あなたが。  
あなたがずっと、私の傍に居てくれたら。  
私は・・・  
 
 
 
 
「武王!どこですか?武王!」  
 邑姜が城の中で姫発を呼ぶ。  
 彼が先ほどからいなくなったからだ。  
「まったく、仕事もせずに遊んでばっかり・・・」  
 ふと立ち止まり、城の外へ目を向ける。  
 彼と出会った少し前、邑姜が武王へ言った言葉。  
『嫌いではないわ』  
 あれから、邑姜はずっと武王の傍に居た。  
 いや、居ることができた。  
 もうずっと桃源郷へ行っていない彼女。  
「一度・・・戻ったほうがいいかしら」  
 邑姜はぽつりと呟いてから、また武王を探し回った。  
 
 
 
 
 それから20分後に武王は見つかった。  
「・・・武王・・・」  
 彼は窓に腰を下ろして仮眠状態になっていた。  
 それほどまでに疲れているのか、と思ったが、  
邑姜は彼を起こしはしなかった。  
「全く・・・王なんだからもう少し体力もつけてください」  
 近くの部屋から毛布を持ってきて、彼にそっと被せる。  
「ん・・・」  
 姫発が片方の眉だけを寄せる。  
 自分の体の上に、心地よい重さの布が被ったからだろうか。  
「・・・」  
 しかし起きることもなく、彼は相変わらず眠っている。  
 王の服装で、窓辺で眠っているのはすこし可笑しかった。  
 どうやら邑姜が発見してから、さらに深い眠りに着いたようだ。  
「・・・・・・可愛い人・・・」  
 そっと、頬にキスをする。  
 邑姜は武王の横で眠ってしまった。  
 

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