「はぁ〜気持ちよかった!旅館みたいなお風呂やったわ。次の方どうぞ〜♪」  
軽く鼻唄をうたいながらミーコは風呂から出てきた。まさしく旅館のような浴衣に身を包んでご機嫌である。  
 
「ではミーコ殿、寝室にご案内致しましょう。ささ、時生様も湯が冷めぬうちにどうぞお入り下さいませ…」  
ハクタクは手際よく仕切っていく。  
「こちらでございます。」  
「わぁー広いお部屋!お布団も大きいなぁ。ハクタクさんありがとう!」  
「それはようございました。ではごゆっくりお休みくださいませ。」  
「おやすみなさい。」  
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「ふーまだ暑いわ〜」  
風呂で身体が火照っていたミーコは掛け布団の上に寝転がった。ついでに浴衣の裾も捲り上げて熱気を逃す。  
窓から夜風が入り何とも心地よい。目を閉じると虫の鳴き声が聞こえる。  
 
からり  
部屋の引戸があいた。  
「ミ、ミーコさ…!?」  
肩にタオルを掛けた同じく浴衣姿の時生が驚いた顔で立っていた。  
 
「あ、志村。どうしたん?」  
「どうしたも何もここ僕の部屋なんですけど…」  
はだけた浴衣から覗くミーコの足から目を反らしながら時生は答えた。  
 
「ほんまに〜?年頃の男女を同じ部屋に寝かせるなんて意外とハクタクさんも鈍感やなぁ。」  
人事のようにミーコはケタケタと笑った。  
 
鈍感なのはどっちだ、と心の中で時生はツッこんだ。  
 
「あ、でも心配せんでええよ。襲ったりせんから!」  
「いや別にそんなこと心配してないですけど、あの、その、」  
「なんよ!はっきりせんヤツやな〜。」  
時生は戸惑ったが口を開いた。  
「その浴衣の裾まくりあげるのやめません?目のやり場に困るんですが…」  
 
「…ヘンタイ。」  
 
ポツリと言って裾を直すミーコ。  
「あ、いや別にいつもそんな目でミーコさんのこと見てる訳じゃ…でも僕だって男ですし…」  
もごもごと小さな声で付け加える。  
「と、とにかく!僕は別の部屋で寝ますので!ハクタクにはよく言い聞かせときます。」  
そう言って時生はもう一度引戸に手を掛けた。  
 
「あ……待って!」  
ミーコは声を上げ、時生を追いかけようとした。引き止められて時生が振り返ったその時。  
 
ドタッ  
 
慌てて立ち上がったミーコは浴衣の裾を踏んづけ派手に転んだ。  
「いったぁ〜〜〜!」  
「大丈夫ですか!?」  
時生も慌てて駆け寄る。  
「まともに顔面打った〜。鼻がつぶれたわ。」  
「ちょっと見せてください…。」  
時生はミーコの鼻をまじまじと観察した。  
「あぁ少し赤くなってますが大丈夫そうですね。よかった。」  
 
「ちょっ、志村、顔近い!」  
よくよく見ると鼻どころか耳まで真っ赤だ。転んだせいでまたしても浴衣が乱れ白い太ももが露わになっている。  
 
「…すみませんミーコさん。もう無理です。」  
「え、何が……………!!」  
ミーコの質問は時生の唇によって遮られた。  
しばしの沈黙の後ミーコの耳元で囁いた。  
「僕も一生懸命我慢したんですからね。」  
 
「…ええよ。」  
ぷいっと横を向きながらミーコが呟いた。  
「?」  
「志村となら…してもええよ。好きやもん。」  
今度は時生が真っ赤になった。  
「…ありがとうございます。」  
「なんやそれ。」  
 
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「んっ……くすぐった…やっ…」  
背後から執拗に耳を舐める時生に身を捩るミーコ。  
浴衣はすっかりはだけ、辛うじて腕に引っ掛かっている。  
両手はやわやわと胸を揉み、時折先端を捏ねる。その度にミーコの体は跳ねた。  
そっとミーコを寝かせ、下着を取り去った。  
「ちょっと失礼しますね…」  
既に濡れている所に顔を寄せペロリと舐めるとミーコは急に抵抗し始めた。  
「やっ!やめて!恥ずかしい!」  
「恥ずかしいことありません。可愛いですよ、ミーコさん。」  
そう言って宥め、もう一度舌で愛撫する。  
「いやっ…だめっ……ホンマだめっっ!んんんんーーーっ!!」  
 
あっさりと達してしまったミーコは涙目で時生を睨んだ。  
「おかしくなるかと思ったわっ!志村のバカ!」  
「おかしくなってくれて良かったのに…残念です。じゃあそろそろいきますよ…」  
 
いよいよだとばかりにミーコは体を硬くして目をつぶっていたが一向に時生が入ってくる気配が無い。  
「…志村?どうしたん?」  
「いえ、そういえば避妊具がないなと思いまして……あっ!」  
その時、時生は見つけてしまった。布団の傍らに置いてあるボックスティッシュを。  
その上にそっと置いてあるコンドームを。  
「すみません、問題ありませんでした。じゃあ改めていきますよ。」  
 
「いっ!痛いっ!!無理無理!動かんといて!抜いてっ!」  
ミーコが涙を流しながら叫んだ。  
「だめです。しばらくは動きませんから我慢してください。」  
時生は強い口調で戒めながらも優しくミーコの髪を撫で、体の強張りが解れるのを待った。  
「…志村…少しなら動いてもええよ。優しくしてな…」  
 
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「もうっ!志村のアホっ!優しくしてって言ったやんか!!」  
「す、すみません。つい夢中になってしまって…」  
「おかげで腰痛いし、立ち上がれへんし、気ィ失うかと思ったわ!」  
「ほんとすみません…」  
あまりの気持ちよさに結局自分のペースで事を進めてしまった時生は大いに反省した。  
 
「だいたい何でタイミングよくゴムがあんねん。誰と使いよったのか知らんけどっ!」  
「あれはハクタクが……ミーコさん妬いてるんですか?」  
「うるさいっ!」  
いきり立っていたミーコだったがぼそりと呟いた。  
 
「…私はそのまましても良かったけどな。」  
 
あまりの愛おしさに時生はがっしりとミーコを抱きしめた。  
「だめですよ、ミーコさん。そういう事は結婚してからです。結婚したら避妊具なしで思う存分して差し上げますから。」  
「やっぱ志村はヘンタイや…。」  
「さぁもう遅いし今日は寝ましょうか…どうぞ僕の腕枕使ってください。」  
「仕方ないなぁ。使ってやるわ。」  
クスクスと笑いあいながら二人は眠りに堕ちていった。  
 
 
【おしまい】  
 
 
やっぱりハクタク様は用意周到。  
ちなみに翌日の朝食は赤飯でした。  
 

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