第七幕 それぞれの結末
第一場
"トゥルルル、トゥルルルル…"
優しくそれでいて無機質な電子音の方向に浅黒い腕が伸びる…。
その音で始めて深い眠りから起こされたらしいことは、ヨロヨロと覚束ない動作のため一目でわかる。
「…はぁい…、な ん で あ り ん す ?」
寝ぼけ眼を擦りながら右手の子器に話すヒメジ。
「おはようございますマァム。 マックスウェル様からのお託で、この時間になったらお部屋に電話を差上げるようにとのことでして…」
「あい…?」
部屋を見渡すと彼の姿はなかった…。
「お支払いの方は既にお済みになられておりますが、何かございましたらお申し付けください」
「そうでありんすか…どうもありがとうでありんす」
子器を置く、その手の甲になんやら点滴のチューブが付けられているのに気付くと、ヒメジは絆創膏を剥がし、無造作にそれを引き抜いた。手が冷たい…。
「一体どうなっちまったんでありんす〜〜〜」
ベッドから立ち上がるとテーブルの上に自分のパールマイカパープルに彩色されたラップトップと、一枚の8cmDVDが置かれているのに気付く…。
添えてあるメモには「see me」と走り書きがある。
「ふん、ふん」
ヒメジは部屋に備え付けてある60インチフラットTVの内臓プレイヤーにそれを掛ける…。
やがてそこにミニバーのカウンターをバックに彼が映し出された。
出かけるにおよび、すでに身支度を整えた…といった感じだ。
「おはようプリンセス…。気分はどうかな?」
(ありゃりゃ?何でありんす?)
「短かったけど、楽しい時間を過ごさせてくれて感謝するよ、お礼と言ってはなんだけど、君の『宿題』はなんとか僕が『でっちあげて』おいた…。あとは日本語で君が書き直せばOKの筈だ」。
(え?え?え?〜〜〜〜〜〜〜)
「いつの日か、また会えたら…そこに書かれてるような刺激的でロマンティックな一日を君と過ごしたいと思う…、でも、今の君には そぉ〜う、まだまだ早いかな?…」
「い、いや、悪く取らないで…、君は…、美人だしスタイルも抜群…きっとそのうち魅力的なレディになれる…それは保証するよ。まぁダイヤの原石っといったところかな?」
ポーっと耳が熱くなるヒメジ…。
「学校…大変そうだけど、これからもじっくり時間を掛けて、一人前になれるよう頑張って…影ながら応援してる…。(腕時計に眼をやり)そろそろ空港に行かないと…じゃ、…」
最後に彼の『投げキス』の映像で動画が終了した…。
ヒメジはガックリと肩を落とすと
「やっちまったで ありんすね〜〜〜ぇ」
そう言うのが精いっぱいだった。
彼女はラップトップにログオンし彼の残してくれたファイルを開けてみた。
そこにはまさしくヒメジが夢に描いていたような、大人の男女が過ごす煌びやかで充実した週末が書き綴られている。
彼と一緒のスナップまで数枚偽造してあり、このままでも武蔵坊を納得させるには充分すぎる内容だった…。
ヒメジは彼の残したDVDを胸に抱きしめると、ひとつ大粒の涙をこぼしたのだった。
第二場
日曜の昼下がり。
自室のベッドで丸くなっているしきみ…。昨夜は、あれから帰宅した後、深夜まで例のレポートの仕上げに躍起となっていたため、かなりの寝坊をした。
眼がさめてからもずっと布団にくるまって考え事を続けている。
いつもの日曜なら早起きし、山まで薬草の採取を兼ね散策に出かけるのが常であったが、サボってしまった。
それだけ疲弊しているのもあったが、山でもしナナフシに出会ったりしたら…。
それが怖くて仕方がない…。
昨夜から何も口にしていない…だが食欲もなく、ベッドから出る気にもなれず、しきみはこの先のことを考える…。
ナナフシ会ったらなんて言えばいいの?
もちろん彼との関係は薬活に長けた者同志、それ以上でも以下でもない、操を立てる義理はないのだから、本来何も言う必要はなかったが…。
「私、この先こんな風にして…どんどん嘘の上手な女になっていくのね…」
彼女の頭の中にはナナフシの笑顔に交じってハヤトの逞しい裸体が浮かんできた…。
「いやだわ…」
そう呟くと、右手をショーツの中に忍び込ませる…。
人差し指で昨日、ハヤトがしてくれたことを思い出しながら自分で刺激する…。
(ハヤト…優しかったなぁ…)
しきみはそのまま、思うに任せて指を動かし続けた。
第三場
武蔵坊は日曜日も職務に追われている。
なにせ40余名もの生徒を抱え、それらの『実施レポート』が集まりつつあった時期だから、それなりのペースで提出された順にでも評価を進めないと、成績発表までにとても終わらせる事など出来ないからだ。
その中にゆすらの分も含まれていた。
提出封筒の中からSDカードを取り出すと、例によってデコーダー内臓の読み取り装置に差し込む。
立ち上がった専用アプリケーションがデータを受け取るまで数秒待つと、ゆすらの『実施レポート』ファイルが開いた。
武蔵坊は内容に眼を通す。
そこにはゆすらが学園の物とは違うセーラー服を身に着け、『禿げあがった変態ロリコン中年オヤヂ』とどこぞの遊園地やら、カラオケBOXやらにて撮ったであろうスナップを含め、援助交際風の作戦をシミュレートしたと思しき痕跡が見て取れた…。
生々しい性体験のレポートも確かな内容に思える。
『ふぅん…まぁまぁね、あのおチビちゃんにしては上出来だわ…』
そう言うと評価の欄のコンボボックスから「Aマイナス」を選択した。
だが、彼女の後ろにある窓に映し出された反射像のPCモニターには、見慣れぬ梵字がただ一つ浮かんでいるだけであった…。
第四場
霞の森某所。
ハヤトは待ち人来らずっといった風体で退屈そうにしている。彼自身15分は遅刻してきたのだから言えた義理ではないが、相手はその上をいっている…。
そこへ『シュッ!』っといった音とともに一人の忍者が現れた。
「ま、待たせたな…」っと言ったきりその場でコテンと倒れる…
「お、お頭ぁ!」駆け寄るハヤト…。
「す、すまぬ、少し目眩が…」
「大丈夫か?」
言われてみればお頭の顔は少しやつれていた。
「かたじけない…」
「で、首尾は?」
「かたじけない…」
・・・・
「いや、だから…」
「かたじけないと そう 申 し て 居 ろ う がぁ〜〜〜」
「ぐっ(逆切れかよ〜〜〜〜)な、なんだよ〜その言い草〜」
「武者小路とやらの部屋にはたどり着いたのだが…」
「(あ、いや’武蔵坊’なんだけど…)…だが、なんだ?」
「侵入する前に…誰だか知らんが酒臭い巨乳女に見つかってしまった」
(げぇ、桂垂のれん か?)
「警備に突き出されたくなかったら…いうことを聞けと…その」
「あぁぁ、やっちゃったんだな?」
コクリと頷くお頭…。
「あの女、俺の精を最後の一滴まで絞りとっていった…」
「そっか…(苦笑い)」
ハヤトはお頭にまたがって、瓢箪から酒を啜りながら半狂乱で腰を振る のれん の画を想像してしまった。
「気持ちよかったぁ…」
(なんだよそれ〜)
ハヤトは半分、いや1/3くらいはアテにしていたのに…。
「しょうがないな、まぁ協力には感謝するぜ…お頭…」
「かたじけない…」
この「甲羅者」でも盗み出すことができなかった『ひまわりの実施計画』に、ますます執着が募るが、ハヤトに残された手段はもう何も残っていなかった。
霞の里もそろそろ日が陰る…。
「今日の夕日は…何だかとっても黄色いなぁ…」お頭が死にそうな表情でこぼす…
そうだな…
夕日をバックに飛ぶ、小さくはない物体を眼で追いながら、ハヤトは心の中でそう答えた。
第五場
志能備学園、宿直室。航空管制用周波の自動応答装置の警告ランプが点滅する。
「はい、こちら霞の里管制管区、コード:チャーリー・ナイン・ワン・デルタ(C91D)…」
当直の小葉きゅうりが応答する…。
『C91D!こちら合衆国海兵隊のCH-53E、#02…、イギリス政府の極秘要請でVIPを護送している。着陸許可を頂きたい』
あ、あ〜またか…といった表情で予定表を見る小葉きゅうり…。
「了解CH-53#02、いつもの場所が空いています。そちらへどうぞ〜」
『了解、C91D』
3発ターボシャフトエンジンの排気と、その絞りだす出力を一気に受け回転するローターブレードの空気を切り割く轟音が学園に近づくと、幾人かの生徒たちは窓から様子を伺うが、殆どの生徒はもう何事かを理解してるため大した騒ぎにはならない…。
ライトゴーストコンパスグレイで塗られた大きな輸送ヘリは、側面を夕日に照らされた状態でけたたましく校庭上空に現れた。
ローターブレードの叩きつける風で吹き飛ばせるものは何一つ残さず消し去ると、ドスンといった感じにランディングギアの緩衝装置を軽くバウンドさせ、巨大で山のような機体(おそらくは世界最大のヘリコプターである)が着陸を終える…。
パイロットは安全手順に従い、テイルローターのクラッチを切り、メインローターのピッチを落とすと、後部に設けられたカーゴベイ・ハッチの開閉操作に入った。
M11短機関銃を手にした黒服に黒メガネの男たちと、迷彩服を纏いM4カービンを抱えた兵士が数人降り立って警戒する中、紫色の360モデナがバックで降りてくる。
そのド派手な彩色のフェラーリが安全区域まで離れると、降ろした兵士たちを再び載せ、MH-53Eスーパースタリオンは轟音とともに灰色の機体を光らせて飛び去って行った。
この間約8分…、学園に静寂が戻る…。
校庭の隅に残された紫色の360…、そのドライバーズシートに座っているのはもちろんヒメジだ。
アザミとひまわりはちょうど訓練から帰る途中でその場面に出くわした、が、いつもなら裏のガレージに一直線に飛んでいく筈だった360が、微動だにしないのに少し気になって二人は駆け寄った。
「ヒメジ〜」
「ヒメジさぁん」
ドア越しに二人をみとめると気の無い声でヒメジ…
「ただいま で ありんす」
「ヒメジ!どうだった?」如何にも〜といったニヤついた表情でアザミが聞く。
「どう…って何がでありんす?」
二人の顔を見もせず口を尖がらせて言う…
「中華は美味しかったでありんす…」
「いや、さ、そうじゃなくて〜」
「ヒメジさん、その〜男の人とぉ〜一緒だったんですよね?」
「とっても、とっても、カッコいい人だったんでありんす…だから、はしゃぎ過ぎたでありんすよ」
「へぇ〜良かったじゃん〜じゃ、何でしょげてるのさ?」
「振られたでありんす…」
「おまけに…軽く窘められたでありんすよ…わらわは本当にデリカシーがないんでありんす…」
顔を見合わせるひまわりとアザミ…
「わらわはまだまだ子供なんでありんすっ…」
少し鼻声でそう言うとステアリング・ホイールの右裏側のシフトパドルを押し、車をガレージに向け走らせた…。
ただ、いつもの豪快なホイールスピンがなかった…。
「子供はフェラーリの運転なんかできませんよねぇ?」
「あぁ、いやぁ、そ、そういう意味じゃ〜ないと思うんだけどぉ〜」アザミが苦笑する。
真っ赤な夕陽が静かに日曜の終わりを告げようとしていた。
第六場
学園に新しい一週間が訪れた、その中にあっていつもと様子が違う生徒が数人いた…。
ひまわりとしきみだ…。
ひまわりと言えば、やけに落ち着きがないし。一方でしきみは何時にも増して独りでいる時間が多くなっている。
他方ヒメジといえば、一晩寝たらまた元の大食漢…いや、大食い女に戻っていたが…。
その日、二時限目の武智の授業が終わると、ひまわりは職員室に向かう武智についていった。
「せんせー」
「ん?なんだ 日向…」
武智は制服のミニスカートからすらりと伸びた、ひまわりの脚の方から見上げつつ彼女の顔に視線を移す…。スケベな男だ…。
「先生…どうして授業中、私の顔を見てくれないんですか?不自然じゃないですか?」
(バカ者が…そんなこともわからいでか?)
「いや、気の所為だろう?(ちゃんと脚は見ていたからな…)」
「そうですかぁ?」
「そうだ日向…、お前に渡すものがある。放課後職員室に取りに来てくれ…」
「なんです?宿題ですか?」
「まぁ、そんなところだ…」
第七場
この全寮制学園の良いところは、学び舎と宿舎の距離が近いことだ。生徒は空いた時間に自室に行きちょっとした用事を片づけたりすることができるし、また忘れ物をしたとしても直ぐに取りに戻れる。
アザミもそのクチで、昼休みに気に入ったメニューが食堂で見つからないときなど、部屋に戻ってホットドッグなどを作って食べたりする。
今日もイマイチだったので冷蔵庫のチーズバーガーか中華饅頭を「チン」して喰うか〜とばかり部屋のドアを開いた。
ドアを閉めた途端、云い知れぬ「殺気」を感じたが、時すでに遅かった。後ろ手に羽交い締めされ、その片方の手に握られたクナイが喉元を狙っている。
「し、しきみっ!???? な、何の真似〜〜〜?」
長い付き合いだからクナイのデザインと腕の感触や匂いと息遣いでアザミには直ぐにそれが誰だか判る。
「流石ね、アザミ…」
「は、はなせってば苦しいじゃないよぉ」
「ふん、あなたが男だっていうのはみんな知ってるワ、いい加減その女言葉にもウンザリしてきた」
「な、何のこと????一体何が…」
「死にたくなかったら私の言うことを聞くのよ…」
「と、とにかく離せってばぁ〜しきみどうしちゃったのさぁ〜」
「今すぐ、私を抱いて!」
「はぁ〜〜〜〜?」
「今すぐ、私とエッチするのよ!…私、もう我慢できない…」
そう言うと、しきみは左手の方をアザミの股間に突っ込んだ…
そこには逞しい、カチンコチンに固まったペニスが…
「きゃぁぁぁぁぁぁ〜ちょっと何すんのよぉぉぉ!」
あるはずだった…
しきみは茫然と立ち尽くすとクナイが『チャリーン』と音を立てて落下した。
「このぉ変態ぃ〜!バカバカバカ〜〜〜〜〜」
アザミはしきみに向かって罵倒すると下腹部を両手で押さえてしゃがみ込んだ…。
「な、何故…。」しきみは惚けた顔で言う…。
「何を勘違いしてんのよ〜〜〜〜〜。アタシはれっきとした『女の子』〜〜〜!」
「アタシが騙してる相手は男子校の生徒ぉぉ〜」
「じゃ、じゃぁ…決して裸を見せなかったり、部活のシャワールーム使わなかったり…
時々『俺』って言ったりしてたのは…」
「演技だよ、エ・ン・ギ! その方がリアル感増すでしょうがぁぁぁ!」
「胸もないし…」
「大きなお世話ぁ!」(ったくもう、スッゲ〜〜〜〜気にしてるのにぃ〜〜〜〜〜)
「じゃぁ何で、みんなが武蔵坊の宿題でてんやわんやなのに、一人涼しい顔してたの?」
「だってアタシもうとっくの昔に『済ませてる』もん…」
「そ、そんな…」
最後の望みが断たれてしまい絶望したしきみはヘナヘナとその場に崩れ落ちた…。
「ねぇ、一体何があったのさ、らしくないよぉ しきみぃ…」
しきみは柄にもなくめそめそと涙ぐみ始めた…。
「私(グスっ)、色情狂みたい…(グスン)…」
「え〜〜〜〜〜〜?、もう、益々訳わかんないだけどぉ〜〜〜?」
「武蔵坊の…(グズっ)宿題で…体験したの…」
「ふん、ふん…」
俄然興味が湧いてきて股間の鈍痛が消えるアザミ
「そうしたら、余りにも良かったんで、またしたくて したくて たまらなくなっちゃって」
そこまで言うとアザミの胸に飛び込んでワンワン号泣し始めた…。
「アラアラ…ガリ勉優等生にありがちな…、よし、よし…泣かないでよ、しきみちゃ〜ん」
アザミは彼女の震える背中をさする。
「ま、毎晩オナニーしてるの…勉強が手につかないのよぉぉぉぉぉ〜」
「うぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜ん、誰か何とかしてぇぇぇぇ〜」
かなりやばいなぁ〜アタシん時もそうだったけど…最初がイイと女って人生狂っちゃうんだよな〜。
「と、とにかくぅ〜落ち着こうよ…ね、しきみ?」
「うん…」
「あのさ、しきみ、なんか、そういうの抑える薬って無いの?」
「ある…けど使えない…習慣性があるから…最後は薬物依存症になっちゃう…」
あちゃ〜SEX依存症もまずいけど、そっちももっとヤバイよなぁ〜特にくノ一にとっては…。
「ちょっと立ち入った事聞くけど…、な 『中イキ』したいんだよね?」
コックリと頷くしきみ…顔が真っ赤。
「だとするとぉ〜手がないってわけじゃないんだよね…」
そう言うとアザミは不敵な笑いを浮かべた。
「アタシってばぁ〜男装をするのは〜ある種の性的嗜好の捌け口でもあってさ〜」
「え?」
「アタシ バイ なわけよ…」
「バイ?」
「しきみも知らないことあんだねぇ(笑)…バイセクシュアルのこと…」
「それ、ほんと…?女の子と…どうやってするの?」
「専用の道具があんのよ…、見る?」
しきみはエロエロな好奇心の塊になってしまっていたから拒否するわけがなかった…。
アザミは奥に引っ込むと、バスルームの天井にあるメンテナンスハッチを開け、中から鍵突きの箱を引っ張りだすとそれを持ってきた。
「ちょっと待ってね」
アザミがカギの番号をカリカリっと回すとガチャリと蓋を開けた。
「ほら、これ」
アザミは中のものを持ち上げると、しきみの眼の前にそれを突きだす。
それは黒い革製のヘッドギアみたいなものに、恐ろしく巨大な男根そのものといったデザインの肌色のディルドが生えている…っというか、全体のバランスから言えば『ディルドに革バンドが着いている』といった方が適切だ…。
「す、すごいわ…」
しきみは一瞬ハヤトの逸物を思い出し、女陰が濡れるのを覚える…。
「凄いでしょ〜『ペニスバンド』っていうんだよ…」
「裏側がね、こんな風になってて〜男役の方も気持ちいいんだ…アタシは『クリ逝き』型だからね、これで逝っちゃうの…」。
「そぅ、それからね、ローションを仕込むことができてぇ、このスイッチで『疑似射精』する機能付きの超スグレモノ〜、へへっ」
なんだか分からんが得意顔で話すアザミ…。いやはや…である。
生唾を飲み込んで、しきみが話す…
「あ、アザミはこれを何時?誰と?使ってるの?」
「あ〜、ここまで話しちゃったから言っちゃうか…」
「内緒にするわ…」
「ミツ先生…」
(どぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜っ)
声が出たならそのくらい驚いたろう...しきみは顎が外れかかった。
あの、超純情そうな保健の先生がぁ〜、し、信じられない…しきみはそう思った
「彼女レズ…、最初見たときすぐ判ったけどね〜」
「ど、どうして〜」
「さぁねぇ〜こんなモンで出来るんだから男相手でもって思うんだけど…
アタシの情報によればぁ〜彼女は『超』がつく『潔癖症』らしいよ〜」
その時昼休みが終わるチャイムが鳴った…。
「おおっと、教室に戻らなきゃ〜、さ、立ってしきみ…」
「う、うん」
「あ、いけね…お昼、食べ損ねた」
「ご、ごめんね」
「いいってこと、授業中パンでも齧るよ…」
そう言って笑いあうと、二人は小走りに校舎に戻っていった。
第八場
放課後、今日はサッカー部がグラウンドを使用するためソフトボール部は練習がなかった。
自室で一人、ああでもない、こうでもないとブツブツ言いながらひまわりは姿見の前で色々とポーズをとっている。
というのも、先ほど武智から受け取った包みの中に入っていたランジェリーを試着しているのだ。おおよそひまわり自身が自分の選択肢に含めたこともないデザインのブラにショーツにガーターにストッキング…。手に取っただけで身体が火照る…。
ところがである…いざ試しに身につけてみるとこれが意外とピッタリくるのであった。
「うん、うん、まんざらでもない! うん!」
そう、自画自賛しながらさっきの武智に云われたことを脳内で反芻する…。
『せっかくだから例の晩はこれを身に着けてきて欲しい…、それから、俺にもプライドがある…、事の最中に決して俺の本当の名前を呼ぶことはやめてくれ…いいな?』
『それじゃ、忍者さん…って言うのはOKですか?』
『お前はアホか?アホなのか?』
『いやぁ…ダメもとで言ってみただけですぅ〜』
確かに、本来ならハヤトにどうにかして貰いたかったというのは本音である…。
だが一旦決心がついてしまうと複雑なもので、ひまわりは武智に抱かれることを待ち遠しいと思う感情を否定することができなくなっていた。
第七幕 終わり