「ちびちゃん、もう少し待っててね。これが終わったらお昼ご飯にしましょ」  
足元で尾を振る子犬に、少女は太陽のような笑みを向けた。  
額に光る汗を手で拭い、抱きかかえていた籠を地面に下ろす。  
中に詰まった木苺を満足げに眺め、一つ一つ仕分けし始めた。  
できる限り傷の無い物を選び、籠へと移していく。  
非常に手のかかる作業だが、少女の顔には実に幸せそうな笑みが浮かんでいた。  
少女の手元をじっと見つめる子に、一粒の木苺を差し出す。  
「ね、美味しいって言ってくれるかな? これで砂糖漬けを作れば、皆笑ってくれるかな」  
少しだけ寂しげな笑みに、子犬は足元に擦り寄っていく。  
柔らかな毛の感触に頬を緩め、優しく頭を撫でてあげた。  
白い肌なのに、手には数々の傷跡。明らかに毎日の生活痕ではない傷も幾つかついている。  
「こないだね、村から小さな女の子が遊びに来てくれたんだよ。  
その子は私の姿を見ても怖がらなくて……ちょっと嬉しかった」  
頬を赤らめ、口元を袖口で隠し微笑む。  
 
風になびき、さらりと揺れる黒髪の合間から見える異物。  
ソレは人間には無いモノ。  
ソレがあるから、少女は人間から忌み嫌われ。  
しかし、少女は人間を愛し、守ろうとする。深淵の闇から。  
 
「よーし、それじゃ砂糖漬け作っちゃうからね。  
作ったらまた村に行っておいてきてね。ちびちゃん」  
袖をめくり上げ、鍋に木苺を移し、木箆でかき混ぜる。  
その表情はとても嬉しそうで。  
だけれども、子犬はどこか寂しそうな瞳を浮かべていた……  
 
 
今日も一人で森の中へと入り、食料を捜索する。  
自分の為ではなく、怖がられている村人の為に。  
いつものように籠を持って。  
 
――しかし、今日は少し違っていた――  
 
 
少女の背中を数個の瞳が見つめていたから。  
殺意は無い。だが、あからさまな悪意に満ちていて。  
時折振り返る子犬には全く気がつかず、少女はどんどん森の奥へと進んでいった。  
 
 
「ふぅ、結構奥まで来ちゃったな。そろそろ帰らないと日が暮れちゃうかも」  
薄暗い森の中、大きく息を吐き、籠を抱え。  
草木の擦れる音、枯れ枝が踏まれ、大きな音が響き渡った。  
野生の動物かと反射的に身を硬くするが、現れたソレらに笑みを浮かべた。  
「あ、えっとこんにちわ。こんな所でどうかし……」  
少女の言葉が途切れた。  
ソレらが少女に襲い掛かってきたから。  
口を塞ぎ、手足を押さえつけ、地面に押し付ける。  
荒い息を吐き、にやついた笑みを浮かべた。  
「はぁはぁ……これが噂の鬼か?」  
「結構可愛いじゃねぇか。これ、ヤっちゃってもいいんだよな」  
「ああ、どうせ鬼だ。誰も文句いわねぇよ」  
三人の男達は下卑た笑いを浮かべ、少女の身体を満遍なく観察し始める。  
澄んだ瞳と桜色の唇。艶やかな黒髪が茶色い枯れ葉の上に広がり、一種の芸術品のようにも見える。  
夕焼けのような紅色の着物は魅惑の身体を隠してはいたが、きっと魅惑的なのだろう。  
少女はきょとんと目を見開き、男達を見回した。  
こんな状況でも全く抵抗する気もなく、逆に男達に好意的な興味を抱いているようだ。  
毒気を抜かれたのか、男は手を離し、少女の口を解放した。  
真っ直ぐに男達の瞳を見つめ、首をかしげた。  
「お兄さん達だーれ? なんで私を見て怖がらないの?」  
どこか世間知らずな雰囲気をかもし出す少女に、男達は顔を見合わせ。  
「ああ、怖がらないよ。こんな可愛い子だとは思わなかったから」  
手を押さえつけていた髭の男が少女の身体を抱き起こした。  
ちらりと脚を押さえつけている痩せ男へと目で合図を送る。  
「そうだね。こんな可愛い子だったら、村の皆もきっと喜んでくれるよ。あ、でもなぁ」  
脚を離し、少女の横に座りこむ。  
そしてもう一人の太った男が少女の髪に触れ、頭を撫でる。  
「お兄さん達が村の皆を喜ばせる方法教えてあげるよ」  
悪意の篭った口先だけの親切な言葉だったのだが、少女は無垢な瞳を輝かせ、大きく頷いた。  
太った男の膝に手を置き、身を乗り出す。  
整った顔が側に寄ってきた事に、太った男は視線を逸らした。  
嫌がっているわけではない。女の子がこんな近くに寄る事など今まで無かったから、耐性ができていないのだ。  
だが、少女はそんな事気がつかず、更に体を乗り出し。  
「ま、まずはその着物に危ないものが入っていないか、僕が調べてあげるよ。はぁはぁ」  
いきなり身八つ口から手を差し入れ、豊かな胸に触れる……  
がその胸はサラシによって守られており、触っても微かな柔らかさを感じるだけ。  
それでも感じたことの無い柔らかさに、痩せ男は興奮し、サラシの隙間から鼻を突っ込み、女の香りに酔いしめる。  
「それじゃあ、俺は足元を」  
裾を開き、白い脚を露にした。程よく筋肉のついた腿、それから大事な所を守るのは白く長い布。  
薄い布だから、ぷっくりとした丘の形がはっきりと確認でき、恐る恐る指先で触れた。  
ぴくりと身体を震わせる少女に驚いたのか、すぐに指を離し、それから鼻を近づけた。  
「まて、お前らずるいぞ。ま、どうせ童貞だから女の体に興奮するのはわかるが」  
唯一妙に落ち着いた髭男が大きく息を吐いた。  
胸と下半身をまさぐられ、少女は不可思議な顔をしているが、大きな抵抗はしない。  
 
――村では『森には鬼が住む』と恐れられ、凶悪な偶像として存在していた。  
それなのに――  
 
「やん、くすぐったいよ。そんなトコお鼻いれちゃだ……んぁっ」  
実際の鬼は紅い着物を纏った無垢な少女。  
男二人の悪戯に、楽しそうに甘い声を上げ。  
 
「んー、本当に鬼なのかな? オレにはそうは見えないのだが」  
後ろから抱きしめ、頭を撫でてやる。  
さらりとした黒髪が気持ちいい。だけれども指先に当たる硬い日本の異物が、少女が人外である事を如実にあらわしていた。  
「こんな小さな角がねぇ」  
硬い角を指先で弄りながらぼんやりと考え。  
腕の中の少女が小刻みに震えていたことに気がついた。  
顔を覗き込むと、少女は頬を赤らめ、荒い息をしている。  
潤んだ瞳で髭男を見上げ、  
「あ、あの……角いじっちゃ……やです……んゃっ」  
「弄っちゃダメといわれるとやりたくなるのがオレなんだよな」  
頭を抱き寄せ角にキスを一つ。それから舌先で弧を描くようになぞり、口に含んでみる。  
その度に少女は甘い声を上げ、身をよじる。  
露になった大きな胸はつんと天をむいており、痩せ男は胸の合間に顔をはさみ、息荒くして少女の柔肌をしゃぶり。  
「じゅる……どんな飲んでも飲んでも……ぐ……溢れてくるぞ。この泉は」  
角の刺激のせいなのか、それとも胸への刺激なのか、ぐっしょりと濡れた褌は、もう大事な所を隠す役目をこなしていなかった。  
ほんのりと透ける柔肉。白いソコはぴったりと閉じているのに、刺激を与えられるたびに蜜を溢れさせる。  
「やぁ……んぁ、もうやぁ、怖いよぉ」  
絶え間なく襲う快楽に耐え切れず、涙をぽろぽろと零し始める。  
少女のそんな姿に、やせ男と太った男は顔を見合わせ、気まずそうな表情を見せた。  
「まあまあ、そんな怖いんだったら、お兄さん達を気持ちよくしてごらん。  
そうしたら許してあげるよ」  
髭男は二人の男に合図を送る。  
いそいそと男達は立ち上がり、我先にとズボンを下ろし始めた。  
ずるりと顔を出す二本の陰茎。少女は目を丸くしてそれらを眺め、首をかしげる。  
「お兄さんたち、お股に変な棒ついてるね。これ何?」  
「これはね、大事な棒なんだよ。ちょっと触ってごらん」  
髭男の言葉に、少女はそっと陰茎に触れてみた。最初は恐る恐る。  
少女の柔らかい手の感触にびくりと反応し、段々と硬さを得てくる陰茎。  
「あ、おっきくなった。それに硬く……」  
初めての感覚に、少女は楽しそうに手を動かし始めた。  
先端を指先でつつき、生き物のようにびくびく動く竿を手の腹でこすり上げる。  
「楽しそうだね。もっと楽しい事教えてあげよう。口でソレを舐めてごらん。美味しい牛乳がもらえるよ」  
卑下男の指示に、少女は上目で痩せ男の顔を見てから、口を大きく開けた。  
「ん、じゅ……んんっ、美味しくな……んんっ」  
小さな口を開き、大きな陰茎を頬張る姿に、女をあまり知らない痩せ男の何かが切れたのだろう。  
少女の髪を掴み、自らの腰に押し当てる。  
喉の奥まで陰茎を押し込めると、腰を大きく振り、即物的な快楽に酔いしれた。  
「ず、ずるいぞ。僕だってもっと味わいたいのに」  
太った男は少女の背後に回り、腰を押さえつけた。  
濡れ、色の変わった褌を力任せに破り、いきり立った陰茎を無理やり押し込める。  
まだ無垢な泉はこじ開けられ、少女は声にならない悲鳴を上げた。  
「女女女、女の中……こんなにいいなんて。あいつらの言っていた事は本当だったんだな」  
息を荒くし、腰を打ち付ける。  
大きな腹が邪魔して奥まで入り込むことはできなかったが、先端だけでも脳を揺さぶるような快楽に男は身を震わせた。  
「ぐっ、ダメだ」  
「ああ、僕出す出す」  
数分もせず、少女の中で精を放つ二人。  
白い液体が少女の唇を、無垢な泉を穢していく。  
陰茎を引き抜くと、ごぷりと精液があふれ出し、泉は元に戻ろうと収縮を始める。  
それでも無理やり入れられたからか、中々戻ることはできず、柘榴のような赤みが空気にさらされていた。  
口の中の精を吐き出そうと大きくむせたが、すぐに男のが再び侵入してきて、  
整った顎を伝い、地面に白濁溜りを作っていく。  
「やだよぉ、もうやめぇ……んっ、あっ」  
泣き叫ぶ少女など気にせず、男二人は精を放つ事だけに夢中になる。  
 
その傍らで、髭男は煙管に火を灯していた。  
大きく煙を吸い込むと、息を吐く。紫煙が燻り、空気に溶けていく。  
「あーもうあいつらはもう少し穏便に楽しめばいいのにな。しゃーねぇ」  
少女が犯される姿を実に楽しそうに眺め……  
 
かさりと落ち葉を踏む音が背後から聞こえた。軽い足音。  
髭男は振り返り理、その音の正体を探る。  
そこには小さな子犬がいた。歯をむき出しにし、男にうなり声を上げている。  
本当に小さな子犬だから、それくらい無視しておけば良い。  
しかし、髭男はその子犬に妙な嫌悪感を抱き、煙管を振り上げ。  
 
子犬を瞳の端に捕らえ、すぐに男がその子犬に何かしようとしている事に気がついた少女は、力なく手を伸ばし。  
「ダメ。ちびちゃんいじめちゃ……ダメぇぇっ!」  
大粒の涙が零れ落ちる。  
 
――その瞬間、彼女に纏う空気が一気に変わった――  
 
「退け」  
冷たい言葉が彼女の唇から零れた。血のような紅い唇から。  
口を犯していた痩せ男は驚愕の表情を浮かべ、彼女の顔を覗き込み。  
「ちっ、ぎゃっ」  
陰茎に鋭い爪を突き立てられ、痩せ男は地面の上を転げまわる。  
そんな異様な光景に、太った男は慌てて彼女から離れようとしたのだが。  
いつの間にか地面に叩き伏せられ、首筋に薙刀を突きつけられた。  
踏みつけられた背中に力が篭る。  
「小物が。貴様ら共はおとなしくしとれ」  
太った男を踏みつけたまま、彼女は髭男を睨みつけていた。  
髭男は肩をすくめ、大きくため息をついた。  
「やれやれ。これが本当の姿かい? まいったね。こんな美人さんとは」  
立ち上がり、彼女の滑らかな黒髪に触れようと手を伸ばし。  
『主に触れる事は許さぬ』  
手の甲に走る鋭い痛み。ぱっくりと開いた傷跡からは、一筋の血が流れ出した。  
その傷をつけた白い獣は、彼女の傍らに佇み、静かな金色の瞳で男を睨みつけている。  
長い尻尾を不機嫌そうに振り下ろし、鋭い牙を露にする。男に向かって。  
柔らかな獣の頭を撫で、彼女は優雅に微笑んだ。燃えるような紅い瞳で。  
「戯れてくれて感謝しておこう。礼として……汝をたっぷりと楽しませてやろう」  
「いや、結構だ。オレは全く楽しんでないから」  
こんな状況でも、髭男はへらへらと笑みを浮かべる。  
二人のにらみ合いはしばし続き……  
先に動いたのは髭男だった。身体から黒い影が現れ、ゆらりと彼女に襲いかかり。  
「萌え散れ……」  
風のように彼女の薙刀が振り下ろされた。闇を切り裂き、霧散させ……  
 
髭男の姿が崩壊した。ぼろぼろと何かが零れ落ちる。  
鳥型の小さな異質の存在がわらわらと彼女の周りに集まり、彼女を……彼女のさらけ出された胸を見上げ。  
『乳の話をしようじゃないか』  
「去ね!」  
もう一度、薙刀を振り下ろした。今度は軽く。  
それだけで鳥達……鳥の鬼たちは好き勝手な乳の感想を述べ、森の中へと消えていった。  
 
彼女は大きく息を吐き。  
『ヒワイドリが闇に付かれたか。そうなると厄介だな』  
獣が彼女の足に擦り寄る。身体を震わせると、段々と姿が変化していき、小さな犬の姿へと戻っていった。  
「ま、これくらいの闇ならば払える。それよりも厄介なのは……簡単に払えぬ人間の小さな闇だ」  
あまりの出来事に気を失った太った男と痩せ男の姿を視界に捉え、ため息をついた。  
『どうするんだ?』  
「闇を払うしかないだろう。性に関する闇だから」  
真っ赤な舌で唇を一舐めし、男達を仰向けにした。  
 
「……赤玉が出るまで搾り取れば良い事」  
 
自らの泉を指で開き、彼らの上に腰を下ろし。  
 
「ん、そんなもんか。この短小が! ほれ、こっちは早漏か。こんな臭いものじゃ、女は満足させられぬぞ」  
「あ、ダメ。もう出ませ……ぐぅ」  
陰茎を素足で踏まれ、痩せ男は半泣きで再び射精し。  
「ああ、鬼様、もっと僕を踏んでくださ……ふふっ」  
背中を強く踏まれた太った男は、恍惚の表情で彼女の脚に陰茎を擦りつけ、精を放ち。  
 
 
そして、子犬は大きな欠伸をした。  
 
 
――昔昔、森の奥には鬼がおってな。  
鬼は男を食らい、血のような真っ赤な口で笑い声を上げ。  
食われた男は、一番大事な物を失うってわけじゃ。  
だから決して、森に入ってはいかんよ。これはじじいとの約束じゃ……  
 
ほれ、昔話をしてやったんだから、爺のコレを足で……いや、下駄で踏みしめて……  
ああ、なぜ逃げる。……ああ、やっぱり鬼様の足に敵うものは……  
 

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