妾は裳裾をはためかせる。後は高々と笑えばいい。さあ、宴をはじめましょう?
朱を引いた唇を歪ませ、双眸を細める。玉座のはるか下、「下界」では愉快な舞が
見える。自分の意志ではない、おのが持つ「生」の溢るる軋み。おのがもつ、鮮や
かすぎる色彩。言いがたいこの昂ぶり。
横の男は、妾の溜め息を思い違えている。
愚かな男。妾の腰を抱え、下卑た笑みを浮かべている……。
「わしは……、もう堪えられぬ……」
もう宴に飽いたの?仕方の無い子……。可愛いらしくしなり、男を裳で包む。
甘い香に、すべてを亡くせばよい。
男の膝にまたがる。
臣下達が、玉座に御簾をかけようとしている。御止めください、とわめきながら、
その双眸は妾をねめつける。獣の目。
かわいいお前達、見ておいで。
男は、口の端から涎を垂らしながら、妾の宝貝たる着物を脱がそうとする。下界
から断末魔の叫びがする。女の声も混じっている。ああ……。
男が乳に吸い付く。熱が駆け上っていく。妾は男の冠を投げ捨て、掻き毟る。
足りない、もっと……。
「はあっ……ああっ!」男の手が、乳から離れ、腰を撫ぜる。妾は、側近の一人を
睨めつける。
「早く、もっと、鳴き声が聞きたい……、はあっ!んん、ああっ」
指が、そこをなぶる。粘る音が、聞こえる。
遠くから漣のように、泣き叫ぶ声が押し寄せてくる。肉を食み、血をすする獣達
の、擦れ合う音。苦しみ悶える姿が、妾の背に見える……!
「いやあっ、うう、あっ、ああっ、うああっ」
泣け! 叫べ! 絶望を! 恐怖を!
「ああっ!……さまあっ、あああっ!いやああっ!」
気をやっていた。
男はしてやった、とにやりと笑う。そして着物を緩めだすのだ。妾はそっと、恥じ
るようにその肉欲の塊に触れ、腰をねじり、そこに引き寄せる。
甘い吐息をして、頬を上気させて。
お前を、食むのは、この蘇妲己……。
腰を落としていく。すぐに食い尽くしたりはしない。ゆっくり、ゆっくり、身をよ
じるのだ。男はまた乳を吸おうとしている。ああ、うう、と間の抜けた声で。
肉を絞り上げ、押し潰す。苛立つ程に締め上げるのだ。全てを絡めとリ、流し込む。
臣下達が、見ている。
「はっ、 ……はあっ、あんん」男の汗ばんだ頬を舐め上げる。堕ちろ、底まで。
腿を伝い、雫が全てを濡らす。
男が、もうだめだ、と喘いでいる。腰をひねり、首筋に噛み付く。
「……共に……、お願いぃんっ!はああっ!……ぁっ」
宴を、はじめましょう。全ては、咽るような甘い吐息の中で……。