金光聖母には気に喰わなかった。人間の道士が十天君に名を連ねることが。
いくら教主の決定とはいえ、基本的に人間を受け入れない金鰲島で、人間を幹部にすることは許せない。しかも、その人間が十天君の筆頭になるのだ。人間に指図されるなど、彼女のプライドが許さなかった。
「で、それで俺を呼び出したってわけか?」
金光陣の中で、瓦礫に腰掛けた王天君は余裕の笑みを浮かべて言った。
「そうだ、王亦。悪いが、貴様には王天君の名を辞退してもらう。どこの馬の骨とも知れん奴を、十天君に据えるわけにはいかない」
「ハ、うぜぇこと言ってんじゃねえよ。こいつは通天パパが決めたことだぜ。てめぇにとやかく言われる筋合いはねえ」
「通天教主様は間違っておられる。人間ごときに……まあよい。ともかく貴様に王天君を名乗らせるわけにはいかない」
「断る、と言ったら?」
「……殺すまでだ」
金光聖母の背後で、光が輝く。生まれた王天君の影が形を帯び、空間に浮かび上がる。
十天君で一、二を争う強力な陣。それを前にして、王天君は爪を噛んだまま笑みを浮かべていた。彼は、自らの親指に歯を立てる。鋭い歯が肉を裂き、傷口から紅い霧が噴出した。
「くくく……宝貝・紅水陣」
噴出した霧は、見る間に辺りへ広がっていった。
――紅水『陣』だと!?馬鹿な、奴に十絶陣が使えるはずがない。現に八卦図で空間を開いていないではないか。
「ふん、どんな宝貝か知らぬが、そんな霧で金光が遮断できると思うたか?」
広がった霧は陣の大部分を覆ったが、光を遮りきることはできなかった。蠢く影が王天君の背後で起き上がり、細い首に手をかける。が、彼は逃げようともしなかった。
――ふん、諦めたか。
見下したように目を細める。だが、次の瞬間目を見開いた。
首に手をかけた影は、灰が崩れるかのように消え去ってしまった。
「ば、馬鹿な!?」
「くくく、どうした、聖母(プリンセス)?殺すんじゃなかったのか?」
「そんな、なぜ……」
「ゴミみてぇ。てめぇら妖怪と人間様じゃぁ、出来が違うんだよ」
指の傷を舐めながら、王天君が言う。
「てめぇらと違って、俺はどこにでも自分の場所を作れるのさ。もうここはてめぇの陣じゃなく、俺のもんだぜ」
「くぅっ……」
予想もしなかった事態に、金光聖母は気が動転していた。今まで、一度たりとて破られなかった陣があっさりと破られ、しかも、王天君の言葉を信じれば、既に相手の空間に引き込まれているらしい。
にわかには信じがたかった。実際、自分の空間が存在しているという感触が確かにあるのだ。
「さぁて、聞き分けのない聖母にはお仕置きが必要だな」
「く、まだだ!」
背後から照らす金光が輝きを増す。だが、事態は何も変わらなかった。
「ったく、頭ワリィな、妖怪ってのはよ」
突如、金光聖母の足元で影が膨らむ。
――ッ!?
声をあげる間も無く、影の手が彼女の首を掴んだ。普段の彼女なら簡単に逃れることができただろう。だが、そうはいかなかった。もし、彼女の考えが正しければ――
「くく、ご名答。そいつはてめぇの影だよ。金光で作られたな」
「馬鹿な!なぜ貴様が影を操れる!?」
「バカはてめぇだよ、聖母。言ったはずだぜ、ここは俺の場所だってよ」
影は力を増し、彼女の身体を締め上げる。
「さあ、お仕置きの時間だ」
「さぁて、痛い目にあいたくなきゃぁ、誓ってもらおうか。二度と王天君様には逆らいません、王天君様の言うことは何でも従います、私は王天君様の奴隷です、ってな」
「ふざけるな!誰が貴様の言いなりに……」
「てめぇの立場ってモン、わかってねぇみてぇだな」
王天君は、金光聖母の腹を蹴り上げた。だが、何の手ごたえもなく足は空振りする。彼女の外套の中は虚空である。実体を消している限り、王天君は彼女の体に触れることはできない。
金光聖母の顔に嘲りの笑みが浮かぶ。だが、王天君の反応は冷静だった。
「そういえば、実体を隠したままだったな。だったら、その実体ってやつを現してもらうか」
首元に、王天君の腕が伸びる。反射的に払い除けようとするのを、影に取り押さえられる。
「ひっ!」
金光聖母は悲鳴を上げた。王天君の袖口から、無数の奇妙なものが這い出してきたのだ。蟲である。無数の蟲が彼の手を伝い、彼女の首を這い回った。嫌悪感を伴うむず痒さに、眉間にしわを寄せる。
「可愛い声出すじゃねぇか、聖母」
「だ、黙れ!」
「くく、さぁて、見せてもらうぜ、あんたの体」
不意に、首を這い回る感触が消えた。代わって、今までありえなかった感触が呼び起こされる。顔と手にしか存在しなかった触覚が、新たに生まれたのだ。
下に目を向け、その理由がわかった。虚空だったはずのそこに、彼女の本来の滑らかな肢体が露わになっていた。
羞恥で顔が真っ赤に染まる。外套以外何も身につけぬ体。形の整った乳房に、穢れを知らぬかのような秘所、雪のように白い肌。
とっさに隠そうとしたが、影がその動きを封じ、腕を持ち上げる。千年の間人目に晒される事のなかった彼女の体は、いま王天君の前に晒された。
「なかなかいい体してるみたいだな、聖母。だが、胸は小せぇし、あそこの方もまるっきり使われてねぇんじゃねぇか?」
身体を見られていることを意識させるような王天君の言葉に、耳の先まで赤く染まる。火を噴きそうなほど熱くなり、瞳を滲ませて俯いた。
「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたよ?下僕になる気になったか?」
「だ、誰が…」
必死に虚勢を張るが、まともに目を合わせることさえできない。
こんな仕打ち、プライドの高い彼女には耐えられなかった。仮にも金鰲十天君の一人である。それが一人の人間のガキに言いように弄ばれるなどあっていいはずがない。必死にもがき、戒めを逃れようとする。
突然、影が押さえていた手を離した。地面に転がった金光聖母は、これ幸いとばかりに逃げ出す。が――
走り出そうとした彼女の足には、力が入らなかった。足だけではなく、全身に。奇妙なだるさに身体が思うように動かない。
そのとき初めて、腕に何かの印が浮かんでいるのに気づく。
「言い忘れたけどよぉ、さっきのダニ、あれは宝貝だぜ。寄生された者の力を吸い取る。まあ、やりすぎて原型に戻られると困るから、控え目にしといてやったがな」
ゆっくりとした足取りで、彼女に歩み寄る王天君。必死に這いずり逃げようとしたが、蹴りつけられて仰向けに転がる。
金光聖母は唇を噛み締めた。これから、責め苦を受けることになる。だが、それに耐え切る自信はあった。千年の修行にくらべれば、人間の小僧に与えられる苦痛などたかが知れている。
「さぁて、最後に聞いといてやる。言うことを聞くつもりはあるか?」
「ふん、貴様の言いなりになるくらいなら、死んだ方がマシだ」
「くく、その威勢、どこまで続くかな」
血色の悪い手が彼女の体に向かって伸びる。彼女は奥歯を噛み締めて、きつく目を閉じた。
どんな責め苦にも耐えてみせる。私は十天君がひとり、金光聖母。たとえ手足が切り落とされようと、人間風情には屈せぬ。
だが、与えられた感触は予想だにしないものだった。
「ひぁっ!?」
驚きに、小さく悲鳴が漏れる。目を開くと、苦痛をもたらすはずの彼の手は、下腹部の茂みへと伸びていた。
「な……なにを!?」
「痛めつけるのは簡単だがよぉ、それより、こっちの方がおもしれぇだろ?さぁて、聞き分けのねぇ雌犬に、躾をしてやんねぇとな」
彼が目で合図すると、脇に控えていた影が金光聖母に覆いかぶさる。影の手がゆっくりと彼女の肩をなぞり、胸のふくらみに触れた。くすぐったさに、かすかに身体が震える。影は、ゆっくりと乳房を揉みしだき始めた。
彼女は、ここで初めて王天君の意図を理解した。彼は苦痛ではなく、快楽で屈服させようとしている。
ゆっくりと、丁寧な指の動きに、ほのかに色づく突起が固くなり始めていた。
「く、やめろ!……ひっ」
影の指が、胸の突起をつまみ上げる。喉の奥から、引きつったような悲鳴が漏れる。それを聞いた王天君が「くく」と笑い、金光聖母は屈辱を感じながらきつく唇を結んだ。だが、影は手を緩めず、乳首を擦り、強く捻る。
「くひぃっ!」
押しつぶすような強い刺激に、溜まらず声が漏れる。影は乳房に口付け、ゆっくりと先端に向け下を這わせた。舌先で乳首を転がし、吸い上げる。
「こ、こんなことで……私が屈服すると――んぐぅ!?」
吠える金光聖母の口を、影の唇が塞いだ。唾液を流し込み、舌を差し入れてくる。抵抗しようとしたが、寄生宝貝に侵されているせいか、思うように身体を動かせなかった。黒い舌が口の中を蹂躙する。歯茎を舐めあげ、触手のように舌を絡ませてくる。
自らに犯される不思議な感覚。金光聖母は、脳の奥が痺れるのを感じた。
「ぅ、ぷはぅ……」
惜しむように、影が舌を引き抜く。糸を引く唾液をぺろりと舐め、金光聖母の口の周りを濡らす露を舐め取った。
さらに、舌先は首筋に伸び、ゆっくりと肌を舐めながら舌へと下がっていく。乳房の隆起を辿り、臍の窪みを唾液で濡らしながら、股間の茂みへとたどり着く。
「やめろ、そ、そこは、っふ!?」
膣口を触れられただけで、ぞくりとしたものが全身を這い上がった。舌はそのまま陰核に伸び、包皮の上からゆっくりと愛撫する。さすがは勝手知ったる自身の影。その舌使いは巧みだった。
「ひっ、くぅ……」
声を出すまいと、必死に耐える。見ていた王天君が、嘲るように語りかけてくる。
「どうした聖母?感じちまってんのか?」
「だ、誰が感じて――ひぅんっ!?」
言葉半ばで、高く啼いた。影が、陰核の包皮を剥き歯を立てたのだ。鋭い感覚が全身を駆け巡る。膣内がじゅんと湿り気を帯び、肉芽が充血してぷっくりと膨らんだ。
――馬鹿な、そんなはずはない。感じているはずがない。敏感な部分を責められて、痛みを感じているだけだ。この感覚が快感のはずがない。断じて。
懸命に言い聞かせるが、そんな彼女の考えをよそに、影の舌はさらに奥へと分け入ってくる。襞をなぞり、ぴちゃぴちゃと音を立て、膣口の奥へともぐりこむように舌を伸ばす。そのたびに甘い感覚が下腹部を熱くし、ぐずぐずと疼いた。
「気分はどうだ?声出してよがっちまってもいいんだぜ」
「ふ…ざけるな!感じてなど…いるものか!この程度で、私を思い通りにできると思うな!」
「くくく、強がるねぇ。だが、体のほうは正直みたいだぜ。濡れてきてんじゃねえのか?」
彼の言うとおり、金光聖母の体は影の愛撫に反応し、濡れ始めていた。だが、それは快感からではない、と自身に言い聞かせる。これは、ただの生理反応。弄られれば、愛液が分泌される、それだけのこと。
きつく憎しみのこもった視線で王天君をにらみつける。彼は笑みを浮かべたまま、視線を秘所へと移した。
「千年振りの濡れ事だ。久しぶりすぎて、感じ方忘れてんだろ。ま、影も大変だよな。千年分のマンカス溜まったクソ汚ねぇマンコを舐めさせられてんだからな」
「……!」
羞恥で、彼女の顔が朱に染まる。強い視線も、王天君から逸らしてしまう。
自分の大切な部分が汚いと言われて、それを頭の中で否定しながらも、確認するだけの勇気はなかった。確かに千年にもおよび体を虚空に消してきた。手入れをする機会もなかったのだ。
不意に、秘所を這い回る舌の感触が離れた。代わって、何かが膣の中に進入してくる。
指であった。王天君の指が、彼女の仲に押し入ってきている。
「くぁ、い、痛っ!や、やめっ!」
「へぇぇ、さすがに処女じゃねぇってか。だが、千年使ってねぇと、きつきつだな」
奥まで押し込んだ指を、第一関節まで引き抜く。長い爪が膣壁を引っ掻き、鋭い痛みが走るが、それと同時に、快感が生まれた。
「はぁっ、く、くぁっ……」
王天君は、ゆっくりと指を動かし続けた。きつい膣を押し広げ、膣壁をこすられるたび、否定していたはずの快感が体を駆ける。
――おかしい、なぜ、こんなことで感じる?苦痛にしか過ぎないはずだ。だが、なぜ私の体は……まさか!?
「王亦、貴様、っぁ、私の体に、くはっ、ぁ、何かしたな!?」
「さぁて、何のことかな?」
敏感になっている体は、何かされているとしか思えない。空間を満たす霧が神経に作用しているのか、それとも寄生した生物宝貝が原因か。
「まあ、てめぇが淫乱だってこった。見てみろよ、こんなに濡れてんぜ」
引き抜かれた指が目の前にかざされる。金光に照らされた指は、ねっとりと光っていた。
顔を背ける金光聖母に、王天君は指を押しつける。愛液まみれの指を口に押し込み、さんざんに蹂躙した。
「くむぅ、こんな…ことをして、ただで済むと、くひぃ!」
王天君に代わり、おろそかになった秘所の愛撫を影が開始した。再び舌を使い、肉芽を転がしながら、指も押し込んでくる。
「ひぁ、ぁ、ひぅ、や…やめ、ひぅん!」
先ほどまでとは一転、激しい愛撫に身をよじった。快感がわきあがり、理性が蕩けていく。
じゅるじゅると音を立て、愛液が吸われる。体を仰け反らせながらも、影の頭を押さえつけて必死に耐える。
ここで屈服するわけにはいかなかった。懸命に理性と威厳を保とうとする。
「ふぁ、ぁぁ、ぁ、くぅんっ!」
だが、徐々に快感が膨らみ、体が震える。快楽に流されそうになるのを必死に堪えるが、絶頂への階段を確実に駆け上っていた。
――あぁ、だめだ!このままでは…このままでは、イク!イッてしまう!
「く、くぅぅ、ぁ、ぁぁぁあ……あ?」
絶頂を迎える直前、影の指と舌の動きが止まった。
極限まで高められた彼女の感覚が、徐々に落ち着いていく。
――助かった。あのままでは、耐えられずにイッてしまうところだった。
下腹部に残るわだかまりを感じながら、震える呼吸を整える。
が、落ち着いたと思った瞬間、再び影の愛撫が始まる。二本の指が襞を擦りあげ、膣壁をえぐる。激しく蠢く指に絶頂へと押し上げられるが、昇り詰める寸前、やはりぱたりと愛撫が止む。そして、不快感を残しながら、落ち着けばまた同じ責めが始まり――
「き、様…くぁっ、まさか、ふぅっ」
「くくく、その通りだぜ。そう簡単にはイかせてやんねぇ。どうしてもイきてぇんなら、大人しく俺に従ってもらうぜ」
「誰が、かは、貴様の、ぅんっ、く、言いなりに!」
「ふぅん……ま、別にいいけどよ。どぉせすぐに耐えらんなくなって、イかせてくださいって泣き喚くことになるだろうからな」
「くぅぅっ、だ、誰が、ひぁんっ!」
強がる金光聖母に、影の容赦ない愛撫は続くのだった。
どれほどの時間がたっただろうか。
何度も寸止めを食らい、金光聖母の意識は朦朧としていた。
「どうよ、聖母?そろそろぶち込んで欲しいんじゃねぇのか?」
よだれと涙でぐちょぐちょの彼女に、王天君は言う。
「はぁ、はぁ……くぅぅ」
息も絶え絶えの彼女に、王天君は笑みを向ける。その目からは、意志の光が消えかかっていた。
「欲しいんだろ?さっさと誓っちまえよ。二度と王天君様には逆らいません、何でも言うことを聞きますって」
「…………」
「さぁ、言っちまいな」
「……断る」
彼女の理性は、崩れきってはいなかった。永きに渡る修行で身につけた精神力と、十天君としてのプライドが、屈することを許さなかった。
「フン、強情な奴だ」
王天君は立ち上がり、彼女の体を蹴り転がした。同時に、影も体から離れる。
「まあいいさ。それならてめぇの汚ねぇケツの穴に、望みのものをぶち込んでやんよ。よがり狂って、理性も何もかもぶっ飛んじまえば、少しは素直になんだろ」
そう言う王天君の言葉に、彼女の中で期待が膨らんだ。頑なな姿勢をとってはいても、やはり体は求めていた。何度もイかされそうになりながら、一度もイけなかった不快感、わだかまりが彼女の中に積もっていた。
王天君は自らの衣を脱ぎ捨て、肉棒を彼女の秘所に沈める――はずだった。
だが、彼女の期待通りにはならなかった。
歩み寄る王天君は、彼女に向かって手を突き出す。袖口から、ひとつの黒い影がぼとりと落ちた。それは彼の足元でみるみるうちに大きく膨らみ、巨大なダニへと化した。
「な……!?ま、まさか!?」
金光聖母の顔から血の気が失せる。必死に保ってきた威厳も、恐怖によってあっさりと崩れ去る。
「くく、そのまさかだ。俺が直接相手するとでも思ったか?冗談、俺は下品な妖怪風情に欲情するほど、腐ってねぇんだよ。さあ、イっちまいな。ダニに犯されてな」
巨大なダニが、のっそりと彼女に近づく。嫌悪感に、体中の鳥肌が立つ。
「い…いや!やめて!許してっ!なんでも、何でも聞く!お前を十天君として認める!お前の言うことには何でも従う!だから、だから!そいつに犯られるのだけは許して!」
這いずるように逃げる金光聖母。だが、何度も寸止めされた上に、寄生宝貝に力を吸われて、不様に転がるのがやっとだった。
「そう言うなよ、聖母。たっぷり楽しめ」
這い回る彼女の背後から、ダニが覆いかぶさる。体中の力を振り絞って、必死に手足をばたつかせる。だが、力の差は歴然だった。あっさりと手足を押さえ込まれ、身動きが取れなくなる。
「いやぁぁっ!やめてぇっ!許してっ!こんな、こんなのいやぁぁっ!」
泣きじゃくり、必死に声をあげる彼女に、十天君としての威厳は微塵もなかった。
覆いかぶさるダニの腹から、禍々しい杭が伸びる。固い殻に覆われた、それはまるで、節くれ立った牙のようだった。収まるべき秘所を探して、彼女の尻をなぞった。いっそう強く抵抗する金光聖母。だが、押さえ込む足は微動だにしない。
やがて、探し当てたのか、ダニはゆっくりと杭を沈め始めた。
「いやぁぁ……ぁ?ぁあ、そこは!そこはちがうっ!」
ダニが男根(?)を沈めようとしている場所は、菊門だった。喚く彼女の声も、ダニには届かない。固い先端が沈み込み、ミチミチと音を立てながら深く埋まっていく。
「いあ、っが、あぁぁ、ぐが、ぁぁあああ!」
鉄のように固い男根が直腸の壁を引き裂き、血が滴り落ちる。あまりの激痛にまともに声が出せず、舌を突き出し痙攣させる金光聖母。
「ひははは、ケツの穴にぶち込むとは言ったが、マジで挿れちまうとはな!」
王天君の笑い声をよそに、血が潤滑剤になったか、ダニは前後に腰を動かし始める。
「ひぎぃっ、ぐぅっ、ぎぁっ!」
よだれを垂れ流し、溢れる涙が池を作る。男根と菊門の間から、ぴちゃぴちゃと血が滴る。
「その辺にしとけ。壊れちまったらつまんねぇしな」
王天君が言うと、ダニは固い杭を引き抜いた。ずたずたに引き裂かれた菊門から、ごぽりと血が流れる。
呼吸もままならず、とめどなく涙とよだれを垂れ流しながら、震え続けていた。
やがてダニは、がちがちと歯を震わせる彼女の秘所に血でぬめる男根をあてがう。
「さぁて、お待ちかねのもんが来たぜ。ゆっくり楽しみな」
ダニが腰を沈める。血で滑る上に、存分に溢れていた愛液のおかげで、挿入はスムーズだった。
だが、そのサイズはあまりに大きく、しかも固い殻に覆われたもの。激しい痛みが彼女を襲った。
「ふぐぅっ、かはっ、はぁっ」
膣が押し広げられ、襞がめくれ上がる。爪のように尖る男根が、膣壁をえぐる。しかし、鉄杭に蹂躙されるような感触の中に、甘美なものが混じり始めていた。
「はふ、くぁ、ぁ、ふぅぐ、ぁあっ!」
さんざんにじらされてきた彼女の体は、おぞましい苦痛にさえ快楽を感じていた。蟲に犯されながら、激しい痛みさえ、快感へと変わっていく。
「ハハハ、おいおい、マジか?ダニに犯されて感じてんのかよ。てめぇ、どんだけ変態なんだ?」
屈辱的な王天君の言葉も、彼女の耳には入らない。
――あぁ、気持ち…いい!ダニに犯されて、私……!
「ひぅっ、くぅん、はぁぁ――んむぅ!?」
喘ぐ彼女の口を、影が塞ぐ。唇を重ね、舌を差し入れながら胸を揉みしだいた。
激しい快感に膣がしぼまり、禍々しい杭をいっそうくわえ込む。
――いい、気持ちいい!
自ら舌を突き出し、影と舌を絡める。相手の唾液を求め、むしゃぶるようにすすった。
身を起こし、激しくダニに突き上げられる。
「んむぅぅ、んぅ、ぷはっ、ぁぁあ、いいぃひ、ひもちいぃっ!」
一気に絶頂への階段を駆け上っていく。
――あぁ、イク!ダニに犯されて、私、イってしまう!
体を戦慄かせ、待ち焦がれた絶頂に涙とよだれを撒き散らす。快楽を求め、自ら腰を振っていた。
「ぁ、ぁ、い、イくぅ!ダニに犯されて、イク!いく、いく、い、ぃぃぃひくぅぅっ!」
体をがくがく痙攣させて、快楽の果てへと昇り詰めた。視界が真っ暗になり、その中で幾つもの光が弾ける。
同時に、ダニも動きを止める。
男根に暖かい流れを感じ、そして、彼女の中で弾けた。
「ひぁっ!?ぁ、ぁ、ぁぁぁあああっ!」
子宮の中に噴出した精液は、受け止めきれず、結合部分からごぽりと溢れ出す。
いまだ残る快楽の余韻に身を震わせながら、唾液と涙と愛液と精液の入り混じる海へ崩れ落ちた。
息も絶え絶えの彼女に、王天君が歩み寄る。
「よぉ、楽しめたみてぇだな、聖母」
嗤いながら、髪を掴み無理やり引き起こす。
「ダニに中出しされてイっちまうなんざ、普通はできねぇぜ。十天君のひとりともなれば、性癖も一味違うみてぇだな」
その言葉に、快楽に火照る体と心が急速に冷え込んでいった。全身から血の気が失せていく。
取り返しのつかないことをしてしまった。あんな下賎なモノに犯され、自ら腰を振っていた。
「ぁ、そ、そんな…い、いや、わ、わたし……」
自らの行為のおぞましさに、恐怖が湧き起こる。唇を震わせ、涙を溢れさせていた。
「くく、ザマぁねぇな。だが、こんなもんで終わりだと思ったら、オオマチガイだぜ」
顔を上げる金光聖母の目の前で、王天君の袖口から無数のダニが這い出した。
「一匹だけじゃ不公平だもんなぁ。ダニはいっぱいいるんだ。ま、相手してやってくれや」
大小無数のダニが、彼女の元へと這い進んでいく。
「いや…やめて、来ないで……いやいやいやいやぁぁぁぁっ!!」