『小悪魔と死神』
「ぶっちゃけ、むかつくんだよね。」
放課後あたしを演劇部室に呼び出したときわづが、
細い目を吊り上げてあたしに言った。
「まっつんが君なんかを可愛がってるのを見ると、なんかむかつくんだよね。」
「はぁ?あんたに関係ないでしょ!!むかつかれる筋合いない!!」
こんなふざけた男に負けるはずないと思ってた。
自分の身は自分で守りなさいと、ママに言われて子供の頃に護身術として空手や合気を習わされた。
実際、そのへんの男や変質者に力で押さえ込まれたことなんかない。
たいていの男は優しく迫ってくるし、そうでないときは蹴り1発でだいたい追い払えた。
でも今あたしは、こんな細身の男に
腕をねじりあげられ
犬みたいに這いつくばらされて、
放課後の教室で
服を着けたまま後ろから無理矢理に犯されている。
「いやぁー、もうヤダぁーやめて……!!」
政宗先輩にだって、生で挿入されたことない。
ママがコンドームつけない男とは絶対にやっちゃ駄目って言うから。
あたしのお願いは、たいてい先輩きいてくれるから。
「男がみんな君に優しいとは限らないんだよ。」
顔色ひとつ変えずに、ときわづがあたしのナカに自分をぶちこむ。
こんな固くて冷たい床の上でセックスしたことない。
柔らかくていい匂いのするベッドの上か、
空手部部室に置いてあるマットの上か、
校内の隅でこっそりやるときだって、
政宗先輩はあたしの身体が固い床に触れないような体勢で
気を使って愛してくれた。
あたしの身体が欲しいわけじゃない、あたしの裸を見たいわけじゃない、
純粋に屈辱や苦痛を与えたいだけのセックス。
傷つけたいだけのセックス。
屈服させる手段としてのセックス。
「ナカに出していいよね?」
イヤとは言わせない冷たい声が、あたしを泣かせた。
男に犯されながら、泣くのは初めて。
どぷっと熱い液体が、あたしのナカで爆ぜた。
ときわづじろー。
中学時代のあだ名は「死神ときわづ」
そんなの知ってたらケンカなんか売らなかったのに。