紫色に深く、静まりかえった夜。  
幾星霜を経た満天の煌めきの下で、  
その輝きすらも霞ませるほどの“美”が踊っていた。  
それは一つの優美な肢体が映し出す人影だった。  
若さと躍動感に溢れた四肢は伸びやかに、流麗に舞い踊り。  
それにつられて虚空を裂く二筋の銀光は、星々が砕け散る様にも似ていた。  
志野、である。  
彼女は、いつもの布面積の極めて小さな踊り子の衣装に身を包み、剣舞を行っていた。  
辺りには、志野の他には、誰の姿もない。  
普段なら四六時中、彼女の側を離れない珠洲さえも、今はいなかった。  
珠洲を起こさないように、志野が密かに抜け出してきたからだ。  
宮殿からも離れている、この場所は志野の秘密の場所であった。  
 
耶麻台共和国の誕生にともない、復興軍の大幹部であった彼女は、将軍に任命された。  
それからというもの、日中は革製の挂甲に着用を義務づけられ、雑務に追われる日々が続いていた。  
珠洲は「格好良いと、志野」と誉めるが、志野自身にとってみれば、踊り子の衣装よりも重く、何より全身を鎧で覆う感覚にいつまでも馴染めなかった。  
まるで自分が自分で無くなっていくような、漠然とした不安。  
将軍職も、鎧も、自分には似合わないと思うし、毎日毎日、同じ場所で同じことを繰り返す生活も、長続きしそうになかった。  
そんな志野にとって、誰もが寝静まる深夜、誰の視線にも晒されない場所でひとり、慣れ親しんだ衣装で舞いを舞うのは、一時の慰めになっていた。  
――いつか、一切のしがらみを断ち切って、見知らぬ土地から見知らぬ土地へ、自由きままな旅がしたい。  
志野は、そう願っていた。  
だが、それがいつになるか、志野には見当もつかなかった。  
今、彼女は耶麻台共和国を去るわけにはいかない。  
彼女には、去れない理由があった。  
なさねばならない責務がある。  
 
仲間に、部下に、民衆に、信頼され頼られてもいる。  
そして……  
使命感よりも、責任感よりも、そして人々からの信頼以上に。  
志野を、耶麻台共和国に留まらせる、存在があった。  
日々を重ねる毎に、少しずつ、だが確実に、自分の心に入り込んでくる横顔……  
 
「……志野?」  
 
――!?  
舞いの最中、志野の背に突然、若い男の声がかかった。  
ハッ、とした志野が、あくまで流美な動きにて、声の方向へ身体ごと振り返る。  
その視線の先、ちょうど月光が降りる辺りに、一人の若者が立っていた。  
この時代に一つしか存在しない、ブレザーの制服姿。  
耶麻台共和国の中心にして、神の遣い。  
そして、今まさしく、志野が想いを馳せようとしていた男。  
 
「…く、九峪様!?」  
明らかに動揺した素振りで自分の名を呼ぶ、志野の思い掛けない反応に、九峪の方が面喰らった。  
「…わ、悪い、驚かせちゃったか? まさか、気付いてないと思わなくて」  
慌てて謝る九峪に、志野はさらに焦ってしまう。  
実際、九峪は悪くない。  
むしろ、迂闊なのは、自分の方だ。  
いつもならば、どれほど舞いに集中していようとも、近づいてくる気配を読み違えたことは一度としてない。  
これが九峪でなく、狗根国の乱破であれば、すでに自分はこの世にはない。  
――いったい、自分はどうしてしまったのか  
とにかく、志野は即座に、九峪に弁解した。  
「…い、いえ、気付かなかった私がいけないんです。少し、踊りに熱中しすぎてしまって」  
そう言って微笑むと、九峪が「そうか」と頷く。  
 
「…九峪様は、こんな夜中にどうして?」  
石を投じられた湖面のように揺らぐ心中を何とか押し隠し、志野が尋ねる。  
「ああ、なんだか眠れなくってな。ちょっと夜の散歩」  
「そ、そうですか」  
「珠洲が一緒じゃないなんて、珍しいな」  
「…え、ええ」  
表面上、冷静に話しながらも、志野は内心、気が気ではなかった。  
九峪と自分以外、同じ空間に誰もいない――  
耶麻台軍に参加してから、それなりの月日を経てきた志野だったが、こんな状況は初めてだった。  
それだけに、いつもは努めて頭から追い払っていた想いに、否応なく直面させられる。  
 
出逢ったときの、最初の印象は、「奇妙な男」、だった。  
風評に聞いていた人物像とは、全く異なる九峪の人となりに、当時の志野は激しく面喰らったものだ。  
旅芸人としての長い漂泊の人生の途上で、様々な人間を目にしてきた志野だったが、そんな彼女をもってしても、九峪という男は計り難い人物であった。  
奇抜な服装、常人と全く異なる思考方法、そして秘めたる超常の力。  
そんな得体の知れぬ神秘性を一笑に伏すような、気さくで、無邪気で、誰にでも分け隔てなく接する態度。  
様々な要素を内包する九峪という人物に、志野は戸惑い、呆れ、時には畏怖を、と様々な感情を覚えた。  
そして、志野が最終的に、九峪に見い出したもの。  
――それは、“安らぎ”であった。  
九峪がいるだけで、どのような苛酷な状況であっても、乗り切れるような安心感を周囲の誰もが感じ。  
どのように殺気立った空気でも、彼がいるだけで和やかになる。  
耶麻台共和国の仲間との暖かな触れ合い。  
その中心にはいつも、九峪の、無邪気で、爽やかな笑顔があった。  
 
九峪の笑顔は、志野にある男を思いださせた。  
志野が所属する旅芸人一座の先代座長・志都呂。  
かつて養親を狗根国に殺され、悲惨な境遇にあった彼女を救い出し、今の旅芸人一座に入れてくれた恩人。  
人間らしい暮しと、暖かな触れ合いを取り戻させてくれた、父親とも慕った男。  
そして、初恋の人でもあった男。  
外見上はどこも似ていないはずなのに、志野は自然と彼と九峪を重ねて見てしまう。  
それは志都呂を失って以来、忘れていた安らぎを、九峪の笑顔が思いださせてくれたからかも知れない。  
その笑顔を見ることは、いつしか志野のなかに喜びを育てた。  
そして、志野は誓った。  
もう二度と、この笑顔を失いたくない。  
この笑顔を守るためなら、自分はどんな事でもしよう、と。  
 
「どうしたんだ、志野?」  
 
「――!!」  
九峪に呼び掛けられ、志野は急速に現実の世界へと引き戻された。  
「い、いえ、すみません」  
知らないうちに、鼓動が速くなっていた。  
自分の顔に、薄らと朱が差すのを、否応なく実感させられる。  
目の前の九峪には、踊りの為に肌が紅潮したように見えていたのが幸いだった。  
荒くなりかけた呼吸を、懸命に沈めようとする。  
そして、それが少しずつおさまりかけたとき、九峪がこう言った。  
「見学させてもらっていいか、志野の踊り?」  
「え、は、はい」  
反射的に即答してから、志野はさらなる鼓動の高鳴りを感じた。  
それを身体から追い払うように、志野は剣舞を再開した。  
 
玄妙で幻惑的な、剣の舞い。  
九峪の目には、その動作のどれもが予測不能で、そして何よりも美しく映った。  
眼前で展開されている“美”に比べれば、星空の輝きすらも、夜を穿つ虫食いの穴にしか見えなかった。  
それほどまでに、九峪は志野の織り成す美しさに見愡れ、酔い、虜になった。  
 
そんな九峪の熱い視線を、志野は物理的な感覚として感じていた。  
彼女が舞うたびに、極小の布地の中で揺れる、豊かな乳房。  
筋肉と脂肪が完璧なバランスで融和した、蠱惑的な臀部。  
それとは対照的な、折れそうなほどに細い腰。  
薄らと桃色に染まる、陶器のように白く滑らかな肌。  
夜露に濡れるように輝き、艶めかしく振り乱れる髪。  
情熱的に潤んだ、深い泉のような黒い瞳。  
その全てに、九峪の視線があますところなく注がれているのが分かる。  
踊り子として、そんな視線には慣れっこのはずなのに、まるで初めて感じるもののような錯覚を志野は覚えていた。  
意識するたびに、どうしようもなく心臓は激しい音楽を奏で続け、肌が上気していく。  
それを振り千切るように、志野が激しく地を蹴り、天高く跳躍した。  
空中で回転し、着地しようとした、その瞬間。  
 
(――え!?)  
 
ぐらり、志野の身体が空中でバランスを失った。  
踏み切りのタイミングを誤ったのだ。普段の志野ならば、考えられないミスだ。  
受け身もとれぬまま、志野は自分の身を襲うであろう、衝突の衝撃を覚悟した。  
だが、予想に反し、彼女の身体を受け止めたのは、暖かな感触であった。  
「大丈夫か、志野!?」  
「…九峪、様」  
きょとん、と目をしばたく志野は、自分が地面に叩きつけられる寸前、すべりこんできた九峪の身体に受け止められたことを知った。  
 
「危なかった…、怪我はないか、志野?」  
「は、はい…、ありがとうござ…」  
礼を言いかけたところで、志野は硬直した。  
いつの間にか自分が九峪に組みしかれている体勢になっていることに、気付いたからだ。  
「あ…」  
驚きと、かすかな怯えを含んだ吐息が、可憐な唇を震わせた。  
そこで九峪もまた、自分が如何なる状況にあるのかに気付く。  
反射的に言い訳しようとした九峪の口が、半開きのまま固まる。  
志野の潤んだ瞳が、九峪を見上げている。  
2人の視線が、5センチほどもない距離で、からまりあっていた。  
ここに珠洲がいれば、気も狂わんばかりの勢いで、2人を引き剥がしたろう。  
しかし、この場には2人以外の、いかなる者も存在していなかった。  
数秒とも、永劫とも言える時間。2人は見つめあっていた。  
やがて……  
どちらからともなく、その距離が縮まり。  
隙間なく、一つに結びあった。  
九峪と志野は、強く唇を押し付けあっていた。  
志野の脳に、甘やかな感触が染み渡る。  
たったそれだけで、背筋を走るものがあった。  
未知の感覚に、志野の体内で好奇と不安が入り交じる。  
九峪の意外と引き締まった胸板に、志野の豊かな乳房が押しつぶされ、心臓の音が重なりあう。  
痛いほどの動悸は、互いに反響しあい、天井知らずで高まっていく。  
体温が溶け合い、ひとつになっていく。  
狂おしい夜になりそうな……  
そんな予感が、した。  
 
初々しい接吻は、すぐに終わった。  
触れあっていた唇の感触が消え、志野が閉じていた目をゆっくりと開く。  
物問うような瞳を上方に向けると、いつになく真剣な眼差しで自分を見つめる九峪がいた。  
目が合った瞬間、心臓がさらに強く跳ね上がったのを、志野は意識した。  
 「く…九峪……様」  
絞り出した声は震えていた。  
くしゃ、と志野の前髪を優しくかきあげながら、九峪は初めての行為に怯える少女を安心させるように微笑んだ。  
温かく全てを包み込み、どこまでも自分を優しく見守ってくれるような、そんな笑顔。  
志野の大好きな、いつもの九峪の笑顔だった。  
その目に見つめられているだけで、躯の芯が熱く潤み、とろけてしまう。  
生じかけていた微かな怯えは、もう跡形もなく消え去っていた。  
そんな志野をさらに安心させるように、九峪の唇が、前髪をかきあげた後の彼女の額に触れる。  
羽毛が触れるような柔らかい口づけは、霧雨のような優しさで繰り返される。  
小刻みに震える長い睫毛。真直ぐに通った完璧なラインを描く鼻梁。小さくて細い顎。可憐な耳。  
志野の美貌を構成するあらゆるパーツを、ついばむように優しく愛撫する。  
「は…あ…」  
九峪の小刻みなキスに、志野の抵抗力が奪われていく。  
あえかな吐息を漏らした刹那、温かく濡れた感触が歯列を割って侵入してくる。  
 「んんっ!」  
瞳が驚愕に見開かれ、すぐにきつく閉ざされた。くぐもった喘ぎは、声にならない。  
突き入れられた九峪の舌から逃れようとしても、すでに両手で頬を挟みこまれている為、それもかなわない。  
為す術ない志野の口腔内を、九峪の熱く湿った舌が蹂躙する。  
おののくように震える小さくて可愛らしい舌を捕まえ、からめとり、愛撫した。  
舌先同士でキスをかわし、裏側をしごきたて、味蕾を刺激する。  
「んっ、ふぁっ、うぅんっ」  
喉奥から、志野の意思とは関係なく呻きが漏れてしまう。  
それでもなお、九峪の攻撃は続く。  
珠のような歯をなぞり、口腔粘膜を舐めさすり、喉の奥深くを突いた。  
口の中を深く深く愛されるたびに、脊椎に甘い電流が走り、志野の背中がぴくんぴくんと震える。  
 
たまらず頤を反らすと、可憐な唇を貪るように吸いながら、志野の動きを追い掛けるようにして、九峪が覆い被さってきた。  
九峪と志野の唾液が混ざりあい、それらがお互いの口内に大量に流し込まれる。  
九峪が喉を鳴らして自分の唾液を嚥下するのを顔を真っ赤に染めて聴きながら、志野もまた送り込まれてくる熱い液体を、こくこくと飲み干していく。  
飲み切れず溢れた液体は、銀色の軌跡となって志野の唇の端からこぼれ落ちた。  
美酒のように九峪の唾液を味わう志野の顔は首筋まで桃色に紅潮し、脳が欲情という名の熱い泥濘に沈んでいく。  
たっぷり10分以上も深い口づけを交わし続けた後、名残惜しそうに離れる唇。  
その間に、月光に輝く銀色の橋がかかっている。  
 「はぁっ、はぁっ、はあっ……」  
長いキスが終わり、志野が激しく呼吸を繰り返す。  
芯を抜かれたように力を失った志野の身体を、九峪が包みこむように抱きしめた。  
トロン、と薄く膜がかかった瞳が、熱っぽく潤み、すがるように九峪を見つめる。  
 (暖かい……)  
志野は抱き締められるままに逆らわず、九峪の胸にすがりつく。  
志都呂との死別以来、忘れかけていた温もりに包まれ、志野はまるで父親に抱かれているような安らぎを感じる。  
しばらくの間、志野の背中を撫でていた九峪が、ゆっくりと彼女を離した。  
 「あ――…」  
途端に不安の色を浮かべた志野の顔を両手が撫で、その指先はさらに首筋を伝いながら下へとすべり降りていく。  
そこには、白桃のような瑞々しさをたたえた、麗しい双丘がぷるぷると震えている。  
ほとんど裸同然の乳房は上気し、すでに隆起しつつある先端の突起は、それを覆う極小の布きれの上からでも、その存在をはっきりと誇示していた。  
そこへ九峪の両手が、優しく添えられる。  
たったそれだけで、仰向けに寝ていても少しも型くずれしない、華奢な身体には不釣り合いなほどに豊かな乳房が、ぷるんと音をたてるように弾む。  
怯えるように震える美巨乳を、そっと撫で回した。  
 
ほんの少し力を込めると、たちまちのうちに指はとろけるような乳肉に沈みこむ。  
豊乳がゆっくりと握りしめられると、掌におさまりきらない肉が九峪の指の間からぷくりとはみだし、ぶるぶると弾んだ。  
 「はぁあ……あうっ……ッく…」  
火傷しそうなほどに熱い吐息が志野の口から漏れ、背筋が引き攣れたようにびくりと震えた。  
その反応に気を良くした九峪は、さらに力を込めて、円を描くように揉み回し始めた。  
瑞々しい弾力に富んだふくらみが激しく揺さぶられ、好きなように揉みしだかれた双乳が、九峪の掌の中で淫猥に変形を繰り返す。  
 「あぁッ…はぅッ…うぐッ…んんあっ」  
全身が粟立ち、体中の毛穴が開いていくようだった。  
九峪の指先が乳房を這い回り、柔肉をこねまわす度に、志野の脊椎を快楽の電流が喰い荒らし、総身を反り返らせる。  
 「あはぁぁ……ダメ……あっ……う…っ…」  
自らの嬌声を聴かれる恥ずかしさに耐えられない志野は、茹るように染まった麗貌を力なく揺さぶりながら、口から噴きこぼれる熱い喘ぎをなおも懸命に押し殺そうとする。  
きつく食いしばった唇の端からは、涎の泡が漏れ、銀糸となって滴り落ちる。  
九峪の舌がその滴を舐めとり、また唇をふさいだ。  
 「んっ!? ふぁぁっ、あふぅ、んむっ…」  
侵入してきた先端で舌先を優しくつつかれると、可憐な舌がおずおずとそれに応え、情熱的に睦みあった。  
くちゅくちゅ、と粘質な水音が鼓膜から、体内から、両方から脳に伝わり、志野の理性を犯していく。  
その間にも、両胸を愛撫する手が休むことはない。  
胸をいじられるたびに仰け反り、キスが激しさを増す。  
ふと見れば、可愛がられ続けた肉球に、極小の胸覆いが痛々しく食い込んでいる。  
張りつめた乳房が、一回り以上も大きく膨らんでいるのだ。  
まるで体中の血液が双乳に集中し、盛り上げていくように志野には感じられた。  
踊りによって汗ばんでいた志野の肌は、今や頭から水をかぶったように濡れそぼり、小さな布きれはすでにその機能を果たしていない。  
最早、不要のものとなった布きれに、九峪の指がかかる。  
束縛が一瞬で剥ぎ取られると、解放された志野の美巨乳が、  
ぶるるん、  
と歓喜するように盛大にこぼれでた。  
 
「――!!」  
圧迫からの開放感と、裸の胸に感じる外気の冷たさに、志野がハッとなる。  
露になった部位を慌てて両手で覆い隠そうとするが、それに倍する反応速度で動いた九峪に両手首を捕らえられ、阻止されてしまった。  
志野の豊かで美しい乳房が、月明かりの満天下にさらされた。  
 
恥ずかしげに睫を伏せ、顔を背けてしまう志野。  
九峪はそんな志野をさらに苛めるように、ことさらじっくりと志野の乳房を観賞した。  
単純なサイズでいえば、香蘭や藤那、星華あたりには一歩を譲るだろうが、並みいる女性陣の中でもダントツに細いウエストと比較した場合、そのヴォリュームは驚異的と言えた。  
それよりもこれほどの大きさでありながら、ツンと誇らしげに天上目指して盛り上がる膨らみの美しさはどうだろう。  
しかも、膨らみの先端には、志野の清楚さとは裏腹な、大粒の乳首が色よく息づいている。  
小さめの乳輪に比較すると、小指ほどもある乳首の大きさが一層はっきりする。  
乳輪と乳首の付け根のくびれがはっきりしているのが、この上もなくいやらしい。  
色素の沈着の全くない、桜色の乳首は、それがまだ誰の手にも触れられていないことを物語っていた。  
「…………ッ」  
九峪の舐め回すような視線を感じ、志野が呵責に耐えないといった顔をする。  
視姦されるだけで感じてしまったのか、半勃ちの乳首はぴくっ、ぴくっと痙攣し、受け入れるべき男の愛玩を待ち望んでいる。  
ごくっ、と九峪が唾を飲み込む音が聴こえ、志野はさらに身を固くする。  
それにつられて震える、熟れきった果実のような突起に、九峪がごく軽いキスをした。  
 「ふっ………! んっ…くっ……」  
それだけで志野は過敏な反応を示し、白い喉を反らす。  
ちゅく、とサクランボのような乳頭が、温かな九峪の口の中に吸い込まれた。  
色濃さを増す肉の蕾を、九峪が唇で挟み、軽く引っ張る。  
「あっ……ダメ……九峪………様……」  
唇を摺り合わせるようにして挟んだままもてあそぶと、志野の乳首はさらに大きく膨らみ、堅くしこりたってますますその存在を主張していく。  
 
「…ダメ……ダメ…です……くた…に……さ……」  
両の掌は、しっかりと乳房全体を丹念に揉みほぐしながら、もう片方の乳首を指先で摘み、いじりまわす。  
「すごく……いやらしいな、志野の乳首は。こんなに大きくて、プニプニしてて…」  
指を噛んで快感に耐える志野の耳元で嬲るように囁かれる。  
志野の顔がさらなる羞恥に熱くそまった。  
九峪は再び志野の朱い蕾を含むと、歯と下唇で挟みながら、舌先でころころと転がした。  
 「うぐっ! あっ……くっ……!」  
疼痛が志野の先端を突き刺し、快楽の奔流が全身をかけめぐった。  
乳輪と乳首の境目、くびれた部分に舌先をからめ、サクランボを転がすようにレロレロと回転させてやる。  
「あぅうっ! 九峪……様……あはあっ!!」  
赤ん坊のように自分の乳房を吸いまくる九峪の頭を、感極まった志野がぎゅっと強く抱きしめた。  
志野の深い谷間に誘われ、九峪は乳首を吸いたてたまま、鼻一杯に志野の香りを吸引する。  
汗と性臭が入り交じった甘酸っぱい匂い。発情した牝の匂いだ。  
頬に心地よい膨らみを感じながら、九峪の乳首責めは激しさを増していく。  
ちゅう……こりりっ……じゅるるっ……  
わざと音をたてて激しく乳首全体を吸いながら、前歯で付け根のくびれを軽く噛み、しごきたてた。  
同時に、もう片方の乳首を、摘んだ指先で強く捻った。  
 「くやあああああああっっ!!」  
絶叫するように鋭い悲鳴をほとばしらせ、志野の背中が一際大きく反り返り、硬直した。  
流麗なアーチを描いたまま、志野の身体は軽い痙攣を繰り返し、やがて全身の力が抜け切ったように九峪の腕の中に倒れこんだ。  
 
 「志野!?」  
志野の劇的な反応に、九峪が心配そうに志野の顔を覗き込む。  
 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」  
しかし、そこにあったのはせわしく呼吸を繰り返す、酩酊状態になった艶っぽい貌だった。  
どうやら、胸だけで軽く達してしまったらしい。  
その証左に、むせ返るような女の匂いが、一層強く九峪の鼻腔を刺激する。  
ずっと乳房から離れなかった九峪の手が、そろそろと下方へおりていく。  
薄絹の下にあるこりこりとした肋骨の手触りを堪能しながら、折れそうなほどに細く優美な腰のラインを伝い、すらりと長く伸びた脚の付け根に到達する。  
とろけきった志野の瞳に戦慄が浮かび、たちまち両脚をきつく閉ざしてしまう。  
ひどく……怖い。  
敵兵に刃を突き付けられるよりも、魔人ににじりよられるよりも、もっと根源的な恐怖。  
九峪は、震える志野の髪を指で優しくすき、にじんだ涙の珠を唇でぬぐってやる。  
すりすりとソフトに大股を撫でさすりながら、  
「志野の大切なとこ……見せて」  
囁くように言いながら、にこりと微笑んだ。  
 
卑怯だ、と志野は思った。  
こんなときに、どうしてこんな無邪気な笑顔を浮かべることができるのだろう。  
この笑顔ひとつで、あらゆる恐怖が取り除かれていくのを感じる。  
そして、自覚する。  
自分は、この笑顔に決して逆らえないのだということを。  
もうすっかり自分は、この人の手に捕えられてしまっているのだということを。  
九峪を遣わした神とは、ひょっとしたら邪神かもしれない。  
そんなことさえ考えてしまう。  
(それでも……構わない……)  
堕ちていくことへの怯えも躊躇いも、もうなかった。  
あるのは、ただ愛しい男を迎え入れたいという、欲望だけ。  
もっと強く愛されたいという、渇望だけ。  
そして……  
堅く閉ざされた扉が、ゆっくりと開かれていく。  
最後の聖域は、すでに湯気がたちそうなほどに熱を帯び、汗と明らかに異なる透明な露は、すでに膝下まで達していた。  
股間を覆う、最後の着衣に、今九峪の指がかけられる。  
すっとめくると、布地と素肌の間で、粘ついた愛液が幾本も糸を引いていた。  
九峪が、志野をあまり怯えさせないように、一気に足首まで布を引き下ろし、一思いに抜き去った。  
志野の全てが大自然のなかでさらけだされ。  
遂に、九峪と志野を隔てるものは、本当に何ひとつ存在しなくなった。  
 
一糸まとわぬ美しい身体が、全て九峪の前にさらけだされていた。  
草むらに横たわった躍動感あふれる引き締まった肉体が、湧き出た汗と、九峪の唾液に濡れ光っている。  
無意識のうちにもじもじと擦り合わされる大股を九峪の手がつかみ、わざと焦らすように開かせた。  
にちゃ……  
粘ついた音をたてて膝が割られ、志野の最も大切な場所があらわになる。  
淡い茂みに隠された肉の裂け目は、乳房を弄られただけで愛蜜を滴らせ、ほころんで微かに唇を開いていた。熱をはらみ、充血してふっくらと盛り上がった秘肉が、ひくひくとわなないている。  
そのあまりの淫靡さに瞠目する九峪の視線を感じるだけで、志野は胎内から新たな淫液が溢れ出すような感覚を覚えた。いや、実際に溢れたのだろう。腰から下がジンジンと熱くてたまらない。  
九峪の掌が、すっかり興奮した恥丘を慈しむように撫で、上品に生え揃った若草のシャリシャリとした手触りを楽しむ。  
「きゃあっ!」  
そんな軽い接触だけで、背筋を戦慄するような快感が駆け上がり、志野が鋭い悲鳴をあげた。  
(……ああ……どうなって……しまうの……私……)  
挿入はおろか、本格的な責めすらも始まらないというのに、すでに志野の意識は快感の白波にさらわれ、溺れ続けていた。好きな男に抱かれているという事実が、志野の神経を極限まで鋭敏にさせ、昂らせているのだ。  
こんな状態で、九峪を迎え入れたら、自分は壊れてしまうかも知れない。  
(……いいわ……壊れてしまっても……この人に……壊されてみたい……)  
飢えにも似た欲情が湧きあがり、志野を支配していく。  
九峪の指先が、割れ目からはみだした花びらをつつくたびに、蜜壷の入り口が淫猥に蠢き、絶え間なく蜜液を吐き出し続ける。  
九峪は、志野に見せつけるように、指に絡んだ透明な蜜をもてあそぶ。  
「胸をいじられただけでこんなに濡れるなんて……感じやすいんだな、志野は………」  
「そ…そんな……九峪様……うああっ……!」  
最後まで言えず、志野は腰を浮かせ、叫ぶように喘いだ。声を我慢する暇さえ、あたえられなかった。  
 
九峪のざらざらとした舌が、恥丘に刻まれたスリットに沿って何度も上下に往復している。  
舌が踊るたびに花弁は淫らにほころんで、ローズピンクの粘膜を鮮やかにさらけだし、こんこんと愛欲の泉を湧きたたせていく。  
まるで、はやく九峪の肉剣を突き刺してほしいと哀願するかのように。  
男を、否、九峪を迎え入れるために開花し始めた肉唇が、指でさらに割り開かれる。たまっていた愛液が、どぷっ、と音をたてて大量に流れ出し、九峪の指をたっぷりと濡らした。  
押し開かれた志野の内部は、壮絶なまでの美しさだった。  
熱い蜜を吐き出しながらとろける膣口。その淵を飾り、咲き乱れる幾枚もの桃色の花びら。その上には、ごく小さな朱い尿道口があり、さらにピンクの器官の上部には包皮につつまれた肉の突起が覗いている。  
さんざん肉体を嬲られ性感を高められた末、処女のクリトリスはすでに限界にまで膨らんで、痛いほどにズキズキと脈を打っている。  
九峪は指先で無垢なクリトリスを優しく摘むと、ほころびかけていた包皮を優しく剥いてやった。  
 「ひいあああっ! そ、そこはだめ! だめぇっ、あくううううっ!!」  
一瞬、針を突きたてられたような疼痛が走り、しかしそれはすぐに強烈すぎる快感へと変換された。ビクビクと可愛く痙攣する瑪瑙色の突起を、愛液をすくった指がヌルヌルと優しくマッサージする。  
 「あくうっ、ひうっ、かはっ、だ、だめっ、だめぇ……」  
甘く切なく、そして強烈な快美感にさらされ、もう志野は声を押し殺すことすら忘れて、蕩けるような愉悦の波に飲み込まれていく。  
 「あっ、あっ……くっ…もう……ぅあああぁッッ!!」  
ふいに甲高い声が絞り出され、志野の裸身が折れそうなくらいのけぞった。投げ出された四肢が震え、ぷしゅっ、と愛液の噴水が秘裂の奥からとめどもなくほとばしる。  
二度目の絶頂に、志野の意識が陶然となった。  
泉のように湧き出る液を、秘唇に吸い付いた九峪がズズッと音をたてて一滴も残さず吸い上げ、喉を大きく鳴らしてゴクゴクと飲み干していく。  
 (飲まれてる……私の……が……そんな……)  
恥ずかしくて死にそうだった。にもかかわらず、一方では身悶えするほどの喜びを感じている。羞恥心さえもが、性感を高めていくようだった。  
 
すっかり力の抜けきった両脚を持ち上げられ、しなやかな腰を折り曲げられた姿勢をとらされる。さらなる羞恥に燃え上がる暇もなく、九峪の舌はなおも執拗に繰り出される。  
ざらざらした部分が、肉襞の一枚一枚、ひだまでも余すところなく擦り上げ、舌先は尿道をくすぐり、さらに秘口の奥へと深く突き立てられる。  
志野は気が狂いそうなほどに悶え泣き、細い腰を妖しくくねらせる。  
 「ああっ…だめ……そんなにしてはだめ……っ、はううっ、くあっ、かふぅ…っ、くひゃうっ!!」  
九峪が指を慎重に秘花に差し込むと、震える柔肉がきゅうきゅうと締め上げる。  
指をゆっくりと踊らせながら白く濁った愛液を掻きだす一方で、舌は恥丘を這い上ぼり、下腹部までもびしょびしょになるまで舐め上げ、小さな臍を舌先がほじる。  
 (……はああ……だめ……気が……狂ってしまいそう……)  
菊座の愛らしいすぼまりにも優しく口づけすると、そこにも指先を埋め込み、じっくりと拡張させながら、放射線上になっている皺を一本一本ほぐすように舐め上げた。  
 「いやっ、いやあ……そんな……汚いところまで……ひゃうんっ!!」  
秘所以上にきつい穴に舌が深くもぐりこみ、掻き回すように出し入れされる。汚らしいところを舐められているという感覚が、志野の快感中枢をより強く刺激し、次々と新たな性感を呼び覚ましていく。  
尻の奥に広がる心地よく暖かい感覚に、喘ぎ声をひきつらせてすすり泣き、さらなる刺激を求めるように腰をいっそう強くよじらせた。  
全ての排泄器官が、快感を貪るためだけの性器へと変貌していくのを、志野は強く意識した。  
尻穴から、蟻の戸渡り(肛門と膣口の間の部分)を経て、秘裂まで唇を強くおしつけてしゃぶりまわす。最後に、小刻みに震えがるクリトリスをきつく吸い込み、軽く甘噛みした。  
 「あっ、あっ……あぁああああ――――――……ッ!」  
またも絶頂に押し上げられた。全てが白い光に包まれ、何も分からなくなる。  
 「はあ…はあ…はあ……ああ…っ」  
弛緩しきった肉体が、草原の上に広がった。  
全身を紅潮させ、滝のような汗に象牙のような肌を濡れ光らせる志野の裸身は、女神のように神々しかった。  
 
その艶姿に、煮えたぎる欲望を沸騰させた九峪が、そこで初めて服を脱ぎ出す。  
思わず、勢いあまって衣服を引きちぎってしまいそうになるのを必死にこらえながら、九峪もまた志野の前で全裸をさらした。  
 「九峪様……私にも……させて……下さい……」  
恥ずかしそうに志野が囁くのを聞いて、九峪が少し驚いた顔をした。  
いまだに絶頂の余韻の残る身体をフラフラと起こすと、自ら九峪の股間に顔を埋めていく。  
 「私だけが……気持ち良くなるのは、イヤです……九峪様にも……気持ち良くなって欲しい……」  
正直、九峪は困った。というのも、さっきから艶めかしく乱れ狂う志野の痴態に、九峪は完全にまいってしまっていたのだ。  
すでに、男根は信じられないくらいに太く屹立し、解放を求めて血が暴れ狂っていた。  
腹にへばりつくほどに、雄々しくそそり立つ怒張を、志野のほっそりとした指がおそるおそる握った。  
 「ぐおっ!?」  
思わず暴発しそうになるのを、九峪は奥歯を噛み砕きそうなほどに食いしばり、必死に耐えた。その九峪の様子に、志野が慌てる。  
 「あ……ごめんなさい! ……痛かった……ですか?」  
 「い…いや……そうじゃない……志野の手があんまり気持ち良くって……つい」  
勘違いして謝る志野に、九峪は苦笑いを返す。  
「そ…そうなんですか? ……よかった……」  
心の底から安堵したように微笑む志野が、愛撫を再開させる。  
(……なんて大きいの……。すごく熱くて、硬い……)  
まるで熱した鉄棒を握っているように、志野には感じられた。しかも、完全には指で包み込めない。それほどの太さだった。  
(もうすぐ……これで……)  
これが自分の中に入ってくるのを想像すると、期待と恐怖を同時に感じ、身体が熱く震える。硬く勃起した肉棒が激しく脈を打つ感覚が、握った手の平に伝わり、志野は恍惚となった。  
 
 「私でこんなになってくれるなんて……嬉しい……」  
陶然と呟くと、志野は愛しい男の先端に、チロチロと舌を這わせていく。  
柔らかい唇が幾度も口づけられ、おずおずと震える舌先が赤黒い亀頭を舐め回していく。  
最初はぎこちなかった動きは、九峪への想いゆえか、見る間に情熱的になっていく。少女の小さな唇が、グロテスクな剛棒をくわえこむ様は、喩えようもなく淫靡で、九峪の興奮を誘う。  
エラを唇でしごきたて、鈴口を舌先でねぶる。さらには、掌が陰嚢をフニフニと優しく揉み転がし、片方ずつ交互に口の中に含んでいく。  
 「うっ、うおあっ! し、志野……良すぎるっ!!」  
あまりの快感に、九峪は腰がくだけたようになり、へたりこんでしまう。  
九峪が感じてくれているという事実に、志野は歓喜に包まれ、自身もまたさらに膣奥を疼かせてしまう。  
一座の女性達に、知識だけは聞いていた奉仕に、志野は我を忘れた。  
ただ九峪に気持ち良くなって欲しい一心で続けられる行為に、志野もまた熱く昂っていく。  
九峪の肉棒は、もう志野の口に収まりきらないほど、ギンギンに膨れ上がり、太くなっている。  
その大きさは、志野の想像を絶していた。以前にも、温泉で偶然、九峪のモノを目撃してしまったことはあるが、ここまでの大きさではなかった。  
だが、おぞましさは感じない。ただ愛しさだけが募っていく。  
志野は、その感情のままに、口に入りきらない部分の肉棒を、自らの乳房ではさみこんだ。        
九峪の口から、獣のような唸りが漏れた。  
 「ん…う…んっ……じゅる……あむっ……ちゅっ…じゅるる……」  
挟みこんだ肉棒が、乳房の内側をこすり上げ、揉みたてるたびに、志野の心臓は痛いほどに早鐘を打ち、腰が甘く蕩けて無意識のうちに揺れてしまう。胸と口を同時に犯される感覚に、志野は法悦となった。  
髪の毛をまさぐってくれる指の感触も、何とも言えず心地良い。  
もちろん九峪もたまらない。肉棒を口腔内でひっきりなしにしごかれ、さらに柔らかい乳肉で挟み擦られては、もう限界だ。  
 「し…志野っ、もうダメだ……出るッッ!!」  
切羽詰まって志野の頭を掴み、引き離そうとする。しかし、志野は九峪の限界が近い事を知ると、さらに吸引を激しくし、固定するように乳房の圧迫を強めた。  
 
 (ああ……九峪様……出して……出して下さい……私の口の中に……)  
九峪の逞しさと熱い脈動を愛しく感じながら、志野はスパートをかける。その瞬間、口の中で九峪の肉棒が一際大きく膨らみ、爆ぜた。  
 「うおおおおっっ!! 志野、志野っっ!!」  
何度も志野の名を叫びながら、九峪が咆哮した。  
腰の奥を熱い快感に貫かれながら、大量の白濁を、志野の口内にブチまける。  
 「うぐっ…! んんむむむむッッ!!」  
マグマのように熱い塊が、志野の喉を灼いた。どろりとした濃厚な精液を、志野は躊躇いもなくゴクゴクと飲み下していった。九峪の体液が、自分の体内に注ぎこまれる感触に、志野はまたも軽く達してしまっていた。  
 「こんなにいっぱい……嬉しい……」  
九峪が気持ち良くなってくれたという事実に、志野は胸がつまりそうなほどの幸せを感じた。陶酔しきった顔で、尿道内の残滓まで残らず吸い上げる。  
 「…んっ……」  
やがてゆっくりと肉棒を解放すると、唇にこびりついた滴りを舌で舐めとる。  
志野のその仕種に、寒気がするほどの色気を感じ、九峪はたまらずに志野をきつく抱きしめた。   
あれだけ放出しても、九峪の肉棒は一向に衰えていなかった。   
 「志野……君が欲しい……君の中に入りたくてたまらない……」  
 「はい……来てください……九峪様……」  
 九峪に求められ、志野は陶然となって、その胸にしがみついた。九峪の背中に細い腕が回される。  
抱きしめあい、お互いの存在を強く感じながら、二人はいよいよ最後の階段を駆け上がろうとしていた。  
 
 「九峪様……」  
いよいよ…という段階に入って、ふいに志野が言う。  
 「なんだ?」  
 「髪止めを……外してください……九峪様に……見て欲しい……」  
思わぬ申し出に、九峪の心臓が跳ね上がる。  
思えば、九峪は志野が髪を下ろしたのを見たことがない。  
さにあらん、志野は常に踊りの邪魔にならないように、長髪を高く結い上げていたからだ。そして志野は、志都呂が死んで以来、珠洲以外の誰にも髪を下ろした姿を見せたことがなかったのである……  
九峪は優しく志野を抱きとめながら、志野の髪止めを外した。  
まとめられていた髪がふわりと広がると、そこには九峪の初めて見る美女の姿があった。  
艶やかな長髪は腰にまで達し、星屑を鏤めたように輝いている。  
いつも楚々とした振るまいの中に、凛とした強さを持っていた志野。  
しかし、今九峪の目の前にいるのは、儚げで憂いを秘め、庇護欲をかき立てずにはおれない、ひとりの少女だった。  
九峪は思わず胸をつまらせた。きっとこれが志野の、隠された素顔なのだろうと思うと切なさと愛しさがこみあげてくる。こんなか細い身体で、彼女はどれだけの辛さや悲しみに耐えてきたのだろう……。  
そして、今まで頑なに隠されてきた志野の裸の心が、今や九峪の前にさらされているのだ。それは、志野が九峪を心から信頼し、想いを寄せていることの何よりの証であった。  
その事実に気付いた九峪は思う。  
俺が、志野を幸せにしてやらねばならない。  
そんな使命感にも似た衝動に突き動かされ、  
 「すごく…綺麗だ……俺が今まで見た志野の中で……一番……」  
九峪が志野の髪の一房を手ですくいとり、口づけた。  
 「あ…」  
たったそれだけの行為で志野が、身を小さく震わせた。  
まるで髪にまで快楽を伝える神経が通っているかのようだ。  
 「うれしい……」  
夢見るように呟く志野。たまらぬ愛しさから、九峪は彼女の細腰が折れそうなほどに強く抱きしめた。  
 
互いに全裸となった二人は抱き合い、もつれあいながら柔らかな草むらのベッドへと沈んでいく。貪るようにキスを交わし、互いの肉体が重く密着する。  
「……んっ」  
九峪の裸の胸板に、乳首が直に擦れ、志野が小さく喉を震わせる。  
たった布一枚を取り去っただけで、こうまで感覚が違うものなのか……  
その事実に、志野は新鮮な感動を覚えた。心が新たな潤いに満ち、それが形となって秘所から流れだす。泉のように湧きだした愛液の量は、草むらに水たまりをつくってしまうほどだ。  
九峪が志野の太腿を持ち上げると、ほっそりとした長い足が抵抗もなく開かれた。  
 「いくぞ……志野」  
 「はい……。私を……あなただけのモノにしてください……」  
一瞬、視線が結びあう。かすかにまだ瞳の中に、怯えの色があった。怯えを取り除くようにキスを交わしながら、唾液と先走りの液に濡れ光る剛棒を、志野の秘裂にそっとあてがった。  
焼けた鉄を押し当てられるような感触に、志野の細腰が妖しく揺れる。  
先端がわずかに触れただけで、志野の秘唇は男根にキスするように吸いつく動きを見せ、クチュ…と湿った音をたてた。  
志野の腰をつかんで引き寄せながら、同時に腰を前に突き出していく。  
極限まで大きく張り出した肉棒のエラが、志野の秘肉をかきわけ、剛直が花芯を貫いていく。  
 「うくぅっ……、あ…かはぁ…っ」  
志野の声に苦しげなものが混ざり、秀麗な眉間が苦悶を刻む。  
ひとつひとつ、肉襞を貫くたび、肉棒がぎゅうぎゅうときつく喰いしめられる。少し進んだところで、先端に薄い皮膜の手応えを感じる。  
なおも突き進む九峪の圧力に耐え切れず、志野の純潔の証が、ぴっ、と胎内で音をたててはじけた。  
 「あぁああああ―――――――――っっ!!」  
その瞬間、志野の背中が反射的にグンと反り返った。きつく閉じた瞼の上で、涙の飛沫が散る。甲高い絶叫が、高く尾を引いて虚空に吸い込まれていく。  
 「あぁっ……九峪様の、が……私の中に……ああああっ!」  
熱く逞しいもので胎内を深く満たされるのを感じながら、志野がうわ言のように呟く。剛棒が根元まで挿入されると、亀頭でコリコリとした子宮口を突き上げられ、志野が苦しげに髪を振り乱した。  
 
 「もう大丈夫……俺たちは……ひとつになったんだ」  
 「はい……私のなかに……九峪様を……感じます」  
そう言われて、志野が薄らと瞼を開いた。荒く息を弾ませ、双眸に涙をにじませながら、志野はけなげに微笑む。  
 (すごく……熱い……お腹のなかで脈打ってる……)  
九峪の背中に両手を回しながら、志野は生まれて初めて味わう圧倒的な充足感を味わっていた。胎内で熱い脈動を感じるたびに、九峪のものになったのだという歓喜が湧きあがってくる。  
心の喜びにともなって、激痛にこわばっていた身体も、次第に柔らかく蕩けていく。  
肉棒の熱に溶かされたように、限界まで押し広げられた秘唇の奥から新たな愛蜜が湧きだし、破瓜の血と入り交じって秘所をピンク色に染める。  
ぎゅうぎゅうに締めつけていた肉襞が次第に柔らかく蠢きだし、まとわりつくように蠕動を開始する。男根の根元を喰いしめる秘口も、激しく収縮を繰り返す。  
しばらく動かないでいた九峪が、おもむろに分身を抽送させはじめた。ゆっくりと引き抜き、同じ速度でまた押し込んでいく。包み込む肉襞をなじませるように、ゆるやかに秘肉がほぐされていく。  
 「あうっ、くっ、ううっ、うんぅっ…くぅっ、あぁっ…あん…」  
小さな顎を突き出しながら呻く志野の声色に、次第に甘いものが混じり始めていた。柔襞が優しく肉棒を包みこみ、体奥を突くたびにギュッと締めつける。  
躯の奥が、疼くように熱く痺れ、頭の芯がゆるゆると溶かされていく。皮膜がかった瞳を彷徨わせながら、志野は熱い吐息を吹きこぼし続けた。  
次第に激しさを増す律動に揺さぶられる麗貌は、すっかり上気して汗に濡れ光る。  
浮き上がり、妖しくよじれる腰に九峪が両手を回すと、屹立する肉棒で繋がったまま志野を抱き寄せた。  
「ふあああっ! だめっ、ぐうっ、深すぎるっっ!!」  
九峪が志野の肢体を抱き起こしたことで、肉棒には彼女の全体重がかかっている。まるで串刺しにでもするように、剛直は深々と志野の胎内を突き抉る。  
九峪は対面座位のまま、腰で円を描くようにして、志野の胎内をかきまわしてやる。重なりあった唇から、鼻にかかった喘ぎ声がもれた。  
 
(ああ……気持ちいい……まるで……溶けてしまいそう……)  
腰骨を擦り付けるような優しい動きの前に、破瓜の激痛はいつしか淡雪のように溶け、全身を温かく包みこむような悦楽の波が支配していく。  
「あぁ、九峪様……私、もう…もうっ……ふあぁあああっ!!」  
志野の躯がビクビクと痙攣し、必死に背中にしがみついてくる。細い指が、九峪の背中に爪をたてた。  
子宮口から熱い飛沫がほとばしるのを肉棒の先端に感じ、九峪は志野がまたも絶頂を迎えたことを悟る。  
「またイッたのか、志野?」  
「はっ、はっ、はあ、はあ…はあ……」  
絶頂で朦朧とした意識の中、志野はガクガクと震えるように頷く。  
「すごく……はあ…気持ち…うっ……いいんです……私……あくっ……初めて……なのに……ああっ!」  
志野が幾度達しても、九峪自身による膣内の蹂躙は一向に終わらない。肉の柔らかさと鉄の硬さを兼ね備えた熱い怒張が、志野の胎内で暴れ回っている。それを宥めるように、小刻みな痙攣を繰り返す肉の花びらが優しく激しく絞りあげていく。  
「ひああっ、かふうっ、ああっ、あんっ、いっ、ふあっ、くはあっ!!」  
頭の中が真っ白になって、もう何も考えられなかった。無意識のうちに自らも腰を振りたて、必死になって九峪にしがみつく。  
全身が火を吹きそうなほどに熱かった。志野の躯は全身が性感帯となり、もはや九峪の手がどこに触れても、電流を直接神経に流されたような激しい快感を感じてしまう。  
まるで全身が九峪を迎え入れるためだけの性器になってしまったように、志野には感じられた。  
「はあっ…はあ…あうっ…んっ…く…九峪…様……ああっ」  
「うぐっ……くっ……志野……気持ち……ぐっ……いいか?」  
九峪も息が荒い。ぎりぎりと歯を食いしばって、懸命に快感に耐えながら志野に聞く。  
「ああっ、んっ! は、はい……、気持ち……いいですっ、気持ちよすぎてっ……どうにかなってしまいそう……っ」  
ふやけた意識の中で、志野が切れ切れに答える。  
 
「はうっ、はあ…っ、九峪…様……九峪様も……気持ち……いいですか?」  
「ああっ……すごい……気持ちいいよっ! 気持ちいいに決まってるだろ!  
俺は今……志野のナカにいるんだから!」  
吼えるように九峪は答えた。膣内でうねうねと蠕動を続けながらまとわりついてくる秘肉。痛いほどの締めつけなのに、内部は雪解け水のように潤っている。  
あまりに強烈な快感が次から次へと押し寄せ、九峪の腰から下はすでに感覚が麻痺してしまっている。わずかでも気を抜けば、その瞬間に果ててしまうだろう快楽にかろうじて耐えていられるのは、たった一つの想いのため。  
もっと志野を気持ちよくしてやりたい、もっと志野が悦楽に溺れる様を見たいという、それだけのためだ。  
「九峪様……」  
感激とそれがもたらす幸福を噛み締めるように、志野がうっとりと瞳を閉ざす。躯を支配する快楽よりも、九峪も一緒に気持ちよくなってくれているという事実が嬉しい。  
きつく閉じた目から、歓喜の涙が溢れて止まらなかった。  
 
 汗にまみれ、摩擦がほとんどなくなった志野の肌を、九峪の手が這い回る。  
張り出した尻肉を揉みしだき、芸術的な腰のラインをすべり、浮き出た肋骨をなぞりながら、九峪の手は目の前で律動に合わせて激しく揺さぶられる双乳へと辿り着いた。  
「――!! だ、だめっ、九峪様、そんな……あうぅっっ!!」  
九峪の手が肌に張りつくだけで激感が走るのだ。ましてや志野の躯の中で、もっとも敏感な肉のふくらみを揉まれては、それだけで軽い絶頂を迎えてしまう。  
切羽詰まった志野の叫びを無視し、九峪は五指を巧みに駆使して桜色に染まった乳房をねっとりと揉みほぐす。  
針で突いたら破裂してしまいそうなほどに張りつめているのに、お湯に浸した餅をこねているような柔らかさがたまらない。わずかに指に力を入れるだけで深く沈みこみ、包み込む感触は、志野の性格を表わしているようだ。  
(あっ…ああ…これは……これはなに…?)  
桃源郷をさまよう志野は、乳房に湧き起こる異変を感じていた。  
乳房が燃えるように熱い。まるで熱した蜜を乳房の中に注ぎ込まれ、ぐちゃぐちゃと撹拌されているかのようだ。  
九峪の手によって、豊乳の根元から乳首にかけて何度も何度も優しく絞るように揉み込まれる。そのたびに、幻想の粘液が乳房の中で体積を増していき、じりじりと炙るような熱が大粒の乳首へと集中していく。  
外側からの揉み込みに抵抗するように、内側の粘液がドクドクと脈動し、ただでさえ大きなグミ状の乳首は危険なほどに膨らみ、硬く張りつめた。  
 
「ふああああっっ! 来るっ、何か来るっ!!」  
志野の体内で何かが訪れようとしていた。未知の切迫感を振り切るように、志野はしゃにむに首を振りたて、長い髪が汗を鏤めてキラキラと舞い踊る。  
「いやっ、いやあっ! 九峪様っ、だめっ! お願いです、それ以上しないでっ!! だめえっ!!」   
ズキズキと疼くような責め苦から解放させてやるべく、九峪の指が乳房の先端で震える両の肉芽を、  
きゅいっ!  
と同時にひねりあげた。  
「ああっ、だめっ、だめっ! 来る、来る、来ちゃうっ!!」  
遂に志野の快楽の堤防が決壊し、乳首が一回り大きく膨らんだかと思うと、音をたてて弾けとんだ。  
 ぷっしゅうううううう!!  
志野のサクランボのような乳首から、白い液体がシャワー状に噴出した。  
「ひぐうっ、ひあああああああああああああああああああっっ!!」  
とうとう解放された志野の欲望の塊は、さらに乳肉を強く揉みしだかれることによって、ますますその勢いを増していく。甘い匂いを放つほとばしりが、九峪の顔中に降り注ぎ、白く染め上げた。  
 
志野の美巨乳から搾りだされているのは、まぎれもなく母乳だった。  
妊娠もしていないのに母乳が出るという異常事態と、男の射精にも似た絶頂感に志野の頭はパニックを起こしていた。あまりに激しすぎる快楽を身に受けて、自分の躯が壊れてしまったのかと思う。  
「心配することはないよ、志野」  
志野の混乱を落ち着かせようと、九峪が顔に付着した母乳を舌で舐め取りながら言う。  
「火魅子の血に連なる女性は、生まれつき母乳が出る体質を持ってるんだ。キョウに聞いたから間違いない」  
その説明が志野の頭に届いているかどうかは疑わしかった。乳汁を搾りとられる激烈な快感に、見開いた目から涙をこぼしながら悶絶している。  
「……ぅあ、あ……あああ……だめ……だめぇ……」  
うわごとのように呟きながら、躯の震えはとまらない。九峪の愛撫もまた、止まることはなかった。乳肉を強弱をつけてリズミカルに揉みたてられ、より色濃さを増した大粒の肉の突起を指の腹で挟まれしごきたてられる。  
双乳を灼く痛切な激感に打たれ続け、志野は狂ったように首を振り立て、よがり泣きながら乳白色の液体を溢れさせた。  
「気持ちいいんだな。志野のミルク……もっと搾ってあげるよ」  
そう言って九峪が志野の胸元に顔を近付けた。深い谷間に流れる汗を舌先ですくいとる。顔面を叩くような近距離で、志野の放乳を浴びた。限界まで鋭敏になった乳首に吐息がかかり、志野はハッとして瞳を揺らす。  
(だめ……これだけでもおかしくなりそうなのに……吸われたりしたら……)  
未知の快楽への恐怖と、それに数倍する期待に、志野の心が葛藤する。その間にも、九峪の唇が近づいてくる。  
(だめ……許して……おねがい……)  
心の中の声は、しかし自分でも驚くほど、か細く弱々しいものだった。躯だけでなく、心さえもが九峪のものになっていくのを強く実感する。  
そして、とうとう淫乳を噴き出す快楽の蕾が、九峪の口にとらえられた。つぶつぶした乳腺の浮き出る乳輪をざらついた舌が舐め回し、痛いほどしこりきった乳首を舌先でほじられ、周辺の乳肉ごと強く吸い上げられた。  
 
 チュウッ……ズチュッ……ズチュウウッ!  
 激しく優しく乳肉を揉みほぐされる感覚と、乳房の内部で液体が波打つ感触、たまった乳汁を絞りだされる解放感。それに乳首を舐めしごかれる疼痛と、溜まった母乳を強制的に吸い出される激感が加わる。  
母の悦びを擬似体験させられ、志野は折れよとばかりに首を反らし、絶頂の咆哮をあげた。  
「ああっ、あああっ、ああああああああああああっっ―――――!!」  
九峪はやわやわと乳肉を揉みたてながら、口いっぱいに乳房をほおばる。ぷくんと乳首が膨らむたびに甘い液体が口中にほとばしる。絶え間なく溢れ出す甘露を、九峪は音をたてて飲みくだしていく。  
「ああ、あああっ、だめっ、止まらないのっっ、お乳を吸うのだめええっっ!!」  
志野はこれまでの絶頂感を遥かに超える高みへと押し上げられ、そして降りてこられなくなった。哀切な嬌声をひしりあげながら、童女のように許しを請う。  
これまでの人生で志野が纏ってきたものが残らず剥ぎ取られ、生まれたままの志野が九峪の前にさらけだされる。身も心も全てを九峪に捧げ、舞姫は踊る。   
 自分のために奉納された舞いに九峪は酔いしれ、愛しい美姫を強く強く抱き締める。左右の乳房を交互に吸いたてながら、さらに力強く腰を突き上げた。  
「うぅん……っ! ふぁああ――!!」  
透き通った泣き声をあげた志野は、汗と母乳まみれの裸身をさらに大きく反り返らせた。  
切れ目のない絶頂にさらされながらも、それでも九峪を喜ばせようと、精一杯の想いをこめて、惜しみなく腰をふりたて、九峪自身をしめあげた。  
九峪もまた志野の献身に応えるべく、汗と淫水まみれの尻に指を這わせ、深い谷間にまで潜りこませる。そして蹂躙される女の花園の後ろで息づく、もうひとつの蕾にずぶずぶと指先を埋め、肉のすぼまりをこじ開けた。  
 
「あはあああああああああああああっっ!!」  
二つの穴を同時に責められる行為は、おそろしい快感を生んだ。指は根元まで挿入された直腸の粘膜を刺激し、排泄器官でしかない穴を極上の性器へと変えるべく、まだ硬い肉洞がほぐされていく。  
「すごい……気持ちいいぜ……志野の尻……いつか……こっちももらうからな」  
「はいっ! もらってくださいっ! 前も、後ろも! どっちも……全部、私の躯をっ、全部……九峪様のものにしてくださいっっ!!」  
もう自分でも何を口走っているのか分からなかった。ただただ強烈な絶頂感に打ちのめされ、意識が遠くなる。エクスタシーの海に揉まれているような状態が続き、頭の中が溶けていく。  
イキっぱなしになった志野はもう何も考えられなかった。あるのは、ただ九峪への想いだけ。狂気にも似た情念に突き動かされ、忘我の境地で裸身を踊らせるだけだ。  
両手が背中に回され、スラリとした両足が激しく躍動する腰にからみつく。  
九峪は愛しい恋人を優しく抱きしめ、愛を囁くかわりに逞しいもので深く深く志野を貫き、満たし続けた。汗に濡れた髪の匂いをかぎ、愛らしい双乳を強く揉みしだく。  
噴出の止まらない蜜乳を夢中でしゃぶり吸いながら、時折乳首を甘噛みして引っ張ると、志野はまた可愛らしい声をこぼして裸身を跳ね上げる。  
永遠にこうしていたいと二人は想う。しかし、志野の素晴らしすぎる肉体は、それを許さない。身も心も一つに溶け合ったまま、二人は最後の、そして究極の頂点を極めるべく、最後の律動を開始する。  
 
二人は狂った。  
唇を吸いあい、きつく抱擁し、腰をぶつけあう。  
この世界には自分たちしかいないとでも言うように、それ意外の言葉を失ったように、二人は互いの伴侶の名を叫び続けた。  
「九峪様! 九峪様! 九峪様っ! 九峪様ああああああっっ!!」  
「志野! 志野! 志野っ! 志野おおおおおおっっ!!」  
何度目かも数えきれない、そして今までで最大の絶頂に打ちのめされ、志野は恥ずべき娼婦の淫語を無意識のうちに発していた。  
「イクっ! イクっ! あああ、イっちゃう!! あああああああ――――――――――――っっ!!」  
無上の歓喜に包み、包まれて、二人は同時に頂きを超えた。  
志野は絶頂を極めながら失禁し、のけぞって上を向いた乳首から母乳を高く高く噴き上げた。  
九峪はこの世で最も凶暴な生き物になったような錯覚を覚え、原始の衝動に従って咆哮する。腰の一番深いところで連続して爆発が生じ、マグマのように熱い白濁を最愛の恋人の胎内へと一滴も残らず注ぎこんでいく。  
「はあああ………熱い………でてる………九峪様が……いっぱいでてる……素敵……」  
なにもかもが薄れゆくなか、躯の一番深いところで生命の爆発を叩きつけられる悦びに浸りながら、志野の意識は遥か星空の彼方へと飛翔していった。  
 
 
 どれくらいの時が過ぎただろうか。  
温かい湯に浸った志野の裸身が、淡い月光に輝いている。  
そこは耶麻台共和国建国の直後に、新たに発見された温泉だった。  
目を覚ましたとき、志野は、九峪の腕の中に抱えられていることに多少驚いた。ついで恥じらいが頬を染める。しかし、初めての営みに疲れきった身体にとって、恋人の胸の中でまどろみに浸ることは、あまりに甘美な誘惑だった。  
「九峪様……」  
結局、陶然としたまま九峪の名を呼び、思ったよりもずっと広い胸に顔を埋めてしまう。  
(いつ以来だろう……こんなふうに誰かに甘えるなんて……)  
自分の腕の中で安心しきって身を委ねている少女の全身を、九峪は無言のまま、慈しむように優しく愛撫し続ける。  
どちらからともなく、二人は夢中になって唇を重ねあう。  
優しい月光に祝福され、二人の夜は今しばらく続きそうであった。  
 
(完)  
 
 
 

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