蓬莱島の中で、一人の女が不服そうな顔をしていた。
そこに中学生くらいの年齢の女の子が飛び跳ねてきた。
「どうしたの?貴人ちゃん☆」
「喜媚姉さま……なんでもないです」
明らかに姉と妹が逆転する見た目の女性二人。
彼女たちは、本当は妖怪なのである。
人間の形をしている時の見た目が逆転しているだけなのだ。
「嘘嘘、なーんか隠してりっ☆」
鼻先に人差し指を向けられて、たじろぐ王貴人。
「なんにも!隠して……隠してなんかいません!」
語気強く返す王貴人に喜媚は首をかしげ、やがてうなずいた。
「太公望ちのこと、考えてるんでしょ?」
「ちが、違いますよ!」
根が素直なのだろう、顔を真っ赤にして否定する王貴人はどうみても
言っている言葉とは逆の気持ちが見え見えだ。
「ふふーん、喜媚はお見通しなのだっ☆」
そういうと太公望の姿に変化して、顔を王貴人に近づける。
喜媚とわかっていても太公望の顔が目の前にあって思わず顔を背ける王貴人。
「姉さま、遊びがすぎます!」
「ごっめーん。でもやっぱりそうなのねっ☆」
喜媚は変化をときながら、両手を上下させる。
王貴人は顔をそむけたま、口をへの字にした。
強がりをする彼女らしい態度だが、目には切なさがゆれていた。
喜媚は、しばらく様子を見ていたがかける言葉をうかばくなり
来たときと同じように跳ねていった。
女禍との戦いが終結したときに、太公望は姿を消した。
最後に包まれた光とともに太公望は、消え去ってしまったのだと王貴人は思った。
彼女は太公望と出会い、負け、リベンジを心に誓った。
しかし、再び太公望とあったとき戦った相手はナタクと呼ばれる宝貝人間で
彼女はそいつにも敗れた。
因縁の相手であった太公望と戦うことすらできなかった王貴人は悔しかった。
次々と力を身につけていく太公望と戦い、
まして勝つことができるわけがないと分かったにもかかわらず、
彼女は彼と相対したかった。
その気持ちの意味に気づいたときには、彼はこの世界から姿を消していた。
いなくなった彼を想っていても仕方がないのは分かっている。
それでも王貴人は、どこかに彼がいる気がしていた。
そんなある日のこと、太公望を主人と慕っていた四不象があわててヨウゼンのところへ
行くのを見た。
蓬莱等の教主となっているヨウゼンになんの報告か、普段なら気にもとめないことなの
だが不意に気になって部屋から出てきた四不象を捕まえた。
「王貴人さん、なんスか?僕はすぐにでかけるッスよ」
「ごめん、でも何があったの?」
「ご主人が生きていたッス!
武王さんのところにひょっこり顔を出してまたブラブラどっか行ったらしいッス!」
「!!」
王貴人の胸に暖かいものがこみあげてきた。
その泉にひたる前に、四不象が声をかけてきた。
「それじゃ、もういいッスか?」
「ええ、ありがとう!」
「じゃ、これから探しに行くッスよ!」
飛び去る四不象。
それを見届けると王貴人は私室へと戻り、一応の身支度をした。
『太公望が生きている!』
彼女の胸のうちには彼に会わなければ、という確かな想いが水晶となっていた。
中国大陸では、さして珍しくない岩の切り立った山々。
その間を流れる川で釣りをしている男がいた。
釣り竿から垂れた糸には、直針がぶらさがっておりそれでは魚を釣ることはかなわない。
彼は日の当たる岩の上でその針をたらしながら、半分寝ていた。
「太公望!見つけたわよ!」
突然、大きい声で自分の名を呼ばれ釣り竿を落とす男、太公望。
「見つかってしまったのう」
釣り竿を拾い上げ、糸を竿に巻きつけながらたちあがる。
そして、声をかけてきたほうへ顔を向けるとそこには王貴人がたっていた。
「王貴人ではないか。まだリベンジがしたいのか?」
つかつかと近寄ってくる王貴人の顔は怒っていた。まるで、その奥の顔を隠すために。
太公望の前にまで近寄ると彼女は平手打ちを彼の頬にあびせた。
「みんな……、心配しているのよ!なんで、こんなところにいたのっ?!」
叩かれた頬に手を当てながら太公望は無言だ。
「四不象も、武吉くんもヨウゼンも……みんな、みんな死んだと思って……!」
叫びながら外れた心のタガは王貴人の目から涙を流させていた。
「私だって……!」
太公望の両肩に両の手を乗せて泣く王貴人。
膝から崩れ落ち泣いている王貴人の肩を太公望はそっと包む。
「すまかったのう。しかし……、わしはもう戻らんよ」
肩をしゃくり、泣いている王貴人の背をなでながら太公望が続ける。
「人間界にはわしはもう必要ないし、仙人界もヨウゼンや他の者たちがいれば十分であ
ろう。
わしは力を持ちすぎてしまったのだよ。力をもちすぎたものは、いないほうがよい。
わし自身が第2の女禍にならないとはいいきれぬ」
顔をあげ、涙でぬれた瞳で太公望を見つめる王貴人。
「そんなこと……」
「ないとは、言いきれぬよ。王天君を知っておろう?
あれも確かにわしの一部なのだ」
王貴人は太公望の意志の固さを感じ、「戻ってきて」と言えなくなってしまった。
王貴人はまだ肩を少し震わせていたが、彼は背中をなでる手をはなしてたちあがった。
キュっと王貴人が唇を結んだ。
「待ってよ!」
王貴人のほうを振り向く太公望。
「!」
その唇に重なったのは王貴人の唇だった。
「なにをする?!」
目を見開く太公望。王貴人の目には決意の色があった。
「わからないなんて、言わせないわよ!……どうしても、どうしても行くならっ……
もう会えないなら……」
太公望の口腔の中に自分の舌を這わせ、彼の手を自分の胸元へのせる。
「んんー!」
よせと、言いたいのであろう太公望の意思を置き、彼女は手で太公望の雷公鞭を刺激しはじめ
ていた。
太公望のみであったときはまるっきりそういった欲も欠如していたため、いきなりの刺激に彼
の体は敏感に反応した。
すぐさま、稲光を出さんばかりの堅さになり顔は上気しだした。
「抱いてよ……こんなに、なっているんだし」
「こんなになってるって、したのはおぬしだろーが!」
しかし、太公望もこうなったら開き直る性分だ。ふーっ、と息をついてニヤリと笑う。
「気持ちに応えてやることはできた。
しかし、会えなくなっては哀しませてしまうのではないかと思ったのだ……。それでもいいの
か?」
王貴人は、すべてを納得した表情でうなずいた。
互いに身に着けているものをすべて脱ぎ、裸となった二人は抱き合った。
「あん……」
太公望の手が王貴人の胸を、やわらかくなぞる。時折、乳首を人差し指で押す。
ももを食らうように彼女の乳首をあまがみして、ちいさな傷を舌でこする。
「や……んん……」
王貴人も、太公望の雷公鞭を手で包み手を動かす。
太公望のソレはすぐさま稲光が前からちろちろと出てきた。
「ん……お……」
太公望の敏感な雷公鞭は、もう稲光を先からとめどなくあふれ出し爆発しそうだ。
その様を見て王貴人は自分の秘部を太公望の顔にのせ、自分は彼のソレを口に含んだ。
「うっ!」
とたん、彼女の口の中に射精される稲妻。
彼女が稲妻を飲み干そうと舌と頭を動かすたびに、彼の先から放出する。
「んぶぅ……!」
出続ける稲妻が口に収まりきらず、唇の端から糸を作った。
「ハァ……すごい量ね。まだ、全然平気そうだけど……。ねぇ、私にも……」
身体を走り抜ける快感に身をゆだねていた太公望だが、
目の前にある秘部を舌でスゥッと舐めあげる。
「んんっ……ぁん……」
舌の先で彼女の入り口を強く、弱く、早く、ゆっくりと刺激していく。
「いや……じら…さないで……ハァッん!」
二人は互いの本能を燃えあがらせる場所を舌で確認しあった。
液体のまじりあう音。
再び太公望の雷公鞭が、硬さをもどすと王貴人は身体を起こして太公望の方を向いた。
顔を太公望に近づけ、口づけをしながら仰向けになった太公望の先を挿入していく。
「ああっ……」
彼女の中に彼が入っていく。
互いの出した液体はお互いを受容するために十分で、
彼女の奥深くまで雷公鞭は入った。
王貴人の中の心地よさに、彼のソレは動くほどに怒張した。
王貴人の形のよい胸が目の前ではずむさまが、それに拍車をかける。
二人が身体を動かし、一つである時を感じていた。
喜びと悦び。最初で最後の同化。
その悲哀が二人を単純な肉体的な頂点を超えさせた。
溶ける意識に二人は身を泳がせた。
「王貴人っ……わしはっ!」
グッと王貴人の身体を引き寄せ、口の中に舌を入れて腰を大きく動かす。
「んん……あああっ!!」
弾けた雷光はひたすらに大きく熱くほとばしった。
「のう、王貴人。その」
太公望が罰が悪そうになにかを言おうとする。
わかりきった表情で王貴人が答える。
「みんなには、会ったことを秘密にしてくれっていうんでしょ?」
彼はうなずき、頭をすこしかいた。
そして、すこし真剣な顔をして、
「それではのう。おぬしのことは忘れぬよ」
「当然よ。忘れたりしたら承知しないわ!」
右手で拳をつくって、すこし振るような仕草をする。
「こわいのう。……それでは、な」
そういうと太公望は、交わっている時に数度も交わした接吻よりも
かすかなそして深い口づけをした。自然、目を閉じる彼女。
なくなる感触。
王貴人がその余韻から目を開けたときに、もう彼の姿はなかった。
上空から舞い降りる声。自分の名を呼んでいる。
四不象と武吉が降りてきたのだった。