西日の差し込む音楽室。
ピアノの白い鍵盤が夕日に反射して、オレンジ色の光を放つ。
「ふ、藤原!バカなマネは止めなさい!」
……どうしてこんな事になってしまったのか。
はだけられたセーラー服の襟元。
誘惑するように寄せられた白い胸の谷間から、彼は必死に目を背けた。
「どーして?」
入学から今まで、彼女には手を焼かれっぱなしだった。
だが、少女が愛すべき生徒で、守るべき存在であることに代わりはない。
こんな事をしていい訳がないのだ。
それに、それより何より……
悪魔のような父親の姿が浮かんできて、男の顔を青ざめさせた。
彼は後ろ手に縛られたロープを解こうと、懸命に腕を捩る。
けれどそんな彼の行動を嘲笑うように、少女は膝の上に乗ると、ゆっくりと細い腕を伸ばした。
為す術もなくそれを見つめていると、眼鏡が外され、急激に視界がぼやける。
不明瞭な視覚の中、クスリ、と満足そうな笑い声が聴覚を刺激した。
「ねぇ、センセー……」
甘ったるい声が吐息と一緒に唇へかかり、やわらかな髪が彼の頬をくすぐった。
コロンの香りが、キツイ。
酔ってしまいそうだ。
なにも、考えられなくなる。
少女に、捕らえられる。
「あたしは、保守がしたいの……」