始まりは、満開の桜が美しかった、あの春の日だった。  
 
「一緒に演劇、やってみない?自分じゃない自分になれて、楽しいわよ」  
 
最初は、ただのおせっかいだったのかもしれない。  
 
「こうするとさ、少し、落ち着くでしょ。  
 ね?大丈夫だよ、野乃」  
 
でも、徐々に明るく、笑っていく彼女を見ているのが、嬉しくなって。  
 
「自分は変われると信じるなら、変われると思うわよ。  
 現に野乃、変わって、きてるじゃない」  
 
…その笑顔に魅せられ、惹かれていく自分に気づくまで、それほど時間もいらなかった。  
 
「…っ、くぅ」  
「ん?どうしたの野乃、寒いの?」  
「平気。ちょっと冷えてきたな…と、思っただけ」  
「もう、冬も近いしね…ほら、ちょっと貸して。  
 ……こうすると、暖かい、でしょ」  
「…ん…暖かい、わ…美麗」  
「……」  
「どうしたの?顔、赤いわよ」  
「…〜〜っ」  
 
そうして、秋が過ぎ、冬が来て。  
彼女の存在は、私にとってかけがえのないものになっていった。  
それまで抱いたことのなかった、胸を暖め、なおかつかき回すような感情。  
ずっと一緒にいたい。でも、それだけじゃ我慢できない。  
悩み、眠れぬ夜を幾たびか過ごして…。  
 
「…野乃ッ」  
誰もいない、二人きりの部屋の中で。  
私は初めて、彼女を組み敷き、強引にその唇を奪った。  
「…っ…んぅ…く、むぅっ…む、ン」  
唇を離し、見下ろすように彼女を見つめる。  
驚き、目を見開いて……その目に、涙が伝うのを見た。  
「……ごめんっ」  
私は後悔した。どうして突然、こんなことをしてしまったのだろう。  
衝動的だったなんて、言い訳にもならない。  
「…軽蔑した、でしょ。なんて女だ、って、思った、でしょ?  
 ……どうして、女同士なのに…こんな。…変よね、私」  
私は馬鹿だ。許されざる恋。  
背徳的な恋情を抱いてしまったばかりか、理不尽な欲情を強引に  
相手に押し付けてしまった。  
…嫌われたに、決まっている。  
変態。貴女は異常だわ。罵り貶める声が返ってくると、確信していた…のに。  
「…そうね。  
 でも、そうしたら、私はもっと…変な女、だということにならない?」  
耳を疑った。ばつが悪く彼女から逸らしていた視線を、再び戻す。  
彼女は微笑んでいた。涙に頬を濡らしながら。  
「…貴女が抱いている感情と、私が抱いている感情は、きっと同じものだわ。  
 だって…嬉しかったんだもの。私、貴女に、求められたことが」  
「嘘…野乃」  
彼女が、力なく降ろした私の拳をささげ持ち…そっと握った。  
「嘘じゃない…美麗、貴女の想いが…嬉しいの。  
 私も…貴女を、こんなにも、強く想っている」  
ぎゅう、と握り締められる両手から…暖かい感触が、想いが溢れてくる。  
「…でも、私たちは…女同士、なのよ。許される、わけが」  
「気持ちに嘘を付かないで、美麗。  
 性別なんて、最初から関係ない。私を…求めて?お願い」  
願うように、懇願するように。彼女の視線が、私の胸を、射抜いた。  
「……の、のっ」  
想いは、白く弾けて……  
 
……その日初めて、二人一緒に、夜を明かし、朝を迎えた。  
 
「…ぅんっ、く、ちゅ、ぅ……く」  
中から施錠され、他に誰もいない密室となった司書室。  
すでに夜の帳が下り、照明が落とされ、真っ暗な室内で。  
私たちは横たわり、影を重ねて。その身を強く絡ませあっていた。  
彼女の唇に吸いつき、口内を嘗め尽くすように、舌を這わせる。  
お互いの唾液が混じり、密着した唇の隙間から、頬を伝って、床を濡らす。  
「ぷ…ぁ。…あとで、床、拭いておかなきゃ」  
「これからもっと汚れるわ。明日になっても拭き取りきれるかどうかは怪しいわね」  
「そ、そんな。ちゃんと、拭きとら、ないと…ぁ」  
太股に沿ってうごめいていた、野乃のしなやかな指が…スカートの、中に!?  
「ちょっ…まっ……や、ぁ」  
だめ、そんな、の……下着を指先がつつく。びりり。背筋が痺れた。  
「…美麗は、今更、嫌なの?  
 私たちが、レズカップルだと、露見するのが」  
その指が、皺に沿って軽やかに上下するたび。  
吐息が漏れる。思考が、少しずつ飛ばされていくのを、確信する。  
「そんな…わけじゃ。  
 でも…じゅけ、んも…近い…し、卒業、だってぇっ」  
「そんなこと、どうでも良いわよ。結構体面を気にするのね、美麗は」  
「どうっ、でも…よくな」  
同じ大学、いけなくなったら、どうするの?そう言い返そうとして。  
ふっ、と、秘所を撫でる指の動きが、止められた。  
「…じゃあ、止める?」  
「…え」  
「今日はここまでにしておきましょうか、と言ってるの」  
え…ここまで、って……そんな。  
…秘所が、じゅんじゅんと、疼く。身体全体が…更なる快感を、欲しがってる。  
「…い、嫌っ……やめ、ない」  
「それだけ?」  
涼しげな流し目。時たま彼女を、恐ろしく感じる。  
「…やめ、ないで……おね、がい」  
「はい、よくできました。……もっとも、私もこんな状態で…お預けにされたくはないけれど」  
自分のスカートを軽く捲り上げ、私の手を引いて、指を導きいれる…。  
…下着の皺に指を這わすと、高揚の証が指を濡らした。  
「…掻き回して…淫らに、乱れ果てるまで」  
うっとりと、誘うような彼女の視線に、胸が更に熱く、鼓動をどんどん早めさせる。  
…何処で、覚えてきたのかしら。そんな言葉……  
 
「…はっ、は…ぁ、ぁ、ぁぁ……っは、くッ、ぁ」  
女にとっての、大事な場所…覆う薄布ごと、割れ目に沿って、肉を押すように弄ぶ。  
彼女は、快楽を隠そうともせずに、吐息をつき、喘いだ。  
びくり、びくり…薄布に、漏れ出る液体が染み込み、水滴を垂らすまでになっていく。  
「の、の…感じてるの?すごく……」  
「…え、え…いい、わ…いい。みれい、貴女、また…」  
「また…?」  
「…手つきが、いやらしくなったわね」  
「…っっっ!!?」  
顔面に、瞬時に血が上る。ぼぅ、と湯気が出たみたいに。  
そんな。そんなつもり、ないはず…私、そんな。  
「…自覚はしていなくても、そういうものなのよ。本当に、美麗はえっちなのね」  
……こ、このぉぉ〜。  
仕返しがてらに、彼女の両足を掴んで、強く引き寄せ。  
眼前に迫った、濡れた秘所に、てろん、と舌を這わせてやる。  
「…っは、ぁぁあぁっ!!?」  
びくん、びくん…彼女の身体が、ひときわ大きく震えた。  
つんとする、女の匂いが立ち上って。激しい息遣いと、持ち上げられた臀部から、垂れ落ちる粘着的な液体。  
「…すごい、こんなに……いったのね、いったんでしょう」  
目の前の、あまりに扇情的な光景に、自然と声が昂ぶる。  
彼女はただ、荒く息をついているだけ…薄布は液体を含んで透き通り、  
秘所の形状を克明に映し出して…もはや微塵も、下着としての役割を果たしていなかった。  
そんなものは、するすると…ふくらはぎあたりまで、引きおろしてしまう。  
「ちょっ……や、そんな、急に、みれい」  
こんなに早く、秘部を私の眼前に晒されて…さすがに恥ずかしがっているのだろうか?  
激しく、首を振って身じろぎする彼女の上に圧し掛かる。  
「どうしたの?さっきまでの強気な態度を、また見せてみなさいよ?」  
「…く、ぅぅうぅ」  
「何も言えないわよね。だって、あんたの方が、数倍えっちだってこと、今さっき証明してしまったし、ね。  
 みっともないったらありゃしないわ。ぺろんとひと舐めしただけで、あんなにたくさん、愛液を噴き出して」  
せいいっぱいの言葉責めで反撃する。すごいことを口走ってしまった気がするけど、  
もはや羞恥心なんて、どこかへ置いてきてしまった。今は、ただ。  
「そうよ、この、ド淫乱女…啼かせてあげる。気が、狂ってしまいそうなほど」  
めちゃくちゃになるまで、愛したかった。  
目の前で、乱れ、よがり狂おうとしている、彼女を。  
 

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