ちとせ×麦 「あなたが欲しい」 (元ネタは5巻より)
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オーディションが終わった翌日、私は、麦チョコを舞台裏のスペースに呼び出した。
「ど、どうしたの? ちとせちゃん」
麦チョコは、いつもと同じように、自信なげな表情をみせながら、おたおたとした足取りでやってきた。
何故、私は、麦チョコに敗北してしまったのか……
昨日のオーデションの結果が、幾度も脳裏に反芻される。
いくら、成長している麦チョコ望んだ役とはいえ、人前での度胸が要求されるオーディションで、本当に負けるなんて思っていなかった。
「あ、ごめん。麦チョコ」
私は、あいまいな笑みをみせながら言った。
麦チョコは、女の私からみても可愛い。
ショートカットに、ふたつの小さなみつあみを垂らした髪型が凄く似合っている。
極端な内気という性格面も、マイナスとはならずに、彼女の危なっかしい魅力を引き立てている。
特に、顔を真っ赤にしてクヨクヨと悩む姿をみるのは、本人には悪いけれど、私の大好物だ。
いじいじとべそをかく麦チョコを、私は偽善者ぶって励ましたり、逆に突き放したりするのだ。
麦チョコは、私の愛くるしいオモチャだったし、今後もそうだと思っていた。
しかし、麦チョコは変わりはじめた。
自信という言葉を、生まれてくるときに置き忘れてきたような麦チョコが、演劇というモノにのめりこんでいくことで、
少しずつではあるが成長していった。蝶が羽化するように、綺麗な羽根を伸ばし始めたのだ。
しかし、本来なら歓迎すべき麦チョコの成長は、いつのまにか、私にとっての脅威となっていた。
そして、昨日の私は、単なるみじめな敗北者でしかない。
「ちとせちゃん…… あの、その」
腹が立つことに、麦チョコが何を言おうとして、逡巡しているかなんて、言葉に出す前から分かってしまう。
オーデションに落ちた私を励まそうか否かで迷っているのだ。
「ねえ、麦チョコ」
自分でも気味の悪いくらいの、猫なで声が外に出た。
今、私は、不満のはけ口を、麦チョコの意外と美味しそうな身体で満たそうとしている。
とても暗くて汚い考えだし、不毛なことだってことは頭では分かっている。
でもね。私は、オーディションに落ちて傷ついたし、いつまでも自信無さげな癖に、肝心なところで成長してしまう
麦チョコも悪いんだよ。だから、こんな酷いことをしても、きっと神様は許してくれると思う。
「こっちに、来て」
私は囁き、麦チョコに向かって手招きをする。
「な、なに? 」
彼女は、自分自身の危機に全く気付いておらず、ゆっくりと近づいてくる。
「あのね…… 麦チョコ」
私は首を振って、最後に残った躊躇いを消し去ると、麦チョコの両手を掴んで…… 思いっきり床に引き倒した。
「きゃあっ」
麦チョコは裏返った悲鳴をあげながら、盛大に尻持ちをついた。
すかさず私は、驚愕で瞼を大きく見開いている少女の両肩に手を伸ばし、固い床に押し付ける。
「なにするの! ちとせちゃん! 」
麦チョコは珍しく、はっきりとした物言いで抗議する。本当に成長したんだね。
「暴れないでね。麦チョコ」
私は、彼女の抗議を遮る形で、馬乗りになって動きを封じる。
同時に、柔らかいふとももがまともに触れて、身体の奥がじゅんと疼いてしまう。
「ちとせちゃん。お願いだから、やめて! 」
「どうして、麦チョコってば、こんなに美味しそうなのかしら? 」
肉食獣のような残酷な物言いに、少女の大きな瞳が恐怖の色に彩られる。
「どうしちゃったの? こんなの変だよ。ちとせちゃん」
追い詰められた野ウサギのようにひどく怯えながら、じりじりと後ずさろうと懸命にもがく麦チョコがとてもカワイイ。
「ふふ。私はね。結構昔から、麦チョコのことが好きだったんだ」
「え!? 」
いきなりの告白に驚き、大きな瞬きを繰り返す可憐な少女の耳元で、私は囁き続ける。
「研究会で頑張っている時から麦チョコをずっと見ていた。最初は、おどおどとして台詞を言うのも苦労していたのに、いつの間にか、
私を追い越すまでになったのが、嬉しくて、悔しかった」
「ち、とせちゃん…… 」
麦チョコはとても優しくて、素直で、純粋で…… 憎たらしい。
このあどけなくて、虫も殺せないような顔が、苦痛で歪むところがみてみたい。清楚で穢れをしらない麦チョコを汚してしまいたい。
私は既にイッテしまっているのだろう。
でも、この期に及んで後戻りなんてできない。行きつく先まで突っ走るしかない。
「麦チョコのずば抜けた声量という、素晴らしい才能は前から知っていたよ。でもね。いくら才能があってもそれを表に
出すことができなければ、宝の持ち腐れだから、そういう意味では安心していたんだ」
「才能なんて…… ない」
あのねえ、麦チョコ。謙虚も度が過ぎれば嫌みになるんだよ。
「頑張りやの麦チョコは変わっていった。どんどん魅力的になって輝き始めた」
「ちとせ…… ちゃん」
「でもね、いつしか、そんな麦チョコが怖くなったの」
このままでは、麦チョコに置いていかれてしまう。麦チョコには、ずっと私の半歩後ろで歩いてほしいのに……
「だから、私は、麦チョコを壊す」
「!? 」
私は、恐怖に怯える麦チョコの柔らかい身体を抑えつけながら、ゆっくりと唇を近付ける。
間近に迫ると、彼女の身体から発する甘い匂いが鼻腔をくすぐる。もう、我慢できないや。
「麦チョコのファースト・キス、いただくね」
「や、やだあっ、んぐっ」
私はあっさりと、麦チョコの唇を奪った。凄く柔らかくて、ぷりぷりとした感触が唇に伝わる。
「ん、んんっ」
麦チョコが身体に力を入れて必死に私をのけようとするけれど、そんな事は許さない。
「ん! 」
彼女の喘ぎ声をBGMにして唇を奪いながら、右手を彼女の胸の上にのせる。そして、てのひらに収まるようなこぶりな胸を
制服ごしにゆっくりと揉んでやる。
「や、やめて! 」
長いキスから解放された麦チョコが悲鳴をあげる。ぞくぞくする。
「麦チョコの胸って、とっても柔らかいね」
「お願い! ちとせちゃん、やめてよ! 」
形の良い眉をひそめて、苦悶する麦チョコが愛しい。もっともっといじめたくなってしまう。淫らによがった姿をみたくなってしまう。
「麦チョコ…… 大好きだよ」
すっかりとダークサイドに堕ちてしまった私は、不当な拘束から逃れようともがく少女のセーラー服に手をかけて、ゆっくりと脱がし始めた。