是光は今日も日舞研の部室に向かって廊下を歩いていた。  
始めてみるとこれが意外と奥が深くて楽しいのだ。今まで属したことのない部活動への所属という新鮮さもあった。  
ヒカルは「最初は基礎固めだからね。退屈で辞めてしまうかと思ったよ。それともハーレムっていうのがよかったのかな」  
などと言い、鈴の様に笑っている。  
「何がハーレムだ、ハーレム皇子!」  
それが是光の頭痛の種だった。あれから生徒の間では「ヤンキーキングが日舞研を乗っ取って乱交に及んでいる」という  
謂れのない噂がたっていた。  
「慣れてっけどよ。慣れてっけどあんまりだよな…」  
そう俺がボヤくとヒカルは彼の背中を優しく見つめながら、  
「そうだね。足繁く日舞研に通う君の姿は現代のそんな野蛮さよりもむしろ平安貴族の雅やかさを感じさせるよ。  
知ってるかい、平安の貴族たちは意中の女性を射止める為に屋敷へ足繁く通い詰めたんだよ。  
娘が許してくれなければ雨の中待ち続けるのも厭わなかったそうだ。そんなつれない花も実に愛おしくてたまらないよね。」  
なんとなく慰められているのが分かった是光は照れくさくて返事を返さずに部室の扉を開けた。  
 
…そしてすぐに閉めた。  
「あら、赤城君?」  
中から月夜子の声が聞こえた。  
「着替えてる最中だったね。うーん、さすがにのぞきはいただけないな。」  
「こんな堂々とした覗きがいるか!」そう心の中で叫びながら俺は扉越しに謝罪の言葉をかけた。  
月夜子はそれには応えず、ただ穏やかに  
「もうすぐ着替え終わるからちょっと待っててね」  
と言っただけだった。  
 
あれから何分経ったのだろうか。是光は時間の感覚を失っていた。  
先ほど目にした月夜子の肢体が脳裏に焼き付いて離れない。  
首筋から胸元にかけてのライン。目を逸らす際に目に入ったスラリと伸びた脚。  
そういったものが是光の時間の感覚を失わせていた。  
「是光には刺激が強かったかな。紅の枝垂れ桜は健在だね。色づいてますます綺麗になった気すらするよ。」  
そんなヒカルの声も耳を通り過ぎていくばかりだ。  
そんな停止した思考を再び動かし始めたのは、  
「赤城君、入ってらっしゃい。」  
という月夜子の声だった。  
入るなり是光は頭を下げた。  
「先輩、すみませんでした。あの、俺…」  
だが続く言葉が出てこない。是光は思案しているとその停止した時間を動かし始めたのはまたもや月夜子だった。  
「あら、そんな畏まらなくていいわよ。私、見られて恥ずかしいような体していないもの。」  
頭の片隅で「それを自分で言うな。」という考えが頭をもたげかけたが、それを押しとどめて  
「ありがとうございます。」  
と答えるのみだった。  
 
「あの、先輩。他の二人は?」  
是光がそう聞いたのは月夜子に立ち方を矯正されているときだった。  
背中に体を押し当てる形で矯正しているので是光には背中にあたる二つのふくらみや、月夜子から薫る甘い香り、  
そして月夜子の体温、息遣いまでもがはっきりと感じられた。  
それがいちいち先ほど見た月夜子の肢体を思い出させるものだから是光は平静を保つだけで精いっぱいだった。  
「今日は休んでいるわ。」  
月夜子は平坦な声でそう答えただけだったが、なんだかその声にはいつも以上の艶が込められているように感じられた。  
ヒカルなどは嬉しそうに  
「是光、据え膳喰わぬは男の恥だよ。」  
とふざけたことを抜かしている。  
(無責任に煽りやがって…)  
是光が睨みつけると  
「ほら、是光君。また月の目になってる。あら。」  
月夜子がバランスを崩し、それに伴って是光も畳の上に倒れこんでしまった。  
是光はすぐに体を月夜子の方に向き直らせて月夜子の安否を確認するために声をかけようとする。  
だがそれより前に月夜子が甘い香りを匂わせながら是光の耳元に唇を寄せて、  
「嘘よ…」  
と呟く。  
是光が何も言えないでいると  
「今日は二人には部活はお休みだと伝えておいたの。あなたと二人っきりになりたかったから。  
 
とうそぶく。  
どうしていいかわからなくなった是光はヒカルを探した。…が、ヒカルはにこやかにほほ笑んでこちらをみつめているだけだった。  
「ここは月の目じゃなくて金の目よ、是光君。」  
そう言われて是光が正面に向き直ると月夜子が上気した顔でこちらを見つめていた。  
そして目があったと思ったときにはもう是光は月夜子によって唇を奪われていた。  
月夜子の舌が是光の口内をゆっくりと這い回る。是光が戸惑っているうちは導くように優しく、  
是光がそれに応え始めてからは競うように激しく。  
月夜子から薫る甘い匂いに口内が、体中が包まれて侵されていくようだった。  
どれくらいそうしていただろう。月夜子が音を立てて唇を離すと独り置いていかれたような名残惜しさが残った。  
「やっとこっちを見てくれたわね。二人っきりのときによそ見するなんてルール違反よ。」  
上気させた頬はそのまま可笑しそうに笑うと指を下半身へと伸ばしていく。  
それはいかにも当たり前のように見えて是光のズボンのベルトを外しズボンを脱がせ、  
是道のモノを露出させるとゆっくりと上下に扱き始めた。  
是道の思考は未だ月夜子の薫りに包まれて漂っているようだった。  
それでも男の意地として声は上げない。  
月夜子は再び是光の耳に唇を寄せると  
「うん、硬派な男の子が声を我慢してるのって可愛いわね。でも、ちょっとだけ可愛くない。」  
是光が耳にかかる吐息に声を上げるのを我慢している間に是光のYシャツをはだけさせると胸の突起を甘噛みする。  
突起を舌でつつき、時に舌を押し当てて擦ると突起の愛撫を指に任せゆっくりと唇を舌へずらしていく。  
そして是光のモノを舌の表面や先端を舌で嬲っていたかと思うとゆっくりと咥えていく。  
月夜子の口内に包まれた瞬間、  
是光は  
「うあっ…」  
と声を漏らしてしまう。  
月夜子はそれを確認してほほ笑むと是光のモノを嬲り始めた。  
顔を上下に動かし、同時に口内で舌で嬲る。先端から溢れる液体を舐めとり、その周囲を丹念に嬲っていく。  
やがて是光の息が荒くなり、是光の下半身が痙攣を始めると是光のモノを押さえ、愛撫を止めてしまう。  
「これ以上やったら終わっちゃうね。」  
そう言い体を起こすと着物を見せつけるようにゆっくりと脱いでいく。  
すぐに月夜子の裸体が露わになった。  
是光は朦朧とした頭で「あれ、襦袢はどうしたんだ」と考えたがそれが意識の表層に浮上することはなかった。  
月夜子は是光にしなだれかかり是光の手をそれぞれ胸と下半身へと導いていく。  
是光はただ夢中で貪った。  
豊かな胸を胸をもみしだき、すでに自己主張を始めていたピンクの突起を口に含み、下半身の割れ目へと指を滑り込ませた。  
手探りで芽を探しだしそれを露出させるとゆっくりと指をこすり付ける。  
月夜子は胸を是光に嬲られながら顔を是光の頭上で伏せていたがやがて  
「これじゃ私が先に終わっちゃうね。」  
と呟くと上半身を起こし是光の手を遠ざける。  
そして是光のモノを握り、ゆっくりと自分の割れ目へと近づけていく。  
そして、しばらくそれを擦りつけながら狙いを定めていたかと思うと一気に腰を落とした。  
くちゅりと水音を立て、是光、月夜子の双方が声を漏らす。  
二人の息遣いだけが聞こえる中、月夜子は是光の顔を観察しながら腰の動きを微調整していく。  
腰を上下に、前後に動かし、ひねりを加え、ときに弧を描いていく。  
やがて是光の顔が一番快感に歪む動きを見つけると満足そうに微笑み、その動きを継続していく。  
しばらくはそうして是光の反応を楽しんでいた月夜子だったが、再び是道のモノが痙攣を始めるころには  
もうそんな余裕はなくなっていた。  
ただ快感を求めるためだけに腰を振る。  
そして二人で朦朧とした意識の中、「もう…終わっちゃうね…」と無理に余裕を見せる。  
だが、是道が必至に快感に耐える中「月夜子…」と漏らすと頭をガツンと殴られたような衝撃が走った。  
鼓動が走り、頬が上気とは違う感情で朱に染まっていく。それに伴い膣がキュッと締り、  
真っ白な世界に朱の花を一輪咲かせて二人は共に達した。  
 
是道は頭を抱えていた。あの後先輩は「着替えるから先に帰っていて」と言うと奥に引っ込んでしまった。  
頼りのヒカルはというと「僕がコマシ…ね…」と言うとジト目でこちらを見ているし、  
「月夜子に謝ったりしたら絶交するからね」と凄みを感じる笑顔で言われてしまってはもうどうしていいか分からない。  
さすがに遅くなったので先輩を待って送っている現在、先輩はこちらを見ようともしない。  
(やっぱり怒ってるのか…)  
と是光が内心頭を抱えていると、ヒカルが  
 
「はぁ…君って…。機嫌を直す方法なら僕が知ってる。嘘だと思っていいからやってごらん。」  
とため息でもつきたい風に言ってきた。  
(いや、でも、それは…お前以外がそれ言っていいのか?)  
と思ったが他に方法も浮かばなかったので実行する。  
先輩はビクンと肩を揺らしたと思うと、ツカツカと先へ歩いて行ってしまう。  
慌てて追いかけると先輩は  
「是道君は将来イイ男になるわよ。」と言い出した。  
「またそれですか。やめてくださいよ。」  
先輩を追いかけてはツカツカと突き放される。そんな様子をヒカルはとても嬉しそうに眺めていた。  
 
---女の子に必要なもの。ときめき、まっすぐな愛情、約束。  
そして、甘い言葉。  
 

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