「わ、すごい数の台本ですねー。全部部長が書いたんですか?」
「そうさ。全て僕のオリジナルだよ。」
「すごいですね」
部活が終わり、香織と常磐津は部室に残り雑談をしていた。
机の上には数十冊の台本が置かれている。
全て常磐津オリジナルの物語らしい。
「あ、この劇はもっと部員が入ったらやりたいです!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
ふと香織の目にピンク色の台本が目に入った。
他の台本は全て普通の紙で出来上がっている為、その台本は異彩を放っていた。
その台本を手に取り、タイトルを読んだ香織はみるみる顔が真っ赤になった。
「……部長…これは…」
「ああ、それは是非まっつんと藤原くんでやって欲しい劇なんだ。」
「……いや、でも…」
その台本のタイトルは
『鬼畜ロミオに淫乱ジュリエット(※R-18』
と書かれていた。
「大丈夫さ。彼らは人前でもイチャついているし!」
「そういう問題じゃないと思いますっ!」
(部長って、やっぱりよくわからない…)
ペラリと適当に台本をめくると、そこには香織の知らない世界が書かれていた。
めぐみから話を聞いたり、めぐみと政宗の情事をほんの少し見たりと全く無知ではない香織だったが、
まるで官能小説の様な台本は刺激が強過ぎた。
「立花くん、顔真っ赤だよ。」
「わ、私帰りますっ!さよならっ」
バシッと台本を閉じ、一目散にドアへ向かった香織。
しかし香織の細い腕を常磐津ががっしりと掴んでいた。
「練習してみようか、僕と君で」
にっこり笑う常磐津の片手にはピンクの台本が。
「い、い、いいです!結構ですっ!」
「ははっ、人生何事も経験だよ、立花くん!」
「ほんとにいいです!私演技下手だし…脇役で十分ですから!」
「あはは、大人にしてあげるよ!」
「子供のままでいいですー!」
香織の必死の抵抗も空しく、部長直々の放課後特訓が始まった。