「ねえ、ハニー、どうして抱いてくれないの?」
「オレがお前と交わることが出来ると思ってんのかぁ?」
「何言ってんのよ?愛は世界を救うのよ!不可能なんて言葉、あたしとハニーの間に存在しないわ!」
くらくらとめまいがする。何でそんなにゴーイングマイウエイなんだぁ!この女!
お前は人間経由仙人だろうがぁ!オレは動物経由仙人なんだよぉ!人間と動物の区別もつかんのか?
いかん。このままではこの女のペースに巻き込まれる。簡単なところから始めるしかねえ…
深呼吸をして、土行孫は必死で手を開いて見せた。
「良くオレの手を見てみろ!」
蝉玉はしゃがみこむ。しげしげとハニーの手を見る。
「こんなに大きくてごつくて素敵!」
がっくりと頭を垂れる。視点が違うだろうぅ…どこに目を付けてんだぁ!この女!
「良くオレの足を見てみろ!」
「がっちりしていて、たくましくて、素敵!」
「良くオレの体を見てみろ!」
「小さくて、身がひきしまってて、かわいい!」
いけない!このままこの女の言うままに終るのか?
土行孫は必死で叫ぶ。
「良くオレの顔を見てみろ!」
「ハニー!私が信じられないの?私がハニーを捨てて他の男に浮気するなんて疑ってるのね!!」
「ぎゃああああ!!」
ぶんぶんと土行孫を振り回して、蝉玉は大声で泣いた。
「うあああん!ハニー!可哀想に誰にも愛されなかったのね…大丈夫。これから私が世界で一番愛してあげるから!」
誰も頼んでない!顔が可愛くても体が細くても、変なヤツ、オレの好みじゃねえぇ…オレの好みはまともな頭の女だぁ…
公主とかお付の女とかぁ…く、くるしいぃ…ぐあぁ!
「放せええぇ!首が絞まるじゃねえかぁ!」
「ハニー、小さくても大丈夫よ!ちゃんとこの本を用意したから、私でもハニーを満足させることが出来るよ!」
「何だこの本はぁ!」
「死ぬかと思ったじゃねえか…ヤバイ…(ぜいぜい)」
首をさすっている土行孫に、蝉玉は本を取り出した。表紙には大きく「愛の四十八手改訂版 作者不明」。
「これなら、未熟な私でもハニーを満足させられるのよ!さあ、愛の蜜月旅行へ出発しよう!ハニー!」
「ぎゃあああぁ!助けてくれえぇ!太公望!スープー!」
「何で男の名前なんか呼ぶのよ、ハニー?まさかハニーは男色だったの?」
「誰が男なんかに欲情するかぁ!止めろぉ!」
「よかった!やっぱり私のことが好きなのね?ハニー、必ずイカせてあげるから!」
無理やり愛の蜜月旅行に二人は出発した。終わり。