まさに体を引き裂かれる激痛。その痛みに涎を滴らし見開いた目に、前を走っているシオダの  
ターボエンジン生物が腰を離れ、水平に開かれた股の間で回転を始めたのが見えた。  
「キャーーーーッ!!!」  
シオダの悲鳴が耳を裂いた。涎を拭くこともできず、呆然と、それを見守るアタシの車輪生物も、  
腰から離れるのが分かった。  
「アギギ、イギャーーーー!!」  
まるで内臓をかき回されるような痛みにアタシはシオダとはまったく違う潰れたような叫び声を上げた。  
手足にはまって車輪のように回転する四匹の車輪生物。そして、アタシの体の中央を貫き、軸方向に  
回転する五匹めの車輪生物。確かに車輪とは違う向きは車のエンジンの関係に近い。でもターボは、  
本来『過給器』の意味。排気で強制的に空気を圧縮して燃焼効率を上げるもの。  
「アグッ、アグググ…… これの……、これの、どこがターボなのよ。アガアアー!」  
アタシは痛みで消え入りそうな意識の中で、そんなことを叫んでいた。  
 
まるで、遠くから響くようにシオダの声が返ってきた。  
「はう、ううう、この…… この生物は、私達の血液を吸って…… 活動しているわー」  
「あくっ…… でもぅ、痛みと疲れで血液は濁っていき効率は落ちて行くのーー、はあ、はあっ!でも、でも!」  
「虜の生物に常に性的興奮を過剰に与え続ければー、はぁ、はうう!ううっ!」  
「ノルアドレナリン、ドーパミンが分泌されー、ふくっ、うう、血液の循環も促進されてーー」  
「て、て、手足の車輪への…… 体液の供給が、ふ、ふう、増えて……、じ、じ、持続する、するのよーーっ」  
「へやあっ、ヒ、ヒーーッ、だから、だからターーーーボゥゥなのーーーー」  
シオダは、途切れ途切れの言葉でアタシに説明していった。  
アタシはシオダの声に答えて叫び返した。  
「ひ、ひ、ひぃやあ、ふはああ、ああ、あーーーっ!」  
今まで聞いたことの無い、まるで自分でないかのような叫び声。アタシの中にも火がつき始めてた。  
 
グチャグチャに濡れた襞を、絶え間なくかき回される刺激に、一時の痛みに麻痺しだした体は、貪欲な  
欲望を求めだしていた。手足を四匹の車輪生物に引き伸ばされて身動きできない体で、腰だけを微かに  
揺らし始める。さっき道路に打ちつけられた腰の痛みさえ今は感じず、ただ、体の内から溢れ出した快楽に  
支配され淫らに蠢いている。心臓は早鐘のように打ち、車輪生物に蹂躙されていないアタシの控えめ  
胸の先まで固くシコリ始める。苦しさに肩を車輪生物に預け、突っ張った胸の力を緩めて、体全体を  
垂らすように下げる。すると、上半身は無事な調査服に被われた内側のシコった胸の先が高速で後ろへ  
流れて行く路面に触れた。  
「ヒギッッッッ!」  
またアタシは叫んで胸を突っ張って離す。だけど、やがて、また力尽きて胸が下がり、路面にこすられる。  
「ヒッ、ヒギッッッッ!」  
柔らかい素材で作られ、常に路面を洗う水で濡れた路面は、服を傷つけることなく滑らかに、胸の先だけを刺激し、  
さらに固く尖らせ、アタシにさらなる倒錯した快感を与える。  
 
涎を滴らしながら、横に併走してきたシオダを、まるで痴呆のような瞳でアタシは見つめる。  
アタシよりは大きめのシオダの胸は、大きくダラリと垂れ、既に服の上からでも、固く尖りきった  
乳首の様子がはっきりと見て取れた。アタシの車を追い越そうとタイミングを計り、ジグザグと疾走する体に  
合わせて、その乳首の先が、右に左に揺れながら、路面でこすられ続けている。  
シオダは言葉無く、長い黒髪をなびかせ、涎を風に飛び散らせながら、顔を紅潮させていた。  
前方を向いた目は、人形のように虚ろで、既に知性も気品のかけらも感じられなかった。  
 
四肢を車輪生物に取り込まれて股を水平になるまで大きく左右に引き裂かれ、限界まで広げられた  
乙女の花芯に極太のターボエンジンを埋めこまれて疾走を続けるアタシとシオダ。  
二人は車輪生物に任せるまま、体の奥をエンジンにかき回され、口からは涎を、下半身からは、  
愛液ともは何ともつかない液体をまきちらせ、追い越しの車線変更に、敏感に尖りきった乳首を  
路面にきしらせて、競い合うように追いつ追われつのデッドヒートを繰り返し、恥辱にまみれた肢体を  
余すことなく惑星の自然の中に晒し、互いの目に焼きつけながら惑星を取り巻くハイウェイを駆け抜けて行く。  
併走するトカゲ車や車輪生物は、こんな恥ずかしいアタシ達を知ってか知らずか、時折、  
追走して、蹂躙されている、むき出しの下半身を興味深そうに眺めては追い越して行く。  
その視線を感じながら、アタシは話でしか聞いたことも無い、オーガズムというらしいものを、  
何度も何度も体験していた。  
 
体の奥から溢れる倒錯的快感に時間感覚さえ失い、どれほど走ったのかも分からなくなった頃、  
アタシは心持ちお尻の方が持ち上がって来ているのに、ボンヤリと気がついていた。前のめりの  
ヒップアップ改造車のような体勢になっていたアタシは、その時、横を追い越して行く同じ体勢の  
シオダを見て、もう一つの変化に気がついた。シオダのお腹が膨れてきている。アタシは自分も  
そうなっているだろうことを、既に麻痺した下半身にかすかに感じる「張り」から理解した。  
足の車輪が軸の角度を斜めに変え、さらに、ヒップアップの度合を増したアタシ達の車は、  
さらに、丸く張ってきたお腹をも、周りに晒すかのようにしながら、さらに速度を速めて疾走していた。  
 
大きく張ったお腹にアタシが気づいたことを察したのか、再び横に併走してきたシオダは相変わらず  
人形のような虚ろな瞳のまま、憑かれたように大声で叫び始めた。  
「胎生ィィィ、オスーーーとメーースーーー」  
「あああ、信じられないーーけーーどぉ、少なくともターーボォが……、メーースなのぉ」  
「この生物ぅうのぉ、内臓ぉはーー車軸の穴だからーー、し、し、子宮の場所が無いのぉ」  
「だーかーらー、ある程度の大きさになるとおお、他の生物のぉおーー子宮を借りるのぉ」  
その声を聞きながら、アタシは下半身の張りが周期的に襲う痛みへと変化していることに気づいた。  
「ぎ、ぎーー、擬似ホルモーーン」シオダも痛みをこらえるように叫んだ。  
「生物ぅう、分、分、分泌…… 私達の体…… に、妊婦のように……」  
叫びながら、シオダの車はアタシを追い越して行く。  
 
アタシの頭の中に社員研修でのホルモンの講義のある一説が蘇った。  
女性は生殖可能な期間になると体内のオキシトシンというホルモンが放出される。それは  
セックスのオーガズムにより分泌増加し、子宮が収縮し、妊娠のための各器官の活動を活発化させる。  
それは快感と幸福感を生み、女性の母性行動を促進させる。  
そして、いったん受精し妊娠すると、オキシトシンの作用は、子宮頚を閉じる作用となり妊娠を継続させ、  
その後も分泌の増減により規則的に繰り返される子宮の収縮は、胎児を分娩する原動力となる。  
アタシの体内に入り込んだターボ生物は、性的刺激で血流を促進させるとともに、増加した  
オキシトシンに、さらに何かの擬似ホルモンを作用させ、アタシの体をまるで妊婦のように  
作り変えてしまったのだ。そして、ターボ生物の抱えていた車輪生物の胎児は、おそらく、  
今、アタシの妊婦として脹れ上がった子宮の中で急成長しているのだろう。  
お腹の収縮と痛みは、さらに強くなり、アタシはさらに涎を風にまきちらしながら、それに耐え続けていた。  
 
周期的なお腹の痛みは、さらに強くなっていく。アタシの中に、さらに社員研修のホルモンの講義に  
続けて、どういう訳だか受講させられた妊娠に関する講義の内容が蘇って来る。  
アタシは、それを顔を真っ赤にしながら受けていた。アタシの横の席のシオダは違って真剣な顔で……  
 
オキシトシンの分泌の増減でできる子宮収縮の周期的なパターンはやがて、成長した胎児を子宮口に  
押し出して行く。分娩に致って、その胎児の中からの圧力により、骨盤が開き、子宮口が圧迫される。  
この時、女性には陣痛が周期的に襲うようになる。この痛みから体を守るため、妊婦の体内には、  
脳内麻薬と言われるβエンドルフィンが多量に放出される。これはランナーズ・ハイというマラソン走者が  
最後の追い込みで追い風を得て信じられない力を発揮するように、女性の体内に出産の痛みに耐える  
信じられない力をもたらす。  
お腹を襲う周期的な痛みと共に、今、まさに手足から吸われた体液は、既に限界に達し、痺れから  
激痛へと変わっている。しかし、アタシの体に分泌されるβエンドルフィンは、それさえも飲み込み、  
恐怖心さえ麻痺したかのようにアタシの体に醒めた活力を送り続ける。  
そして、アタシの体に取りつく車輪生物は、さらに多くの体液を味わって自身のエネルギーを  
取り込むことができるのだ。  
 
自身の捕食と種族の繁栄、そのために捉えた生物を極限まで絞りつくす車輪生物。  
 
再び追い抜いて行き、後方に流れて行くシオダの口から、こんな独り言が漏れているのをアタシは  
聞くともなく聞いていた。  
「自然の仕組みのぉ、巧妙さぁわああーー、ん、んくっ、はぁ、はあああー、驚くばかり……だわーーー」  
 
虚ろなアタシの目に、はるか遠くの大きなシルエットが写り始めていた。平原の広がる惑星の中で、  
天に向けて屹立する塔のような影。アタシ達の宇宙船だ。ついに宇宙船まで辿りついたのだ。  
だけど、その宇宙船の着陸の時にハイウェイに作った大きな裂け目さえ、道路は自動修復を  
終えようとしている。このままアタシ達は宇宙船を通りすぎ、惑星のいずことも知れない場所まで  
運ばれてしまう。そして、そのまま、もう……  
 
その時、周期的な痛みが襲っていた下半身が、さらに強力に収縮を始め、アタシはそれにガクガクと  
揺さぶられた。まるでエンスト車のように車体全体を揺らしながらスピードが落ち、ハイウェイの  
路肩に寄って行った。見ればシオダも、アタシの前にゆっくりと減速していくのが見える。  
お腹を激しく波打たせ苦しげな声を上げるシオダの体を貫いていたターボエンジンの役目の車輪生物が  
ゆっくりと体を振るわせながら抜けていった。そして、アタシの体からも圧迫感が抜けて行く。  
やがて、スルリと体から抜け落ちたターボエンジンは、元の車輪の形に戻りアタシ達の横をゆっくり  
併走した。だけど、アタシの体内をかき回す感覚と強烈な激痛は今だ残っている。  
「ア、クッ、ンクッ!」  
強烈な体内の収縮がアタシの体全体を揺さぶった。体内から強烈な回転を伴ったものが溢れ、  
膣を抉るように抜けた。アタシは車輪生物を自身が出産したことを知った。同様に、アタシの目の前の  
シオダの膣口がゴムのように伸び、中から、ある程度の大きさになった車輪生物の子供が勢いよく  
飛び出てくるのが見えた。体内に残る回転は、まだ残っており、アタシはゆっくりとシオダを追い抜き  
ながら二匹目を出産した。その後もアタシとシオダは、互いに追い抜きながら、自身の体から人外の存在を  
産み出す様をじっくりと、その目に焼きつけていった。  
 
五匹めを産んだ後、体内の感覚は収まり、続いて体中に滴らせた汗と共に、体力をすべて  
流し出したアタシ達はグッタリとする中、ようやく手足から車輪生物が外れて解放されるのを、  
どこか遠くの世界のように感じていた。五匹二組の車輪生物に、新たに生まれた十匹を加えた  
総勢二十匹の軍団(コンボイ)は、アタシ達を捨てて走り去って行った。  
 
長時間引き裂かれた股は間接が変な方向にねじ曲がったまま、筋肉までおかしくなったように  
ピクリとも動かない。肩から下の腕も既に感覚は無く、立つことも這うこともできない。  
体の中央を抉られ、大きな五匹の車輪生物の新生児まで抜けていったアタシの体は、ぽっかりと  
穴を開けたままで、既に昨日までのバージンの印は見る影もないだろう。  
 
そう考えたアタシの心にホルモンの働きで押さえられていた恐怖と絶望が徐々に実感されてきた。  
叫びだしたい狂気の感覚がアタシを支配しはじめている。当然だろう。あんな人では無い車輪生物を  
何匹も産んだのだから。アタシは、このまま発狂して一生を終える。本当の恋をすることもなく、  
人としての本来の生活を営むことも無いまま。  
壊れていくアタシの心に揺れる瞳は、アタシに向かって口を動かして言葉を発しているらしい  
シオダの姿を捉えた。シオダの目は、まだ生きていた。アタシに向かって語りかけていた。  
(シオダさん、あなたやっぱりアタシより立派だわ。多分、経験もあるんじゃないの)  
そんな意識が、狂気に壊れていくアタシをわずかに持ちこたえさせた。  
アタシ達は、やっとのことで肩を揺らしながら近寄り、感覚の無い互いに触れた手を、  
残った微かな気力で繋ぎ合った。  
やがて、道路にできた水柱がアタシ達を道路外に押し流していった。  
 
「ヒノさん。可哀想なヒノさん。初めてだったのに、こんなことに」  
裂かれたまま自身では閉じることもできない股の間を、優しく呟きながら慈しむように口付けされている。  
「可哀想なヒノさん。せめて私が癒してあげる」  
舌がピチャピチャとアタシの、そこを舐め回している。それにアタシは肉体的な快楽をを越えた  
不思議な幸福感を感じている。太いものに抉られ、大きなものが通り抜けて、すっかり無残に開ききった  
アタシの花弁。舌は、その内部まで入り込み、アタシに与えられた大自然の残酷な仕打ちの後を清めて行く。  
アタシは、胸一杯で呟いた。  
「シオダさん。ありがとう、本当にありがとう」  
「こんなこと、当たり前ですわ。私とヒノさんは運命に導かれて巡りあいましたのよ」  
「そうだったの。アタシ今まで気づかなかった」  
アタシは甘く切ない声でシオダにねだるように言った。  
「シオダさん、名前で呼んでもいいかな。いえ、呼ばせて、お願いだから」  
「いいですわよ、ヒノ・アケミさん」  
 
シオダ・エリ  
新入社員研修で、初めて紹介された時の名札に印刷された文字が、アタシの中に  
鮮明に蘇っていた。その時、初めて見た端正な顔と大きな瞳。揺れる長い黒髪……  
 
アタシは顔を真っ赤にして呼んだ。  
「エリさん……」  
「え、聞こえませんわ」  
「エリさん!」  
「さん、なんて、いらないですわ」  
「エリ……」  
「もっと大きな声で」  
「エリ!エリー!!」  
「よくできましたわ…… アケミ……」  
 
アタシはゆっくりと微笑み、自分のくせ毛と違う、さらさらした豊かな黒髪の香りを  
胸一杯に吸い込みながら、教えられるままにエリと舌をからませていった……  
 
気がつくと二人とも銀色に輝き、空に向かって屹立する宇宙船の前に投げ出されていた。  
二人で声をかけあいながら、激痛が走り、水平に裂かれたまま動かない股を引きずって、  
やっとのことで宇宙船のハッチに転がり込み、船内の自動治療機械に二人入り込んだところで、  
再びアタシ達は気を失った。  
 
それから、どれくらいたったのか。とにかく到着してから二日目を過ぎたころ、アタシ達は  
治療器の輸血と栄養剤の補給でようやく意識を回復し、自動手術により回復した体で、歩き回れるようになった。  
器材も焼失し、調査が不可能になったアタシ達は、とりあえず手持ちの資料で本社に連絡し、  
課長の指示を仰いだ結果、翌日、この惑星を離れることになった。  
宇宙服に身を固め、パイロット席で調整を繰り返すアタシの横で、シオダは時々遠い目をしながら、  
度重なる『水責め』で、ふやけた調査ノートから船内のメインコンピュータに打ち込んだデータを眺めながら言った。  
「あの生物、データを整理しているうちに、あの<孔>と回転力のもう一つの謎も分かってきましたわ。  
 地球の無脊椎生物、軟体類、輪形類、線形類、海綿類。多種多様の中でも、いずれも体の一部に  
 体腔を持っていますわ。そして、それ多くの場合腸の役割を果たしていますの」  
シオダは治療器から出た後も、以前とまったく変わらない雰囲気だ。惑星での衝撃的な体験を、  
まるで記憶していないかのように、ごく普通に振る舞っている。  
アタシはマイペースで話しを続けるシオダの横顔をチラリと見ながら、ボソリと呟く。  
「腸なの?ホントに……あれが……」  
「厳密に言えば、腸の原形から出発した腸類似器官と言うべきですわね」  
シオダの瞳は、やはり以前のまま変わらず、端正な顔に人懐っこい表情を浮かべていた。  
 
シオダは車輪生物の話を続ける。  
「道路外の生物は、それが長さ方向に発達して口・胃・腸・肛門と分布的に発達しましたのですけど、  
 車輪生物については体腔は円周方向に分布し、軸方向には長さを持たない輪として機能を集中させた  
 のですわ。あの孔には、摂取孔・消化器官・排泄孔などすべてを兼ね備えているのでしょうね。  
 実に合理的な進化だわ 」  
「なんか、それ分かる気がする。昔の形がどうだったかって。だってターボ生物の形……」  
言いかけて、記憶が蘇りそうになり、アタシは慌てて言葉を切った。  
アタシは、冷静を装い、努めて思い出さないようにしながら、シオダの顔を見つめた。  
シオダは、そんなアタシの心に無言で語りかけるように、小首を傾げ、ニッコリと笑った。  
アタシは、それで少し楽になった。  
「ヒノさん、さあ出発しましょう。資料を持ち帰って課長を驚かせてやりましょう」  
シオダのアタシを呼ぶ時の言葉は、以前と同じ「ヒノさん」だ。  
あの時のシオダの記憶、あれはアタシの幻覚だったのだろうか。  
 
でも…… アタシは心の中で呟く。  
自動治療機はアタシの体を完璧に治療し回復させた。活発化した卵胞細胞がいくらか減少し、  
おそらく車輪生物の胎児に吸収されたのだろうけど、今後のアタシの体にとっては大きな問題は無い。  
ついでに処女膜まで再生してくれた。だけど、心に受けた傷は体が癒えても消えはしないはずだった。  
それが、あのシオダの……  
いえ、エリ…… あの記憶のおかげで、アタシは以前と変わらずに振る舞えるのよ。  
(エリ、ありがとう)  
「え、何か言いましたか、ヒノさん」  
「いや、なんでもないシオダさん。さあスタンバイオーケー!発進するよ」  
宇宙船が地響きを立てて、この惑星を離れていった。スクリーンに写る惑星のシルエットに縦横に走る  
無数のハイウェイを眺めながら、アタシは、また一段深まったシオダ・エリとの絆を胸に刻み込んでいた。  
 
 
[十数年後、とある宇宙ジャーナル誌の記事]  
 
第77辺境恒星区、惑星『ネット』、通称『ハイウェイ惑星』  
惑星開発コンサルタント社の調査報告により、その後大規模な調査団が組織され派遣された。  
先史文明の自己修復機能を持つハイウェイより、考古学・先史文明の研究機関や惑星開発業者の  
研究所からの派遣とともに、思いもよらなかった進化・遺伝に関る多数の大学・公的研究機関、  
果ては民間の生物進化の研究者まで大挙して押し寄せ、一気に『ハイウェイ惑星』フィーバーとなった。  
独占開発権を持つ惑星開発コンサルタント社に転がり込んだ利益は、公表されていないが、  
はかりしれない額であったと推測される。  
この惑星の最初の調査に赴いた惑星開発コンサルタント社の若き社員は、その功績をたたえられるとともに、  
休養の後、さらに困難な惑星調査へと派遣されて行ったと聞く。  
 
『ハイウェイ惑星』に棲息する種々の車輪生物は、惑星環境保護団体の抗議を受けつつも、  
数パーセントは調査や惑星動物園への収容などで捕獲されていったが、その中に、極めて人間に近い  
遺伝形質を獲得している種類があったことは、一部の科学誌で話題になった。  
現在、報告されている車輪生物の生態調査では、徐々に小型の車輪生物は、ある種の集団を作り始め、  
調査団の人間と友好、あるいは敵対するかのような意思を見せるかのようだと、何人かの調査関係者は述べている。  
人間が調査に入ったことで、車輪生物の知的生命への進化が促進されたという意見が体勢を占めるが、  
先の遺伝形質のこともあり、人類に近い種と過去なんらかの接触があった可能性もあるとの考えを述べる  
研究者も後を断たない。  
 
(ハイウェイ恥辱惑星 了)  
 
 

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