荒い息遣いが響き、獣の様なうめき声と淫らに甘い、でもどこか切羽詰った喘ぎ声が  
部屋に満ちた。まだあどけない顔をした少女は苦しそうに呼吸をしながら、覆い  
被さっている男の背に爪を立てている。広い背中には爪の跡が赤く残り、いくつかからは  
血が滲み出している。少女は甲高い叫び声を上げ、何度目かの絶頂を迎えた。  
意識が途切れたのか少女の首がぐらりと天を仰ぎ、男はそれを見とめて律動を止めた。  
彼女を犯していたものを抜き取れば、少女の愛液と混じったおびただしい量の白濁が  
中からどろりと重そうに垂れてくる。空気に晒されたことで、赤く腫れたそこが彼を  
求めるようにひくりと蠢いた。男は意識のない少女の身体を反転させると、細い腰を  
掴んで膝を立たせ、もう一度己を突き入れた。その刺激に少女が目を覚まし、シーツを  
掴んで悲鳴をあげる。悲鳴に滲む喜悦に男は薄く笑い、少女は快楽からなのか恐怖からなのかも  
解らない涙を零しながら全身を震わせた。何度も高みに押し上げられた体は、彼女の  
疲れ果てた心とは真逆で手ひどくされてもなお快楽を貪っている。時間を追うごとに  
少女が限界を迎えるペースがだんだんと速まっていき、男はうっとりとした表情で彼女を  
翻弄し続けた。もう、夜が白々と明け始めている。  
 
少女は絶望と怒りを感じていた最後の理性さえも手放し、遂に男の与える快楽の前に  
屈服した。  
 
その晩、ハウルが帰ってきたのは日付が変わってからだった。リビングでうたたねを  
していたソフィーは、がたんという大きな音で目を覚ました。  
「ハウル?」  
影のような足取りで、ゆらゆらとハウルが部屋に入ってきた。ソフィーが慌てて  
駆け寄り、彼の前に立ちはだかる。  
「どうしたの?心配していたのよ。こんなに遅くなるなら、何か一言くらい  
言って欲しかったわ!」  
ソフィーが怒ったような口ぶりでハウルを見上げた。彼は目を見開き、心底驚いたような  
深く裏切られたような顔で彼女を見つめている。  
「何?まるで幽霊でも見たみたいな顔して」  
ソフィーが冗談めかして笑った。しかし、ハウルの顔には全く表情がなく、冷めた  
瞳で遠くを見ている。彼女は戦慄を覚え、みじろいだ。  
「ど、どうしたの……?」   
「もう寝る。今夜は部屋に入らないで」  
「どうして?」  
「近寄って欲しくないんだ」  
一転してか細い声で訊ねたソフィーをはねつけ、ハウルが淡々と言った。彼女は  
面食らったように彼の腕を掴む。その瞬間に、彼の身体が硬直した。  
 
ハウルはゆっくりとソフィーに向き直り、無言で彼女を抱き寄せた。唇をぐいと  
押し当てる。驚きに彼女の動きが止まった一瞬を利用し、彼の舌が彼女の口内に  
滑り込んだ。  
「んっ!」  
いきなり自分の舌を絡め取られた事に驚き、ソフィーが声を上げた。ハウルは目を  
閉じ、巧みに彼女を翻弄していく。彼の舌は別の生き物のように動き回り、歯列を  
なぞり、歯茎を刺激し、彼女の舌を引き抜かんばかりに吸いつく。  
まだ男女の営みに慣れていないソフィーは、どうにかハウルから離れようと腕を  
振り回す。しかし、彼はびくともしない。次第にがぐがぐと華奢な膝が震え出し、  
彼女の顔が真っ赤に染まる。ぐったりともたれかかってきた細い身体を難なく  
持ち上げると、彼は寝室に向かうべくゆっくりと歩き出した。  
「……一体、何を………?」  
怯えたような声音で、ソフィーが小さく呟いた。ハウルは答えず、少しだけ笑った。  
 
どさ、という音がしてソフィーの身体が寝台に投げ出された。ハウルは手早く服を  
脱ぐと彼女に覆い被さる。ひ、と小さく息を呑む声が漏れた。  
「ごめんね……ソフィーが悪いんじゃないけど、それでもやっぱりソフィーじゃなきゃ  
駄目だから……諦めて」  
ハウルが久方ぶりに言葉を発した。言葉の意味が解らないのか、ソフィーが不思議  
そうに彼を見上げた。彼は目元を和らげると彼女の首筋に顔を埋める。赤いあざが  
いくつも残り、ソフィーの体は吸いつかれる度にびくりと跳ねた。彼の長い指が器用に  
踊り、するすると少女が纏っていた物が剥ぎ取られていった。無残に破かれ、  
投げ出された少女の夜着は純白。貞淑の色だ。目の端に移る白色の恐怖に震えながら  
少女は叫んだ。  
「やぁっ!待って、あ、嫌…!」  
耳朶は食まれ、晒された胸が彼の手に覆われる。まだ固さを残したそこをぎゅ、と  
きつく握られて、ソフィーが腰を浮かした。そのまま揉みしだかれ、彼女の眉が  
ぎゅうっと引き結ばれた。ハウルの呼吸は異常なほどに速い。頬も赤く、酷く興奮した  
ように目を潤ませながら彼女に愛撫を施している。そのおかしな様子に一抹の不安を  
覚え、ソフィーは喉を鳴らした。  
「ちょ、やだ!待って、なんでっ……あぁぁっ!!」  
不意に突起をきつく摘まれ、ソフィーが声を上げた。ハウルの荒々しい行動に怯え、  
彼女はなんどもなんども彼を引き剥がそうともがく。しかし、彼は全くの無頓着さで  
唇を胸元に寄せ、右側の固くしこった蕾を口に含んだ。  
「んんっ!や、もう…っいやぁぁぁ!!」  
 
ねっとりと舌が絡められ、ソフィーの身体が弓なりにしなった。弱点を付かれ、彼女の  
身体から力が抜けていく。だんだんと抵抗する力も弱まり、それに気付いたハウルが  
にやりと口の端をゆがめた。  
「気持ちいいの?あぁ、ソフィーはいやらしいな……こんなに固くして。見て?  
下も濡れ始めてるよ……」  
「っし、しゃべらないでっ!」  
胸元に当たる息を感じとり、ソフィーが慌てて叫んだ。ハウルは口に含んだままの  
突起を甘噛みし、手を伸ばして潤み始めている彼女の泉に触れた。  
「ひゃっ!」  
可愛らしい声が上がり、ソフィーが眉根を寄せた。ハウルはわざと音を立てて彼女の  
胸を舐め、悪戯に羞恥を煽る。熟れた林檎よりも赤い顔で、少女はいやいやと首を  
振った。銀の髪が揺れ、幾筋かが頬に張り付く。  
「あぁ……本当に君って人は……誘ってるの?」  
ハウルが興奮したように叫び、ソフィーの内部に指を押し進めた。彼女の脚がぴんと  
つっぱる。彼は自分の人差し指を差込み、何度か出し入れを繰り返して濡れ始めたのを  
確認すると、二本、三本と指の本数を増やしていった。  
「あぁぁっ!!」  
「何本いける?三本?四本?」  
仰け反ったソフィーの身体をベッドに沈めながら、ハウルが嬉しそうに言った。  
彼の目は爛々と光り、そこにはいつも浮かべられている理性も知性も映ってはいなかった。  
少女は恐怖にただ身をよじり、叫び声を上げた。が、男の大きな掌に彼女の花色の  
唇は柔らかく塞がれる。  
 
「む、ぅっうン!」  
「もうドロドロ。すごいね、さすがだよ」  
意地悪くもハウルがソフィーにそう囁きかけた。彼女が血相を変えて身体をばたつかせる。  
彼は優雅な所作で少女を押さえつけると、身体を密着させて猛りきった熱い己を  
彼女の大切な部分に押し付けた。彼女は死に物狂いで彼の頬を張り、身を起こして構えた。  
「ソフィー?」  
「無理やりなんて嫌!抱かれるのは構わない、でも訳を話して!そうしてくれないなら  
舌を噛み切って死んでやるんだから……!」  
恐怖に震える心をを意地と自尊心で押し殺しながら、ソフィーが低い声で警告した。  
ハウルの目に穏やかさと理知がすっと戻る。彼は動転したように二、三度瞬いてから  
かすれた声で懇願した。  
「ごめん…でも、今晩だけは大人しく抱かれて……」  
「どうして?」  
「薬が廻ってるんだ。もう多分……保たない…」  
薬?とソフィーが目を瞠った。ハウルは皮肉っぽい笑いを浮かべると、紅を塗った  
ように赤い唇で彼女のふっくりとしたそれを塞いだ。  
「姦淫剤、だよ」  
その台詞が、その晩のハウルの発した最後の『まともな』言葉だった。それを機に  
男は獣に戻り、少女は恐怖に引きつった顔のまま組み敷かれた。  
 
ずるり、という嫌な音と共に、少女の身体が割り開かれた。鉄の杭を打ち込まれた  
ような感触に、彼女が泣き声を上げる。最後の砦であった身体も奪われ、思考も  
何時まで持つかはわからない。舌を噛んでやる、なんていう殊勝な誓いもどこへやら  
ソフィーはただ一心に喘いでいた。ハウルははぁはぁと荒い呼吸を繰り返しながら  
彼女を攻め立てる。  
「あ、あああっ!ふ、んふっ!んぅ、あ!」  
言葉にならない音だけが喉から押し出され、ソフィーの羞恥を煽る。ハウルはすっかり  
理性を失い、彼女を気遣う事もせずに律動を繰り返す。凄まじい快楽に耐えられなく  
なったのか、少女が男に縋りついた。男はそれに気付き、勝ち誇ったような笑いを  
浮かべる。  
「気持ちよければ、なんでもありだろう?」  
「んっ!んん、んン!ふぇっ……」  
耳元で囁かれた言葉に、ソフィーは泣きながらいやいやした。しかし、全身を支配する  
熱には抗えず、小さく震え出す。ハウルが彼女の唇を奪い、腰をぐいと押し進めた。最奥に彼の先端があたり、彼女の内部がくっと窄まる。彼は獣じみた表情で腰を動かした。  
「あぁ!ハっ…う…も、あっ、あ、や、あ………いやああっっ!」  
それが何度か繰り返されるうちに、少女の喘ぎ声は短くなり、そしてついには悲鳴と  
なって切れた。それに連動するように、男が彼女の中で果てる。熱い液体を注ぎ  
込まれる間、彼女の細い足がびくびくと跳ねていた。  
 
「ひどい……何てことするの……?こんなのってないわ……」  
心底悲しそうな声をあげて、ソフィーが泣きじゃくった。涙が頬を焼き、行く筋もが  
赤くなってしまっている。しかし、ハウルは興味なさそうに彼女の足を持ち上げると  
自分の肩にひっかけた。  
「な、何を……」  
ハウルが底意地の悪い笑いを浮かべると、再び硬さを取り戻した己をソフィーの中に  
突き入れた。  
「嫌……やめて……」  
怯えきった声でどれだけ懇願しようと、男は侵入をやめようとはしない。  
再び甘く痺れ出した体を恨めしく思いながら、少女は彼から顔をそむけた。  
 
結局、ソフィーはハウルに一晩中犯され続け、仕舞いには全ての抵抗をやめて快感を  
貪るようになった。ハウルは快楽の前に屈させた少女を、自分が力尽きるまで延々と  
翻弄し続けた。二人は夜明けにようやっと眠りに落ち、そのまま泥のように眠った。  
 
白々とした夜明け、カーテンの細い隙間から差し込んできた光に、ソフィーがそっと  
目を開いた。すぐ目の前では、青白い顔のハウルが寝息を立てている。  
「ハウル……」  
つぶやいた声が老婆のようにしゃがれていたことを知り、ソフィーは慌てて喉を  
押さえた。二、三度咳払いをして元の声を取り戻す。彼はまだ深い眠りの中を  
さまよっている。  
きつく抱きしめられたままの状態を知り、ソフィーはため息をついた。自分を苦しめ  
狂わせたものがまだ体内にある。ということは、彼も自分に溺れて気を失ったのだろう。  
彼の腕を振り解き、腰を引いてそれを取り出すと、全身が鈍く痛み、そして内腿に嫌な、  
強いて言えば重みを含んだ液体が伝うのを感じた。手を伸ばしてそこに触れると、  
男を受け入れていた部分は腫れ上がっていて、液体を掬い取るとわずかに血が  
混じっていた。まさかそんなになるまでも、と理性を手放した自分と獣のようだった  
彼にいまさらながら戦慄と驚愕を感じた。  
手についた精液をシーツになすりつけ、ソフィーはハウルに背を向けてもう一度目を  
閉じた。それだけの動作をするのが辛く、全身がだるい。どうしようもない疲労に  
苛まれながらも、彼女は静かに眠りへと足を進めていった。  
 
 浅い眠りの中で、夢を見た。  
 
ソフィーはマダム・サリマンの前で目を見開いて固まっていた。ふわふわと柔らかい物、  
まるで雲のような敷物の上に二人は立っていて、サリマンは相変わらず豪奢なイスの  
上で真紅のドレスを着て、涼しい顔をしている。  
「こんばんは、ソフィーさん」  
「こ、こんばんは」  
涼やかに微笑んでサリマンが言った。それから、おかけなさい、と空いた場所を  
示した。その途端、一人がけのソファが浮かび上がってくる。ソフィーは頷き、  
それにおずおずと腰掛けた。  
「大丈夫なの?」  
サリマンが上目遣いに尋ねた。ソフィーが慌てて自分を見ると、ハウルに引き裂かれた  
はずの夜着一枚という出で立ちだった。ひらひらと薄くて体の線が微かに透けている  
それでは、どうにも寒々しい。  
「はぁ、でも……大丈夫です」  
ソフィーが気丈に微笑んで見せた。サリマンがため息をつく。  
「そうじゃないわ。首よ」  
そういうとサリマンは自分の胸元をすっと一撫でした。ソフィーが同じ動作をして  
胸元を見やると、そこには無数の赤い斑点がついていた。彼女の顔が真っ赤に染まる。  
「開いている服は賢明ではないわね。あの子の趣味なの?」  
サリマンが妙に砕けた口調で言った。たしかに、その美しい夜着はハウルに贈られた  
ものだが、そんなことまで判ってしまうだなんて、師は侮れない。  
 
「はぁ……あの、聞きたいことがあるのですが……」  
「何?」  
サリマンが親しい友人のような微笑を浮かべて答えた。ソフィーが二、三度ためらう  
ように視線を泳がせ、それから覚悟を決めたように顔を上げた。  
「ハウルに薬を飲ませたのは、あなたですよね?」  
「……そうよ」  
さらりと、まるで何のやましさも感じさせないような言い方でサリマンは肯定した。  
ソフィーが唖然として表情を崩す。  
「何でまた……」  
あんなことなさったんです、とソフィーが泣きそうになりながら尋ねた。サリマンは  
涼しい顔で扇子を仰いでいる。  
「そうねぇ、私があの子に薬を飲ませた理由は……早く孫の顔が見たかったからかしらね」  
妙にアンニュイな様相でサリマンが笑った。ソフィーが困ったように唇を持ち上げ  
かけ、でもそのまま固まった。  
「それだけ、ですか?」  
「子供でも出来ればあの子も落ち着くかと思ってね。上手くいったらあの子が私の  
手伝いをしてくれるかもしれないと思ったのもまぁ……本当かしらね」  
「だとしても、さすがに酷いんじゃありませんか?私、すごく困りました」  
泣き出しそうに震えた声でソフィーが吐き捨てた。サリマンがすぅっと血の様に  
紅い唇を持ち上げた。  
「本当にはね、お菓子の家を壊してやりたかったのよ」  
 
お菓子の家、とソフィーが鸚鵡返しした。サリマンは皮肉っぽく笑うと、扇子の  
先を目の前の少女に突きつけた。  
「あの子と向き合うというのはね、そんなに易い事じゃないのよ。あなたが下手な幻想を抱いているようじゃ、あの子が傷つくのは目に見えてる。あの子があなたのせいで苦しむのは、絶対に許せないの」  
「でも」  
言葉の圧力に圧倒されながらも、ソフィーはサリマンをにらみ返した。  
「でも、私は彼に理想なんて押し付けていません。私は、ありのままのあの人が好きなんです。どんな彼でも、受け入れる覚悟は出来ています」  
よく響くつよい声で、ソフィーは高らかに言い放った。サリマンは目を見開き、  
ややあってから立ち上がった。  
「早くお行きなさい。目覚めたときにあなたが夢の中にいたら、あの子は寂しがるから」  
サリマンは早口にそういうと、ソフィーの肩を押した。それから、あの余裕のある  
笑顔を浮かべた。  
「この事は忘れなさい。でも、目覚めてからあの子を責めるような真似はしないで。  
あの子は何も悪くないのよ」  
「……今回の事は、貸しにしておきます。でも、あなたを許しはしません」  
ソフィーが冷ややかな視線をサリマンに浴びせかけ、会釈をした。彼女よりも  
ずっと年上の魔女は、絶望したような顔をしていた。  
 
がたり、と体に衝撃を覚えてソフィーが目を見開いた。ベッドのスプリングが鈍く鳴る。  
その物音にか、ハウルも薄く目を開いた。カーテンの隙間から、陽光が差し込んでいる。  
「……ソフィー?」  
「今、何時かしら……?」  
明るい日差しに驚き、ソフィーが慌てて立ち上がろうとした。しかし、体が鉛のように  
重たく、うまく動かない。困り果てている間に、ハウルがだるそうに起き上がって  
カーテンを開けた。それから長いすにたたんであったガウンを着、対になっている  
一枚をソフィーに渡す。上半身だけを起こした彼女はそれを着て、上目遣いに彼を  
覗った。  
「ねぇ、昨日は……」  
「ソフィー」  
ハウルがベッドに腰掛け、ひどく真剣な面持ちでソフィーの手をとった。それから、  
彼女の目をまっすぐに覗き込んで問う。  
「僕は……昨日の夜、君に何かした?」  
この人は自分をからかっているのだろうか、とソフィーは怒りに顔をほてらせた。  
しかし、ハウルの顔には冗談もからかいも浮かんでいない。  
「……何も、覚えてないの?」  
ハウルがうなずいた。ソフィーがぐらりと天を仰ぐ。  
「あんな酷い事したのに……覚えてないの?」  
「酷い事?」  
「だって無理やり……」  
ソフィーは沸いて来た怒りに任せてまくし立てようとしたが、ハウルの顔色がみるみる  
青ざめてきたのに気付き、口をつぐんだ。  
「無理やり、抱いたの?」  
「違う、そうじゃないわ…」  
「嫌がる君を、無理やり?」  
ハウルはまさに茫然自失の表情で、虚ろな笑いを浮かべていた。ソフィーが夢の中の  
会話を思い出し、慌ててハウルの頬を手のひらで包む。  
 
「………薬、飲んだの?」  
「あ、あぁ。多分」  
ハウルがばつが悪そうに視線をはずし、ソフィーが彼の首に腕を回してしがみつく。  
「落ち着いて。私、怒ってないわ」  
「どうして?そんな酷いことをしたのに?」  
心底信じられないというようにハウルが吐き捨て、ソフィーは大きくかぶりを振って  
から彼と自らの額を付き合わせた。  
「今回ばかりはあなたが悪かったんじゃないわ。それにね、あなたあんな状態でも私がいいって言ってくれたから……だから、いいの。許してあげる」  
細い腕でハウルの頭を掻き抱いて、ソフィーはやさしく、暖かく囁いた。彼は彼女に  
体を持たせて、少しだけ泣いていた。彼女も泣いていたが、だが、それが何になると  
いうのだろう。  
「……守られるだけなんて真っ平。私が、あなたを守ってあげる」  
鼻先をハウルの髪の中にうずめ、ソフィーが低い声でつぶやいた。  
その目には力強い決意がみなぎっていた。  
 

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