「カルシファー、お湯回してもらっていい?」
「いいよー、ソフィーはぬるめがいいんだよね?オイラに任せてゆっくり入っておいでよ」
「ありがとう、カルシファー」
きゅ、と蛇口をひねって湯船にお湯を張ります。
やがて、浴室に湯気が立ち込め、自分の手ぐらいしか見えない位真っ白になりました。
「あとでカルシファーに何か空気入れ替えするように改造やってもらおうかしら」
独り言をブツブツいいながら、湯船につかると。
「何でそこで僕じゃなくてカルシファーに頼るんだい、僕のソフィー」
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
湯気の向こうから大好きな人の声が急に聞こえて、ソフィーはビックリして大きな声を上げてしまいました。
「ソフィーがタオル忘れてったから届けに入ったんだよ、そんなに驚かなくてもいいじゃないか」
湯気で顔は見えませんが、ハウルは悲鳴をあげられたせいでちょっとだけショックなようです。
「だって、ハウルってば入る時ノックしてくれないんだもの、ビックリしちゃったのよ」
「僕はノックしたけど、ソフィー気付いてないんだもん。お湯入れてると聞こえないのかな?」
言われてみれば、確かにお湯を張る時はとってもうるさいです。最初は、その音に何度もビックリさせられました。
「ついでだ、僕も一緒にお風呂入るよ!ソフィーに髪洗ってもらおう!」
言うのと同時に、ハウルが急に湯気の中に現れて、ソフィーはまたビックリしました。
だって、ハウルってばもう服を全部脱いで、腰にタオルを巻いているだけなんです。
「えぇっ!ハウルってば、こんな明るいのは嫌よ、わたし!」
「ソフィー、昨日も同じ事言ってたじゃないか、恥ずかしがることないんだよ?ね、僕のソフィー」
「嫌だったら嫌!」
湯船の中で脚を組み、両腕で胸を隠してそっぽを向くと、ハウルが軽くため息をついて手を振りました。
また、天井に星空が現れます。
「もう、昨日はその・・・色々ちょっとしたけど、お風呂場でもなんてのも嫌だからね?」
「うん、ソフィーに髪の毛洗ってもらいたいだけだから、しないよ、大丈夫!だって、ソフィーが嫌がる事は僕したくないからね!」
ソフィーがとりあえず体を隠さなくなったので、満足したハウルはソフィーのその言葉にも動じません。
「ほら、ハウルこっちに背中むけてちょうだい、洗ってほしいんでしょ?」
言いながら腕を伸ばしてハウルの座っている椅子を引っ張ろうとします。
ちょうど、顔はハウルの肩のあたり。
ちゅ
軽く頬にキスをされて、ソフィーは軽くハウルをにらみました。
「ソフィー、キスも駄目だって言うのかい?キスはカルシファーの前でもしてるじゃないか」
「そ、そ、そうだけどっ」
キスされると、昨日のアレを思い出してしまうなんて、ハウルに言えるはずがありません。
顔を赤くしながら、ハウルの頭にお湯をかけ、シャンプーを手に取り、泡立てて。
洗ってる間、2人はあまりしゃべりませんでした。
ハウルはキスしただけで、相変わらず真っ赤になるソフィーにときめいていて。
ソフィーはキスされただけで、体が何だか暑くなる自分に不安になっていて。
お風呂から出たとき、ハウルが『僕の部屋来ない?』と言ったとき、ソフィーが思わず首を横に振っても仕方なかったんです。
ハウルはがっかりしましたが、ソフィーがまだ緊張してるのだろうと思って、今日は何もせずにいようと思いました。