温泉での一件後、あざみとしきみの関係が、以前と比べ少しギクシャクしていた。  
視線を合わす事が出来ず、いつものなら一方的に話しかけているあざみも、  
必要であれば遠慮がちに一言二言の言葉を交わすのみで、それはとても会話と呼べるものではなかった。  
 
「しきみさんとあざみちゃん、何かあったんれすか?」  
舌足らずな声で、ひまわりがゆすらに尋ねる。  
「さぁ? いつもはタヌキ並みに仲がいいのにねー」  
肩をすくめ、お手上げポーズをしながら、ゆすらが答える。  
「ヒメジさんは何か知ってます?」  
振り返り、後方に居たヒメジにも問う。  
「んー……、わらわにもさっぱりでありんす」  
何処で覚えたのか、いつものありんす詞で返すヒメジ。  
「でも、あの二人がギクシャクしだしたのって、温泉に行くって話しを聞いた後だった気がするわね」  
顎に手をやり、眉間を寄せながらゆすらが呟く。  
「温泉って、あの満月の時のれすか?」  
ひまわりの問いかけに、コクリと頷くゆすら。  
「私達が行けないから、二人で行くって言ってたでしょ? もしかしたら、何かあったのかも……」  
「な、何かって、なんれすか……?」  
怪訝な表情で言うゆすらに、ひまわりが恐る恐る聞き返す。  
「言わなくちゃ分からない?」  
にやりと不敵な表情を浮かべ、ゆすらはひまわりの目を見る。  
「……!」  
ゆすらの言わんとすることを察したのか、瞬く間にひまわりの顔色が真っ赤に染まる。  
「そ、そ、そ、そ、れて、あのっ……!」  
視線を泳がせ、あたふたと挙動不審になるひまわり。  
「まあまあ、落ち着いてー。あくまでも予想だから」  
予想通りの反応を見せたひまわりを、ゆすらがなだめる。  
「とりあえず、二人から事情を聞きださないとね。  
何かあったのは確かだと思うし、このままだと私達も気まずいからねー」  
 
 ――  
 
「で、なんで俺なんだ?」  
 俺は目の前に立っている、ひまわりとゆすらに問いかける。  
 何でも、しきみとあざみの間に何かあったようだから、探りを入れて欲しいのだそうだ。  
「だって一応せんせーだし」  
「俺よりもお前らが聞いたほうがいいだろー? 仲いいんだし」  
(どうせ俺なんてシカトされるのがオチだろうし、何より面倒だ。どうにか断りたいなぁ)  
「ごす人様は心配じゃないのれすか?」  
「いや、全然。ほっときゃどうにかなるだろう」  
 どんな理由か知らんが、仲違いしたら自力で仲直りすることも、集団生活の中で学ぶべきことだ。  
友達ならばともかく、教師が介入するべきじゃないだろう。勿論、ケースバイケースではあるが。  
「あいつらの事だ、俺らが苦心せんでも、自分達でなんとかするだろうよ。  
同じ空間いるのもイヤって程の大喧嘩をしたってワケじゃないんだろ? なら、ほっときゃいいさ」  
「そんなコト言って、ホントは心配なんじゃないのー?」  
(何を根拠にそんなことを言いやがるのか、このスク水娘は)  
「ん、んなワケねーよ。あんまり面倒なことに、俺を巻き込むなっつってんのっ」  
(で、何故どもる? 俺よ)  
「でもあの二人、口には出せないようなコト……、したかもしれないんだよ?」  
「な、なんだよ? 口には出せないようなコト、って……」  
(んま、まさかなぁ……。い、いくらなんでもあんなコトやこんなコトを、あの二人が……。  
って! イカンイカンっ! 何想像してんだ! 俺はっ! 相手はガキだぞ!)  
「鼻の下が伸びてるよー?」  
「ハッ! な、なんでもないぞぉ! なんでもっ!」  
(そのガキにからかわれている俺って……)  
「で! どーなの? 手伝ってくれるの? くれないの?」  
(断りたいのは山々だが……、コイツの言ってることが事実だとしたら、マズイよな……。  
ヘタすりゃ俺が責任問われてクビってことも……。って、それはそれでいいとは思うが……)  
 ちらりとひまわりに目をやると、すがる様な目で俺を見上げている。  
「はぁ……。ちょろっと探りを入れるだけだぞ? 何も聞き出せなくても、文句は言うなよ?」  
 
 ――  
 
「用って何よ? ハヤト」  
 俺の部屋のベッドに腰掛け、その前で椅子の座る俺に、あざみが問いかける。  
 俺は自室にあざみを呼びつけていた(呼びに行ったのはヒメジだが)。  
ゆすら曰く、話の内容的に、中庭とかで話すよりも、個室の方がいいからだそうだ。  
(幸いコイツは男だし、呼びつけても気兼ねせずに済むからいいが……)  
「いや、なんというか、たまには生徒とコミュニケーションを図るのもいいかもなーってな。あはははは」  
 あからさまにおかしい俺の態度に、あざみが訝しげな目で俺を見つめる。  
(しっかし、改めてみると、コイツが男だとは信じられんな……。  
風呂入った時も、全くそんなそぶり見せなかったもんな……。別に注視してたワケじゃないが)  
 制服姿なので当然だが、キチンと膝を揃えて座る仕草は、まさしく女性そのものである。  
「どうせ、ゆすらやひまわりの差し金でしょ?」  
「えぇっ? な、何のことだっ?」  
 普段のひまわり達の態度からも分かっていたのだろう。あっさり見抜かれてしまった。  
しかも全く対処法を考えていなかったため、誤魔化しの言葉がまるで出ない。  
「私を見くびってもらっちゃあ困るなぁ。これでもニュース屋よ?」  
 人差し指をチッチと左右に振り、口元を緩ませた得意げな表情で言う。  
「なら……、単刀直入にいかせてもらうが、しきみと何があった?  
ゆすらの話だと、二人で温泉に行ってからギクシャクしているそうだが?」  
「聞いてどうするの?」  
 痛いところ突いてくれる。確かに聞いたところで、いったい何をすればいいのやら。  
(とりあえずひまわり達に報告する、くらいだよな……?)  
「俺はこれでも教師だぞ? 生徒が悩んでるなら、話ぐらい聞いてやらんとなっ」  
 心にもないことを言って誤魔化す。  
「へー。全っっ然っ! ハヤトらしくないよねー……?」  
 目を細めて、ニヤニヤとからかうように言ってくる。  
「まあー、なんだ……。とりあえず、言ってみろよ。実際、ちょっとは役に立つかもしれんぞ?」  
 反論するとまた余計にからかわれるだけなので、空気を変えようと、ちょっとだけ真剣に尋ねてみた。  
するとあざみも、先程とは打って変わって鋭い顔つきになる。  
「ダメダメなハヤトが、珍しく真面目にしてるんだ。仕方ないから相手してあげるよ」  
 言って、また表情を緩ませる。  
(なんつー言い草だ、全く……。せっかく人が心配してやってるってのに……)  
 
「んー、何から話せばいいんだろ」  
 あざみは、人差し指を顎先にあてがい、可愛らしく軽く首を傾げる。  
「……一応先に言っとくが、俺はお前が男だって知ってるからな」  
 俺は、以前しきみ達から聞いていたことを、スパイであるということを除き、白状する。  
無論、口外しないとのフォローも入れて。  
「そっかー……、みんな知ってたんだね。私のこと」  
 ホントにバレていないと考えていたのだろう。思ったより落ち込んだ様子を見せるあざみ。  
「ああ。だからこそ気になってな。しきみと何かあったんじゃないかってさ」  
「な、何かって、な、何よ?」  
 俺の言葉に、あざみが分かり易く動揺する。  
明らかに何かがあったことを示唆する反応だが、まだ話すには躊躇があるようだ。  
「何かあったんなら、さっさと吐いちまった方が楽になるぞ?」  
「一番のトラブルメーカーが、偉そうに言うなっ」  
 あざみが立ち上がり、俺の脳天に強烈なチョップをかます。  
「いってぇぇ……! いきなり何すんだよっ?!」  
 頭の天辺を押さえながら、怒鳴る。  
「あんたが偉そうなこと言うからよ」  
 腕組みをしたあざみが、俺を見下ろしながら言い放つ。  
「お、お前なぁー……。話す気はあるんだろ? なら、さっさと話せよなー」  
「なーんか気に入らない言い方だけど、まぁいいわ」  
 あざみは再びにベッドに腰掛け、俺の目を真っ直ぐに見つめる。  
その透き通った鋭い眼差しに、思わずドキリとし、同時に顔が火照っていくのが分かる。  
(こ、コイツは男だぞ?! 何を動揺してるんだ?! 俺は!)  
「……? なに変な顔してんの?」  
「な、何でもないから、早く話せっ」  
 顔色どころか表情まで変化していたのか、俺の顔を見て首を傾げるあざみに対し、  
俺はそっぽを向くというガキっぽい反応しか、示すことができなかった。  
「う、うん……。じ、実はね、その……、わ、私……、えーとね、あのぉ――」  
 今度はあざみの方が顔を赤らめ、ウジウジと、全くもってらしくもない態度で、ボソボソと語りだした。  
 
 ――  
 
「なるほどな……。そんなことがあったのか……」  
(ったく、俺の風呂で何してんだよコイツらは)  
「でもまっ、その程度で済んでよかったじゃないか。  
ってぇ、よかったのか? いやっ、よかったよ。うんうん」  
 喧嘩をしていたわけでもなければ、何か深刻な状況に陥っていた訳でもない。  
ただお互いに照れくさくてギクシャクしていただけなのだ。きっと。  
(そうと分かればもう用はない。とっととお引取り願うとするかな)  
 俺は椅子から立ち上がり、  
「うしっ、ほんじゃもう心配はいらないな。帰っていいぞ」  
伸びをしながらあざみに言う。  
「それってなんか冷たくない? 用事がすんだらもうポイってやつ?」  
「ひ、人聞きの悪いことを言うな。実際、俺に出来ることなんてなーんもねーだろ」  
 言って、あざみの方に向き直ると、あざみが妙に寂しげな視線を俺に投げかけていた。  
(んな……)  
「は、ハヤト? どうかした?」  
 あざみが俺に問いかける。だが、頭が何も処理しない。考 え よ う と し な い。  
「え? ハヤト……? ちょ……!」  
 気がつけば、俺はベッドに両手と左膝を突いていた。  
そして、目の前には驚いた表情を見せるあざみが、仰向けに寝転がっていた。  
「は、ハヤト? い、いったい何のつもり……?」  
 そんなこと、俺にも分からない。何を思ったのか、何がしたかったのか。まるで自分が理解できない。  
唯一つ分かるのは……、今俺は、この部屋にあざみと二人っきりで、共にベッドの上に居るということだけ。  
 そう考えると、急に何もかもがどうでもよくなり、  
今自分が置かれている状況に流されるべきだという思考が、俺の理性を塗りつぶしていく。  
 本能に支配された俺は、右手をあざみの左腿へと運ぶ。  
「!! ち、ちょちょ、何してんのよ?!」  
 そこは、男ものとは思えない程にすべすべとしており、鍛え上げられた筋肉の上に  
程よく軟らかい脂肪がついていて、撫でるとまるで掌に吸い付くようで、非常に心地よい。  
「ん……、だ、ダメだよハヤト……こんなの……」  
 そう言いつつも、俺を押しのけようという姿勢は見せない。  
むしろ、涙目で見つめてくるその表情は、俺を誘っているようにしか思えなかった。  
「あ……」  
 俺は顔を近づけ、あざみの小さく柔らかい唇に、そっと口付ける。  
「……ん……」  
 先程の言葉とは裏腹に、あざみは嫌がるどころか目を瞑って俺を受け入れたようだ。  
その仕草に刺激された俺は、唇の隙間から舌を突き入れる。  
「んんっ……」  
 キスをするのは始めてなのだろう。あざみの舌が、どうすればいいのかと戸惑っていた。  
俺はリードするようにあざみに舌を絡ませる。  
すると互いの唾液が混ざり合い、くちゅくちゅと湿った音を奏で出す。  
「……ン……はぁ……んん」  
 だいぶ要領を掴んだようで、あざみは初めてとは思えない舌遣いで俺を求めてきた。  
ただ舌を絡ませているだけだというのに、頭は朦朧とし、いつまでもこうしていたいと思わせる。  
「んん……は……ぁ……ん……、……んはぁっ!」  
 
 
67 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2006/07/23(日) 02:56:15 ID:k6xZRR9o 
 しかし、欲求とはエスカレートしていくものであり、  
次第にキスだけでは物足りなくなってしまった俺は、ひとまずあざみから唇から口を離す。  
 あざみは目で何かを訴えかけているが、そんなことはどうでもいい。  
俺はあざみの首筋にそっと口付けながら、右手を左腿に沿って上へと滑らせ、スカートの中に侵入させた。  
「あッ……!」  
 スカートの中は熱っぽく、それでいて湿り気が充満していた。  
俺は熱気と湿気の源を求め、スカートの中をまさぐる。しかしそれは、随分と呆気なく俺の手に収まる。  
 言うまでもなく俺もあざみも男だ。ならば相手が何を求めているかなど、考える必要はない。  
本来なら、男を相手にするなんて、想像もしたくない程に嫌悪感を覚えるところなのだが、  
あざみが相手だと、不思議とその様な感情は顔を出さず、むしろ俺に強い興奮を与えてくれる。  
「ンンンっ……! ああっ……ん……、やぁ、は、ハヤトぉ……!」  
 俺は、下着越しにくっきりと形を現している、あざみの熱くたぎった部分の先端を、軽く指で擦った。  
すると、あざみは身体を震わせながら、男とは思えない程の艶っぽい声を上げる。  
「あ、あ、アアアアアっ! ダ、ダメぇ……! そ、そんなことされたら……、で、出ちゃうぅッ!」  
 しきみとの一件を聞いた時にも思ったことだが、あざみは随分と感じやすい体質のようだ。  
この程度の刺激で、大きく痙攣し早くもオーガズムに達しつつあるのだから。  
ならばと、俺は右手を最大限駆使し、より広範囲に亘って刺激する。  
さらに擦る指の速度を速め、フィニッシュへと持ち込む。  
「ンあぁ! ア、ああッ! も、もぅ……! ふわぁッ……ん! くるッ! キちゃうぅぅッ……!!」  
 ――  
「ああぁ……ァ……」  
 ビクンビクンと、あざみの下着の中で、隆起したその部分が激しく跳ね上がる。  
同時に、下着がじわじわと濡れていき、俺の手を湿らせる。  
「はぁ……、はぁ……、はぁ……、はぁ……、はぁ……」  
 あざみは頬を紅潮させ、閉じた瞼の端に輝きを携えていた。  
その息は荒く、その姿を目の当たりにした俺は、ふと我に帰る。そして呆然とする。  
(な、なんてことしてんだよ……! おれはぁッ!)  
 相手は男であるとかという以前に、教え子だ。  
いくら普段敬われていないとは言え、こんなことをしていいはずがない。  
 俺は激しい後悔の念に襲われる……。  
「は、ハヤト……」  
 呼吸を整えたあざみが、俺に話しかける。  
「あ、あざみ……。す、すまん……、お、俺……」  
 自らに嫌悪した俺は、きゅっと目を閉じ、下唇をきつく噛み締める。  
「……え……?」  
 不意に、暖かくて柔らかい感触が、俺の唇を包み込む。  
 目を開けると、眼前にあるのはあざみの顔。俺は、何が起きているのか理解できなかった。  
 あざみがそっと唇を離す。  
「あ、あざみ……」  
「ハヤト……」  
 しばし見つめ合う二人――。  
 あざみが微笑みながら告げる。  
 
「今度は私がしてあげるっ!」  
 
 

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