軽い衝撃と同時に、身体に巻き付く細い腕。
甘いクチビルが自分のそれを塞ぐ。
驚いて声を上げようと口を開けると、やわらかい舌が素早く口内に滑り込んだ。
「ッ!! 」
嵐は目を見開いた。
目の前には長い睫毛を閉じて自分に口づけをするイトコの姿。
人形のようだと称される容貌は既に見慣れたモノであったが、それでも頬を染めて自分にキスする姿は、特別に可愛く見える。
(めぐみ……)
腕が自然に持ち上がり、少女の華奢な腰に回った。
嵐は積極的なイトコに答えて舌を絡めだす。
こちらの反応を引き出そうと、口腔を強引にまさぐる舌をいったん落ち着かせると、ゆっくりと歯茎の裏をなぞる。
サクラ色のクチビルが僅かに戦慄き、腕に閉じこめたカラダの体温が上がる。
そのリアクションに、嵐は少し頬を緩めた。
甘く下唇を噛むと、熱に潤んだ瞳が薄い目蓋の下から彼の瞳を見つめる。
誘うような色を浮かべるその瞳に、嵐の下半身が反応した。
アツく弾む、2人の吐息。
部屋に響く、秘やかな水音。
そして、飲み込み切れなかった互いの唾液が、少女の白いあごを伝って床に滴り落ちた。
「あらし」
めぐみの甘いソプラノが今のキスの所為か、いつもより少し擦れていた。
酸素を取り込もうと大きく上下する薄い肩に、いとおしさがこみ上がってくる。
「めぐみ」
少女と同じように擦れた声で呼ぶと、嵐は彼女の色素の薄い瞳を見つめた。
中三になってから2人で一緒にいる時間が少なくなり、めぐみへの淡い恋心は忘れ去られようとしていた。
イヤ、無理に忘れ去ろうとしていたのかもしれない。
ネコのように気まぐれな少女が、再び彼氏を見つけてから――。
ぽっかりと空いてしまったベッドの隙間も、心の穴も。いつもひっついてたから寂しいだけだと考えて、ムリヤリ無いモノにしてしまおうとした。
でも、仲良さそうに腕を組んで歩く彼女たちを見ると、胸の中のカミキリムシが心臓に傷を付けた。
他のコとつき合えば治るかと思ったのは、今なら間違いだと分かる。
それに、今が2人にとって一番の転換期だと言うことも。
嵐は仲の良いイトコという、2人の関係を変えるための決意を胸に秘め、口を開いた。が、その言葉は上機嫌なめぐみの言葉によって、実際口に出されることなく立ち消える運命となった。
「あたしパンツ脱いでもいい彼氏できた♪」
「はっ!?」
衝撃に、思考回路がショートしてしまったようだ。
耳が音声を認識できない。
このカワイイが頭もカワイイというかバカなイトコは、今キスしたばかりの男に向かってなんと言ったのだろうか。
認めたくないという拒絶感のためか、はたまた、あまりにも焦ったためか、カラダから汗が吹き出てくる。
「今のなに……」
呆然とした声が、自分の口から漏れ出た。
まるで幽霊のように精気のない音声に、自分でも狼狽を覚える。
「練習☆」
恐慌状態に陥った男のことにも全く構わず、ちいさな舌で味わうようにペロっと唇を舐めためぐみは、悪戯っぽく笑った。
イトコでもあり、幼なじみでもある嵐は、その表情に見覚えがあった。
長年のつきあいだけあって、めぐみの突飛な行動にも、人の心を弄ぶような行為にも慣れている。
慣れてはいる……が、今回件に関しては、許すことが出来ない。
めぐみからのキスに後押しされる格好になったとは言え、人が告白しようとしたときに、よりにもよって『パンツ脱いでもいい彼氏ができた♪』だと?!
嵐の中で、何かが音を立ててブチっと切れた。
「ふざけんな!!」
思わず、腕の中の悪魔を投げ飛ばす。
「キャーっ」
甲高い声を上げて、少女の身体が空を舞った。
悪魔のくせに羽根でもあるのか、めぐみは白いシーツの上にたいしたダメージもなく着地した。
ぽすっという軽い音と友に、ベッドに沈む華奢な身体。
無意識のうちに、なるべくやわらかいところに着地するようかばってしまったのかもしれない。
どこまでも甘い自分を忌々しく思いながら、嵐士はめぐみの全身に視線をやった。
足が大きく開き、短く切った制服のプリーツスカートが捲れて、下から白く細い足がのぞく。
嵐士は慌ててそこから目を背けようとした。
だが、力一杯投げつけた時にボタンがはずれてしまったのか、大きく空いたシャツの襟から見える、中学生らしからぬ大きさの胸に目が釘付けになる。
風呂上がりの姿だって何度も見たはずなのに。
そう自分に言い聞かせたモノの、怒りと先程のキスの余韻が頭の中で交錯している状態で、その光景は嵐士にとって刺激的すぎた。
まさに襲ってくれと言わんばかりだ。
イケナイ、と嵐士はとっさに思った。
庭のセミを嬲り殺すときと同じ、昏い感情がじわじわと身体を支配し始める。
羽の焼けこげるあのニオイ。
助けを求め、叫ぶように五月蠅く鳴くムシ。
自分の手の中で、もがき苦しむ小さなイノチ。
「ヤダもー、なにすんの?」
いつも優しいイトコに安心しきっているのか、投げ飛ばされた後も、めぐみは急いでベッドから立ち上がらない。
寝ている彼女の側に寄ってきた男の姿に、枕の上に上半身を預けたまま、怒りと信頼の混ざった視線を向ける。
信頼していなければ自分からキスなんか出来ないよな、と嵐士は嘲笑うように思った。
「どうしたの、あらし?」
頭上で結んでいた赤い髪飾りが、先程のショックで外れてしまったようだ。
額にかかる前髪をうざったそうにかき上げながら、手櫛で髪を整えていためぐみだったが、いつまでも黙ったままの嵐士に不信感を覚えたのか、手を止めて訝るように眉を顰めた。
「ン?」
無邪気な顔をして、少女が嵐士の顔を伺い見る。
不思議そうに尖らせた赤いクチビルが、先程の口付けを思い出させ、嵐士の中にわずかに残っていた理性のたがを外した。
めぐみが、欲しい。メチャクチャにしたい……。
身体が一気に熱くなり、視界が朱く染まる。
目の前にうっすらと掛かった薄いベール越しに、めぐみの瞳が驚愕に見開かれた。
そして、赤く染まった意識の中。凶暴なまでの欲望が嵐士の身体を突き動かして、めぐみの肩をシーツの上に乱暴に押しつけた。
「キャーーーッ!」
信頼しているイトコの突然の暴挙に、少女はライオンに襲われたコネコのように甲高い悲鳴を上げた。
嵐士はその口を塞ごうと咄嗟に右手を挙げたが、ふとその手を空中で止めた。
家には誰もいない。
この小生意気な少女がどれだけ泣き叫ぼうと、邪魔は入ってこない。
熱にうなされたような思考の中で、嵐士はどこか冷静にそう考えた。
唇に冷ややかな笑みが宿る。
その寒々とした笑顔に怯えたのか、めぐみはひゅっと息を呑んだ。
「あらし冗談キツす……」
ぎ、と続く言葉は熱っぽく覆い被さってきた唇に絡め取られた。
先程の何倍も激しく、舌がめぐみの口腔を侵す。
荒っぽく侵入を繰り返す舌に、少女の息が苦しそうに上がっていく。
感じさせようなんて余裕は無い。
あるのはただ、彼女の全てを奪い尽くしたいという凶暴な欲求だけ。
口付けを深める度に、もっと欲しくなる。
飢餓感にも似た欲望が、全身を駆けめぐる。
「ふっうっ……」
ふだん高慢チキな少女が自分の為すがままになっている姿は、嵐士の支配欲を大いに満足させた。
舌の動きを休めないまま薄く目を開けて、怒りと興奮で真っ赤に染まっためぐみの顔を見る。
長い睫毛に露となって乗っかった涙に、背中がゾクっとする。
捕らえたのは自分のハズなのに、自分がめぐみに捉まってしまったような気持ちに陥る。 嵐士はその気持ちを否定するかのように、再び自分の瞳を閉じた。
だが次の瞬間、少女の目蓋が開いて薄茶の瞳がのぞいたかと思うと、彼の舌に痛みが走った。
「ッ!つぅ……」
たまらずに、唇を離す。
瞬く間に、口内に錆びた鉄の味が広がった。
「ザマーミロ」
そう言って大きく舌を出すと、めぐみは嵐士が怯んだ一瞬を狙って彼の腕から逃げ出した。
そのまま小動物並の素早さで部屋の出口に走る。
めぐみの肩口で揺れる髪を見ながら、嵐士は傷ついた舌を親指で撫でた。
ぬるりと生暖かい血が、唾液と一緒になって指に付く。
その赤い色に苛立ちを覚えながらも、今だったら戻れる……と、嵐士は思った。
少し行き過ぎてしまったけれど、いつもの2人に戻る道にはそう遠くない。
このままめぐみを帰してやって後日きちんと謝れば、何発か殴られるかもしれないが許してくれるだろう。
基本的に、めぐみは自分の身のうちに引き込んだ人間に甘い。
両親や、親しくつき合う友人に多少のワガママを言うことはあっても、その他の人間に言うようにデタラメな要求をすることはない。
今なら間に合う。
そう自分に言い聞かせるが、嵐士の身体はその考えとは裏腹にエモノを仕留めるための一歩を踏み出した。
彼はもう、甘い蜜の味を知ってしまったのだ。
やわらかい肢体を腕に捕らえたときの、沸き上がるような高揚感を知らなかった時ならまだ引き返せたかもしれない。
だが……。
嵐士の目に残虐とも言える暗い光が宿った。
黒ヒョウのように音も立てず、嵐士はさっとめぐみに近づいた。
そしてそのまま、ドアノブに手をかけようとしていためぐみの身体を、後ろからドアに押さえつける。
白い木製の扉は、2人分の体重を掛けられ、大きな音を立てて軋んだ。
「うッ!」
まだ成長途中だとはいえ、既に170pを軽く越えている嵐士に体重をかけられた少女は、痛そうにうめき声を上げた。
「逃げるなんてヒドイなー、めぐみ。誘ったのはそっちじゃん?」
絹糸のように細くやわらかな髪の中に顔を埋めると、嵐士はおかしそうにくすくすと笑った。その吐息で髪がふわふわと舞い上がると同時に、めぐみの使っているシャンプーだろう甘ったるい香りが彼の鼻に届く。
「ち、ちがっ!」
衝撃から立ち直っためぐみが、その言葉に怒ったように牙を剥いて振り返る。
オレのカワイイ子ウサギ。あんまり生意気だと、その牙抜いちゃうよ……?
「ちがわないって」
彼に殴りかかろうとしていた細い腕を素早く掴むと、そのまま頭の上に一まとめにする。
急所を狙って蹴り付けようとする行儀の悪い足を押さえつけながら、嵐士は蝶の羽根をもぐ時にも似た高揚感を覚えた。
「スキだ、めぐみ……」
自然に言葉が零れでる。
どうして今までガマンできたんだろう。
こんなに可愛く、生意気なイトコを手に入れることを。
嵐士はクスクスと目を細めて笑った。
その余裕、と言った邪悪な笑みに、めぐみは大きな声で悪態を付く。
「あらしなんかキライだ。バカバカ……キライ、大ッキライ!!!」
だが、そのひどい拒絶の言葉に、心の最奥で眠っていた残虐なアクマが完全に目を覚ました。
「なんだと?!」
「ひぃぅッ……」
首を絞められ、めぐみは苦しそうにうめいた。
嵐士は苦しさから逃れようと藻掻く少女の姿に、残酷な笑みを浮かべた。
耳まで赤く染まった顔も、血走った目も、そしてだらしなく口から垂れ流したモノさえも憎い。いとおしい。憎いにくいニクイ。
片手に収まる細い首。もっと力を入れたらポキンと二つに折れてしまいそうだ。
嵐士はクッと笑いながら、腕に力を込めた。
「ぐぅ……ッ」
めぐみの低い鳴き声は、それまで潰したどんなムシの声より嵐士を愉しませた。
心が黒い炎で燃える。残忍な悪魔が身体を支配する。
もっともっと苦しむ様を見たいのに、締め付ける力を加減できない。
次の瞬間。めぐみのカラダは嵐士の腕に力なく寄りかかった。
「チッ、オチたか」
忌々しげに舌打ちすると、嵐士は少女の首を締め付けていた手を離した。
めぐみの身体がドアの壁伝いにずるずるとすべり落ちる。
だらりと力なく垂れ下がった手に、嵐士は顔をしかめた。
――おもちゃが壊れては面白くない。
しばらく面白く無さそうにその姿を見ていた嵐士だったが。良いことを思いついたように、ゆっくりとその唇を曲げた。
「ククッ」
嵐士の口から短い嗤いがこぼれる。
意識を失った少女は、まるで眠り姫のように静かにそこに横たわっていた。
彼は無表情にその姿を見やると、制服のズボンを止めていたベルトを外す。
そしてそれを少女の手首に一巡させると、そのままドアノブにも巻き付けた。
両腕を上に縛り付けらた反動で、意識の無いめぐみの頭がだらりと垂れ下がる。
「起きろよ、めぐみ」
あごを掴み、顔を上に向けさせると、嵐士はめぐみの口腔を舌でまさぐった。
先程めぐみに噛まれた傷口から、ピリピリとした痛みが痛覚を刺激する。
まだ血が止まっていない。
唾液と一緒になってからみつく、そのねっとりとした塩気。嵐士は不快そうに、眉をひそめた。
そして、彼はその苛立ちに後押しされたように、好き勝手に弄んでいためぐみの舌を僅かに噛む。
ふっくらとしたその肉に、徐々に圧力を加えて行く。
このままかみ切ってしまったらどうなるのだろうか。
嵐士の頭の中に、口端から深紅の鮮血を流すめぐみの姿が浮かび上がる。
その陰惨ながらもどこか淫靡な姿態は、嵐士の心に確かな愉悦をもたらした。
やわらかな舌尖を噛む力が、どんどん強くなる。
あと少し、顎に力を入れれば舌表が裂けてしまうという寸前。
めぐみの意識が覚醒した。
「グッ、ゲホゲホゲホ……ッ」
苦しそうに咳を繰り返すイトコの口から、嵐士は唇を引き離した。
二人の間に、てらてらと光る透明な液体が、糸を引いて垂れ下がる。
「ッ……はぁっ、はぁっ」
しばらく荒い呼吸を繰り返していためぐみだったが、両手の自由が利かないことに気づくとさっと頬を強ばらせた。
ガタガタと腕を前後に振っても、めぐみの細い腕の力では扉が僅かに軋む程度で、その頑丈な戒めは少しも弛むことがなかった。
「ヤッ……」
カッターシャツのボタンを外しながら近づいてくる嵐士の姿に怯えたように、めぐみは縛られた両手をギュッと握りしめた。
部屋の隅に追い詰められたネズミのような目で、頭上に掲げられた両手と嵐士の姿を交互に見る。
「もう逃げられないよ、めぐみ……」
その姿を見て少し余裕が出来たのか、嵐士の口調がいつものものに戻る。
だが、その瞳は未だ熱に浮かされたように暗い光を宿していた。
「ウウッ」
両手を縛り付けらた格好で、自分のことを睨むイトコの姿は、嵐士の劣情を酷くそそった。
どんなに精巧に出来たマリオネットも、いま自分が手に入れようとしている少女には叶わないだろう。
嵐士は陶器のようになめらかな頬に手を滑らすと、感触を愉しむように何度もその肌を撫でる。
その執拗な振る舞いに気圧されたように、めぐみの喉がごくんと鳴った。
「……!」
その動きに惹かれるように、嵐士の指が頬から顎へと伝い、そして首筋に下りていった。「フフ、赤くなってる……」
少女の首筋にくっきりと残る指痕を、嵐士はいとおしそうになぞった。
「ヤッ、め…ッ…ゴホゴホッ」
めぐみは必死になって拒絶の言葉を叫ぼうとしたが、痛めた咽ではかすれ声を出すのが精一杯で。
大きな声を出そうとした彼女は、再び咳き込む羽目になってしまった。
苦しそうに息を繰り返す。のどがひゅうひゅうという音を立てた。
「めぐみは本当にバカだなぁ」
嵐士はそんなめぐみの姿を嘲笑うように、ブラウスのボタンに手を掛ける。
普段からきっちりと閉められていないその襟ぐりは、すぐに大きくなり、派手な色の下着が嵐士の目の前に現れた。
「ショッキングピンクか。めぐみらしいといえばらしいけどね」
大きな水玉模様の下着を、嵐士は力任せに上へ引き上げた。
「バッばか」
めぐみは肘を曲げて、必死にその部分を隠そうとした。
だがその抵抗もむなしく、その白い肌は男の目の前に無防備に晒されてしまう。
すこし堅さの残る胸が、上下に揺れた。
「結構大きいね、Cカップ……くらいあるのかな?」
嘲笑の入り交じった声に、まだ親以外誰にも見せたこと無い、なめらかな肌がかっと羞恥の色に染まる。
少女の瞳に恐怖とは異なる、陵辱者に対する憎しみの光が点った。
だが。白い歯を食いしばっためぐみに全く頓着せず、嵐士は薄紅色に色づく頂上に魅せられたように指を伸ばした。
グニグニと乱暴にこね回され、めぐみの胸が大きくカタチを変える。
その力任せの振る舞いに、少女は痛むのだろう。くしゃりと顔を歪めた。
「ねぇ、聞いてるんだけど?……めぐみ」
「ッツ……」
暗い瞳でにらみ付けてくる少女を罰するように、嵐士の長い指がやわらかな肌にギュっと食い込んだ。
白い皮膚に赤い痕が浮かび上がる。
「何カップあるのかなァ?このイヤらしい胸は……」
彼は口角をつり上げると、顔を落としてその淡く色づく先端に吸い付いた。
弾力のある胸が、戦慄にふるりと揺れる。
「フーン……もしかして、答えない、つもり?」
いらついた声と共に、触れるもの全て八つ裂きにせずにはいられない、破壊神のような表情が嵐士の顔に浮かんだ。
だがその恐ろしい形相は額に落ちかかった髪に隠され、めぐみの位置から見ることができない。
執拗に迫ってくる湿った唇から少しでも逃れようと捩っていた少女の身体が、衝撃に動きを止めた。
「――――!」
刺激に尖った乳首をキツク噛んだ嵐士は、瞬間的に粟立っためぐみの肌に彼女の動揺を知る。
何て期待通りの反応を返してくれるのだろう、この愚かな人形は。
嵐士は漏れ出しそうになる嗤い声を堪えて、うっすらと歯形のついた赤い突起を指でつまんだ。
「早く答えた方がイイと思うよ」
でなければ、何をするかワカラナイ。
どんなに手ひどく扱っても服従しようとしない、彼の手を拒み続ける少女の態度に、
虚勢を張っているのだと分かっていながら、嵐士は苛立つ心を押さえることが出来なかった。
強情なイトコに向かってこの上なく優しい笑みを浮かべなからも、彼は奥歯をギリと噛みしめた。
「ねぇ……?」
嵐士の爪が乳首の上に付いた痕を引っ掻いた。
「……ウ」
めぐみが出した、のどの奥から絞り出したような声は酷く掠れていた。
もし彼女の手が自由だったなら、絞め殺されていただろう。
強い憎しみの宿った瞳ににらみ付けられ、全身の産毛がちりちりと逆立った。
「なに?……聞こえないなぁ」
だがそれすら愉しむように、嵐士は心の中で大きく舌なめずりをした。
声に押し殺しきれなかった愉悦が滲み出る。
「そー……だヨ」
彼の視線を避けるようにのろのろと顔を背けると、全身を怒りの炎で包みながら、
めぐみはついに肯定の言葉を口にした。
そして。
その声を耳にした瞬間。
嵐士の身体に耐え難いほどの欲求が込み上がった。
ついにこのナマイキな少女を屈服させたのだ。という勝利感が、そのまま下半身の肉欲と直結し、
ズボンの中で激しく起ち上がったものが、柔らかな肉体を求めて狂ったように布地を押す。
(……!)
嵐士は心の中で大きくうめき声を上げた。
もう一時も待てない。めぐみの中に押し入れたい、めちゃくちゃにしたい。
荒々しい本能に突き動かされるまま、少女の下着を引きちぎるようにして下ろすと、嵐士は自らを解放した。
空気にさらされ、天に向かって反り上がったソレは勢いづいたように更にその堅さを増す。
彼は両手で大きく少女の足を押し開くと、ピタリとその根本に自身を突きつけた。
「ヒッ……」
性の入り口に嵐士の欲望を押しつけられて、めぐみは怯えたように声を漏らした。
だがすぐに本能的な自衛反応からか、全身を激しくくねらせて、凶悪なまでに強ばったソレから逃れようとする。
ドアノブとベルトの金属部分が擦れて、ガチャガチャと耳障りな音を立てた。
「ヤッやだ……ヤメロ!やめてよ」
身を捩って侵入を拒む少女に、嵐士はイラだった。
「うるさい、黙れ……」
嵐士の発した低く、凍り付きそうなほど冷たい声に、華奢な身体がびくっと跳ねた。
そのまま涙を浮かべた瞳で嵐士の表情を伺うと、首を絞められたときのことを思い出したのか、身体の動きを止める。
すかさず、嵐士はその僅かな裂け目にぐっと腰を推し進めた。
「やぁぁぁぁぁぁッ!」
ズチッという音と共に、嵐士の先端がめぐみの身体に潜り込んだ。
少女の拒絶とは裏腹に、その柔らかな秘密の部分は彼を締めつけ、駆り立てた。
なにも考えられない。
そのまま奥まで刺し貫こうと、狂ったように腰をグイグイ力任せに押しつける。
が、途中で引っかかりを感じて、嵐士はピタリとその動きを止めた。
その顔には、まるで何かに酔ったかのようなうっとりとした笑みが浮かんでいた。
「それ以上、来ないで」
だがめぐみは自分のことに精一杯で、嵐士の様子にも全く気づかなかった。
動きが止まったことに安堵して、すぐさま拒絶の言葉を唇に載せる。
自分の言葉がまだイトコに届くことを、どこかでまだ信じていたのだろう。
しかし、全身を震わせながらの強気の発言にも、嵐士の狂気じみた異様な笑顔は壊れなかった。
「どうしようかなぁ」
やはりめぐみは未だ処女だったのだ。
入り口付近で浅い侵入を繰り返しながら、嵐士は形容しがたい満足感に嗤った。
「お願い、なんでもするから……」
ここで威張ってもしょうがない、とばかりに少女はイトコにへりくだって見せた。
彼の押し入った部分が痛むのだろう、泣きながらめぐみは懇願の瞳を嵐士に向ける。
「へぇ……何でも?」
嵐士はその言葉の響きをゆっくりと味わうように舌の上に乗せた。
考えるような言葉に、めぐみの顔がぱっと明るくなる。
「うん」
こくこくと頷く。
その拍子に、目元に溜まっていた涙が、ぽろりと頬に落ちる。
下半身に男の欲望を受け入れているというのに、どこかあどけない仕草だった。
「じゃあ、あの約束。守ってもらおうかな?」
「ヤクソク?」
この場に全く相応しくない、何も知らない無邪気な子供のような瞳が嵐士の顔を見上げた。
背筋にゾクリと快感が駆け抜ける。
まだこの少女は自分を信頼しているのだろうか。これだけ手ひどく扱われても。
焼き殺されかねないような激しい視線で見たかと思うと、次の瞬間には、縋るような瞳を向けるめぐみに、
嵐士は例えようもないほどの狂喜を覚えた。
どこまでもいたぶり甲斐のある玩具だ。
「そう。言ったよね、めぐみ。『他に好きな人できなかったら、あらしの彼女になってあげる!』って」
堪えきれずに、嵐士は顎を伝う涙の滴をその熱い舌で舐めた。
塩辛いはずのそれは、まるでハニーシロップのように酷く甘ったるく感じられた。
「でもっ……ソレはっっっ」
「それは?」
冷え冷えとしたものが宿る瞳で至近距離から見つめられて、めぐみは反論する言葉を失ったようだった。
力なく、頭を振る。
「なんでもない。だから、早くそれヌいて……」
「わかったヨ」
嵐士はやさしささえ感じる声で、甘く約束した。
少女の顔が希望に輝く。自分の言葉がついに彼に通じたのだと信じて――ここまでされているのに、まだ。
嵐士はまるで、とらわれの姫を助けに来た王子のように、やさしい笑顔を見せた。
柔らかな微笑みに、緊張が色濃く滲んでいた少女の頬が安堵に弛んだ。
その瞬間。
「……なんて言うとでも思った?」
嵐士の顔が嘲笑に歪んだ。
邪悪な笑みを唇に浮かべ、王子は一瞬で悪い魔法使いに変身する。
だが彼の愚鈍で無神経で……かわいいイトコは、暫く何を言われたのか分からなかったのか、惚けたようにぽかんと口を開けた。
突き抜けるような爽快感が全身を包む。なんて愉快なのだろう。
こんなに嗤ったのは久しぶりだ。
ぐねぐねと身を捩る青虫を捕まえて、溺れ死ぬまで何度も何度も繰り返し水たまりに入れた、初夏の日。
美しい蝶になり損ねたあのちっぽけなカタマリはどうしただろう。
道にうち捨てておいたから、そのまま車にでもひかれてしまったかもしれない。
だが、めぐみなら……。
嵐士はニヤリと唇を歪めて笑った。
考えれば、あの時からめぐみも自分の手に堕ちる運命だったのかもしれない。
だって、自分がこんなに奇麗な玩具を放っておける訳が無いのだから。
いたぶってなぶり倒して、そして壊してしまうまで。
「クハハ……ッ」
自分の発想に、嵐士は頭を仰け反らせて大きく笑った。
そして未だ呆然としている少女の細い腰を掴むと、一気に狭いくて熱い坑内に進んだ。
ズブズブズブッ。
体内を二分するかのような強い圧迫に、めぐみの処女膜がめりめりと音を立てて破れた。
「ひぎゃぁあぁああああ」
裂かれるような破瓜の痛みに、少女が高く叫ぶ。
「ほんとにバカだな」
軽薄そうに吐き捨てると、嵐士は青虫の内側からその身を食べ尽くす蜂の子のように、めぐみの中を縦横無尽に動いた。
「イッ……ああっ…イタイっ、ヤメ…!」
内蔵を突き破るかのような勢いに、めぐみはただ涙を流すことしかできないようだった。
嵐士を受け入れた小さな膣からは、いつしか純白の証であった赤い血が流れていた。
「あれ、初めてだったの?」
本当は知っていたというのに、彼は嘲るようにめぐみに向かって囁いた。
身体を揺さぶられるままだった少女の瞳が、一瞬辛そうに歪む。
失ってしまったバージンを悲しんでいるのだろうか。楽しくて仕方がない。
ついにめぐみの処女を奪ったのだ。
という征服感が圧倒的な存在となって自らの胸に去来する。
嵐士の顔に、赤子のように無垢な笑顔が浮かんだ。
「フフ……ウレシイな」
その言葉どおり、めぐみの胎内に打ち付けられた、嵐士の杭が大きさを増した。
やわらかなめぐみのカラダに歯を突き立てて噛みついたら。
どんなに甘くおいしいだろう。
嵐士は自分の空想に舌なめずりをした。
全部残さず喰べてやるのに。
にらみ付けてくる瞳も。
文句を紡ぐ唇も。
生意気な、手も、足も。
すべて全てスベテ。
自分の血肉にしてやる。
あの青虫のように、捨ててなんてやらない。
<<続く>>