午後の授業が終わり放課後になると部活の時間がやってくる。特に部活動をしていない生徒であれば鞄を持ってそのまま帰宅する訳だが。  
演劇研究会に入っている、というか姉の意向で強制的に入らされた西田甲斐は帰るわけにはいかなかった。  
まあ最初の内こそ乗り気ではなかったが今となっては演劇というのも『結構いいな』と思えるようになっていたので彼的には問題は無いようであったが。  
 
「さってと、いくか麻井」  
 
教科書とノートを片付けた甲斐は席を立つと、同じクラスの友達で演劇研究会部員の少女、麻井麦に声を掛けた。  
 
「あ、あの、私きょうこれから用事が……」  
 
しかし、麦はなにやら用事があるらしく「ごめんね」と断りを入れると足早に去ってしまう。  
用事では仕方ないと思うも何処か様子がおかしい彼女に彼は「何なんだ?」と首をかしげながら、教室を出て部室へと足を向けた。  
 
 
***  
 
 
「失礼しまーす」  
 
挨拶をしながら部室の扉を開け中に入る甲斐。部室内には腰の下まで届く長いポニーテールの上級生女子が一人、パイプ椅子に腰掛けて足を組んでいた。甲斐の姉、西田理咲である。  
彼女の他には誰も来ていないようだ。  
 
「って、姉貴ひとりかよ」  
「なによォ〜その嫌そ〜な言い方は!」  
 
理咲は座っていたパイプ椅子から立ち上がると甲斐の側に寄り、彼の頭を脇に抱えて締め上げた。  
甲斐としては理咲の豊満な膨らみが頬に当たって気持ち良くはあった物の、結構本気で締め上げてくるので楽しむ余裕なんて物は無くささやかな抵抗を試みている。  
 
「痛い痛い! やめろバカ!」  
「あんたが私を見て嫌そうにするからでしょ〜がっ!」  
 
別に嫌そうにしている訳では無い、ただそう聞こえてしまっただけなのだ。そもそも甲斐が理咲のことを邪険にするなど有り得ないこと。  
こうしてヘッドロックをお見舞いされても痛くはあるが嫌ではない。本当に嫌なら思い切り力を入れて藻掻いてるところだ。  
しかし彼がしているのは抵抗にすらなっていないささやかな抵抗であり、本気で姉の腕から逃れようとしている物では無かった。  
それは二人の仲が以前までの“姉弟”から大きく変わったのだという事を指し示していて実に微笑ましい光景である。  
 
「姉貴の勘違いだって!」  
「ホントかしらねぇ〜?」  
「当たり前だろ! なんで俺が姉貴のこと見て嫌そうにするんだよっ!」  
 
例え言葉一つでもそう感じ取られるのは絶対に嫌だ。それはある意味彼の心からの叫びである。  
なぜなら甲斐にとって理咲は何よりも大切な人だから。血の繋がった姉としては勿論のこと、一人の女としても。  
 
「な、なにマジになっちゃってんのよあんた、」  
 
甲斐の様子を見た理咲もヘッドロックを外す。いつもやってる姉弟のスキンシップのつもりだったのだが弟が意外に本気になっているので興が冷めたのだ。  
 
「マジにもなるって、俺が嫌がってるなんて姉貴に思われたくねーし」  
「甲斐……」  
 
放してもらった甲斐は理咲の側から離れずに彼女の身体を優しく抱き締めて顔を近づけていく。  
目標はただ一つ、理咲の瑞々しい唇だ。  
 
「んっ――」  
 
不意に重なる二人の唇。  
無論のこと、ただ触れ合わせるだけで終わりなどという事はなく、理咲の唇を味わう甲斐は唇を押し付けたままその瑞々しい唇を少し啄んだあと、舌で唇をこじ開け口内へと滑り込ませた。  
 
「あむっ……っ、んっ……ちゅるっ、」  
 
口内を犯された理咲は甲斐の首に腕を回すと、自らも口の中を這い回る弟の舌に舌を絡ませていく。  
こうして生温かく滑る弟の舌とじゃれあうのは好きだ。深い愛情と彼の想いを感じることが出来るから。  
ただいつも押され気味なのが気に入らない。以前までは全てにおいて自分の方が上であり主導権を握っていたというのに、こと、こういう行為においては甲斐に主導権を奪われてしまうのだ。  
そんな事を考えながらも結局は甲斐の舌の方が力強くて押し負けてしまい、歯茎をなぞられ舌の裏側、口内の粘膜全体を蹂躙されてしまう。  
 
「はむっ、んちゅっ、んっ…んンっ」  
 
もちろん、理咲とて負けてはいない。このまま蹂躙されっぱなしでいるのは姉としての矜持が許さないのだ。  
 
「んぐっ!?」  
 
だから一瞬の隙を突いて逆に甲斐の口内に舌を滑り込ませて、自分がされたように甲斐の歯茎に舌を這わせながら自由気ままに口内を蹂躙していく。  
 
「んあっ、あむっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、」  
 
思わぬ姉の逆襲に今度は甲斐の方が受け身となり、絡みつく理咲の舌に動きを封じられてなすがままにされてしまう。  
負けず嫌いで気の強い姉の一端はこんなところにも現れているのだ。  
こうなると元来姉に頭の上がらない甲斐は、送り込まれてくる唾液を飲み込み、甘酸っぱいキスの味を楽しむ以外にすることがない。  
弟ではなく男としてどうなんだと思わなくもなかったが、ぶよぶよざらざらとした温かく湿った舌の感触と唾液の味がとても美味しく、  
受け渡したのと同じくらい大きな想いの籠もったキスを返してくれる姉の愛が愛おしくて逆に嬉しいという想いの方が強くなってくる。  
 
やがて、長い長いキスを終えた二人はどちらからともなく、静かに顔を離した。  
 
「ん……」  
 
熱く深く接触していた唇の間を粘り気を帯びた透明の糸が吊り橋のようになって繋いでいる。  
まだ早い、もう少し接触していよう、まるでそう言わんばかりに伸びる唾液の糸を見た二人は。  
 
「ちゅ…」  
 
再度の短いキスをして未練がましく残る糸を互いの唇に染み込ませて消化した。  
 
「こ、これでもまだ俺が姉貴に何かされるのを嫌がってるとでも言うのかよ?」  
 
嫌がってないという事を行動でもって証明した甲斐は照れくさそうに姉を見ながら口にした。  
 
「ふふ……前言撤回。嫌がってんじゃなくて甘えてたわけね♪」  
「甘えてね――いや。無くもねえか」  
「そうそう、正直が一番よ。でも、あんまり部室でこういうのはよくないんじゃない?」  
「なんでだよ」  
 
部室でディープな口付けを交わすのはよくないと告げる理咲に甲斐は唇を尖らせた。  
彼としてはいつ何処でだって姉と愛情を交わしたいのに、姉は時と場所を選べみたいな事を言ってくるのだから納得しがたいのだ。  
それだけ深い愛情を抱いていて我慢するのが耐え難い苦痛なのである。  
 
「野乃先輩も麻井も桂木先輩も俺たちの仲知ってるじゃんか」  
 
甲斐が言った俺たちの仲――つまりは甲斐と理咲の関係。実の姉弟でありながら、お互いを深く愛し合ってしまった恋人同士という関係だ。  
この事は、一ノ瀬野乃も桂木たかしも麻井麦も、演劇研究会のメンバーはみんな知っている。  
それどころか西田姉弟の親でさえも二人の仲が男女の関係になってしまったという事を知っていた。その上で交際を許してくれている。  
 
『実の姉弟であろうが男と女である事には変わりない』  
『たまたま甲斐が好きになった異性が理咲であり、理咲が好きになってしまった異性が甲斐であっただけ』  
『二人が幸せならば親として何も言うことはない』  
 
倫理的には間違っているかも知れないが、親としては子どもが幸せで有るならばそれでいいと歓迎してくれたのだ。  
 
無論、関係を告白した直後は考え直せとか、血の繋がった肉親なんだぞと諭されもした。  
しかし、結婚して子どもまで生むという覚悟と本気、そして二人の愛情の深さに負けた両親は、最終的には二人の仲を認めたのである。  
 
つまり二人は家でも部室でも誰憚ることなく恋人として接することができるのだ。  
事実、家では毎晩、甲斐の部屋か理咲の部屋で枕を並べて寝ているし、寝る前には恋人として当然の行為――性交を行ったあとに寝ている。  
ならば部室でキスをする事くらいタブーでもなんでも無い筈だと思う甲斐であったが――。  
 
「その野乃に注意されたでしょーが。 部室でのエッチは禁止だって」  
 
以前、部室でセックスしていた時に声を聴かれて、野乃に部室でのセックス禁止を言い渡されていた事をすっかり忘れていた。  
理由は部室が汗臭くなる=特有の臭いがするから。  
というのは二番目の理由で、一応風紀的な問題で部室では禁止というのが野乃の意見であった。  
恋人ならばしたくなるのは当然である。だが此処は部室。部活をする場所であって、いちゃつく場所じゃないから。  
確かに至極まっとうな意見だ。  
 
「いや、キスだろ? だったらいいじゃん」  
 
だが、甲斐にも言い分はあった。キスとセックスは違うのだからいいだろうというのが彼の言い分。  
どんなに深くキスをしたところで部室がイカ臭くなる訳がないのだからして、キスまで禁止されたくはない。  
 
「それに今は野乃先輩いないじゃんか」  
「そりゃまあ、そうだけど……」  
 
キスとセックスは違うと断言する甲斐に押し切られた理咲は、屁理屈だと思いながらも頷きを持って返す。  
彼女とて愛する弟にキスされるのは嬉しいし、嫌じゃないから。  
それこそあーだこーだ言いながら自分からキスを求める時だってある。  
もちろん野乃が居ない。居ないならバレない。バレなきゃいい。というのもあった。  
 
そして、理咲を納得させた甲斐の言い分は、熱〜いキスをしてしまった為に更にエスカレートしていく。  
 
「それと、さ。もう一個だけいい?」  
「なによ……?」  
「き、キスしたらさ……あ、アソコが、さ、」  
 
アソコ――という言い方をされれば直ぐに分かるというもの。伊達に恋人やってない。  
 
「……」  
 
理咲が甲斐の首に回していた手を離して彼の股間に当ててみると案の定そこは大きく膨らんでいるではないか。  
今し方交わされたディープなキスは、彼の性欲を大いに刺激してしまったのだ。  
 
「このスケベ」  
「だ、だってしょーがねーだろ、俺も健全な男子なんだから好きな女の子とキスしたら興奮してこうもなるって、」  
「はぁ〜しょ〜がないわね〜。わかったわかった、わかったからアンタはそこ座んなさい」  
 
甲斐の言い訳に呆れた様子で理咲が指を指したのは自分が座っていたパイプ椅子。  
理咲に従ってパイプ椅子に座った甲斐は徐にベルトを緩めてズボンを下ろすと、股間の膨らみをさらけ出した。  
 
「うっわ〜、カッチカチじゃないっ」  
「うう、恥ずい……」  
 
甲斐の股間では天に向かってそびえ立つ大きな肉の棒――ペニスが性的興奮を覚えて充血し、激しく自己主張していた。  
あれだけ深い口付けを行ったのだから、こうなって当然の事であり何ら責める事は出来ないが。  
 
「まったくしょーがないんだからアンタは」  
「面目ない……」  
 
こうなった以上、このかわいい弟のペニスを沈めてあげられるのはお姉ちゃんしか居ない。  
正しくその通りな答えを導き出した理咲は椅子に座る甲斐の前に跪くと、前髪を抑えながら彼の股間に顔を近づけていく。  
 
「うっ、ちょっと臭うわね」  
「そりゃ、我慢汁も出てるし…さ、」  
 
甲斐の言うとおり硬いペニスをよく見ると、亀頭の先からは少しだけ先走りの汁が出ている。  
 
「な〜に威張ってんのよ。ここ、こんなにしちゃって……ちゅっ」  
 
理咲がそびえ立つペニスの竿の部分を手の平で優しく包み込み、その先端に優しくキスを落とすと、硬くなった肉の棒がびくんと大きく痙攣した。  
 
「ふわぁ!」  
 
自分のペニスに唇を付けられた瞬間ぞわっと背筋が総毛立ち、出すつもりのない喘ぎが出てしまった甲斐は、思わず唇を噛んでそれ以上声が漏れないように我慢する。  
いくら閉め切っている部屋とはいっても、外に聞こえるかも知れないし、何よりも男として情けないから。  
 
「まだ口付けただけなのに、感度いいわね〜……ぺろっ」  
 
そんな甲斐に此方は自分も乗ってきたのか積極的に責め始める理咲。  
 
「ううっ……あ、姉貴っ、」  
「ぴちゃ… ぴちゃ…」  
 
理咲はキャンデーを舐めるような感じで亀頭の先を舐めていく。  
這い回る舌がカリ首のエラの下をなぞるように動かされ、ペニスの先が唾液で濡らされてしまう。  
 
「はァ…はァ……姉貴…」  
 
裏筋を根本からねぶる理咲は、甲斐のペニスを味わいながらゆっくりと扱いていく。  
 
「ぴちゅっ……甲斐のおちんちん……凄くおいしい」  
「美味いんならさ……早くしゃぶってくれよ…っ、」  
「わかってるわよ ホントに甘えんぼね」  
 
早く咥えて貰いたいという弟の催促に、くすりと笑った理咲は期待に応えてあげるべく、大きく口を開けてその赤黒く猛るペニスを咥えた。  
 
「ぅっ!」  
 
自分のモノが温かい空気に包まれたのが分かった甲斐が下半身を見遣ると、目に映るのは膝立ちになって股間に顔を埋める姉。膨れあがった亀頭部が全て口に含まれていた。  
しばらくそのままでいた理咲が上目遣いで見てくる。  
交差する視線に頷きを持って返答すると、姉は顔全体を前に出して竿の部分も全て飲み込んでしゃぶり始めた。  
 
「はむっ…んむっ…」  
 
前後に動く頭に合わせて、咥えられたペニスが竿の部分だけで出たり入ったりを繰り返す。  
口いっぱいにペニスを頬張る理咲は、唇の粘膜で刺激しながらも口の中にある肉の棒に舌を絡ませて、舌先を使い尿道口と裏筋、カリをまさぐっていく。  
愛しい人からの愛撫にペニスは素直な反応を示し、鈴口から汁をしみ出させ、それを感知した彼女は苦みのある汁をずずっと音を立てて啜り、喉の奥へと飲み下す。  
 
「うっ…うぁ……いいっ いいぞ姉貴…っ」  
 
一方で姉からの愛の籠もったフェラチオに自分からは何も返せない甲斐は、頭を前後に動かしてペニスをしゃぶり続ける理咲を見下ろしながら、その背中で揺れている長いポニーテールをすくい上げた。  
後頭部で纏められた髪の根本に手を差し入れて裏側から持ち上げ、手の中で滑らせながら自分の口元まで持ってくる。  
いくら自分が椅子に座っているといっても生半な長さでは口元までは届かない。しかし理咲の髪の毛はポニーテールに括っていても毛先が優に尻まで届くほど長いので、余裕で甲斐の口元に届いた。  
 
「ん……はむ……姉貴……」  
 
部室の電気に照らされて光沢を帯びた艶やかなポニーテールの髪に唇を付けた甲斐は、姉がペニスにしてくれているのと同じように、髪の毛を舐めて愛撫する。  
この少し紫がかった艶やかな髪の毛を使ってペニスを愛撫して貰う事もある。昨晩だってして貰った。  
ほどかれた艶やかな長い髪の毛をペニスに巻き付かせて擦りあげられる髪コキという愛撫にはいつも気持ち良くイかされ、性交時に行う膣内射精に匹敵する幸福感を覚えるのだ。  
 
だからこそ甲斐は日頃からの感謝の気持ちを込めて舌で優しく舐めながら、指を通して撫で梳き髪の毛の感触と味を楽しむ。  
 
(姉貴の髪の毛……いい匂いと味がする)  
 
滑らかな髪の束の中に舌を差し入れ這わせると、シャンプーのいい匂いと一緒にさらさらした髪の感触と無味な筈だというのに美味しい味がする。  
濡れた舌の表面で毛繕いするかのように舐めてながら、髪に唾液を染み込ませる行為は一種のマーキングでもあるだろう。  
甲斐は大切な姉であり、同時に恋人でもある理咲に、自分の匂いを付けているのだ。  
姉貴の身体は全部俺の物。髪の毛一本に至るまで全部。  
その強い想いを理咲の髪の毛に擦り込んでいく。  
 
「姉貴……好きだ…… んむっ……」  
 
舌に絡みつく髪の毛はペニスをしゃぶられるのと同じで、甲斐の性感帯を大きく刺激していく。  
まるで好きだという言葉と、髪への愛撫に感じた悦びを返してくれるかのように。  
事実理咲は嬉しかった。愛する弟にはいつ如何なる時であっても好きだと言って欲しい。  
恥ずかしがり屋の甲斐は、あまりストレートには言わない物の、必要なときにはわりかし多く口にする。  
それが顕著なのが性交している時。  
だから自分がどれだけ愛されているのか良く理解している理咲は、髪への愛撫と好きだという言葉のお返しとしてしゃぶる速度を一気に上げて仕上げに入った。  
 
「ん゛っ ん゛っ ん゛っ」  
 
下半身からは姉のくぐもった声とペニスに這わされる舌のぬめり。  
顔と口には姉の髪の感触と香り、そして味。  
それらが合わさる事で感じたエクスタシーに、舐めていたポニーテールの束を口に咥えて両手を空けた甲斐は。  
 
(ううッ!)  
 
ドクンッ  
 
股間に埋まる理咲の頭を両手で抱え込むと、身体の奥から迫り上がってきた精を口の中にぶちまけた。  
 
「ん゛う゛ゥゥ――ッッ!」  
 
口に頬張るペニスが大きく震えた瞬間、鈴口から吹き出す大量の精。  
一瞬逃げそうになる理咲であったが両手で頭を抑えてくる甲斐に逃げるのを止めた。  
甲斐が精子を飲んで欲しいと言っているのだ。姉として、また恋人として受け入れるのが自分の義務。  
そう考え口の中に出された粘つき苦い弟の精を、喉の奥に無理矢理送り込んでいく。  
 
「んぐッ…んく…ッ ゴクッ……ゴクッ」  
 
健気に自身の精を飲み続ける姉に甲斐はポニーテールを咥えたまま唇だけを強く噛み締め全ての精を出し切る。  
 
(く…ッ うう…ッ 姉貴…ッ、全部飲んで…ッ)  
 
「んくっ んくっ」  
 
やがて射精が収まったのを感じたところで甲斐は咥えていた髪を放し、理咲も口に含んでいたペニスを解放した。  
そして互いが口にしていた身体の一部――甲斐は姉の髪の毛、理咲は弟のペニスに付着した唾液と精液をキレイに舐め取る。  
 
「んっ…姉貴の髪の毛って美味しいな」  
「ぴちゃ……ん……アンタのおちんちんこそ……美味しいわよ」  
 
お互いの感想を述べたところで今度こそ身体を離す。  
 
「さ、これで満足したでしょ? まったくアンタはホントに甘えんぼなんだから、こんなとこ野乃に見られたらまた怒られちゃうじゃん」  
 
ちょっと不満気に口を尖らせる理咲であったが、顔を真っ赤にしてはにかみながらの言葉では説得力に欠けるというものだ。  
照れ隠しなのか椅子に座ったまま未だ下半身を丸出しにしている弟に気付いた彼女は早く服着なさいよと催促した。  
だが、  
 
「姉貴――」  
「えっ? なに??」  
 
甲斐は椅子から立ち上がると理咲を抱き締め。  
 
「ち、ちょっとっ、きゃ――!?」  
 
そのまま床に押し倒した。  
 
「ちょ、バカっ、なにやってんのよ!?」  
「悪い姉貴……俺やっぱ最後までしたい」  
「ええ――っ!? ちょっ、こら――んんっ?!」  
 
抵抗する理咲の唇にキスをした彼は続けて彼女の首筋にも優しいキスを繰り返しながら、制服のボタンとネクタイリボンを外していく。  
 
「こ、こらっ……ダメっ…だっ、て……っ、あっ……」  
 
無論、理咲も抵抗した。一応フェラチオまではしてあげたが、これ以上ここで行為を続けて野乃に見つかったらめんどくさいと。  
しかし、そんな理咲を無視して首と唇にキスを繰り返しながら、剰え耳にまで甘噛みをして理咲の抵抗力を奪っていく甲斐。  
 
「あ…ぁぁっ……やめ、なさ…いっ、て……っ」  
 
抵抗虚しく上着を脱がされてしまった彼女は、続いてブラジャーまではぎ取られてその大きく実った豊かな胸をさらけ出させてしまった。  
 
「やめろって言われても……無理だ……」  
 
暴いた胸を両手で優しく揉みし抱く甲斐。  
 
「はぁ…っ、あっ……ダメ…おっぱい……触っちゃ……っ、」  
「なにいってんだよ こんなに大きくてキレイな胸を触らせないなんて……そんなの、通らねえよ……」  
 
姉のおっぱいは自分に揉まれる為にあるんだとばかりに外回りに円を描くようにして両胸を揉む。  
 
「はっ、ひゃふうっ…っ」  
 
手の下でマシュマロのように柔らかい乳房が形を変えている。  
夢中になって揉みながら右手を離して左の乳房を口に含む。  
 
「ひう…っ!」  
 
乳房に吸い付くとピンと自己主張するように勃起した乳首が舌に中ったので、舌先でつついては転がしを繰り返す。  
乳輪の周りにも舌を這わせて唾液で濡らしながら、胸へ愛情を注ぎ続ける。  
 
「んちゅっ、ぴちゅっ、姉貴の乳首……ピンと勃ってて、かわいいぜ… ちゅっ……」  
「そん、な、こと……いいから やめ……なさい……バカぁ……っ」  
「だから……ちゅうぅ、無理だって言ってんだろ」  
 
もう止めろと無体な事を口にする姉に、おっぱいを吸う事で拒否の意を伝える甲斐。  
止められる訳がない。こんなに甘くて美味しいおっぱいなのに、味わうなという方がどうかしている。  
 
「ん…あっ…… か…い……」  
 
自分のおっぱいを吸い続ける甲斐を甘えてくる子どものように感じた理咲もついつい情にほだされて彼の頭を撫でてしまう。  
これが甲斐のいつもの手であると知っていながらこうしてしまう辺り、甘えてくる男に弱いのかも知れない。もちろん甲斐限定で。  
そんな理咲の考えを肯定するように乳首を解放して顔を上げた甲斐は、彼の手でいいように身体をまさぐられてグッタリしてしまった彼女のスカートを腰までめくりあげる。  
 
「はァっ はァっ なに、すんの……?」  
「はぁはぁ……ん、決まってるだろ……」  
 
めくりあげたスカートの下からは気の強い姉には似合わない、かわいいピンク色のショーツが顔を覗かせる。  
 
「かわいい…・…下着だな……んっ」  
 
下着の上から股間の匂いを嗅いだ甲斐は、その何とも言えない香しい匂いに誘われて薄い布越しに口を付けた。  
 
「はぅん!」  
 
甲斐の口が布一枚を隔てて大切な処にキスをしている。  
薄い布一枚ではもろに口付けをされているのと殆ど変わらず、股間にキスをされて下の口に感じる甲斐の唇に理咲の身体がどんどん熱くなっていく。  
 
「あ…んんっ、そ、そんな、とこに……、キスっ、された…ら、わ…わたしっ、」  
 
股間への口付けに身体が出来上がってきた理咲。膣の疼きが愛液の湧出を促し下着を濡らしていく。  
下着に染み込む愛液は股間に口づけている甲斐の口にも付着した。  
 
(もう……いいよな?)  
 
姉の身体が順応し始めた事を悟った甲斐は、静かに口を離し、ショーツを掴みするすると脱がせていく。  
 
「なに…脱がして…っ、」  
 
膝の辺りで丸まりながら足から引き抜かれたショーツを直ぐ横の床に置くと理咲の脚を大きく開かせた。  
 
「ち……ちょっと、まっ……やぁんっ!」  
 
何をされるのか分かった理咲の抗議を無視した甲斐は、脚を開かされて露になった姉の美しい股間を確認した。  
すると股間の真ん中に入る割れ目が少しだけ口を広げてひくひくと蠢きながら、しとどに濡れているではないか。  
 
「下の……口にも……しゃぶって貰いたいんだ」  
 
これを目にした甲斐はもう我慢できないと理咲の脚を抱えて、その愛液に濡れて潤う膣口に猛るペニスを近付け、亀頭部を入り口に触れさせる。  
 
くちゅり…  
 
「ひぐっ!?」  
「ほら……姉貴だって、こんなに濡れてんのに……」  
「だ… だからって……こん…な……ぁ…ぁぁっ」  
 
亀頭の先でぷくっと膨らんだクリトリスを突きつつ、割れ目の上で焦らすように二,三度擦り付けた甲斐は、理咲の腰を少し浮かせ、角度を付けてゆっくりと挿入。  
 
くちゅ… ずぶ…  
 
「んっ! ぁ…ァァ…っ!」  
 
まず亀頭のカリ首まで入れてしまうと、そのまま腰を前に出し竿の中程まで差込んでしまう。  
中は十二分に愛液で満たされているから気兼ねなく奥まで挿入する事ができるというものだ。  
 
じゅぶぶぶ…  
 
「んはっ、あァ…っ! ダ……メ、だって…ば……っ き、今日、あぶな……いっ、」  
「知ってる、って!」  
 
じゅぷう!  
 
「んああ――ッッ!」  
 
単純に部室だからというだけではなく今日が危ない日である事もあって制止する理咲であったが、甲斐は聞く耳持たずに根本まで挿入して停止。  
膣肉を押し割って子宮の入り口を押し上げる形で止まったペニスを、膣襞が柔らかく包み込む。  
危険日であろうがそうでなかろうが、理咲の膣内の細胞一つ一つが甲斐のペニスの形と感触を記憶している為、快くそしてすんなりと迎え入れてくれるのだ。  
 
「奥まで、入った……」  
「お、奥まで入ったじゃ、ないッ、危ないって、言ってんで、しょう…が…ッ!」  
 
危ない日にゴムも付けずに生でするというのは例え中出しを避けたとしても、先走りの汁などに含まれている微量の精子が子宮に入れば子どもが出来てしまうリスクを孕んでいる。  
だから基本的に危険日は避けているのだが、そのリスクを考えているのかいないのか。  
 
ずず…ずちゅ!  
 
「あっ……あァっ! イヤっ…だめ…ぇ!」  
 
甲斐は早速抽挿を始めて愛液で満たされた膣内の肉と、己がペニスによる愛の触れ合いを始めてしまった。  
中がたっぷり満たされている事で準備は万端整っていたので、スムーズな性交が出来ている。  
 
ずちゅ ずちゅ じゅぷ  
 
「はぁッ… 姉貴の中……あったけぇ……」  
「あっ あっ あっ……あっ……あんっ…っ、」  
 
容赦なく突き込まれる熱いペニスに、理咲の口から喘ぎが漏れる。  
ダメだと言った処でいざセックスを始められてしまえば気持ちが良いのだから仕方がないだろう。  
 
「姉貴……好きだ姉貴…… 大好きだ……」  
「わ、わかっ、わかった……からっ とに、かくっ ぬい、て…っ」  
 
奥まで埋め込むと結合部の隙間からわき水のように溢れ出す愛液が理咲の股間と、彼女の股間に接触し続ける甲斐の股間をびしょびしょに濡らす。  
好きと伝えながらリズム良く突き込み続ける甲斐は――  
 
「んむっ!?」  
 
未だ抜けと催促する姉の唇を塞いで強引に口づける。  
口を塞げば抗議も出来ない。  
 
「んんっ んむ―っ んんンっ!」  
 
といって愛する弟からの口付けを無碍に出来ない理咲は舌を絡ませ、唾液を交換し合いながらの濃厚なキスを交わさざるを得ないのだ。  
その間にも腰の動きを激しくして己の愛を理咲に刻み込む甲斐は、彼女の身体をしっかり抱き締めてペニスを擦り付けながら、背筋を貫く快感に酔いしれる。  
抽挿の勢いに合わせて身体に振動が伝わり、理咲の大きな胸がぶるんぶるんとはじけるように踊っていた。  
その胸に浮かんだ玉のような汗が飛び散る。  
 
じゅぷ じゅぷ じゅぷ  
 
「はぁんっ んんっ いやァッ あんっ」  
 
ペニスと膣の擦れ合いは当然ながら女の理咲の方により強い快感を与える訳で、全身を駆け巡る痺れるような感覚が僅かに残っていた抵抗心を奪い去っていく。  
 
「ひぁうっ あっ あぅぅ…っ すご…きもち……い…っ」  
「子どもが出来てもっ……いいじゃんかっ、」  
「あっ あァンっ なに、いって…っっ、」  
「姉貴は、もうすぐ、卒業なんだしっ、これで妊娠してもっ、お腹膨らむのはっ、卒業した後だしっ、」  
 
法的に結婚出来ない二人であったが、赤ちゃんが出来るか、甲斐が高校を卒業した頃のどちらかのタイミングで結婚する事が決まっている。  
無論これは家族内での結婚であり、その時をもって甲斐と理咲は夫婦として接し、両親も二人を息子と娘、そして夫婦として扱うと決めていた。  
そして卒業までにお腹の赤ちゃんが目に見えるほど大きくなることはない。つまり例えこの性交で理咲が妊娠しても卒業までに何も影響は出ないという事だ。  
 
「だからいいじゃんっ、姉貴の中にっ……出したいんだっ…っっ」  
「だッ、だからってッ…なかッ……に…ッ…ッ って」  
 
彼としては別に理咲を困らせたい訳では無いのだが、セックスするとどうしても中に出したいという欲求に駆られる。  
愛する女の中に出したい。男というのはそういう物だ。  
この想いを責められる男はこの世に存在し得ないだろう。  
 
じゅっぽ じゅっぽ じゅっぽ  
 
「あッ ああッ あァ んッ んああッ はァんッ」  
 
危険日にも拘わらず中に出すと伝えられた理咲は、直後に始まった激しい突き込みによって思い切り膣襞を擦りあげられて喘ぎしか出なくなっていた。  
疼く子宮口にはペニスの先がこつこつ中り、肉棒全体で行われる抽挿が思考力を奪い、彼女の全身を性感帯に変えていく。  
引くと掻き出され、突き込むと押し出されされる愛液で、二人の結合部真下の床がびしょ濡れだ。  
 
「あッ あァうッ あッあッ ああッんッ もう、もうらめッ おかッ……ッッ、おかしくッッ、なっちゃう〜〜〜ッ!」  
 
激しく擦れ合うペニスと膣襞の粘膜が、愛し合う二人の想いを代弁するかのように快感を伝えてくる。  
遠慮なんてしてはいけないのだと。  
 
「くッ、ううッ、あね…きッ 出すからッ 出すからな姉貴の中にッッ」  
「だッ…ダメッ なか…ホントにッッ ダメッッ…あ、赤ちゃんッッ…できちゃうッ…からッッ」  
「い、いいッ、子ども、出来てもッッ…いいからッ 姉貴の中に出すッッ!」  
「あッ ううッ…そん、なッッ…ッ……ッッ」  
 
ペニスが挿入前より硬く大きく膨らんでくるのが分かる。  
その大きく膨張してきた肉の塊を抱き締めるかのように締まる膣内。  
絡みつく襞はペニスを愛おしげに愛撫し、射精しろと促してくる。  
部室内に響く淫らな水音と濡れた肌が強くぶつかる音が混ざり、身体に感じる言いも知れない快感が絶頂へと導く。  
 
「ああ〜〜ッ ああッッ い、イくッ…ッ 甲斐ィィッ 甲斐ィィィ〜〜〜〜〜ッ!!」  
 
耐え難いほどの快楽の坩堝に叩き落とされた理咲は助けを求めるかのように弟の名を叫び、床に付けていた背を弓なりに反らせて浮かせた。  
 
「姉貴ッ 姉貴ィィィ〜〜〜〜〜〜ッッ!!」  
 
甲斐もまた姉の名を叫びながら最後のひと突きとばかりにカリ首まで引いたところで、力強く腰を押し出してペニス全体を膣の中へと埋没させ、股間の隙間を無くしぴったりくっつけた。  
そしてペニスの切っ先で子宮口をこじ開け、理咲の身体の深部までしっかり貫き通したところで、身体の奥から込み上げてきた精を一気に噴火させた。  
 
「姉貴ッッ くッ、ううう〜〜〜ッッ」  
 
ドプぅッ びゅくッ びゅッ びゅるるるッッ  
 
「あああああ〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」  
 
自らの絶頂。そして甲斐の絶頂と続く膣内射精に悲鳴のような理咲の喘ぎが木霊する。  
 
ぶびゅびゅッ びゅううッ  
 
亀頭の射出口から勢いよく飛び出す白くどろっとした生命の迸りは、子宮の壁にぶち当たって全体へと飛び散り内部を白く染め上げていく。  
こじ開けられた子宮口から甲斐の熱い精子が入ってくる。  
子宮に溜まり続ける甲斐の精液と、それに含まれる何億という命を受け入れる理咲の身体がびくびくと痙攣した。  
 
「ぁあ… あ…あ」  
「姉貴ッ……全部…受け入れてくれッ…ッ」  
 
ドプッ… ドビュッ… ドプッ…  
 
「あっ…ぁ あ… あっ… あ…ぁぁ」  
 
開いた唇から小さな喘ぎを漏らしながら頬を真っ赤に染めたまま放心状態で精子を受け入れている理咲。  
昨日あれだけセックスした筈なのに尋常でない量の精液が出続け、子宮をいっぱいまで満たして膨れあがらせると、容量オーバーで入り切らなくなった分が逆流してくる。  
ペニスと襞の僅かな隙間を無理に通ってわき水のように溢れ出す混ざり合った二人の体液は、床に水たまりを作っていった。  
 
◇  
 
 
 
「あ… んんっ……甲斐、もう、これでっ…最後だから…っ ね…っっ」  
「分かってる、くうううッ」  
 
どぷッ  
 
「あああッ…!!」  
 
座ったまま向かい合わせで行っていた四回目のセックス。  
理咲は甲斐の背中と首の後ろに手を回して抱き着いたまま最後の膣内射精を受け入れていた。  
 
「く……もう、出ない…な……」  
「はぁ、はぁ、はぁ、あたり、前でしょ、抜かずに、四回も、したん、だから、ね、」  
 
息も絶え絶えの理咲は甲斐の右肩に頭を乗せたままぐったりしていた。抜かずの性交を四回もされたら流石に体力も底を尽きるというものだ。  
性交の途中でほどかれた彼女の長い髪の毛が、甲斐の肩を跨いで彼の背中に流れ落ち、彼女と同じく汗だくになっている彼の肌にぺったり張り付いてしまう。  
感触自体はとても好いのだが、激しい性交のあと故に少し暑く感じた。  
 
「気持ち良かったぜ……姉貴……」  
「こんなに、やっておいて、気持ち良くないなんて、言ったら、殴るわよ、」  
 
甲斐は身体を繋げて抱き合ったままでいる理咲の背中や髪を撫でながら御礼の言葉を述べ、理咲は弟の言葉を茶化しながら性交の余韻に浸る。  
そして、暫くすると脇に落ちている自分がほどいた姉のリボンを拾い上げた。  
 
「姉貴、髪括ってやるよ」  
「ありがと でもアンタ上手く結えんの?」  
「髪の毛集めてくれたら根元で結ぶだけだから出来そうなもんだけど」  
「なによそれ? するんだったら中途半端な事しないで全部やんなさい」  
「わ、わかったよ、」  
 
とりあえず理咲の膣からゆっくりとペニスを引き抜く。  
 
ぬ゛るるる… ごぽッ…  
 
音を立てて出てくるペニスは、ねばねばの糸を引いて理咲の膣口と亀頭の先を繋いだまま伸びていく。  
 
「あ…んんッ……」  
「う、わッ 姉貴…すっげえ出てくるぞ」  
「あ、アンタが…ッ、出したんでしょーが……! こんなに、出して……私の子宮、甲斐の精子で膨れ上がってる……」  
 
ぱっくり開いた膣口から止め処なく溢れ出してくる白い液体は、それだけ尋常ではない量の精子が理咲の胎内に注がれたという証明でもあった。  
今日は危険日である。取りも直さずそれは甲斐と理咲が子作りをしたという事にもなるのだ。  
なにせ注がれた甲斐の精子が理咲の卵子と結びつけば子どもが出きるのだから。  
 
「しょ、しょーがねーじゃん、中に出すのって気持ちいいんだしさ、」  
 
それをわかっていながら欲に負けた甲斐は目を泳がせている。  
それに未だ彼の中には姉貴を孕ませたら結婚すればいいじゃんという思いがあったので、結果がどう転んでもよかったのだ。  
どうせ遅かれ早かれ結婚するのだから、妊娠したら結婚の時期が早まるだけの事だと。  
 
「……もういいわよ それより髪結んでくれるんでしょ?」  
「お、おおッ」  
 
とりあえず身体を離して理咲の背中側に回った甲斐は、汗に濡れた彼女の髪の毛を後頭部に集めて手できゅっと絞り上げる。  
 
「こんな感じか?」  
「うん、丁度いい感じ」  
 
濡れていても触り心地のいい姉の髪の毛を慈しむ様に撫でる甲斐。  
 
「姉貴の髪の毛ってホンと長いよな」  
 
ほどくと尻が隠れるほど長い理咲の髪だが、こんなに長いのに枝毛ひとつ見当たらない。  
女というのは不思議だ。  
 
「長い髪嫌いだったりすんの?」  
「まさか、姉貴の髪の毛とっても綺麗だし……俺は好きだぜ」  
「な、なによ〜、嬉しいこと言ってくれんじゃない甲斐の癖にィ」  
「俺の癖には余計だっつーの」  
 
少しの間、姉の髪を撫でていた甲斐は、絞った髪の根元にリボンを巻きつけて、結んでいく。  
 
「どうかな?」  
「うん……」  
 
甲斐が結んでくれたポニーテールを掴んで肩から身体の前に流した理咲は、何度か撫でた後、括った根元を手で触って確認する。  
 
「いいんじゃない? アンタ結構上手いじゃん」  
「そ、そうか? 俺はてっきり失敗! やり直し! なんて言われるかと思った」  
「ううん、上出来上出来 ご褒美に頭撫でたげる♪」  
「こ、子ども扱いすんじゃねぇよッ、」  
 
口では悪態を付きながらも大人しく頭を撫でさせてくれる辺り、やっぱり甲斐は甘えん坊だと思う理咲であった。  
 
 
 
結局、今日の部活は誰も来なくて中止となり、ただ甲斐と理咲が終始愛し合って終わるという、何か良く分からない物であったが  
翌日、次の演目とかいって野乃に渡された台本が、非常に描写の濃い姉弟の恋愛物であった事が全てを物語っていた。  
 
「どこかの熱々の恋人が、熱く愛し合ってくれるから恋愛ネタには困らないの」  
 
 
「か〜い〜! やっぱりバレてたじゃない! いつまで待っても野々来ないし何かおかしいと思ったのよ〜〜〜!!」  
「ご、ごめん姉貴、ってかヘッドロックはやめろってば!」  
 
◇  
 
 
そして――。  
 
「うん、いや明日は――」  
「甲斐、アンタいつまで電話してんのよ」  
「いいだろ別に、あっち行ってろよ! あ、ごめん、うちのバカ姉貴がうるさくて」  
「な〜に〜? お姉様に向かってその口の聞き方は〜!」  
 
家で長電話をしていた甲斐を注意した理咲にぶつぶつ文句を言いながら電話を切らない甲斐。  
そんな甲斐に理咲は味方を連れてきた。  
 
「ママに代わってパパにお仕置きしてあげなさ〜い♪」  
 
そう言って理咲が甲斐の膝の上に座らせたのは女の赤ちゃん。それもオムツを替えている途中で何がどうなっている……。  
 
「うわぁぁ! 何すんだこのバカ姉貴!!」  
 
抗議しながらも膝に下ろされた赤ちゃんを退けない辺り子どもを大切にしている様子が窺える。  
それもそのはず。この赤ちゃんは甲斐の子どもなのだから。  
もちろんの事、母親は理咲である。  
生まれたのは一月ほど前で、逆算してみれば見事にあの日の前後に辿り着くのだ。  
 
つまりは甲斐の言葉通り、あの時、部室でした日に出来た子どもであることは疑いようがなかった。  
まさか本当にあれで理咲が妊娠してしまうとは思ってもみなかった甲斐ではあった物の、焦ったのは最初の内だけ。  
理咲の妊娠が分かったときには両親と演劇部の友人達に祝福されながら身内だけの結婚式を挙げ、今は良きお父さんとなっていた。  
 
もっとも、落ち着きがないのは以前と変わらず、とても一児の父親には見えないのだが。  
それも仕方がない。高校二年生で一児の父となったのだから、完璧を求めるのは難しいだろう。  
それでも子どもが生まれる時には理咲の手を握って「姉貴頑張れ! 俺はここにいるから!」と出産の苦しみに耐えていた姉を側で励まし続けるという男らしさを見せていたが。  
 
「えへへ〜、か〜い♪」  
「な、なんだよ、猫なで声で、」  
「愛してるわよ♪」  
 
チュっ  
 
弟に軽い口付けをした姉は嬉しそうに微笑んでいる。  
 
「お、俺も……大好きだぜ姉貴……」  
 
 
西田甲斐と西田理咲。  
二人は血の繋がった実の姉弟でありながら、誰よりも深く愛し合う夫婦なのであった。  
 

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