一年の計は……  
 
 九峪の前では衣緒と羽衣の二人による餅つきが行われている。  
 流石姉妹、テンポは非常にリズミカルだ。ただ羽衣が調子に乗りすぎたのかか、正月からいらんことを…………。  
「ぺったんぺったんお餅をぺったん ぺったんぺったんお餅をぺったん」  
 これだけなら良かったのに、  
「ぺったんぺったんお餅をぺったん 衣緒ねえちゃんのお胸もぺったんこ、ぺったんぺったんお餅を…………」  
 リズムが良かったので九峪は“あれ? いまなんか……”と思ったくらいだが、姉は妹の新年一発目の失言を見逃さなかった。  
“ゴワシャッ!!”  
 臼が綺麗に二つに割れた。あと少し羽衣が手を引くのが遅ければやばかったかも。  
 外したのかそれとも外れたのかは、尻餅をついている羽衣を笑って見下ろす衣緒にしかわからない。  
「ぼ、暴力反対、新年早々まず最初にやることがそれじゃおねえちゃん進歩ないよ」  
 ずりずりと下がりながら妹も進歩のないこと言う。この二人はやはり姉妹だと九峪は思った。  
「だいじょうぶよ 暴力なんて使わないわ、ちょっと童心に返るだけだから」  
「ど、童心に返るって おねえちゃんのお胸は充分童心に返ってると思うよ」  
 またいらんことを言う。  
「凧揚げって…… 面白そうだと思わない、羽衣」  
「紐付けただけでぶん回される、とか?」  
 衣緒の笑みが深くなった。神の遣いにして耶麻台総司令官である九峪が戦慄を覚えるほど怖い。  
「私たち、やっぱり姉妹ね」  
「イ、イヤァアアアア〜〜〜〜〜〜!!」  
 ……新年早々死ぬなよ羽衣……  
 九峪は思わず手を合わせた。合掌。  
 
                            終わり  
 

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