泉水ちゃんとめぐみが似てるネタを読んで
「実はこの二人のほうが双子だったり」と妄想したやつを落とします。
原作設定完全無視のオレオレ設定に注意して下さい。
保守を兼ねて1話目だけですがおつまみにでもなれば幸いです。
しんと静まる家の中。一室だけ獣のような吐息と布の摩れる音が聞こえる。
その一室では暗闇の中、二人の男女がからみあっていた。
「景織子さん、景織子さん……」
どこかうつろ気な眼をした男は、目の前にいる絶世の美女――いや美少女を激しく求め、己の欲望そのままに可憐な秘所に突き立て、攻めていた。
美少女はその男の首に手を回し、幸せそうな顔で彼自身を受け止めていたが、その名前が彼の口から零れる度、その美しい顔を歪ませた。
――×月3日―― 愛実
「ハア? 何それ。そんな馬鹿な話あるかよ!!」
久しぶりにパパとママと3人そろって羽柴家に遊びに来た。
羽柴のおばさんはすっごく優しいし、料理がとっても上手なので大好きだ。
いつもどおりの美味しい料理を満腹になるまで食べた後、泉水ちゃんでもからかって遊ぼうかなと思ってたら羽柴のおじさんとおばさん、
ママにパパまでなんだか神妙な顔で「話がある」なんて言い出して、なんだかあたしと嵐士が生まれた病院の不手際で入れ替わってたんだって。
嵐士は真っ青になってかたまっちゃうし、泉水ちゃんなんかうっすら涙まで浮かべて怒鳴り散らしてる。なんでだろう?
あたしは「ふーん、じゃああたしの本当の親は羽柴のおじさんとおばさんで、パパとママはおじさんとおばさんだったんだ」ぐらいにしか思わなかった。
だって別に誰が親だろうがあたしはあたしだし、パパとママも赤の他人ってわけじゃないんだから別にいいじゃんって感じ。
あ、おばさんとママは兄弟だからママとは血が繋がってるけどあたしとパパは血は繋がってないのか。
――×月5日―― 愛実
一昨日は夜遅くまでみんなで話し合いをして(あたしは途中で寝ちゃったけど)、とりあえずあたしは藤原家、
嵐士は羽柴家にそれぞれ生活をして、週に1度お互いの家に遊びに行って今後のことを考える。ていう感じになった。
嵐士はお寺を継ぐとかか継がないとかで大変みたいだけど、あたしは今までとほとんど変わらない生活だからま、
いっか。って思ってたけど、パパの様子がなんか変!
一緒にお風呂も入ってくれないし、寝るのも別々にしようだなんて言い出して。超むかつくって感じ。
2日連続で一人寝になるのがいやだから、先輩の家にお泊りに行こうと靴を履いてたら、家に戻ってきたパパとばったり会った。
むかついてたので、挨拶無しに出て行こうとしたら、
「めぐみ、血は繋がって無くてもめぐみとパパは一生親子だからな!」
なんて事をいきなり言い出した。
なんだろう?
すごく胸がしめつけられた。
――×月18日―― 愛実
ママが帰ってこなくなってから10日たった日の深夜。
あたしは痛々しいほどにしょげかえったパパを元気つけようと、ママのベビードールを着、香水をつけ、
パパのベッドにもぐりこみ、寝ているパパを後ろから抱きしめた。
久しぶりのパパの温もり。あったかくて大きくて大好きなパパの背中の感触を楽しんでいると、
あんまり深く眠ってなかったのか、
「う……ん。――きょーこ……さん!?」
っていかにも寝起きの声が聞こえたと同時に体が引き離されてパパが振り返った。
「っ――めぐみか」
露骨にがっかりした声と表情をされた。またずきりと心が鳴る。
あたしは強引にパパの唇を奪うと、いつも先輩とするような大人のキスをした。
「……やめっ……やめてくれっ!」
視界がぐるんと回転し、体全体に強い衝撃が走る。
一瞬なにが起こったか理解できずにぼーぜんとしていたが、どうやらあたしはパパに突き放されて、
ベッドから落っこちてしまったようだ。
のろのろと起き上がると、パパも自分がした事をびっくりした様で、ぽかーんとしていた。
「あ……すまない、めぐみ」
どのぐらい時間がたった後だろう。パパはつぶやくようにそう言うと、泣きそうな顔になって、
「オレ、今その格好でそんな事されたらほんとにやばいから……。悪いけど自分の部屋に戻ってくれないか」
それだけ言うと、パパは布団に潜り込んじゃった。
ギシ、ギシ、ギシ
薄暗い地下室に誰かが階段を降りてくる音が鳴り響く。
両の手を後ろ手に縛られた痛々しい責苦の痕を残した女は、部屋の端にうずくまり、
少しうとうとと眠っていたようだが、その音に反応し恐怖で体を固めた。
女は一瞬――これがもし助けだったら――という小さな希望に縋り付いてみたが、
ギィと扉の開く音と共にやって来たのは案の定、彼女に恐怖を植え付けた少女だった。
「いやぁぁぁぁ。もう、やめてぇぇぇぇ」
その姿を確認すると、彼女の顔は氷のように青ざめ、取り乱した。
元来気高く美しく、誰にも屈しない彼女だったが、10日以上の責苦に身も心も擦り切れてしまっていた。
だがこれだけの責苦に正気を保っているのは、まさに彼女の気高さゆえであろう。
彼女の変わり映えを見るのがさも嬉しいように少女はくすりと微笑むと、ゆっくりと彼女に近づいて来た。
そして横たわっている彼女に合わせる様しゃがみ込むと、優しく、まるで小さな子を愛しむ様にそっと彼女の頭を撫でた。
「……?」
いつもと勝手が違う事にいぶかしんだ彼女が少女をじっと見つめる。
天使のような顔。
優しい微笑み。
そして右の手に握られた、あまりにも少女に不釣合いな、鉈――。
「い……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
永久に続くかのように聞こえた叫び声は唐突にぶつりと途切れる。
部屋の中には血に濡れた少女が、先ほどと変わらぬ天使のような微笑を浮かべ、佇んでいた。
――×月25日―― 愛実
今日もパパの温もりが恋しくて、こっそりとベッドに潜り込んだ。
パパが起きると追い出されちゃうから、後ろからそっと抱きしめる。
規則正しい寝息と微かに聞こえる心臓の音を聞いていると、心臓がきゅぅっと何かにつかまれたようになる。
(パパ、大好き)
起こさないよう最新の注意を払いながら、パパの厚い胸板に手を滑らせる。
「……んっ」
パパが声を上げたので、反射的に手をひいた。
その状態でしばらく様子をみてみたけど、また静かに寝息を立てている。
寝ながらでも感じるんだ――。
あたしは嬉しくなって、パパをもっと感じさせてあげる為に体勢を変えながら色んな所に手を這わせてみた。
首筋、肩、腕、ふくらはぎ、太もも、そして、男根。
……勃ってる。
大きくて、熱くて硬いその男根を撫でると、明らかにパパの声が覚醒に近い声になったてたけど、
あたしはそれよりもパパのそれに触れているのが、パパを感じさせてるのが嬉しくて、その行為に没頭していった。
「――め、めぐみ、なに……を?」
起きない注意を払わなかったからしょうがないけど、とうとうパパが起きちゃった。
こうなったら仕方がない。あたしは開き直ってパパのズボンを一気に下ろし、眼前にそそり立つそれをパクリとくわえた。
「うっ!」
いきなりの刺激にパパが怯んだ。その隙にあたしは持てる限りのテクを使って、パパを攻め立てる。
パパが喘ぎながらも「やめてくれ」とか「ダメだ」とか言ってるけど、そんなの気にしない。
だってパパの体はとっても正直に「もっともっと」って言ってるもん。
そしてとうとう、はちきれそうになったそれから白濁とした液が大量に出てきた。
あたしはそれを一滴も残さないように、大事に飲み込んだ。
男はけたたましいベルの音で目覚めた。
ベッドの中からそれを探り当て、とにかく音を止める。
(――あれ?)
寝起きのまどろみの中で、男は違和感を感じた。
なかなか動かない脳で暫く考え込んだ末、「ああ」と一人納得する。
(そういえば景織子さんが帰ってこなくなってから、毎日めぐみが起こしてくれてたのか……)
彼はぼんやりと昨晩の事を思い出した。
16年間、手塩にかけて育てた娘と――血は繋がってないとはいえ、
本当に大切な愛娘に自分の欲望を吐き出してしまった。
それを思い出すと自己嫌悪でどうにかなってしまいそうだったが、娘が強く望んだ事だし、
いまさら嘆いてもしかたがない。
(それよりも、今は景織子さんの事だ)
彼はベッドから起き上がると、連日徒労に終わっているにもかかわらず、愛妻を探しに行く為に外出の支度を始めた。
支度を済ませ、玄関に出ると、彼は今日二つ目の違和感を感じた。
それはすぐにわかった。
学校に行っている筈の娘の学生靴がきちんと並べて置かれ、その横に手紙があった。
その不吉を予感させる置かれ方をした手紙を見て青ざめた男は、すぐさまそれを開封した。
――遺書――
大好きなパパへ
パパ、ごめんね。ママを殺したのは私です。
理由は大好きなパパをずっといじめてたから。
でも、ママがいなくなって気落ちしたパパを見てわかったの。
ママを殺しちゃった私の方がずっとパパをいじめてるんだって。
だから自分で自分を殺します。
さようなら。
めぐみ
手紙をその場に投げ捨て、男は家の中にもかかわらず全力疾走で娘の部屋を目指した。
「めぐみっ! めぐみっっ!!」
ドンドンと力任せにドアを叩いて、反応が無いのを確認すると、すぐにドアを開いた。
そこにはまるでお人形さんのように頭をうなだらせ、だらんとした手足を伸ばしてベッドに凭れ掛かる娘がいた。
美しい顔は生前そのままだったが、首から大量に血を出したのか、体中が真っ赤に染まっていた。
そして、
娘のひざの上に
まるでぬいぐるみのように置かれたそれは、
彼が最も愛する女の
"頭"だった。
「う……わああああああああああああああああああ」
――1年後――
藤原景織子殺害事件が世を賑わせてから季節が巡り、1年の時が過ぎた。
世間は次から次へと舞い込んで来る出来事に忙しく、その事件も忘れられていったが、
関係者、とくに夫であった男にはその傷跡は消える事無く残り続けていた。
「沙夜、ごめん。オレ、また――」
「いいのよ。あれだけの事があったんだもの」
事件後、廃人のようになってしまった男を甲斐甲斐しく世話したのは、娘の同級生の少女であった。
少女の献身的な介護から、男は少しずつ人間らしさを取り戻していき、やがて二人は男女の関係になった。
だが男はその時に必ず死んでしまった妻の名前を呼んでしまう。
いや、それだけでは無く、彼は少女を抱きながらも頭の中では妻を抱きつづけているのだ。
少女はするりとベッドから降りると、その絵から出てきたかのような美しい体にバスローブを巻いた。
そして男から見えないように体を窓に向けると、ギリ、と歯を噛んだ。
大丈夫。
彼が愛してやまない藤原景織子も、藤原景織子の面影を残した藤原愛実ももういない。
彼がどんなに藤原景織子を想っても、報われることは一生無い。
だから二人の間を壊すような物は何も――。
そこで少女ははっとする。少女が友人に殺意を持ったあの日。
友人は親友の小さな女の子にこんな事を言っていた。
「あたし、パパの事好きかもしれない」
「えぇー!? そりゃ、れーじパパすごく素敵だけど、親子でそれはまずいんでない?」
「それが親子じゃなかったんだよね。あたしと嵐士が入れ替わってたみたいで。なんかあたし、ママの妹の子供なんだって」
「えええええ!? じゃ、じゃあれーじパパの子供は嵐士で、めぐみと泉水ちゃんは実は双子だったの!?」
そこまで聞いて、少女は物陰から立ち去った。
元々人のものだと最初から諦めていた恋だったが、もし友人が彼と結ばれてしまったら……と考えるといてもたってもいられなくなった。
かなりのリスクを伴ったが、今彼の傍には少女がいる。という事を考えると、総じて良い判断だったと思っていた。
それよりも、その時は他のことに気をとられて気が付かなかったが、藤原景織子に妹がいる。という事実が少女を焦らせる。
しかし、同時に少女の心の中をどす黒い喜びが満ち溢れてくる。
(……今度はどんな殺し方をしようかしら――)
少女の心は、まるで遠足に行く前の日の子供のように踊っていた。
終