煤けた夜も酒に酔う、されど
夜。
破竹の如き快進撃を続ける耶麻台国復興軍の幹部達は、先の戦闘での事後処理の一通りを終え、藤那の提言により大広間にて宴会を開くこととなった。
だが―――最初こそ互いを労う、至って慎ましやかなものだったのだが、藤那が志野に酒を飲ませてしまってからは、ほとんどの者が飲ませ飲ませられ、収拾のつかないドンチャン騒ぎとなってしまった。
流石の九峪も巻き込まれるのは勘弁と、困り果てた様子の伊雅にその場を任せ(押し付けたとも言う)早々に自室に避難していた。
「はあ〜。藤那の奴、志野が酒乱だっての知ってるくせに。……あ、あいつの場合知ってる上で尚更面白がってやってるのか」
と、今頃は更に酷い事になっているであろう大広間に思いを馳せ、座り込んで苦笑する九峪。
が、その九峪の背後に一つの影が……。
「くったにっさま〜」
「うぉわああ!?」
いきなり背後から抱きつかれた九峪は、驚きのあまり変な声を上げてしまった。
「だ、誰だ、いきなりっ」
慌てて後ろを見ると……
「えへへ〜、わたし〜」
「って、上乃?」
そう、恐らくは九峪と同じく宴会場から抜け出して来たのであろう上乃が九峪の背に抱き着いていた。
しかもただ抱き着くだけでなく、両の腕を九峪の首に回し頬擦りまでしていた。思いっきり密着しているため、上乃のふくよかな双丘の感触がかなりダイレクトに伝わってくる。
(あ、やわらけー…って)
「何してんだよ!?」
女性特有の身体の柔らかさについ陶酔してしまった九峪だったが、現状の異常性に気付いて叫ぶ。
そこでふと気付く。
上乃からは何か嗅ぎ慣れぬ、されど覚えのある匂いがする……というかつい先程集中的に嗅いでいた匂いだ。それはうら若い女性特有の甘酸っぱい匂いというよりも、
「…さ、酒臭っ」
「あ、九峪様ひど〜い。女の子に臭いなんて言っちゃダ〜メ〜」
そう言ってあははははと馬鹿笑いをする上乃。どう見ても完璧に酔っている。
(うわ…。完っ全に出来上がってやがる…。あ〜、結構酒に強い上乃までがこの様子だと、今頃大広間は……)
考えるだに恐ろしい。
だが取り敢えず今は目の前の上乃である。
「えっと、上乃?出来れば離してくれないかな〜?苦しいからさ」
というか、このままではやばい。主に下半身とか。
「え〜、九峪様、私にくっつかれるの嫌なの〜?私のこと嫌いなの〜?」
「いや、俺が上乃を嫌いなわけ、無いじゃないか。そうじゃなくて密着しすぎだからさ、ちょおおっっと離れてくれたら嬉しいかな〜なんて」
(つか、理性が持たん)
表面上はともかく、胸中は実に男の子な葛藤が渦巻く九峪少年だった。
そんな九峪の葛藤を知ってか知らずか、上乃は更に九峪にひっつく。
(だああああああ!?)
「むふ〜?ひょっとして九峪様ぁ……興奮してるゥ〜?」
にんまりと笑う上乃。
対する九峪は焦りながらも必死に否定する。
「ばっ……な、何言ってんだお前!?」
だがそんな九峪に構わず再び頬擦りをする上乃。そして更に、九峪の首に回されていた腕は次第にその下半身へと……。
「どわっ!お、おい、上乃。ちょっ、止め―――」
ギュムッ
「い!?」
…………握られてしまった。何を、とは聞かないで欲しい。
「……九峪様…勃ってる、ね」
言うな。悲しくなるから。
九峪は心の中で涙した。今この瞬間、何か大切な物を失った気がしたからだ。
ダン ダン ダン
いたずらに大きな音を立てて廊下を歩く九峪。既に股間のモノは納まっている。
その胸中にあるのは、先程の上乃の言葉に対する怒りだった。
九峪は、どのようなカタチにしろ自分のことを蔑ろにしたような上乃の台詞に激怒したのだ。
(…っ。上乃の奴、何が『伊万里の前の練習台になってあげる』だ!自分の身体をそんな……!大体何で……!)
怒りのあまり考えが纏まらない。頭の中が混乱して余計にイライラする。喉も乾いて痛いほどだ。
「……はあ、水でも飲んでくるか」
ついでに夜風に当たって頭を冷やそう。
そう思い、井戸のある中庭へ向かおうとする九峪だったが…。
「…あれ、香蘭?」
「おう、九峪様。こんばんは、ね」
廊下のど真ん中で、何やら重たそうな瓶を両手に抱えた香蘭と鉢合わせした。
「ああ、こんばんは。こんな所で何してんだ?いや、俺は水でも飲もうかと思って、ちょい井戸までな」
「おおそうか。なら、丁度よかたよ」
「あん?」
香蘭の言葉に、聞き返す九峪。
すると、香蘭は抱えている瓶を持ち上げ、
「ワタシ、丁度、水汲んで来たところ」
そう言って、九峪を自分の部屋に招いた。
「九峪様、どしたか。自分の頭ぶつけて」
「あ、ああ、いや、なんでもないぞ、うん」
純粋すぎる瞳に見つめられ、誤魔化す九峪。
だが……。
「あ」
「え?」
突然、声を上げた香蘭を訝しむ九峪。その視線の先には―――
「どわああっ」
……まあ、あれだ。先程の上乃との行為(未遂)を思い出したためか、はたまた香蘭の魅惑の身体のためか。とどのつまり九峪の分身が復活していたわけだ。
慌てて腰を曲げ、一見土下座のような姿勢でソレを隠す九峪。
そんな九峪を不思議そうに見詰める香蘭。
「九峪様、それ、何か?何か隠し持てるか?」
「いや、気にすんな!むしろ気にしないで!」
「?」
そんな問答をしていると、九峪はふとある事に気付いた。
九峪は俯いたような状態なので、目の前には香蘭の足があるわけだ。で、つまりは香蘭の呉服のスリットから除く…、
(脚線美いぃぃぃぃ!?)
―――が網膜に焼き付くのである。
で、そうなると当然『追い討ち』が掛かり、
(痛てっ!いっ、痛たたたたたっっ!!)
あまりの痛みにうつ伏せを諦め、九峪は起き上がった。
「……あ〜、痛かった…」
だが、ホッとしたのも束の間。
ヒョイッと香蘭が九峪の下半身を押さえ、遮る物の無くなった彼の股間を観察しだしたのである。
流石にこれには驚く九峪。
「どわっ。こ、香蘭!?」
「九峪様、これ、何か?今、痛がてたの、これのせいか?」
まじまじと、ズボンを押し上げいきり立つ九峪自身を見詰める香蘭。
「み、見るな!お前は見ちゃいかん、穢れちまう!」
喚く九峪。だが、それがまずかった。
九峪の言葉に、香蘭は目に涙を溜め、詰め寄る。
「ケガレる?香蘭が近寄たら、九峪様、ケガレるか?香蘭、そんなに汚いか?」
どうやら、九峪が「穢れる」と言ったのを「香蘭が汚いので九峪が『穢れる』」と誤解したらしい。
慌てて訂正する九峪。
「いや、汚いのは俺だよ。香蘭は汚くなんか無いって」
だがその言葉を聞き、更に九峪に詰め寄る香蘭。
「こ、香蘭?」
「九峪様、汚くないよ。汚いわけないのこと」
「あ、ありがと…」
だが、香蘭はそれでも止まらない。そのまま九峪に覆い被さり、九峪の股間をまさぐり始めた。
「ちょ、香蘭!?」
「九峪様、さっき痛がてた。これ見るよろし。こんなに腫れてるよ」
そう言って四苦八苦しながらズボンを脱がし、九峪のイチモツを取り出す香蘭。
「でえっ!?…あ、いや、それは腫れてるワケじゃ…」
「む、九峪様、隠す必要無いよ。ここは男の人にとて大事なところよ。早く治療するのがいい」
そう言ってソレを口に含む香蘭。
「いいっ!?」
驚く九峪に構わず、そのまま口内でソレを舐める香蘭。
「…うぁっ」
ざらついた舌の感触が九峪にえもいわれぬ快感を与える。
だが、このままではまずいと堪らず叫ぶ九峪。
(これじゃあまるで、何も知らない子供にイケナイ悪戯してるみたい…てかまんまじゃねえかぁっ!!)
「こ、香蘭!それは腫れてるんじゃなくて、勃起してるの!ただ単に俺が香蘭に欲情しちゃっただけ!だからそんなコトしなくていいの!」
自分で言っててみっとも無く思ったのか、手の平で顔を覆い天井を見上げる九峪。
そんな九峪を見上げて香蘭は不思議そうに問う。
「よふほう?(よくじょう?)」
「だーっ!咥えたまま喋るなー!」
それから暫く、九峪は香蘭に『性』の何たるかを(恥ずかしながら)講義することとなった。ちなみに本当に『講義』だけである。
そして話を終える頃には、既に真夜中と言って良いほど夜が更けていた。
「九峪様。香蘭、とても勉強になたよ。感謝のこと」
顔を真っ赤にしながらそう礼を述べる香蘭の前では、九峪が憔悴しきった表情で涙していた。
(ああ、御免よ紅玉さん…。香蘭に『保健の授業』してしまいました……)
今頃は自室で夢の中であろう、香蘭の母親に懺悔していたりする。
だが香蘭は、そんな九峪に更なる追い討ちを掛けた。
「えと、九峪様…」
「あー…?なんだー、香蘭?」
「その、九峪様、さっき香蘭にヨクジョウしたのだな…?」
「ぶっ―――!」
真っ赤になりながら見ると、香蘭も頬を染めながらこちらを上目遣いに見詰めていた。
(こ、これは…)
かなり可愛かった。
だが、その口から紡がれた言葉に九峪は再び石化する。
「九峪様にだたら…香蘭、抱かれてもいいよ」
「い゛!?」
だが驚く九峪をよそに、迫る香蘭。
「ここここここ香蘭んん?そ、そおゆうのは好きな男とだな…」
必死に説得を試みる九峪だったが、香蘭は構わず九峪に覆い被さる。
完全に香蘭に押し倒された格好の九峪は抵抗するもびくともしない。もとより香蘭とは全体的な筋力に差があり過ぎるので、どうしようもない。そういった意味では九峪は復興軍一、『押し倒されやすい』人間になるわけだが。
(うわ……それって男としてどうよ?…ってか、それ以前にまずい、この状況はまずい)
必死に現状を打破しようと考えを巡らす九峪だったが、その顔を香蘭の豊か過ぎる胸が包む。
「ム…ムグゥ!」
「ひやあっ…!く、九峪様、イキナリ顔動かさないで欲しいよ…」
以前何だったか抱きついてきた時はここまで過敏な反応を示すことは無かったのだが、どうやら香蘭も興奮しているようである。
その証拠に、九峪の頬に服越しに触れている乳房の先端部分が硬くなっていた。
きつく抱きしめ、九峪が呼吸をする度に悶える香蘭は、先程自分が咥えた九峪のモノに手を添え撫で上げる。……どうでもいいが講義の間中、出しっ放しだったようだ。仕舞えよ、九峪。
「…く、九峪様ぁ、の…とても硬いのこと、よぉ」
やがて香蘭の九峪自身を撫でる手はその速度を上げ、いつの間にか激しく摩擦していた。
九峪はその稚拙な、だがそれ故に激しい愛撫に限界が近付いていた。
(や…べ、もう…)
ここは最後の一線…と耐える九峪だったが、悲しいかな、ソッチの経験は皆無と言っていいため耐性がそれほど無いので……まあ、なんだ。わりとあっさり果ててしまった。
(くああっ―――)
ビュクッ ドク ドク……―――
「あぅ…」
香蘭の手にぶち撒けられ溢れる九峪の精液。
その感触に何やら陶酔した様子の香蘭。
「あ……九峪様の子種、熱いよ…」
『子種』と言う単語に興奮したのか、最後にもう一度ビュッと白濁液を吐き出す九峪自身。
それを見た香蘭は、自分の手を鼻に近づけ、付着したその白い液体の臭いを嗅ぎ、ぺロッと舐めた。
途端に眉を顰める。
「うう…、苦いね…」
一方、九峪は意識が朦朧としていた。香蘭に手コキされたのがよっぽどショックだったようだ。
それと同時に―――
(…あ〜…やべ……)
もはや理性など崩壊寸前だった。下手をすれば、このまま香蘭に襲い掛かりそうな程、その思考は情欲に狂っていた。
そんな九峪の内面など知る由もなく、香蘭は九峪に抱き着いたまま呼吸も荒く呟いた。
「九峪様、さっき香蘭に、こういうの、好きな男とすると言った。…香蘭、九峪様のこと好きね。だから香蘭―――」
九峪様にだたら、抱かれてもいいよ
それが、引き金だった。
唐突に九峪は、香蘭の胸元をはだけ、目の前にある乳房に齧り付いた。
「ひあっ…!く、九峪様…?」
香蘭の驚きの声は、九峪の劣情を更に刺激する要素にしかならなかった。
九峪は更に香蘭の右乳首を咥え、口の中で転がす…いや、そんなものでは無く、ただ貪欲にムサボった。余った左の乳房は左手で、まるでゴム鞠を握り潰すが如く強く掴み、子供が粘土遊びをするかのように弄んだ。
「…ヒ…くぅっ」
その荒々しさが与える、初めて知る快楽を、瞼をきつく閉じ耐え、享受する香蘭。
元より経験が無く、雑誌やAVなどによる半端な知識しか持たない九峪は相手を『感じさせる』テクニックなど持ち合わせていない。
故に本能に突き動かされるまま、『感じてくれる』ようにするしかない。九峪はそう思い、香蘭のたわわな胸を貪り弄る。
……もっとも、そんな理屈など関係なく、「いつもいつもスケベだの何だのと言われてんだ、いっその事ここでそのスケベの本領発揮してやろーじゃねーか!」という一種開き直りな部分もあるが。つか、大部分がそう。
そうして、散々香蘭の胸を弄った九峪は起き上がり、息も絶え絶えな香蘭に注文をつける。
「香蘭」
「…うぇ…?何か、九峪様…」
「胸でシテくれ」
「…え?」
キョトンとする香蘭。
そんな香蘭に更に頼み込む九峪。
「だから、香蘭のその立派な胸で、俺のを挟んでくれ」
所謂『パイズリ』をねだる自称・神の御遣い。これでもかってくらいバチ当たりだった。
九峪の股間に顔を埋め、その豊満な胸で九峪自身を愛撫する全裸の香蘭。
(九峪としてはチャイナのコスチュームプレイもOKだったのだが、香蘭に言う前に脱がれた。ちなみに九峪は下半身だけ脱いだ)
シュッ シュッ
シュッ ヌチャッ ヌチャッ
最初は柔らかい乳房を肉棒に擦り付ける軽い音しかしなかったが、段々と水っぽい湿った音も混じり始めた。
香蘭は一心不乱に九峪に奉仕している。
そんな香蘭の頭を撫でながら、九峪は思う。
(よく考えたら香蘭って王族で、しかも火魅子候補なんだよな。
仮にもそんな大人物が俺みたいなただの高校生にパイズリしてるなんて……あ、やべ。そう考えたらかなりキた)
ドクッ ドクッ ドクッ
気付いた時には既に遅く、香蘭の胸に再び白濁とした精液を吐き出していた。
「香蘭、うまくやれたか」
そう尋ねる香蘭の顔はやっぱり真っ赤で、それがとても愛おしく思えた九峪は少し乱暴に香蘭の頭を撫でた。
「ああ、香蘭の胸、その、気持ち良過ぎだよ。おかげですぐにイっちまう」
……事実とはいえ、もう少し言葉を選ぶべきではないだろうか。
もっとも、この二人に関して言えば、そんな事は互いに気にしないのだろうが。
さて、暫く果てた後の余韻に浸っていた九峪だったが、香蘭に催促され、いよいよ『本番』を行うこととなった。
香蘭の秘所は既に愛撫の必要が無い程にびしょ濡れである。どうやら九峪に奉仕している間、自分で弄って慰めていたらしい。
「…んじゃ、その、痛くしないよう努力します」
流石に緊張するのか、何故か敬語の九峪。
対する香蘭は無言。
九峪はゆっくりと、後背位の香蘭へ挿入した。
最初はわりとすんなりと入っていったが、程無く行く手を遮るモノに突き当たった。これが、最初で最後の難関である。
「……香蘭、痛いかもしれないけど、ゆっくり挿れるから我慢―――」
「構わないね」
九峪の台詞を遮る香蘭。
突然の事に驚く九峪。
「へ?」
「一気に挿れて、構わない」
その言葉に、暫く無言の九峪。
だが。
覚悟を決め、腰を一気に突き入れる。
「!!―――…あ……ひ、が…あ」
声にならない悲鳴を上げる香蘭。さしもの彼女も、処女を散らす痛みには耐えきれなかったようだ。結合部からは真っ赤な鮮血が流れている。
そんな香蘭に心配げに尋ねる九峪。
「お、おい、大丈夫か」
その問いに香蘭はその目に涙を湛えながら、ただ頷く。
九峪はそれが痩せ我慢に過ぎないと気付いていたが、しばし思案し、敢えて再び腰を振った。
ズッ ズッ ズッ ズッ
「…ぃっ…かは……く…!ゥ…」
ズッ ズッ ズッ ズッ
「…っ…!……!」
九峪のモノが何度も突き入れられる音と、痛みを堪える喉の詰まった声。
それだけが部屋に響いていた。
だが次第に、挿入に抵抗が無くなり、香蘭の声にも苦しみ以外の質が混ざり始めた。
ズッ ヌチュ ズプッ
「…ひぃ…ァ……」
やがて、九峪は香蘭の尻に腰を強く打ち付け、香蘭も僅かだが自分から快楽を求め始めた。
そしてもう一刻程交わり続け、九峪の限界も近付いていた。
(そういえば…香蘭、やっぱ処女だったな…。あの香蘭の処女を俺が―――)
「く…香、蘭……」
「っ……あ…九峪様ァ…」
……………………そのまま果てた。
九峪雅比古、十八歳。イメージプレイってゆーかシチュエーションにグッとキてしまう男。
ただ、果てる瞬間、ナカはやばいと抜いた後、身体に精液をぶち撒けられた香蘭が、メチャクチャ艶っぽかったことを追記しておく。
その後、九峪だけが気持ちいいのは不公平だという香蘭のために、彼女が絶頂を迎えるまで…というか迎えた後も九峪は付き合わされた。ちなみに合計九発。九峪少年、頑張りました。
そして九峪は酷使した身体に休息を与えるべく、朝日が顔を見せる頃自分の部屋に戻ったのだった。
だが―――
伊万里の部屋。
「何だ、上乃。お前が『折り入って相談がある』なんて、珍しい。あ、そういえば昨日の夜は何処行ってたんだ、宴会の途中でちゃっかり抜け出して」
「……うん…。ねえ、伊万里。九峪様のこと、好き?」
「ぶっ―――!!な、な、何を言うか、いきなり、おい!?」
「そんな錯乱(←失礼)しなくたっていいじゃない。で、好きなの?」
「……私が神の遣いである九峪様に好意を抱くなど…そんな畏れ多い…」
「じゃ、嫌いなの?」
「そんなことは断じて無い!!!」
「…………………」
「……はっ」
「…………(ニマ〜)」
「あ、いや、今のは…」
「……ねえ、伊万里。今夜さ、一緒に九峪様の部屋にお邪魔させて貰わない?」
一方、紅玉の部屋。
「ふう…」
「母上、昨晩余た水、どしたらいいか…。……??母上?」
「え、あ、香蘭。どうしたの?」
「…母上、溜息などついて、何かあたか?」
「…そんなこと、無いわよ」
「……母上。香蘭、母上の娘。母上の悩みは香蘭の悩みのこと。相談してくれると…嬉しい」
「……香蘭。…………ありがとう。あなたが私の娘であることを誇りに思うわ」
「……ん」
「でも……はあ…。あなたにこんな事を言うのも…」
「―――母上!」
「…………ふう…。……あのね、香蘭。その、あなたの父上が亡くなってから、もう随分経つでしょう」
「…ん」
「それで、その、それから私には男の方と『そういう付き合い』をする機会が無くなったわけで…」
「?」
「その、つまり、独りでいることに耐えられない時がある、というか……。性欲を……持て余している、というか…」
「……?……あ、母上、身体が夜鳴きしてるか!?」
ドガシャアアッ
「……………………」
「母上、大丈夫か?急に壁に頭めり込ませて」
ズポッ(←壁から頭を引っこ抜く音)
「……香蘭、何処でそんな言葉を……いえ、まあいいわ。…その、香蘭の言った通りよ」
「やはり夜鳴きか!」
「だから、そんな言葉を大声で言うんじゃありません!!」
ドゴッ(←覇璃扇による打撃)
「……痛いね、母上」
「まったく、このコは…」
「でも母上、それならいい解決法あるよ」
「……え?」
「九峪様にお願いするのこと。香蘭も昨日だけでは身体、夜鳴きしてしまう」
九峪の運命やいかに!?
【おまけ】
香蘭の部屋。その天井裏。
昨晩からずっと、清瑞が石像と化していた。但し、顔真っ赤。