障子の向こうでは雨が降っているのだろうか? 千砂は畳に敷かれた布団の中で  
秋の長雨に曝されたようにしとど濡れて横たわっていた。  
 雨音が耳いっぱいに聞こえて部屋を満たしているのは幸いだったと彼女は思う。  
その乱雑にしてわびしい音色が不自然な人工音をごまかしてくれるからだ。  
 千砂は衰弱から来る微熱でぼんやりとした頭を乗せた枕の上に長い溜息を吐いた。  
 彼女の「おしめ」の中では小さなローターが最弱の振動を伝え続けている。  
(副交感神経が・・・)  
 千砂は頭の中であの高見と名乗った看護婦の説明を呪文のように繰り返す。  
 高見とは水無瀬の強引な勧めで亡父の病院に入院していたときに出会った。  
彼女は発作を起こした千砂の症状をとっさにある種のヒステリーと断定し、  
一つの即興の対処法を案じた。  
 千砂の発作が交感神経の極度の興奮状態なのだとすれば相反する副交感神経を  
刺激すれば症状を緩和できるのではないか? それが高見の仮説だった。  
(一般に交感神経は緊張、副交感神経は弛緩…)  
 ではどうすれば発作の緊張を軽減し、また予防できるのか?  
 高見の採った手段は単純明快だった。すなわち千砂の寝巻きの裾から手を  
入れて彼女の性器をまさぐったのだった。  
生殖器の活性化は副交感神経に属するのである。  
(昔は男の赤ちゃんの癇を沈めるのにペニスを弄るやり方があったらしくて…)  
 そのアイデアを聞いたときには水無瀬は少し当惑した様子だったがすぐに同意し、  
あえて無表情を装って同意を示したのである。  
そういう経緯でローターは今も千砂の股の付け根に挟まれて控えめな刺激を与え続けている。  
 千砂はさっき拭ったそこが再び濡れだしていることを自覚していた。  
さっき取り替えたばかりだというのにもうぬめりを帯びてきている。  
彼女は自分の浅ましいともとれる性癖にかすかな嫌悪を感じていた。  
(そういえばさっき脱いだおしめ…)  
 千砂は急にそのことに思い至って冷や水を浴びせかけられたような感情に駆られる。  
あれは…一砂に洗い物として持っていってもらった。  
(……私のバカ!)  
 千砂は顔から火が出そうな気持ちさえした。  
 
 千砂は床についてから下着を含む洗濯や家事全般を弟の一砂に任せきりにしていた。  
それで多分に鈍感になってしまっていたのだ。  
(もう今日で…)  
 千砂は横になったまま指折り日を数える。もう三日目、計六枚。最初にあったのが四枚。  
一砂は少なくとも三枚は彼女の愛液にまみれたおしめを洗っていた勘定になる。  
たしかに下着の洗濯くらいならば気を許した相手になら任せてもいい。  
しかしこればかりはモノがモノである。  
(ああっ、もう!)  
 やはり紙オムツにすれば良かった。被服生活の習慣を安易に適用したのが間違いだった。  
 今も一砂は自分の汁を含んでとろとろになった布を手で洗っているのかもしれない。  
 布団に肩までもぐりながら千砂は真っ赤になった顔を両手で覆う。  
 しかしそんな感情とは裏腹に一砂が自分のでとろとろになったそれを手で洗っている  
一砂の姿が脳裏を過ぎる。彼は指先で彼女の残滓に触れるのだろうか?  
あのしっかりした手を汚れた液体交じりの水に濡らして…  
 千砂は羞恥と愉悦の複雑に入り混じったようなもやもやが胸の中で渦巻いているのを  
感じていた。  
「千砂?」  
 千砂は突然呼びかけられてびくりとした。声の主、妄想に駆られた当の相手だ。  
罪悪感に駆られて彼女は唇を噛み締めたが一砂からはそれは見えない。  
「ご飯食べられそう?」  
 一砂は開けた障子の敷居を越えて部屋に入ってくる。千砂には足音で分かった。  
「う、うん…」  
 やや間があって千砂はようやくそれだけ言えた。  
「そう…具合は?」  
 千砂は黙ってしまう。頭の中で混乱そのものがぐるぐる回っているのが分かった。  
 一砂は彼女の布団のそばに膝を突き、千砂の耳元に口を寄せた。  
「具合…悪い? おかゆに卵落としても食べられそう?」  
 心配そうな声だった。  
 千砂はためらっていたがついに訊ねてみる。一砂に無駄な心労をかけたくはない。  
「ねえ、一砂…あの、私の…おしめって…」  
 
 二人の間に数瞬間の気まずい沈黙が訪れる。  
 しかし一砂が頭を掻いた気配から千砂は全てを察っして告げようとする。  
「…その…ごめんなさい…今度外に出たときに紙おむつでも…」  
 しかし一砂は意表を突いてそれを打ち消した。  
「気なんて使わなくていいよ……それに近所の人に誤解されるかもしれないし…  
千砂は恥ずかしいだろ、そういうの」  
 たしかに千砂が寝たきりであるとか隠し子がいるとか噂されかねない。  
プライドの高い彼女にとって不快な可能性には違いなかった。  
「でも…」  
 千砂は少し負い目に感じて抗弁する。だが一砂はこう返す。  
「…千砂のためだったらなんでもするし…できることなんでもしたいから…」  
 口調を聞けば一砂の思いは伝わってくる。そこにあるのは独占欲を孕んだ慕情。  
「…添い寝して」  
 千砂は胸が切なくなりやや唐突にそう言ってしまった。言ってしまったあとで  
彼女は自分の言葉に動揺して小さく喉を鳴らしたがすぐに居直ることに決めた。  
「寒いから体温分けて欲しい」  
 数分の後、一砂は半袖シャツとトランクスの格好で布団に入り千砂を抱きしめていた。  
「温かい…しばらくこうしていてもいい?」  
「…うん」  
 千砂は深い安堵の感情に包まれて弟の胸に額を預ける。その華奢な手は一砂の背中  
に回り、シャツを握っている。そして彼女の片方の膝は彼のそれに密着していた。  
 千砂は少し顔を上げて一砂の表情を盗むように見る。  
「一砂…」  
「ごめん…」  
 一砂は皆まで言われる前に詫びた。千砂の柔らかい股に触れている彼のそれが  
次第に膨張してきていたからだった。  
「いいの…」  
 千砂は少し気恥ずかしそうな声で答えた。しかしあえて逃げようとはしない。  
「一砂…」  
 千砂はその細い指でいきなり一砂のものを掴みだした。その瞳には悪戯っぽい光かあった。  
 
 千砂はそれを自分の脚の付け根の部分から亀頭だけをおしめの中に導きいれる。  
そこはすでに愛液でひどく濡れており亀裂にあてがわれたローターが微かな振動を伝えている。  
「どう? キモチいい? …ここに」  
 一砂の苦しげな表情を見ながら千砂は告げた。  
「出しちゃっていいよ」  
「で、でも…」  
 半ば恍惚としながらも一砂はためらっている。千砂が彼の耳に囁いた。  
「お風呂だって一緒のお湯につかるんだし…あなたもここで流しちゃえばいいの、汗とか…」  
 汗とか、精液とか。すでにオムツの中は千砂の愛液でぐしょぐしょだった。  
 抗しがたい衝動に駆られた一砂は千砂に覆いかぶさるとそこに自分の茎を突きこんでしまう。  
愛液に滑って千砂の下腹部と厚いふんわりした布の間に根元まで埋まってしまう。  
「ぅ…!!」  
 その瞬間に千砂はまるで秘奥を貫かれたかのように悩ましげな呻き声を上げた。  
 一砂は荒い息を突きながら苦しげに腰を揺する。  
「なんか、千砂の、中に、いるみたいだ」  
 実際、亀頭を入れさせられた瞬間そう錯覚したくらいである。  
 千砂は切なげな表情を浮かべながらその行為を受け入れていた。一砂の手に絡んだ指には  
演義ではない力が篭っていた。  
(あ、一砂、かたい…)  
 すでにどろどろになった小さな布の中で一砂のそれと千砂の肌が何度も何度も擦れ合う。  
「ぅ、ぅ…」  
 千砂が小さく頭を振る。小さな絶頂の火花が彼女の体を苛んでいる。  
直前まで「治療」で疼かせ続けられていた快感が一気に発火したかのようだった。  
千砂は全身が局所になったような錯覚に見舞われていた。  
 掛布団が規則正しく乱れながら起伏する。その中で姉弟は激しくもつれ合っている。  
互いに呼吸を乱して危うげに震えながら。  
「ぅ、一砂、一砂…」  
 千砂は途切れがちな声で無意識に何度も弟の名前を呼んだ。彼女の瞳孔は拡大している。  
乱れ解けた寝巻きからはみ出した美しい乳房の片方は一砂の手の中でこね回されている。  
かたくなった桜色の乳首を指先に潰されるたびに千砂の頬が歪む。  
 千砂は布団の中で大きく脚を広げて情動に苦しむ弟を受け入れていた。  
 
「ぁ、ぁぁ、一砂、切ないの、せつないの!」  
 時おり接合部で茎が陰核を擦ると千砂は背筋を逸らして跳ね上がる。  
すると一砂はそんな姉の体を押さえつけてそこばかりを執拗に摩擦するのだった。  
「そこは、そこはァ! だめなの、らぁめらのお…」  
 千砂はほとんど涙目になっていたが一砂に力で敵うはずもなく微かな後悔と不安とともに  
愛撫を受け入れざるを得ない。  
完全に全身の筋肉が緩みきったようになり逃れることはできない。  
「そんなぁ…やさしくしてやさしく…ゃさしぃくやさしぃくぅ…!」  
 混じりあおうと悶えあっている姉弟の姿は傍目に見ても淫靡で八重樫などならば  
到底正視に堪えないだろう。  
 雨音に混じって微かに粘性の水音が続いている。そして衣擦れと肉の触れる音も。  
「はぁ、はァ、あ、あ、あ…」  
 逸らされた千砂の白い喉からは官能そのものが音となって漏れている。  
金魚のように唇をわななかせて浅い呼吸を繰り返している。  
「あぁあぁあぁぁぁ? ぁやぁあぁぁぁ、ああぁああぁあぁ…」  
 千砂は痴呆じみた顔で浮世離れした嬌声を上げながら一砂の責めに身をゆだねている。  
 突き上げられるたびにむき出しになった白い肩がシーツの皺を大きくしていく。  
彼女の爪はすでに一砂の手の甲に跡をつけていたが今はその指は天井を指して震えるばかりだ。  
一砂が押さえていなければどこへ投げ出されるか分からないくらいになっている。  
「ア…」  
 千砂の視線が大きく揺れる。一砂が兆候を示したからだ。彼女は体内同様に敏感になった  
下腹部で一砂のそれが震えるのを感じてその感覚に陶酔する。  
「ぁぁぁぁ!! でてるノぉ…あつぃの、こォれすごくぁっぃ……ぁっぃょぅ…」  
 オムツの中に精液が広がっていく感覚に千砂は半泣きになって告げる。  
「ぁ、だめ、だめなの、まだ抜いたらダメ…」  
 千砂はどこかヒステリックに叫ぶ。引き出される感覚が彼女を苛んだからだけではない。  
自分だけを置き去りにして火照りから逃れさせる気にはなれなかった。  
 そして普段の落ち着きもどこへやら自分の秘部をせり出すようにしてさらに交わろうとする。  
 千砂はぐしょぐしょになって強く抱きしめられたまま弟の唇を吸う。  
二人はそのまま布団の中で睦みあい互いの体液に塗れながら心身を貪りあうのだった。  
                *****  
 そしてこの日を境に千砂の病状は快方へと向かった。  
そして八重樫との修羅場が待ち受けているのだがそれはまた別の話。  
 

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