「ん……んん……ン……?!」
もはやキスだけでは飽き足らなくなったナナフシは、唇を交わらせたまま、左手をしきみの胸に当てた。
「あ……ン……」
そして軽く指を動かす。しきみの乳房はすっぽりと掌に収まるサイズで、薄い下着を着けているのか、弾力がはっきりと伝わってきた。
その触感に心地よさを覚え、段々と指を動かすペースを上げていく。
「ン……ああ……はぁ……はぁ……」
乳房を揉まれ、しきみの呼吸が次第に荒くなる。
しきみの装束についたぼんぼりが邪魔になったのか、ナナフシはキスを止め、装束を脱がせようとする。
「しきみ……もっとお前の温もりを感じたい……」
「……」
無言で頷くと、しきみは上着を脱ぎ捨てた。忍具が入っているため、地に着くと、ドサリと重量感のある音を立てる。
しきみは抹茶色をした上着の下に薄い白装束を着用しており、ナナフシに弄られたせいで少しはだけ、白い鎖骨が顔を見せていた。
ナナフシはしきみを押し倒し、その鎖骨に軽く口付ける。そして徐々に首筋を上がっていく。
「あ……」
焦らされるような感覚に、しきみが身体を震わせる。
耳元まで到達すると唇を離し、三度ナナフシが、しきみの唇を奪う。
「ン! んんん……!」
今までよりも強引なキスに、しきみは驚きを禁じえなかったが、すぐに先程同様ナナフシの舌を求めだした。
ナナフシは改めてしきみの乳房に手をやった。より直接的になった弾力に夢中になって指を動かし、掌でこねる。
すると掌に、上着越しでは感じられなかった感触を覚えた。
その部分に掌を押し当て、円を描くようにして撫で回す。
「ア……! ん……あ、あっ……!」
そこが徐々に膨らみ、硬さを増していく。
「……あぁ……はぁ……はぁ……ひぁ!」
耳まで真っ赤にして息を荒げるしきみを尻目に、ナナフシはそこを人差し指の先で軽く転がした。その刺激に思わずしきみが声を上げる。
「どうした……?」
キスを止め、目を見ながらナナフシが声を掛ける。
「そ……そこ……だ……ダメ……」
息も絶え絶えにしきみが答える。しかし、
「そうか……ここがいいんだな」
「……え? ん……! ああああァっ!」
ナナフシは指先を素早く動かし、断続的に刺激を与えた。
「だ、ダメだって……ハァ……言ってるのに……」
涙目になるしきみの顔を悪戯っぽい表情で見つめながら、言葉を無視してナナフシは白装束に手を掛け、ぐいと肩まで脱がす。
露わになったのは歳相応の下着ではなく、古風な晒し木綿であった。小振りだがふっくらとした膨らみの中に一部分、小さな突起が見える。
あまりきつく巻いていなかったようで、少し緩んでしまっている。ならばと、ナナフシは晒しを上から下へとずらした。
しきみの白くて形の良い美しい乳房と、薄い桃色をした先端部が剥き出しとなる。
「……ぁ……」
しきみは恥ずかしさあまり声が出ない。
構わずナナフシは乳房を掴み、その先端を口に含んだ。
「……はぅんッ!」
舌先を回転させながら、乳首を弄ぶ。両手で両の乳房を揉みほぐすことも忘れない。
「……はぁ……う……ンン……!」
そして、片方では先端に口をつけながらも、もう一方は、指先で乳輪の淵をなぞりつつ先端を転がす。
「ん……く……ふぅん……あぁ……」
次にナナフシは、左手をしきみの股間へと運ぶ。
「!? な、ナナフシ……そこはっ……!」
しきみはまだそこまでの覚悟が出来ておらず、触れる寸前でナナフシの左腕を掴んだ。
胸から口を離し、ナナフシが目を見て言う。
「大丈夫だ。俺だって、何もこんな場所で最後までしようなどとは思わない。ただ触るだけだ」
「で、でも……!」
ナナフシの言葉を疑っている訳ではないが、恥ずかしさもあってしきみは抵抗しようとする。
「俺を信じてくれ。こんなことを言うのも何だが……俺はお前の身体に触れたいんだ」
「……分かったわ……。また会えるとも限らないものね……」
今回はたまたま遭遇したが、毎回そう都合良く会えるものではないだろうし、誰かに見つかれば、今度こそ重い罰が待っているであろう。
ならば今この時に、相手が望むことをさせてあげるべきだ。しきみはそう考えた。
しきみがナナフシの左腕から手を放す。
「ありがとう、しきみ」
「こ、こんなことで礼を言わないでっ」
照れるしきみをよそに、ナナフシは改めてしきみの股座に手を触れた。
そこは既に、触れているだけで手を湿らせそうなほどに熱を持っていた。
しきみの秘部があると思しき箇所に人差し指を押し当て、上下に擦る。
「あっ! ん……! ん、んんん……んはぁ……!」
胸だけでも相当感じていたのであろう。徐々に湿り気を帯びてきていた。
しかし、やや厚手のズボンに阻まれているため、さすがに愛液が染み出ることはなさそうである。
ナナフシは下も脱がしたいという衝動に駆られながらも、そこまですると歯止めが利かなくなってしまうため、それを何とか静める。
しきみの身体を弄ることで、自らの快楽を満たそうと考えた。
ナナフシは、右の乳首に喰らいついて、右手で左の乳房を揉みしだきながら、左手で股間をまさぐる。
「……そ、そんな……いっぺんにされたらっ……!」
一度に三箇所を攻められて、しきみが激しく悶えた。
ナナフシは更なる快感を与えるために、人差し指と中指でスリットをなぞりながら、親指の先でクリトリスを刺激する。
「ふぁ……! そ、ソコ……! ダメっ……! か、カラダがっ……へ、ヘンに……なるッ……!」
しきみの身体に電気のようなものが走り、無意識の内に腰が浮いてしまう。
それでもナナフシは指を止めようとしない。それどころか不規則に速度と圧力を変化させて、反応を愉しんでいた。
「……あ、あふ……ダメ……! わたしっ……ほんとうに……!」
ナナフシがトドメとばかりに親指の先で、しきみの陰核を一掻きする。
「ひぁんッ!!」
しきみの腰が大きく浮き上がり、小刻みに痙攣を起こす。
――
「……ん……はぁ……はぁ……はぁ……」
初めての愛撫であるにも拘らず、しきみは果てた。
ぐったりと、意識を朦朧とさせて、短く熱い息を吐き、余韻に浸っていた。
ある程度回復して服を着直したしきみは、ナナフシの肩に寄りかかっていた。
「晒しがないと、何だか変な感じだわ」
晒しだけは巻き直すのが面倒なので、折り畳んで懐にしまっていた。
「お前らしいな、今時晒しとは」
笑いながらナナフシが言う。
「い、いいじゃない! この方がしっくり来るんだからっ!」
顔を赤らめながら、しきみが小さく怒鳴る。
「いや、しきみらしくていいなと思ったんだ」
ナナフシは、思ったとおりの反応を見せるしきみを愛おしく感じながら、可笑しそうに返す。
「う……」
そのように言われると、なんて返してよいか分からない。
「と、ところで、恋愛経験がないと言っていた割に随分と手馴れていたように思えるのだけど?」
しきみは誤魔化すために、自分に考え得る最大限の皮肉を言ってみた。
「"ない"とは言っていない。"乏しい"と言ったのだ。それに知識によるところが大きかった」
「そ、それって……ほ、他にも……」
ナナフシの言葉に対し、自分が疑問に思ったことを口にしようとしてやめる。
ナナフシが自分よりも遥かに冷静であることを考えれば、聞かずとも分かることであるし、出来れば知りたくない。
しかし、しきみのそんな思いとは裏腹に、ナナフシは答えを返した。
「確かにお前が最初ではない。だが、女ではお前が初めてだ」
「くちゅんっ!」
その頃あざみはクシャミをしていた……。