『美女侍らせて――――蜀服』
ギチギチと軋むような音とともに、九峪様のオチンチンが私のお尻へと入り込んできた。本来閉
ざすべき肛門は、主の意に反して口を開く。
本来排出する為に作られた器官での逆流感覚は最初、脂汗が滲むような気味悪さがあった。それ
に慣らされ、当然と思わせられるほどに摩擦を重ね、今や快感すら感じ取ってしまう私の腸。
もはや本来の役割を全うしているとは言えない。異常なほどに分泌を即す腸液。排出するのでは
なく迎え入れようとぜん動する腸壁。排泄と快楽が直結した、異様な神経回路。それら全ては一年
という長い年月をかけて、九峪様にゆっくりと『作り変えられた』のだ。
九峪様の存在なくして生きては居られない体と心。それは私にとてつもない幸福感を与えてくれ
る。自分の全てを捧げられる相手に出会える奇蹟。私は今、幸福だ。
――そう、たとえ赤子のように九峪様を抱きしめて懇願している今でさえ、私は紛れもなく、幸せなのだ。
「九峪様、お願いです、動かないで、動かないでくださいmし」
「どうして?」
「今動かれると、私は我を失ってしまいます。恥知らずにイキ狂う雌になってしまいます」
「でも気持ち良いんだろ? それは良い事じゃないのか?」
「いいえ、いいえ。それでは私は九峪様を想っていられません。欲にのみ突き動かされる畜生に成
り下がってしまいます。あぁっ! 中でピクピクと震えて……っっ! ふぁぁ……ぁ」
「紅玉さんのアナルが気持ち良いからだぜ? そんな小さな動き、俺が意識したって抑えられねーよ」
「御免なさい。九峪様。それでも、もう少しだけこのままで……」
対面座位。目の前に九峪様の顔がある。
私は抱きしめる力をより強くする。達し過ぎた体は人並みの力しか生み出せない。それでも、九
峪様の温もりを感じる事は出来る。汗ばんだ体。脈打つ心臓の鼓動。ここに九峪様が居るという安
心を、私は得る事が出来る。
ピク、ピクと小さく九峪様のオチンチンが動くたびに、私は甘い吐息を漏らした。ほんの少しの
動きが、脳を焼き尽くさんばかりまで増幅されて私の背筋に快感が走りぬけて届く。
九峪様はオチンチンを動かさない代わりに、さまざまな箇所に愛撫を施してきた。
耳たぶを甘噛みし、穴に下を這わす。
「んっ、あ、あぁ……九峪様……おいたが過ぎますわ」
「ダメか?」
「い、いいえ……あんっ、首に口付けされては、痕が残ります」
「良いじゃんか。皆に紅玉さんは俺のものだって、言いふらしてやろうよ」
「もう、九峪様ったら、心にも無いことを……ひぃッ! また動いてぇえ゛」
知らぬ間に九峪様がゆるゆると腰を動かしていた。体が揺れ動く。ガクガクと首が据わらず視線
が彷徨った。攣ったように痙攣する自分のお腹、ギュッと力を込めた尻たぶが、九峪様のオチンチ
ンを少しでも感じようとぎゅっと咥えこんでいる。
オチンチンのエラ、少し右曲がりの竿。その周りを縦横に走る血管の一本一本まで、私のお尻は
感じ取っていた。尿道口から湧き上がる先走り。九峪様も感じてくれている。腰を動かしていたの
は意地悪だけじゃない、九峪様も我慢してくれていたのだ。
嬉しくなって、自分から積極的に腰を動かした。今度は逝かされるだけじゃなく、共に達したか
った。与えられるだけではなく、快楽を与えたかった。
一突き毎に気絶しそうなほどの愉悦が襲い掛かる。私は床に散らかされていた魏服を噛み締める
と、そこにあられもない嬌声を放った。そうしないと正気を保てなかった。ぎりぎりと噛み締める
と、繊維が少し断ち切れるのを感じる。
腰を振るのは、九峪様が達するまで絶対に止めない。
「んー! んぶぉー、おぉおお゛、ぉおおお!」
「くっ、紅玉さ、おほっ、すご、くあっ! 奥はぜん動してるし根元が千切れそうだ……」
「ふぐぅ、ふ、ひぐっ、ひぐぅうう!」
視界が明滅する。九峪様も自ら腰を打ち付けてきた。二人分の動きが重なって、猛烈な勢いで腸
壁が削りたてられる。
「紅玉さん、まだ逝っちゃ駄目だ」
「ふぐっ!?」
「今回は一緒にイクんだから、我慢するんだぞ!」
「ふ、ひゃい!」
頷いた途端、口に咥えていた服がはらりと落ちた。途端、これまで抑えられていた声が一気に開
放された。
「ふぃぃいいい――! いぎっ、あぐぁっ! ひふぅうう! 九峪様、まだ! まだですか!?」
「まだだ。我慢しろ」
迫り来る絶頂感。つい先ほど誓ったばかりなのに、決意は早くも崩れ落ちた。ドクドクと脈打つ
音が耳元で聞こえている。
「イク、逝きます! 紅玉はイきまずぅ!」
「駄目だ!」
イキタイ! でも九峪様が許してくれない。歯を食い縛った。ギリギリと音を立てながら、精神
で絶頂を先延ばしする。でも、九峪様は腰を緩めてくれない。それどころか私を更に絶頂へと押し
上げようとするかの如く、腰を強め、のの字を書いて高めてくる。
「もう許して、ゆるしてくらひゃい!」
「まだだ。あと少し、俺もイクから、一緒にだ!」
「ほあ、あぁぁ……いや、もういやぁぁぁ……いきたい、いきたいのぉ――!」
涙が流れてきた。私はか弱い女のような声を出して絶望の声を吐き出す。苦しい。本当なら今す
ぐにでもイけるのに、それを我慢するのはとてつもない苦痛だった。でも、勝手には逝けない。全
てを捧げると誓った人の言葉なのだ。私は駄々をこねながら、その命に反することが出来ない。
「もう直ぐ逝くから、さ。あとじゅっ、かいくらい」
十回。なんて多い回数だろう。気の遠くなるような長い時間。望みに望んだ絶頂はいまだ、遥か
永遠の彼岸にあった。
「いぎぃっ」
「二」
「……んぐぅ〜〜!」
「四」
「んごぉおおお!」
「後四」
あと、四回……。後四回頑張って耐えたら、イける……。九峪様と一緒に、早く、早く――!
「……八、九!」
ヌポン、と音を立てて、九峪様のオチンチンがお尻から抜けた。突然の事だ。
「あ…………おぁ?」
何故九峪様はお抜きになったのだろう? 私を逝かせたくは無かったのだろうか? それともイ
キたく無かったのだろうか? ……私はイキたい。淫らなお尻にもう一度オチンチンを埋め尽くし
て、荒々しく突きこんで蹂躙して、狂わせて欲しい。
私は喪失感に耐えられなくなった。直腸を埋め尽くしていたあの窮屈な感覚は、その実何よりも
充実感に満たしてくれていたのだ。顔がくしゃりと歪んで、制御不能となって勝手に涙が流れる。
言葉が自然に出ていた。
「オチンチン…………ください」
「うりゃあ! イッてしまえ! ていうか俺も出るっ!」
「お、オォン――――ッッ! 来た、これ、コレぇ! これが欲しかったのぉぉお!」
大きな波が来る前の、潮の引き。
一瞬全身の感覚が喪失し、これまでで一番の絶頂が来るのだな、と確信した。予想できる強烈な
刺激に、背筋がぶるりと踊る。
「ひ、ヒハァ――――!?」
腸内で精液が出てる! びしゃびしゃって熱い精液が腸壁を叩いてる! オチンチンがブルブル
震えてお尻の中を拡げてるぅ!
私は壊れた操り人形のようにガクガクと踊る。待ちに待った絶頂。イキ狂うとはこんな事を言う
のだろうか。平衡感覚が消失して、どちらが上なのか分からなくなった。分かるのは九峪様のオチ
ンチンと、それを咥えている私のお尻。それが中心にある。私の思考も、私の心も、今だけは頭で
はなく直腸で物事を感じ、考えている。
その直ぐ傍で、ビキビキに張り詰めた淫核があった。剥き出しになった淫核は空気が触れただけ
で震え、歓喜していた。薄皮を割って中からもっと敏感な何かが出てしまうんじゃないかと、心配
になるくらい張り詰めていた。
九峪様が遠慮なしにそれを掴み、捻り、コリコリと苛め倒した。同時に、乳首をつままれ、膣に指を入れられる。
「ぎぃ……っ!?」
ガクン、と大きく首が一度揺れた。瞳孔が開き、目を見開く感覚。快楽はやって来ない。一拍遅
れて、大きすぎて何がなんだか分からない衝撃が、身に襲った。
「あ、あぁ、あぅうぅぅうう……!」
絶対容量を超えた快楽に、何がなんだか分からないまま、私は失禁してしまった。
「ほ、ほふぅうう〜〜……」
ゆっくりと迫り来る視界の闇。良く慣れた感覚に、私はまた引き込まれた。
私は今、果てしなく満足だ……。
漂う意識の底。拳法に未熟だったかつては何度も経験した、今となっては珍しい気絶した時の意
識。ふわふわと自己を確認するのも難しい空間で、九峪様のことを考える。
凛々しい九峪様。明晰な九峪様。ひょうきんで調子者で、優しく慈悲深く、でも意地悪な……。
私の愛しい九峪様。何故あの人は自らの世界へと帰らなかったのだろう? 何故西都督府ではなく
当麻の街に残ったのだろう? 何故側に私を選んだのだろう? 九峪様の側には魅力的な女性が数
多く居て、皆が私よりも若くて。こうして共に居る時でさえ、私は一抹の不安を隠せないでいる。
九峪様が乱暴に私を抱くのは、そんな心を見透かしているからなのかも知れない。もしそうだと
すれば、本当に恐ろしい洞察力だった。
私は九峪様を失いたくない。一度手に入れた温もりを、取り戻した温もりを二度と失いたくなか
った。亡き夫の、九峪様とはまた別の温もり。失った時のあまりに大きな悲しみ。
たとえ私自身の尊厳に代えてでも、手元に置いておきたい大切な人。
そうだ。
次は私から九峪様にお願いをしてみよう。
今日から ア ナ タ と呼ばせて頂いて――――いいですか?
それはとても、いい考えのように思えた。
美女侍らせて・完