おばあちゃんはねばねばがついて重くなったひざ掛けをひょいと持ち上げ、肩をすくめました。
ひざ掛けの端のほうにはねっとりと暗緑色のねばねばが貼りつき、それはぽたぽたと糸を引いて床へと滴り落ちていきました。
「あんた、わかっててやってんならよしとくれ。お気に入りのひざ掛けがねばねばで汚れちゃったわ。」
おばあちゃんはやれやれといった感じでため息をつきました。
しかしマルクルは何食わぬ顔で
「?僕はソフィーが優しくしてくれるから甘えているだけです。ソフィーってばふかふかであったかくて優しくて、お母さんみたいなんだもの。
それに、僕はソフィーに結婚なんて申し込んだりしませんから安心して。怒ったときのおししょーさまってば本気で恐ろしいんだもの、
わざわざ怒らせるようなことするはずありません!」と言いました。
そして、ねばねばを早く綺麗にしなくっちゃとモップとバケツを取りに、どこかへ行ってしまいました。
「やれやれ、あの子も相当なもんだねェ。ハウルも大変だこと。」
「ヒン…」
残された一人と一匹はマルクルの消えたほうと、まだ抱き合って二人の世界に浸っている者達を交互に見、やれやれと肩をすくめました。