「なんかちょっとドキドキしちゃいました。部長も男なんだなぁと思って」
蛍のあの言葉で誠一の体に電撃が走った。
しかし誠一だって妻を忘れられたわけではない。
(忘れてる時もあったか…雨宮の相手してる時とか…)
蛍とマコトはデートに行ったらしく、一人で縁側でぼんやり考える。
そして何かを決めたように立ち上がって和室に向かった。
夜にはある封筒をポストに入れる。中身は…離婚届けだった。
あの日、二ツ木が見ていたなんて、蛍も誠一も思いもしなかった。
「雨宮のことを思うなら、一緒に住むのはやめた方がいい」
わかってる。
蛍とマコトがうまくいった時点でどうにかするべきだった。
だがどこかでそれを拒んでいた自分がいる。
「ただの上司と部下がたまたま同居しているだけ」と言い訳して。
自分が蛍に抱く気持ちを知るのを拒んで。
「蛍さんの同居人は部長だったんですね」
突然のことで蛍は何も言葉を返せない。
マコトは無表情でそれがとても怖い。
「二ツ木さんに聞いたんです。部長とは長い付き合いらしくて」
(恋の神様!しっかりしてくれよ!)
「あの、部長とは本当に何もないんです!私が借りた家がたまたま部長の実家で…」
「わかってます。蛍さんをそんな風に疑ってるわけじゃなくて」
「本当に本当にごめんなさい!うそつくつもりは…」
「蛍さん。二ツ木さんはね、部長に同居を解消しろって言ったそうです。たとえ何もなくても世間はそうは思わないから」
淡々とマコトは話す。
「それでも実行しようとしない部長を見て、二ツ木さんはわかったそうです。部長は、蛍さん、あなたが好きなんですよ」
「まさか…」
「蛍さん、あなたはどうですか?部長と時間は心地いいですか?部長には全てをさらけだせますか?部長に男を感じたことはありますか?」
黙る蛍にマコトは言う。
「僕と別れて距離を置いて、よく考えてください」
大切な初めての恋を、私は失ってしまったのか。
まだいまいちわからない。
「おかえり」
「…」
黙って縁側へ向かう蛍。
「どうした?」
「…マコトさんにフラれました」
「え?」
「理由が…部長が私を…好きだからって…部長は私のこと好きなんですか!?」
誠一は縁側の蛍の隣に座る。
「あぁ、好きだ」
「…そんな…私マコトさんにフラれちゃったんですよ?部長がまさか…」
「私のせいでフラれたと言いたいんだろ。じゃあどうして、私との同居を解消するから別れないでと言わなかった?」
「それは…」
「私が君を好きでも、君が手嶋を選べば良かった話じゃないか」
「ぶちょ…ひどい…私…マコトさんのこと…本当に好きで…」
蛍は涙目で必死に言う。
「でも私の方がもっと好きだったんだろう?」
薄い笑いを浮かべて蛍を見る。
「私にしなさい」
誠一が蛍の方を抱く。蛍は、初めてマコトに想いを伝えた日のように泣いた。
マコトさんの前でも一度くらいこんな風に泣けばよかった。
そしたら少し違ったのかな?
それでもやっぱり、私を優しく包んでくれるこの人を手放せたとは思えないけど。
泣き疲れて眠った蛍を部屋に運ぶ。
すーすー眠る蛍の髪を撫でる。
(雨宮だって手嶋にフラれたばかりなんだ…気持ちを考えろ…)
その時蛍が目を開けた。
「部長もここで寝ませんか?」
「…あんまり男をナメるんじゃない。それとも私だからナメてるのか?」
「部長私としたいんですか?」
「いやだから…」
「なら一緒に寝ればいいじゃないですか」
蛍に引っ張られるままに布団に入った誠一だが、やはりまだしこりが残る。
「君は今日手嶋にフラれたばかりだろ?」
「…部長だからです…他の人なら絶対嫌ですよ」
これ以上我慢できなくなって、誠一は蛍に口づけた。
舌で口内をゆっくり愛撫していく。蛍の熱い体温が心地いい。
唇を離すと、白い首筋を侵していく。蛍が大きく息を吸う。
服を脱がせ、ブラも取ってしまう。たくさんの唾液で乳房ごとべとべとになるまで愛撫する。
「んっ…」
かわいい…誠一は蛍の頬にキスをする。
パンツも取ってしまい、茂みをたどって探し当てた芽を撫でる。蛍の体がビクっとする。
指を入れるともうたっぷり濡れていて、奥まで差し込み速く動かすと蛍が腰をよじらせる。
「あっ…やぁ…」
その瞬間、芽を強く押すと、蛍はビクビクっと痙攣してぐったりしてしまった。
「雨宮」
「…なんですか人がいい気持ちの時に…」
「私も限界なんだが…」
いつの間にか服を脱いだ誠一は、そう言うと蛍の中に一気に入ってきた。
「あぁっ!んっ…はぁ…」
男らしくて、大人で、冷静な部長が…あんな切ない顔してる…。
「…部長気持ちいいですか?」
「…うるさいっ!」
楽しい。好きだ。最初からこうなることが決まってたみたい。
「いくぞ」
ひとつになって、一緒に昇って、二人で眠った。いつまでも続くといいなと思いながら…
END