◆あるるくわん◆
ふわふわの雲のように捕まえるのは困難と男は笑った。
道化師のような少女の興味は他人の喜ぶことだけ。
「ねぇねぇ、王様って楽しい?」
ぺたぺたと甲冑姿のまま武王の前を歩く姿。
名前を太公望と言う。
「楽しくもねぇけど、悪くもねぇな」
髭をそる暇もなく、不精なそれは伸び放題。
民を思えば自分の時間など必要ないと、彼は政務に没頭した。
「このままじゃ王様、倒れちゃうわよー。あたしが弟に言ってきてあげるわー」
「おい!!んなことせんでも良いって!!」
一度言い出したら誰かの声など耳には届かない。
類まれなるトラブルメイカーでもあるが、心根はまっすぐでひた向きな少女。
奇妙な声で鳴く霊獣を引き連れてあちらこちらを飛び回る。
この城にも居ついているわけではなく、時折顔を見せる程度。
「ただいまぁ〜。少し休んだほうが良いって言ってたわぁ」
片手に林檎をもって、それを武王に手渡す。
「疲れてるときにはビタミンをとらなきゃね。剥いてもいいんだけど、皮ごと食べた
ほうが栄養が高いのよ〜。一緒に食べましょ〜」
机に浅く腰掛けて、もくもくと唇が林檎を侵食する。
「何かあったのか?おめぇも」
「何も無いわよ〜、別に楊ゼンに怒られたとかも……あっ……」
笑顔しかなかった彼女の表情が曇る。
食べかけの林檎と止まった空間。
「言ってみな。俺でよけりゃ話くらい聞くぜ?」
「……この間ねー、斉の国に行ってきたの。ゴミ屋敷がひどいっていうから……
望はー、みんなが喜ぶことがしたいのに……ヨウゼンは望のやり方は駄目って……」
ぽたりぽたり。こぼれる涙。
彼女にしてみれば良かれと思ったことを全て咎められてしまった。
「あたし、仙人失格だわー……みんなが嬉しいことしてあげられない……」
うなだれる姿に思わず手を伸ばす。
静かに頭を撫でて、慰めるように言葉を紡いだ。
「んでもな、望ちゃんよー……俺ぁおめーが来てくれるだけで嬉しいぞ」
「えー……」
丸い丸い大きな瞳。小さな唇が不安げに開く。
「本当ー……?」
「ああ。俺だけじゃなくて、旦とかみんなもそう思ってんぜ」
一番好きなものは、誰かが嬉しいと笑ってくれること。
そのために仙となることえ選んだのだから。
「望ちゃんは、自分が嬉しいことはねぇの?」
「あたしー、みんなが喜んでくれることが好き」
「それもいいけど、たまには自分が嬉しいことを誰かに強請ったっていいんだぞ」
小さな手に握らせた何か。
そっと掌を開いて、少女はそれを見つめた。
「わぁ……飴玉……」
空色の包みを開けば、飛び出す桃色の飴。
口に含めば広がる甘い甘い桃の香り。
「おいしーい」
「ほら、ほかにも」
色の違う包みを何個か握らせて、武王はその顔を覗き込んだ。
薔薇色の頬はふっくらとして細い首はまだ幼子のよう。
小さな爪と長い睫毛。
「王様は何が嬉しい?あたし、王様の喜ぶことがしたいわ」
向かい合って少女は小さく笑う。
「俺?俺ぁ別に……そうだな、昼寝にでも付き合ってもらえりゃ……」
一人寝よりは二人のほうがいい。単純な理由だった。
「そぉ?じゃあ、あたしも一緒に寝るわ〜」
類まれなるトラブルメイカー、それが彼女の字。
ただの昼寝で終わるはずか無いことは予想は簡単だった。
しかし、それすら気づかないほどに彼は疲れきっていた。
そう、ただの昼寝のつもりだったのだから。
身体を投げ出して枕に顔を埋める。
まともな睡眠は数日振りのこととなるせいか、身体は従順にその機能を緩め始めた。
「王様〜〜、望もご一緒するわぁ」
「んあ……あぁあっっ!!??」
下着姿の少女に思わず飛び起きる。
薄桃色の下着と花をあしらったガーターベルト。
薄手のベビードールからは小さな胸と愛らしい乳首が覗いている。
「なななななんなんだっっ!!その格好はっっ!!」
「これはね〜、ヨウゼンがこいういうかっこをすると男の人は喜ぶって前に教えてくれたのよ〜」
「あ、あんのエロ道士……涼しい顔して趣味がエグイな……」
解かれた髪とじっと見つめてくる硝子玉のような瞳。
「王様はこういうの嬉しくない?」
「いや、嬉しいとかそんな……なぁ……」
いくら道士といえども見た目はまだ十代も前半の少女。
罪悪感が無いといえば大嘘になってしまう。
「あ、わかったわー。王様が嬉しいのはこっちねー」
おもむろに下穿きの上から手を這わせる。
「いっ!?」
「まともに寝てないんじゃたまってるわよねー。あたしったらうっかりしてたわー」
そのまま下着ごと引き下げて、肉棒を手に取る。
先端にちゅ…と唇が触れて亀頭をぬめる口腔が包み込んだ。
カリ首を舌先がなぞって、太茎を軽く咥えて上下していく。
唇全体を使っての口淫であっという間にそれは硬さを増してしまった。
「あは、やっぱり嬉しいのねー。望は喜んでもらえるのが一番嬉しいのよー」
掌で包んで、やんわりと扱く。
舌先が鈴口を這い回って、飲み込むように唇が触れた。
「待てって!!」
「えーーーー?こうするとみんな嬉しいってヨウゼンがーーーー」
その一言に、発はやれやれとため息をついた。
「王様はこーいうの嫌い?」
「あのな、望ちゃん。こーいうことは誰彼に簡単にしちゃ駄目なことなんだぜ」
「えー…………」
悲しげに項垂れる小さな顔。
「あー……だから、なんつか……んー……」
「望、どーしたら王様に喜んでもらえるの?」
純粋に誰かを喜ばせたいという気持ち。彼女の望みはただそれだけ。
「んじゃ、ここにちゅーしてくれや」
自分の唇を指差して、男は軽く瞳を閉じた。
初めてのキスのように震える唇が静かに重なる。
小さな頭を抱えて、唇を挟み込むようにして深く合わせていく。
「んー……ぅ……」
次第に力が抜けていくのを感じながら、舌先を絡ませる。
上着を握る指先と、うっとりと閉じられた瞼。
離れるのが惜しいと舌先を銀糸が繋いだ。
「こーいうのが、俺の嬉しいことだな」
「……ん、ぅ……」
吐息混じりに男の胸に顔を埋める。
「王様が喜ぶことなら、望は何だってするわー……」
「そりゃありがてぇ話しだ」
下着の上から秘裂をそっと撫で上げる。
摩るようにして指先を上下させて、小さな淫核をやんわりと摘み上げた。
「ひゃぁんっ!!」
甘えるような甲高い声。
親指で押し上げながらくりゅくりゅとそこを愛撫する。
「…ぁ……ッ!!……っは…」
縋るようにしがみついて来る小さな身体。
「……やー……望……こーいうのは……ッ…」
「ん?ヨウゼンといっつもこーいうこともしてんだろ?」
ふるふると横に振れる首。
「望、そんなに安っぽい女じゃないわ。初めての相手は好きな人って決めてるの」
唇と小さな舌だけは娼婦のような動きでも、肌は誰にも触れさせない。
小さな胸がまだ成長過程の身体を表した。
「んじゃ、俺も駄目だな」
「あのねー……望、王様ならいいよー……」
「?」
「望ねー、あんなに優しくされたの初めてだったの。飴玉ってあんなに甘かったのねー……」
誰かの喜ぶことを優先すれば、自分の幸せなど後回しになる。
諌められることはあっても、慰められることなど無かったのだから。
「王様のこと、好きよ」
柔らかな頬、にこりと笑う口元。
その唇にそっと自分のそれを重ね合わせた。
「……あ……ん……」
組み敷かれて飾り程度に身に纏っていたベビードールを剥ぎ取る。
掌に感じる柔肌と、すっぽりと収まってしまう小さな乳房。
「ん、ァ!!」
小さな突起を吸い嬲られてびくん、と肩が竦む。
ちろちろと先端を舌先が這い回って、時折甘く歯が当てられる。
敷布をぎゅっと握る小さな手を取って、指先を軽く咥えた。
「んー……ぅ……」
「声とかも聞かせてくれっと、すっげー嬉しいなー」
「王様の嬉しいことは、それ?」
ぼんやりとした瞳が、見上げてくる。
「あとは俺のこと名前で呼んでくれるともっと嬉しいな」
「名前……?」
「そ。俺の名前は発って言うんだ。親父が付けてくれた名前さ」
両手を伸ばして頬を包むようにあてがう。
「発」
唇が重なり合うたびに生まれる淫音がぴちゃぴちゃと室内に響く。
顎先を舐めあげて、そのまま舌先を下げていく。
子供特有の柔らかさと肌の細やかさ。
なだらかな腹部に口付けて、そっと両膝に手を掛けて押し開いた。
「…あ……」
震える秘唇にふ…と息を吹きかける。
「やー……恥ずかしいよぉ……」
まだ生え揃わずにまばらな茂み。くっきりとした裂け目に唇を当てる。
「!!」
包皮に覆われたままの突起を指先で押し出して舌先を掠めるように動かす。
「きゃぁんっ!!」
びりびりとした刺激と言いようの無い感覚に、ただ嬌声だけが上がった。
唇全体でねっとりと包み込んで軽く吸い上げる。
びくびくと動く幼い腰と、とろとろと零れる生暖かい愛液。
指に絡めてひくつく淫核を摘み上げれば細い首が大きく仰け反った。
「イキそうか?望」
「…え……イクって……?」
蕩けた瞳と、唇からこぼれる涎。
「こーいうことされて、気持ちよくってたまんねぇとイッちゃうわけ」
少女の股間にむしゃぶりついて、くちゅくちゅとそこを重点的に攻め上げていく。
舌と唇がただ絶頂に導くためだけに動き回る。
「あ!!やぁんっ!!ダメ……ぇ…!」
懇願の声は返って劣情に火を点けるだけ。
「や…!!望……望……!…イッちゃ……ッ!!」
一際大きく腰が跳ねて、だらりと四肢が投げ出される。
荒い息遣いと火照った身体が一枚の絵のように差し出された。
「あンっ!!」
指先が入り込んで、膣壁をぐ…と押し上げる。
傷つけないようにゆっくりと掻き回すように動かすと、眉が寄せられた。
「痛ぇか?」
「ちょっとだけ……でもー……」
「ん?」
「発が嬉しいなら、望はそれでいいのよー……」
無償の愛は何物にも代えがたく尊いもの。
まして自分のことを好いてくれるのならば尚更だろう。
指を増やして慣らすように押し広げる。誰も受け入れたことの無い小さな小さな子宮への道。
「あ……っは……」
腿を濡らす愛液は敷布へと沈んでいく。
腰を抱えるようにして、狭い入り口に亀頭を当てる。
「俺で良いのか?」
「……うん……発がいいの……」
ゆっくりと腰を沈ませて、奥を目指す。
狭い膣道と挟み込むように締め上げてくる肉襞。
「!!」
鈍い痛みと、腰を石で殴られるような感覚にぎゅっと敷布を握り締める。
「……ァ……ッ…!!……」
「そっちじゃなくて、俺に掴まって」
自分の腰に手を回せて、一息に最奥まで突き上げた。
「あ……ぅ……」
血と混ざり合った愛液がぐちゅぐちゅちと悲鳴を上げる。
小さな頭を押さえ込んで、その唇に貪り付いた。
できることはせめて痛みを薄らぐようにと彼女を抱くことだけ。
「…ひ……ぅ……っ…」
ぽろり、ぽろり。頬を伝う涙。
「……は…つ……!」
うわ言で繰り返される自分の名前。唇が紡ぐ度に感じる暖かさ。
「……望……」
「あ、ふ……ぅ…!!」
じんじんと繋がった秘所が痺れた様に疼く。
加速する動きに、ただ追い縋るように抱きつくしかできない身体。
繰り返される注入で自分が処女ではなくなったと痛感させられる。
(あたし……どうして嬉しいのかな……)
他の誰でもなく、彼が良かったと本能が呟いた。
「あ!!あー……ッ!!!」
一際強く突き上げられて膣内で弾ける何か。
ただ幼い身体を震わせて、溢れ出す白濁を受け止めることしかできなかった。
鈍い痛みを訴える腰と、甘い接吻の差に少女は首を傾げた。
「発、嬉しそうねー」
「そりゃ嬉しいさ。こんな可愛いこの最初の相手になれたんだから」
腕の中で身体を預ける少女。その額に唇を当てる。
「ねー、発は気持ちよかった?」
「いっ!?」
「望ね、何だかわからないけどすごく嬉しかったのよー」
胸にそっと顔を埋めて、彼女は小さく呟いた。
「すっげー気持ちよかったよ」
「よかったー……あたしも嬉しいー……」
今まで見たことも無かったほどの甘い顔。
小匙一杯で海をも砂糖水に変えてしまえそうな微笑み。
「……望は、将来どうすんだ?」
「えー?」
「いや、だから……仙人とかになって偉くなったりしてぇの?」
小さな乳房が男の胸板に重なる。
「望はね、誰かが喜ぶことがしたいの。仙人にならなかったら介護士になるつもりだったし」
その答えに、今度は男が驚く。
「んじゃあさ、俺が喜ぶこともしてくれんの?」
「んー……そういうことになるわねー」
「こればっかりは望じゃなきゃできねーことなんだよなー」
わざとらしく神妙な顔をして、青年は少女に視線を重ねた。
「俺、嫁さん欲しいんだよなー」
「ええーーー!?」
「望が嫁に来てくれねぇなら、この国は俺の代で終わりだなぁ……」
身体を起こして少女は男の顔を覗き込んだ。
さららと流れる髪が肌に触れる。
「わかったわー、望……発のお嫁さんになるわー」
「仙界はどーすんだ?」
「退職届を出してくるわー。多分大丈夫よー」
抱きついて頬をすり寄せる。
「んじゃ、俺んとこに就職願いも出して」
「はーい」
これから起こるたくさんの騒乱と甘いトラブル。
それはまた別のお話。