都内某所。  
さほど目立たぬビルの地下にそのクラブはあった。  
政財界から要人の集う秘密クラブだ。  
 
その少女は魂の無い人形のような表情をしていた。  
加えて、その部屋はコンクリートをうちっぱなしの内装に、椅子とトイレがあるだけだった。  
高く、狭い窓にも鉄格子が張り巡らされわずかな光しか入らないレイアウトだ。  
(高城君…。)  
少女がもう届かないであろう地上の光を見上げたとき、重々しいドアが開いた。  
「品番17!出ろ!」  
それが八重樫葉の今の名前だった。  
「返事をしないか!」  
大きな声で怒鳴られる。同時に他の部屋から少女のすすり泣く声が聞こえる。  
「…はい…。」  
怒鳴られても殴られはしない。商品に傷がつくからだ。  
品番17こと八重樫葉はオークションの商品である。  
彼女は既に人間ではなく物なのだ。  
一砂の病が末期的段階に入り、一砂を助けるためには億に届く程の金銭が火急的に必要になったのだ。  
八重樫は一砂の命を取り留めるために自分自身を売却することにした。  
(…お金…足りるかな…。)  
一砂を救いたい一心で非合法のオークションに出てしまったが、八重樫自身は自分がそこまで高く売れるかどうか不安だった。  
髪の毛を手串で整え、スカートの裾にも注意を払う。一砂のために少しでも高く売れて欲しかった。  
「おい、早く脱げ」  
「…え…?」  
「オークションにならないだろうが!?さっさと服を脱げ!」  
再び怒鳴られる。八重樫はわけわからないまま、制服を急いで脱ぐ  
「あ…あの…脱ぎました…。」  
頬を紅潮させ、ブラとショーツだけの姿になった八重樫が答える。  
「何度も言わせるな!脱げっていうのは全部脱ぐんだよ。」  
「……そんな……。」  
(下着だけでも恥ずかしいのに…。)  
「オークションを中止にしてもいいんだぞ?」  
支配人が言う。  
「すみません…。ぬ…脱ぎます…。」  
八重樫はおずおずと下着を脱ぎ始めた。  
ホックが外され小ぶりながらも形の良い乳房があらわになる。  
そして少しためらったあと、ショーツも脱ぎ捨てる。  
「それもとれ。」  
支配人の指が八重樫の股間を指す。八重樫の性器に密着している生理用品だ。  
「…。」  
八重樫はガーゼの端を持ち、足を閉じたまま股間から生理用品を引き出す。  
「と、とりました…。」  
目は少し涙ぐみ、太股を少女の鮮血がつたっている。  
その姿を見た支配人は品番17に高値がつくことを確信した。  
少女はもはや光の下に戻ることも叶わないだろう。  
 

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