「教主ー!また妖態化して逃げないで下さいよー!」
今日の見回り組みが大声で教主を呼ぶが返事がない。十回ほど呼んで、諦めた。みんな揃って首を振る。
「この難問どうするんですかね?」
「みんな逃げて回るから大変だ。崑崙十二仙も逃げたからなー。気持ちわかるけど」
「見なかったふりして逃げろ。それしかねえ…太公望みたいになりたくねえ」
そして今日も見回り組みがこそこそと逃げ帰る。あの手紙、見たら最後、彼女がやってくる。
教主の机の上に、一通の手紙が載っている。
「あーん!どうしたら、大好きなスープーと一つになれるのか教えてちょ?教主様あ。スープーは、忙しいって、相手してくれないしい。
どうしてもエッチする方法が分からないの。泣けちゃうよお(うるうる)。お姉さまも、もごもご言ったきり、教えてくれないのぉ…
どおして?愛する人と結ばれたいのにどうして誰も教えてくれないの?(うわあああん!)
教主様、一度でいいから、実際に教えてえぇ?人形でもいいから説明してよおっ!誰も教えてくれないから、教主様にお手紙出したの。
絶対、絶対、返事ちょうだいね?(はあと)」
誰が教えるものか。顔は可愛いが、時を操る妖怪仙人。太公望みたいに神界に行きたくない連中はこぞって逃げた。
神界にもあらかた手紙は行ったが、連中は、安全地帯に居るのをいいことに、知らん振り。余計な事は手を出したくない。
「本人同士に任せておけばいいわさー。つーか、なんで俺んとこまでくるんだ?」
「馬鹿は中身も馬鹿か」
「悩んでるのはかわいそうだけど、神界は人間に手を貸すのが原則だから、仕方ないね(にっこり)」
「下らぬ…何故こんな手紙を読まねばならぬのだ?」
「……下らない事に傷ついて悩むのが、青春さ!貴重な青春を楽しんでくれたまえ!!」(BGM ハレルヤ)
全く縁のない(と言うより敵)にまで手紙を出しまくる。行動力は恐ろしい。
今日も可愛らしい新妻の悩みは解けなかった。
「これで仙界、神界含めて千通は書いたのに…クスン。でも、平気だもんね。ちゃんとご飯作って待ってるもん!負けないもん!」
新妻は、写真たてを持つと、「愛してるよん(はあと)スープーちゃん(はあと)」と何度もキスをした。
「大好き、チュっ♪もっと大好き、チュっ♪(以下エンドレス)」
新妻は今日も愛しいスープーの帰りを待っている。
「ひゃははははははは!涙がとまらぬのう!!笑いすぎて腹が痛いわ!!しかしわしも答える気はない。本人が気づけばよい事だ。
仙人ゆえ時間が十分あるからのう。また来るぞ!ひゃはははははははは!!」
大任から解放され、のうのうと遊び暮らしてるお方が一人。
「まだ封神された事を恨んでいるんですか?太公望?」
「何でくるんだー!わしの存在は千里眼にも見えぬはず…」
「黒点虎を甘く見ては困ります。ああ、今は戦う気はありませんから」
「おぬしも手紙を読んだのであろう?どうだ。おぬしが教えぬか?何なら実体験させてやれ?どうじゃ?」
「……私をそこまで馬鹿にするのですか(怒)…今戦いましょう!!太公望!!」
「冗談の通じぬ奴は嫌いじゃーー!!」
「どうしたんだろうねー、スープー、今日はやけに雷がうるさいよ?早くかえってね?マイダーリン?」
季節外れの豪雨を気にしながらも、新妻はのんきに手紙の返事を待っていた。終わり。