違いありません。
どきどきと煩い心臓に、頭はパニックを起こしていました。
「ぼくのこと…嫌い?」
そんなこと、あるはずがありません。しかしソフィーは緊張の余り、何もいう事が出来ませんでした。
ハウルが更に囁きます。
「返事がないっていうことは、ノーじゃないって勝手に解釈するけど、いいの…?」
それでもソフィーは何も答えられませんでした。
小さい頃に父親が亡くなって以来、男性とはあまり接してないソフィーは、若い異性に関して免疫が
まったくと言っていいほどありませんでしたので。
「ソフィー」
それは彼女が思っていたより柔らかく、ひんやりとしていました。
クラスメイトの話や、想像の中では男性の唇と言うものはとても暖かいものだったのです。
そう感じたとき、ソフィーは反射的に目を閉じ、ハウルの腕をぎゅっとつかみました。
ひょっとしたら、私は、彼の事が好きなのかもしれない。
そう思うと、とても嬉しいような、でも恥ずかしいような、くすぐったい気持ちになりました。
相変わらず心臓は煩く音を立てていますが、聞こえない振りをしました。
今の彼女は喜びでいっぱいでした。
ぱっと目を開けると、目を開けていたハウルと目が合いました。
ハウルは少し驚いたように、「ソフィー、こういうときは目を閉じるものだよ、誰も教えてくれなかった?」と笑いました。
ソフィーは今度こそ真っ赤になって、穴があったら入りたい、と思いました。
そんな事は誰も教えてくれませんでした。家族とのキスは目をあけてやっていましたので、それはいつでもそういうものだと思って。
「先生だって、開けているじゃない!」
ソフィーは恥ずかしさを隠そうと、そう言いました。
思ったより効果があったのか、ハウルは目を開いて、驚きました。
「ソフィーは、生意気だなあ!」
笑いながら短いキスをたくさん、沢山ソフィーへおみまいします。
最初は慣れてきたソフィーが笑顔で受け止めていましたが、それが段々と深くなっていくにつれて、戸惑い、ハウルのなすがままになって行きます。
はあっ、と大きく息をつくとすぐにハウルが口をふさぎます。
舌が、彼女の歯列をなぞり、腕が背中を這い、キスの合間にうわごとのように「好きだ」と繰り返すたびに、ソフィーも熱くなっていくような気がしました。
ソフィーもハウルを追うように、舌を彼の口内に這わせます。
こうすることで彼も熱くなっている、とソフィーは確信しました。
その証拠に、彼の腕も段々と強くなって彼女を抱きしめます。
ハウルの手が彼女の胸へといったときに、どきりとして身を硬くしたソフィーは、ハウルを見上げました。
「せ、んせい…」
少し声がかすれていましたが、ハウルは気にせずソフィーへ口づけます。そしてこういいました。
「好きなんだ、ソフィー。君が嫌なら、ちゃんと止めるから。だからいいかどうか言って?」
優しい目で、それは本当にソフィーの気持ちを壊さないように、尋ねます。
ソフィーは気づきませんでしたが……彼は本当はとても怖かったのです。
(拒否されたらどうしよう、でも実はもう止められる気はしないんだよね)
ソフィーが聞いたら即、ここで終わりだという気がしてなりませんでしたので、ハウルは黙っていました。
そうとも知らず、ソフィーは真剣に考えていました。
(結婚までは、やっぱり駄目よね…。でも、私、何だか―――)
とても体が熱く、このままでは何かが疼くような気がしていました。
ハウルの目を見るたび、ハウルの体温を感じるたび、それは強まるように思います。
とうとう彼女は意を決しました。
(よし、行くわよソフィー、女は度胸!)
目をじっと見つめ返して、彼女は小さな声で、「いいです」と呟きました。
「ありがとう、ソフィー」
ソフィーのおでこに軽くキスをすると、ハウルは出来るだけ優しく、服の上から胸を触りました。