「ふぅ―――」  
溜め息をつきながら、その髪を手拭で纏めた伊万里は、瑞々しい姿態を  
ゆっくりと浴槽の中へと沈めた。ここは耶牟原城に幾つかあるの浴場の、  
あまり人気のない、最も質素な造りをしたものの一つである。耶牟原城を奪還し、  
狗根国との戦いがひとまずの決着をみた後、彼女は必ず日に一度、訓練後にここを訪れていた。  
その手には、今、城下の女性達の間で人気を呼んでいる、香料を含んだ舶来の石鹸がある。  
元山人である彼女にとって、風呂とは汗を流し、汚れを落とすだけの場所だったが、  
一年近くの戦いの中、それは彼女の中で役割を大きく変えていた。  
「―――九峪様・・・」  
浴槽の淵に座り、普段、人前では決して出さない切なげな声で、彼女は呟いた。  
そして泡立てた石鹸を、そのしなやかな手足や張りのある胸へと丹念に擦り付け、匂いを移す。  
その彼女の新しい習慣の原因は、他ならぬ、先ほど彼女が口にした人物だった。  
愛しい相手に抱かれる時、少しでも綺麗な身体でいたいという、これは彼女にとって、  
最大限の女らしさの表れなのである。しかし―――。  
 
―――最近、九峪様とはゆっくりとお話も出来てない。以前ほどお忙しくはないはずなのに―――  
 
彼女が最後に九峪に愛されてから、すでに3週間が過ぎようとしていた。  
いかに九峪が他の女達とも通じているとはいえ、この間隔は長すぎる。  
そのことが、彼女の心をこの上なく不安にさせていた。  
「・・・九峪様・・・やはり、もう私のことなど・・・」  
いつもの如く、不吉な考えが伊万里の頭をよぎる。彼女は「女」としての自分に全く自信がなく、  
日頃から常に『九峪に捨てられてしまう』という不安におののいていた。  
「九峪様・・・」  
涙で視界がぼやけかけた時、浴室の戸が勢いよく開かれた。その音に驚いた伊万里は、  
慌てて手の甲で目を擦り、入り口へと視線を向けた。  
「えっ・・・!?」  
「よう、伊万里」  
そこには腰巻一枚で、軽く手を上げながら立つ九峪がいた。  
「くっ、くたっ、九峪様さまっ!!?きゃあぁっ!!」  
その予想だに出来なかった侵入者に驚嘆した伊万里は、とっさに手で胸を隠して  
浴槽へと飛び込んだ。  
「おいおい、俺は痴漢か?」  
二人の関係を知っている者が聞いても、この九峪の発言には首肯するに違いない。  
ここは正真正銘、紛れもない女風呂だからである。  
「いっ、いえ、そのっ、そんなことはっ・・・何故、九峪様がここに・・・!?」  
しどろもどろになりながら質問する伊万里に、九峪はゆっくりと近づき、彼女と同じく、  
浴槽に身を沈めた。九峪に背を向けたままそれに気付いた伊万里は、さらに身体を硬くする。  
 
「何って・・・お前に会いに来た」  
「えっ!?」  
その言葉を聞いた瞬間、伊万里の胸が高鳴る。  
―――九峪様が・・・私に・・・会いに来てくれた―――!!  
先ほどとは違う意味の涙が、彼女の切れ長の瞳に溢れる。  
「九峪様・・・嬉しいです・・・私、ずっと・・・んんっ!?」  
その歓喜の気持ちを伝えようとした瞬間、伊万里はその胸を九峪に  
鷲掴みにされていた。さらに九峪はその先端にある桃色の突起を指で転がし始める。  
「くっ、九峪様―――んんっ!!」  
「いいだろ、伊万里・・・?」  
甘い声で、九峪は伊万里の耳へ囁きかける。その間、片方の腕は、すでに彼女の秘部へと伸び、  
陰毛越しにその割れ目をなぞっていた。  
「ひゃっ!!・・・九峪様っ・・・駄目・・・ですっ・・・こんな・・・所ではっ・・・あうぅっ!!」  
何とかその快楽に耐えようと身をよじる伊万里。  
「すっ、するなら・・・私の部屋か・・・九峪様のっ・・・」  
「そこに行くまで待てねぇよ・・・ここでしたいんだ」  
「だっ、駄目ですっ!誰か来たら・・・誰か来たら・・・」  
「そらっ・・・!」  
「えっ、あっ!!」  
九峪は伊万里の両膝を抱え、自らの腰の上へ落とした。  
「ほらほら・・・」  
水の浮力を利用して伊万里揺すぶり、今度はすでに限界まで屹立している肉棒を、  
その陰唇に擦り付ける。  
 
「あっ、あうっ・・・あふ・・・」  
伊万里の意に反し、その口からは可愛らしい喘ぎ声が紡ぎ出されていく。  
「・・・欲しいんだろ?挿入れるぞ?」  
そして遂にその亀頭が伊万里の膣に侵入しようとした、その時―――。  
「あっ、駄目ぇっ!!!」  
「うわっ!!?」  
伊万里は精一杯の力で九峪を振りほどく。思いがけない出来事に、  
さすがの九峪も対処することができなかった。  
「駄目です・・・こんな・・・こんな所で・・・ひっく・・・ごめんなさいっ!!」  
少女のように両の手の平で顔を抑え、伊万里は浴場から走り出て行った。  
「あっ、おい・・・!」  
一人その場に取り残された九峪は、あっけに取られていた。  
「・・・ちっ!あのアマぁ―――!!」  
しかし、暫くして自分の誘いが粉にされたことを理解すると、  
不快感を露にしてそう吐き捨て、浴槽の湯を蹴り上げた―――。  
 
 
その夜―――。  
「―――くそっ、くそっ!!」  
「あはっ、あっ、くうぅっ、くっ、九峪様っ、はっ、激しいっ・・・ですっ・・・!!」  
浴場で湧き上がった不満を、目の前にある清瑞の白い尻へと叩きつける九峪。  
下半身を剥かれ、美しい顔を白濁液で汚しながら、彼女は九峪からの乱暴な性行為に  
その身を任せていた。  
「伊万里の奴、気取りやがって・・・女はなっ、俺が股開けっつったら、素直に開きゃいいんだよっ!!!」  
「あっ、あぁうっ・・・!!」  
九峪は清瑞の尻肉を一発激しく平手打ちし、彼女の両腕を掴んで背を反らさせると、その腰を、一段と早く、  
激しく突き上げ始めた。  
「んくうぅっ!!九峪様っ、もっとっ、もっと突き挿して下さいっ!!」  
九峪は今のように苛立った時、常に付き従っている清瑞の身体を性欲の捌け口として利用し、  
また清瑞も、その役割を喜んで享受していた。  
「ったく、伊万里もお前くらいスケベだったらな・・・そろそろ出すぞっ、顔向けろっ!」  
清瑞の膣内からたぎったモノを引き抜くと、九峪は自らの手でそれをしごき始める。  
今夜はあくまで清瑞の顔を汚すことに決めた九峪は、すでに三度も彼女に射精していた。  
 
「おらっ、舌出せ、舌っ!!」  
「はっ、はいぃっ・・・!」  
そして清瑞が大きく口を開け、真っ赤な舌を突き出した瞬間、  
九峪はおびただしいほどのザーメンを彼女の口元へ向けて迸らせた。  
「あっ、あぁっ、ふ・・・」  
また、同時に清瑞も達したようで、惚けた顔でぶるぶる震えながら、  
舌の上に九峪の汚汁を受け止めている。  
「へへっ、乗ってきたぜ・・・今夜は犯しまくってやるからな、覚悟しろよっ!!」  
九峪は清瑞を押し倒し、残った上半身の忍び装束を、力任せに引き裂く。  
そしてこぼれた二つの膨らみに息子を挟み、その硬度を復活させ始めた。  
「あぁっ、九峪様、嬉しい・・・!!」  
胸の谷間に出し入れされる肉棒を舐め回しながら、清瑞は再び快楽の階段を登り始めた。  
 
「んっ、ん、んんっ・・・」  
八回も清瑞を貫いた後、ようやく落ち着きを取り戻した九峪は、七度目の最中に失神した清瑞の乳房をしゃぶり、意識を失いながらも返してくるその反応を、にやにやしながら楽しんでいた。だが―――。  
「しっかし、伊万里の奴だきゃあ―――」  
不意に九峪の表情が曇る。  
「潔癖なところさえなきゃ、最高にいい女だってのによぉ・・・」  
不満を吐きながら、九峪は清瑞の両胸を激しく揉んだ。  
「んんっ、くっ、ふううぅ―――!」  
「とりあえず、今日のことにはお仕置きが必要だよな・・・俺とヤること以外、  
考えられねぇようにしてやるぜ―――」  
目の前で喘ぐ清瑞と、自らの算段に、再び股間を熱くする九峪。  
彼らの夜はまだまだ終わりそうもなかった。  
 
 
「はぁ―――」  
訓練場からの帰り道、伊万里は人知れず、大きな溜め息をついた。  
原因は勿論、昨日の九峪とのことである。  
―――どうしよう・・・きっと九峪様、怒られてらっしゃるに違いない・・・  
私の馬鹿・・・―――  
今日の訓練中、彼女の頭はそのことだけで満たされていたために、剣には全く身が入らなかった。  
―――九峪様が望まれるなら、何処でだってそれに応じなければ・・・そう思っていたのに―――  
もし・・・もしも本当に九峪様に捨てられたら、私は・・・とにかく会って謝らないと―――  
悲しみに崩れそうになる顔を何とか引き締め、ようやく伊万里は自分の部屋へと帰りついた。  
中に入ると、伊万里は早速、九峪の部屋を訪ねるために刀を置き、鏡を見据えて、自分の身なりに  
おかしなところがないかを、入念に調べ始めた。  
「ん・・・?」  
その最中、伊万里は、何処からか聞こえてくる小さな水音に気が付いた。  
「・・・?」  
彼女は辺りを見回したが、簡素な部屋には、その音源らしきものは何も見当たらない。  
何故か不安になった伊万里が部屋中を調べると、程なくして"それ"は見つかった。  
―――穴・・・?いつの間に、こんな―――  
それはいびつな三角形をした、5センチほどの、壁の端に出来た『穴』だった。  
水音は―――正確には何かをしゃぶるような音が、いまだにその向こう側から漏れ続けている。  
―――隣の部屋は、上乃の・・・じゃあこの穴はあの子が―――?  
 
 
「・・・ふーん、じゃあ九峪様、伊万里に嫌われちゃったんだ・・・あむっ・・・」  
「―――らしいな」  
 
―――九峪様!?上乃!!?―――  
伊万里が隣室の住人と穴との関連について考え始めた時、九峪と上乃の聞きなれた声が、  
穴の向こう側から届いた。さらに、上乃が九峪のモノを頬張る音が続く。  
―――あっ、ああぁ・・・―――  
伊万里は、九峪が上乃とも関係を持っていることは知っていたが、壁を隔てているとはいえ、  
実際にその場に居合わせたとなると、さすがにショックは隠せない。さらにその最中の会話が  
自分に関するものとなると―――。  
「んむっ、んっ、んはぁっ・・・伊万里、お堅いから・・・はむっ、ちゅ・・・」  
「わかってるつもりだったんだけどな・・・」  
「っぷぅ・・・そっか。だから私に、どうやって伊万里に謝ったらいいか聞きに来たんでしょ?」  
「―――ああ」  
―――え!?―――  
伊万里は呆然としながらも、その耳は九峪の言葉をしっかりと捉えた。  
―――九峪様っ―――!!  
伊万里の瞳から、これまで堪えていた涙が一気に溢れ出す。  
―――九峪様が、私を嫌わないでいてくれた・・・それどころか、私に謝ろうと―――!!  
伊万里は思わず上乃の部屋に飛んでいきそうになった。そして、上乃がいても構わない、  
一刻も早く自分から謝罪し、九峪に愛してもらいたかった。だが、今の言葉に完全に弛緩しきった  
身体は全く言うことを聞かず、伊万里はただ、その安堵感に涙を流した。  
九峪の次の言葉を聞く、その瞬間までは―――。  
「―――と思ってたんだけどな・・・けど、もういい」  
 
―――・・・え・・・?―――  
「ふぇ?ほおひて?」  
伊万里の心を代弁するかのように、上乃はモノを口に入れたまま九峪に聞いた。  
「いや、前々から思ってたんだよ・・・伊万里、俺のことが嫌いなんじゃないか、ってな」  
 
―――なっ・・・!!そんな、そんなこと―――!!  
 
伊万里は大声で否定したかったが、動揺のあまり、彼女は声自体が出せなくなっていた。  
「抱いてる時もさ、なんかあいつ必死なんだよ。唇噛んだり、布団死ぬほど握り締めたり・・・  
俺とすんのが嫌なら、はっきり言ってくれりゃいいのに」  
 
―――違いますっ!!あれは声が出ないように・・・あなたに、はしたない女だなんて思われたくなかったから―――!!  
 
伊万里は必死に首を横に振るが、その意思が九峪に伝わるはずもない。  
「んっ・・・そうなの?でも伊万里、そんなこと、一言も言わなかったし・・・」  
「そりゃあ、俺が神の遣いだからだろ?・・・悪いことしたと思ってる」  
 
―――違う、違うっ!!私は、私はあなたのことを愛して―――!!  
 
「―――だからもう、伊万里には近づかない」  
 
―――ひっ―――!!  
 
一番聞きたくなかった言葉を聞いた瞬間、伊万里の身体は感電したように震えた。  
 
「近づかないって・・・どうするの?」  
「伊万里とは一緒にいないようにする。俺といたら、嫌なこと思い出しちまうだろうしな・・・  
上乃だって、嫌いな男に抱かれたりしたら、そんなこと早く忘れたいだろ?」  
「私、九峪様以外としたことなんて、いっぺんもないよおっ!!・・・でも―――  
うん、確かに・・・ちょっとでも早く忘れたいと思う・・・」  
「な?・・・これからはさ、もし伊万里の方から誘ってきても、断るようにするわ。  
そうやって、気ぃ使われんのも嫌だし―――」  
 
すでに伊万里は、半分気を失った状態になっていた。これからは、九峪にどんな求愛の言葉を  
述べたとしても、それは単なる気遣いとしかとってもらえない。  
自分の心からの愛が、決して九峪には届かなくなってしまったことを、彼女は知ってしまったのである。  
それこそが九峪の策略とも知らず―――。  
 
「うん、そうだね・・・じゃあさ、これからは伊万里の分も、私がいっぱい  
してあげる!だから元気出してっ、九峪様っ!!」  
「上乃・・・ありがとよ。優しいな、お前は・・・」  
「今日はたぁっくさん、慰めてあげるからね・・・」  
「ああ・・・それとさ、もしかしたら、また伊万里のことで相談しにくるかも知れねぇから―――  
そん時もよろしくな」  
「うんっ!!」―――  
 
その後、伊万里は壁の穴の前で、二人の愛の営みの一部始終を、  
遠い場所の出来事のように聞いていた。  
 
 
「―――で、どうだった、伊万里の奴は?」  
「んっ、ちゅむっ、はぁ・・・はい、九峪様のご計算どおり・・・  
んっちゅ・・・しっかりとお聞きになっていました・・・」  
靴を残して全裸にした清瑞に自分の息子をしゃぶらせながら、  
同じく裸で寝転がっている九峪は質問した。  
「よし、まずは第一段階成功だな・・・」  
 
今日、伊万里に起きた一連の出来事は、全て九峪の企みによるものだった。  
まず清瑞に、隣室の声が十分に聞こえるほどの穴を壁に開けさせる。  
次に訓練が終わる時間を見計らって上乃との会話を交わし、その内容を帰ってきた伊万里に聞かせ、  
続けて行う上乃とのまぐわいで、さらに伊万里の精神にダメージを与える―――これが九峪の言う、  
『お仕置き』の第一段階だった。  
 
「あいつ、どんな顔してた?」  
伊万里の部屋の屋根裏に潜ませていた清瑞に、九峪は聞く―――心底楽しそうに。  
「それはもう・・・ちゅうっ・・・この世の終わりのような・・・あむぅっ、ちゅ  
・・・九峪様、美味しいです・・・」  
「へへっ、そうでなくっちゃあよ・・・今日は良く頑張ったな清瑞」  
「はっ、はい―――!!」  
頭を撫でられ、清瑞はこの上なく嬉々とした表情になる。  
 
「こいつはご褒美をやらなきゃな、お前の膣内に―――」  
「あぁっ、嬉しいです、九峪様っ!!」  
その言葉に感極まった清瑞は、たまらず九峪に飛びついた。  
「こらこら、焦んな!すぐに出してやっから・・・」  
そう言うと九峪は清瑞を仰向けにし、剛直の照準を定めた。  
「たっぷり流し込んでやる・・・しっかり孕めよ?」  
「はいっ、孕みますっ!九峪様の赤ちゃん、しっかり妊娠しますっ!!  
・・・あっ、んぁひぃっ!!!」  
九峪に貫かれた途端、あっさりイってしまった清瑞は、そのまま日の出まで、  
一度たりともモノを抜かれることなく、大量のザーメンをその子宮に射出され続けた。  
 
―――それから三日後。伊万里は訓練にも出ず、ただひたすら部屋の中で時間を過ごすように  
なっていた。もし部屋を出て九峪に出会ってしまった時、いくら自分のためにそうしてくれるとはいえ、  
『彼に避けられてしまう』という事実は、彼女にとって耐え難いものであり、想像だにしたくなかったからである。  
そして、もしかすると、今日にも九峪が自分の考えを変え、上乃に自分との仲を取り持つよう持ち出してくるかもしれない。  
その一縷の望みをかけ、今日も伊万里は穴の前でじっと待つ。  
 
「あうぅっ、九峪様っ、凄いっ、凄いぃっ!!そんなにっ、したらっ、  
またっ・・・いっちゃうよぉっ!!」  
「上乃、上乃っ・・・愛してるっ・・・!!」  
 
しかし、そこから聞こえてくるのは、彼女が待ち焦がれる言葉などではなく、  
上乃が九峪のモノをしゃぶる音、甲高い嬌声、腰同士がぶつかり合う淫猥な音、  
そして九峪が囁く、上乃への「愛の言葉」だけだった。外にも出られず、かといって  
穴をどうにかすることも出来ない。さらに、そこからは愛する男が他の女、それも自分の  
乳母姉妹と交わる音が脳を蝕むように流れ込んでくる。伊万里は八方ふさがりのまま、  
ただ耐えるしかなかった。  
九峪はその伊万里の状況を知った上で、毎日上乃の元を訪れた。そして今日も彼女の  
期待感だけを煽り、そして奈落へと突き落とす音と言葉を隣室へ送り続ける。すべては  
伊万里の精神を追い込むために―――。彼女と乳母姉妹という関係の、何も知らない上乃を  
利用したことも十分に功を奏し、九峪の思惑通り、伊万里の精神は均衡を失い始め、  
ついに彼女は一日中、同じ言葉だけを繰り返すようになってしまった。  
 
―――九峪様、九峪さま、くたにさま―――  
―――愛しています、あいしています、愛してください、あいしてください――――  
 
―――ク タ ニ サ マ 、 ア イ シ テ イ マ ス 、 ア イ シ テ ク ダ サ イ―――  
 
 
そしてさらに一週間―――。  
 
部屋の中、九峪は珍しく一人で夜を迎えていた。彼の勘が、  
そうするようにと自分自身に伝えていたからである。  
夕食を食べ終え、忌瀬に作らせた精力剤を飲んでいると、この部屋へと近づく足音を  
九峪は聞き取った。  
「来たな・・・」  
自分の勘が当たったことに九峪はほくそえむと、じきに訪れるその時を待った。  
 
「九峪さま・・・」  
そして、ほどなくそれは来た。  
「誰だ?」  
声によって、障子越しに映るその影が伊万里のものであることを確信すると、  
九峪は平静を装って声を掛ける。  
「伊万里です・・・入ってもいいですか?」  
声自体は、確かに伊万里のものだが、その調子はどこかおかしい。それはまるで子供のように、  
どこか間延びした、それでいて抑揚の無い、独特の印象を与えるものだった。  
「ああ、いいぞ」  
しかし、それに対しても九峪は落ち着きを払い、彼女を迎え入れる。  
「はい」  
そして開かれた戸の向こうには、正装用の着物を纏った伊万里がいた。  
その着物は彼女が持っている最も女らしい衣装だったが、纏うといっても、  
素肌の上に掛けているだけで、帯も締めず、彼女はその股間を恥ずかしげもなく  
晒している。  
 
「おいおい、なんてカッコしてんだ」  
九峪は部屋に入った伊万里に近づくと、着物の前を合わせてやった。  
「誰かに見られなかったのか?ん?」  
「はい、誰にも」  
わかりきったことを問う九峪。元女王候補が、このような格好で出歩いている光景が  
誰かに見られでもしたら、たちまちのうちに騒ぎが起こってしまい、彼女がこの部屋まで  
たどり着けるわけがないからである。  
「九峪さま・・・」  
「ん?」  
無表情な伊万里の目に焦点は無かったが、それは確実に九峪へと向けられていた。  
「愛してください」  
ピントの合わない視線で九峪を見つめ、伊万里はそう一言だけ告げた。  
「・・・伊万里は俺のことが好きか?」  
「はい、好きです、愛しています」  
「そうか・・・だったら愛してやる。けどな」  
「はい」  
「その前に・・・こいつを喜ばせろ」  
精力剤によって、すでに限界まで硬化したイチモツを取り出す九峪。  
その口調は既にこれまでのものとは違い、女を性欲処理の道具としか見ていない、  
ぞんざいなものだった。  
「はい」  
しかし、それに対しても表情一つ変えることなく、伊万里は九峪のモノを口に含み、  
卑猥な音を立てて舐めしゃぶり始める。  
 
「んんっ、んう・・・くちゅ、んっ、んんっ・・・」  
そこにはテクニックこそ無かったが、彼女の懸命さだけは十分に九峪へと伝わっていく。  
以前は頼んでも、恥ずかしげにキスを繰り返すだけにとどまっていた伊万里のフェラチオ。  
それをここまでに仕立てた自分の計画の成功に、九峪は満足していた。  
 
―――まぁ、ちっと壊れちまったが・・・しかし、玩具って奴は壊れちまうと面白くねぇが、  
女は壊れた後でも、玩具として愉しめる。潰しがきくってのはこういうことを言うんだろうな―――  
罪悪感など微塵も感じず、口をすぼめながらの奉仕を開始した伊万里を見、九峪は口の端を歪めて笑った。  
「んっ、はぷっ、ちゅうぅっ・・・」  
「よし、伊万里、もういい。そこに寝て、股開け―――」  
「ぷぁっ・・・はい・・・」  
九峪が顎で指した先にある布団に伊万里は寝転び、自らの手で足をM字型に広げた。  
「へへっ、そそるな・・・」  
あのお堅いイメージしかなかった伊万里が、自ら卑猥に股を開く。その事実に九峪は自制心の限界を感じていた。  
「九峪さま、どうか私のいやらしいお○○○に、九峪さまのたくましいお○○○○をぶち込んで、  
激しく掻き回して下さい」  
「おっ、伊万里、そんなスケベな言葉、何処で覚えた?」  
抑揚の無い声での懇願について聞いてはみたものの、その教本がすぐに自分と上乃の行為だということに  
気付いた九峪はそれ以上追求せず、また、これに関してだけは、嫌な記憶を閉ざそうとする脳の防衛本能からか、  
伊万里は何も答えなかった。  
 
「それじゃあ、お望みどおりぶち込んでやる。ひぃひぃ言わせてやっからな・・・」  
九峪は舌舐めずりしながら服を脱ぎ捨てる。そして伊万里に覆いかぶさると、  
すでに濡れそぼっている股間へと一気にモノを沈め、そのまま激しく腰を使った。  
「んあぁっ、あっ、あっ・・・」  
すると、相変わらずの無表情のまま口だけを大きく開け、すぐに伊万里は喘ぎ始める。  
「こういう女とやるのも・・・なかなか・・・いいもんだなっ・・・!!」  
「九峪さまっ・・・」  
欲望のままに自分を責める九峪の背に手を回し、伊万里はすがりつくように彼を求めた。  
「九峪さ、はぅっ・・・九峪さまっ・・・愛してっ・・・うんっ、います・・・  
あいしています、愛してくださっ、い、あいしてくだっ、さい・・・」  
「おおっ、愛してるっ、愛してるぞっ、伊万里!!今、子宮に精子ぶちまけてやるからなっ!!」  
「九峪さまぁ・・・」  
激しい昂ぶりの中、九峪が伊万里へと向けた愛の言葉。今の彼女にはそれだけで十分だった。  
いや、それだけが"すべて"だった。  
「くっ、やべっ、もういっちまうっ・・・!!伊万里っ、お前もいけっ、わかったなっ!?」  
「はいっ、九峪さま、愛しています、あいしています、愛してください、あいしてください・・・」  
いつの間にか彼女の頬には涙が伝っている。その涙が一体どういう意味を持つものなのか、  
彼女自身にもわからなかった。  
 
―――ク タ ニ サ マ 、 ア イ シ テ イ マ ス 、 ア イ シ テ ク ダ サ イ―――  
 
 
 

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