二度目のキスは激しさを増していた。一度目の経験を活かして、今度は冴子の方から積極的に口と舌を  
動かしていく。躊躇う事なく孝の口内に侵入した冴子の舌がまるで舌自体に意思があるかのようにあちこ  
ちと動き回り、彼の歯茎や歯の裏、頬、上顎を刺激すると、驚いたのか気持ち良かったのか、彼は女のよ  
うにビクッと身体を震わせた。彼もまた舌を伸ばして彼女の口内に侵入しようとするのだが、彼女の激し  
い舌使いによってそれは妨げられてしまう。彼にできた事はせいぜい互いの舌を絡ませるだけだった。  
 キスしている間にも二人の手は盛んに動いている。孝は両手で冴子の乳房を揉みしだき、冴子は片方の  
手は床に着いて身体を支えており、もう片方の手で彼の逸物を優しく握り締めて上下に擦っていた。口内  
とはまた違う、逸物が徐々に太く、硬くなっていく手に伝わる感触が新鮮だった。  
 傍から見ていると冴子が主導権を握っているように見える。否、実際そうだった。最初にその気になっ  
たのは彼だったが、今の彼女はもう自分で自分が抑えられない程に身体を疼かせていたのだ。また、一度  
絶頂を迎えた彼とまだ迎えていない彼女ではポテンシャルも違った。  
 このまま冴子に主導権を渡したままでも、別にいいかな――孝は甘い口付けに酔いながらふとそんな考  
えを巡らせる。  
 年上の綺麗なお姉さんに犯される、というシチュエーションは多くの思春期の少年にとっての夢だ。そ  
れが今叶おうとしているのに、抗う必要などあるのだろうか。相手は年上のお姉さんとしての役者は十二  
分に足りており、逆に文句の付け所がない程だ。何より、彼の身体はそれを求めている。意志に反して身  
体がそうなっているのであれば、もうどうしようもなかった。  
 キスを交わしながら、ふと孝は目を開けて冴子の顔を見た。彼女は目を閉じているという彼の予想に反  
して、とろんと蕩けるような彼女の目と目が合う。  
 その目が言っている。安心して私に身を委ねてくれ――と。  
「ん……ふっ、ちゅぅ……んふぅ……んっ……じゅぷっ、ずちゅっ――……っ、ぷふぅ」  
 やがて冴子が孝の唇から離れた頃には、彼の身体はそのまま床に押し倒されていた。熱い彼女の吐息を  
口内に感じていたせいか、冴子が優しくそうしたせいかは分からないが、彼は口付けが一旦の終わりを迎  
えるまで床に仰向けになっている事に気付かなかった。床に頭を付けたままの孝の視界に、徐々に遠くな  
っていく冴子の顔が見える。だが、決して視界から消える事はない。  
 不意にずっと孝の逸物を擦っていた冴子の手の感触が消えると同時に、別の感触が彼の腿に伝わる。少  
し重みのある大きなマシュマロを乗せたような感触だ。冴子が彼の身体を跨いで座っているのだ。マシュ  
マロかと思われた部分は当然、彼女の引き締まったお尻だった。首を持ち上げて彼女の姿を見ようとする  
孝だったが、二つの大きな乳房はともかくとして、その位置からでは自らの逸物が邪魔して彼女の秘裂を  
拝む事はできなかった。  
 両膝を床に着き、両手を彼の顔のすぐ傍に着いて上半身を支える冴子は、孝の顔にもう一度その唇を近  
付ける。だが、それは何に触れる事もなく、彼の耳元で小さく動くだけだった。  
「……挿れるよ、孝」  
 
 一度だけ頷けば良いものの、孝は興奮してか何度も大きく首を縦に振った。フッと小さく笑みを溢す冴  
子だが、その表情からはすぐに笑みが消えていき、代わりに眉間に皺を寄せて徐々に込み上がる快楽に身  
を委ね始める。  
 冴子は大きくお尻を持ち上げて一歩ほど前へと身体を移動させると、ゆっくり、ゆっくりと腰を下ろし  
ていく。左手は孝の顔の横に着いたままで、右手は再び彼の完全に勃起状態に戻った逸物に触れていた。  
逸物の位置と向きを定めようとしているのだ。ある程度腰を下ろしたところでようやく亀頭が秘裂に触  
れ、にゅるりとその割れ目に沿って滑る。  
「ふあ……っ!」  
 その弾みで亀頭が淫核に触れて、冴子は一瞬だけ迸る電流のような衝撃に思わず甘い声を漏らした。背  
中を仰け反らせる彼女だったが、そんな事では孝をリードする事などできやしない。彼女もそれを自覚し  
て、小さく深呼吸をした後でもう一度挑戦する。  
 孝の顔をそっと見つめながら、自分の秘裂の内側にある小さな口の位置をイメージして、彼の亀頭を手  
で操る。ローターやバイブで自慰行為をするかのように彼の肉棒で秘裂を擦る事数秒、彼女はようやく入  
口である膣口に辿り着いた。逸物の位置と向きを固定し、荒くなる吐息を抑えながら腰を下ろす。  
 ぬちゃ、と音を立てて亀頭が膣口を押し開いたところで、彼女は長い息を吐きながら一気に孝の逸物を  
口の中に咥え込んだ。  
「んはぁぁぁ……っ! くはぁ……っ、はぁっ、はぁ……っ!!」  
「さ、冴子……ちょっと待ってくれっ、気持ち良過ぎる! 冴子の中、暖かくてぬるぬるしてて柔らかく  
て……っ、さっき後ろから挿れた時とはまた違う気持ち良さだっ!!」  
 女性器はまるで生き物のように動き、当人の意志によって形状を変える。包み込んでいる肉棒を強く挟  
んだり舐めるように優しく挟んだりと収縮を繰り返す。冴子が意識して膣壁を動かしている訳ではないの  
だが、孝を気持ち良くしてやろうという意志がそうさせている。否、それは当たらずとも遠からずと言っ  
たところかもしれない。その気持ちも含まれているだろうが、大部分を占めているのが自分が快楽を得た  
いという強い気持ちだ。  
 子宮口を突かれた衝撃の余韻を愉しんだ後、冴子はゆっくりと腰を上下に動かし始める。  
「あっ、んっ、あんっ、んふぅ……っ! 気持ち良いか、孝……?」  
「よっ、良過ぎます! ちょ、ちょっとマズいってっ!! 激し過ぎぃっ!!」  
 孝が何を言っても冴子の腰の動きが止まる事はない。彼が動かない事を良い事に、腰を打ち付けるパ  
ン、パンという音を何度も響かせる。自らの肉棒が幾度となく冴子の中に出入りするその様を見たい孝だ  
ったが、彼の頭は床に着いたまま持ち上げる事さえできなかった。射精感を必死に堪えながら、その目に  
映るのは白い天井と視界の端の方で激しく動く彼女の上半身だけだ。彼女の腰の動きに合わせて上下に激  
しく揺れる二つの乳房もまた、彼の胸を昂らせる立派な一因だった。  
 ポタ、ポタと冴子の頬を伝う汗が孝の胸に弾ける。彼女の動きは汗を掻く程の激しいものだ。春先で夜  
とあれば多少は冷え込むのに対し、彼女は全裸だったが身体は燃えるような熱を発していた。上昇してい  
く体温はその身体の動きを止めない限り冷める事はなく、そして彼女自身動きを止めるという考えはまだ  
持ち合わせていなかった。  
 やがて上下に動くのを止めて腰を落として肉棒をずっぽりと咥え込んだまま、腰を前後左右に降り始め  
る。かと思いきや円を描くようにグラインドさせ、膣壁の至るところにぶつかる亀頭の感触を愉しみ始めた。  
 
「ふぁあっ、ふっ、んふっ、あっ、ぁぁあっ、はぁんっ!」  
「くっ……うっ、ん……っ!」  
 冴子の甲高く響く嬌声に孝の小さな呻き声が掻き消される。  
 ふふっ、必死に我慢している孝の顔も何だか可愛いな――冴子はそう思いながら、上半身を彼に向かっ  
て倒すと、両手で彼の頬にそっと触れて顔を自分の方に向かせてそのまま口付けをする。たぷんと垂れた  
乳房が彼女の身体に押されるようにして孝の胸に密着し、その整った形状はいやらしく変形した。硬くな  
った乳首は彼女が意図してかいまいか、彼の乳首と擦れていた。冴子の鼻から嬌声が混じった吐息が漏れる。  
 孝は孝で、ただ犯されるだけが嫌になったのか、床にだらんと垂らしたままだった両腕を持ち上げて冴  
子のお尻へと持っていくと、たわわな尻肉を揉みしだき始める。両手に付着する水分は紛れもなく彼女の  
汗だが、それが汚いとは露にも思わない。  
 ちょっとした悪戯のつもりか、孝は両手で左右の尻肉を掴んで押し広げた。冴子の後ろ姿が彼からは見  
えないのが残念だったが、押し広げられたお尻の割れ目からは小さな菊座と彼の肉棒を咥え込む秘裂がは  
っきりと見えるようになる。時折ヒクヒクと収縮する菊座もまたいやらしい。  
 自分の姿を後ろから見たらどうなっているか想像もできない冴子だったが、菊座に伝わる冷たい空気の  
感覚に彼女は恥ずかしそうに眉を顰め、少しの間口付けを交わしていた唇を離した。  
「ぷはぁ……っ、孝ぃ、恥ずかしいよ……ぉっ! お尻の穴、広げないで……くれぇ……っ!!」  
「だ、だって……僕だって冴子を辱めたい、から……」  
「……もぅ――……あむっ、んちゅっ、ちゅぱ、ちゅるるっ、んっ、じゅじゅるっ……んっ、んんーっ!?」  
 再び口付けを交わして舌と舌を絡ませる冴子。だが、菊座に何かが触れる突然の感覚に軽くだが大きく  
鼻息を漏らしながら彼の舌を歯で噛んでしまった。孝の右手の人差指が彼女の菊座に触れたのだ。触れた  
だけならまだしも、指に力を入れて菊座の中に侵入しようと試みる。心地悪さよりも先に羞恥心が冴子に  
込み上げてきて、彼女は口付けを交わしたまま、きゅっと菊座に力を入れて異物の侵入を拒む。排泄のた  
めの不浄の穴など、決して他人には触れられたくないものだ。それでも孝は敢えて指に力を込める。  
「〜〜〜〜っ、ひぁあっ!!? お、お尻の穴はやめてくれっ!! ふあっ、あっ、んぁぁああっ!!」  
「冴子……恥ずかしがる冴子も可愛いよ……っ! っくぅ、うあ……っ!」  
 菊座を責められながらも冴子の腰の動きはそれでも止まらない。孝の射精感は限界を迎えていた。彼女  
の菊座をいじり始めたのもそれを紛らわす意味も多少は含まれているのだ。だがそれもさほどの意味は成  
さず、我慢している度合を表しているかのように冴子のお尻に触れる手に力が入る。  
「さっ、冴子! もうダメだっ、また出る……っ!!」  
「はぁっ、まだ……まだだよ孝っ! んっ、ふぅっ、私はまだ――……っ!!?」  
 だが、冴子の動きが突如として止まり、とある一点に視線を釘付けにする。  
 孝も時同じくして、目を丸くして彼女と同じ方向を見た。限界を迎えようとした彼の逸物は、彼女の中  
で静かに縮こまり始める。  
 台所の入口。  
 そこに、顔を真っ赤にした麗が立っていた。  
 
 顔面の血の気が引いていく孝。性交渉をしている姿を第三者に見られる事ほど恥ずかしく、気まずい事  
はない。案の定、彼の頭の中が別の意味で真っ白になり、言い訳などできないようないわば現行犯だとい  
うのに、様々な思考を脳裏に巡らせる。だがそれは決してまとまる事はなく、幾度となくパクパクと開閉  
を繰り返す口から漏れるのは言葉ではなく小さな吐息だけだった。  
 時間が止まったかのような誰もが動きを止めた台所の空間の中で、蒼白した表情になったのは孝だけだ  
った。冴子は口元に妖しげな笑みを浮かべながら、まるで負け犬でも見ているかのような蔑んだ眼差しを  
麗に向ける。  
「おや……っく、ふぅ……っ、宮本、君……はぁっ、どうしたのだ……っ?」  
 彼女の膣内で縮こまっていく孝の肉棒、それを決して離さないようにきゅっと膣に力を入れて締め付け  
ると、肉棒は再び鎌首を持ち上げて硬度を戻していく。膣内で肉棒が大きくなる感覚に酔い痴れながら麗  
に言葉に発したものだから、言葉の合間合間に嬌声が入り混じっていた。  
「……っ、孝……どういう事?」  
 麗は冴子から視線を逸らし、代わりに床で仰向けになっている孝に向ける。  
「麗……これは、その――……んむぅっ!?」  
 彼女の問い掛けに答えようとした孝だが、それは冴子によって遮られた。冴子の細くて繊細な二本の指  
が彼の口にそっと挿れられたのだ。人差し指と中指に伝わる孝の口内の温もりと絡められる舌の温もり。  
ただ孝の言葉を紡ぐだけのつもりだったのだが、どうやらこの行為でも彼は興奮するらしく、麗の存在を  
忘れたかのようにその指を舐めたり吸ったりし始める。  
 冴子は膣内で更に膨らみを増す肉棒と指の温かい感触に小さな吐息を漏らした後、再び麗に向かって口  
を開いた。  
「見て分からないのか? 私と孝は今、愛し合っているのだ……邪魔しないで頂きたいものだな」  
「私の孝を奪っておいてどの口が言うのよっ!!」  
 麗の言葉は支離滅裂だった。彼女が孝と恋人同士であれば頷けるが、そうではない。彼女は彼が自分に  
好意を寄せている事を知っていた上で、別の男と付き合っていたのだ。それから導かれる結論はただ一  
つ、麗は孝の事を何とも思っていないという事だった。  
 麗の恋人である井豪永が“奴ら”と化して死んでから、まだ半日も経過していない。その後二人の関係  
が急展開を迎えたとしても、彼女がそう言い張るのは不自然過ぎる。自らが尻の軽い女であると暴露して  
いるようなものだ。  
「私が……私が一番孝を気持ち良くできるんだから……っ!」  
 麗の発言と行動によって、突如として三人の状況も急展開を迎える事となった。孝が期待に満ちた目  
で、冴子が冷たい目で見守る中、彼女は着ていたTシャツとホットパンツを脱ぎ捨てたのだ。露になる麗  
の裸体もまた、冴子に負けず劣らず美しいものだった。シャツを脱いだ拍子に、冴子のものとは一回りほ  
ど違う大きさの乳房がぷるるんと揺れる。それを見ているだけで孝の口内に生唾が溢れ、ゴクリと音を立  
てて喉の奥へ運ばれていく。  
 麗が身体を移動させると、真っ直ぐに天井へと向いていた孝の視界が肌色とピンク色に包まれた。彼の  
頭を跨いで真上に立ったのだ。ピンク色の秘裂はそこから見ても分かる通りにぐっしょりと濡れており、  
彼女が自ら二本の指でそれを押し広げると、膣口から溢れた淫液がポタッと彼の頬に弾けた。  
 そして、立っている位置をそのままに、麗はゆっくりと腰を下ろした。  
 
「――んぶっ!?」  
 冴子の指から孝の口が開放された刹那、今度は麗の女の臭いを放つ秘裂に圧迫される。俗に言う“顔面  
騎乗位”だ。麗は膝を付いてある程度の体重を床に逃がしてはいるが、半分以上は孝の顔に上に掛けるよ  
うにしていた。孝は逃げるにも逃げられず、基より男なら誰でも夢を見るような“ありえない状況”に歓  
喜するのも束の間、口を丸々塞がれているため上手く呼吸ができずに苦しそうに蠢く。それでも何とか気  
道を確保すると、目の前の彼女の菊座を眺めながら唇の上のヌルヌルした割れ目に舌を伸ばした。  
「あぁっ、んっ……んふぁ……っ、ど、どう、孝ぃ……私のおまんこの味は……っ!?」  
 問い掛けられても口を塞がれていては答えられず筈もなく、孝は代わりに舌を激しく動かして応える。  
大量の水を含んだスポンジのように、彼が舌を動かす度にピュ、ピュッと膣口から透明の淫液が飛び出  
す。どろりとした粘着質な液体ではなく、尿のような液体だ。だがそれは決して尿ではない事は彼の舌に  
伝わる味から明らかだった。  
 麗の乱入により不服そうな表情を浮かべる冴子は、孝に当て付けのようにきゅん、と膣に力を入れて彼  
の肉棒をきつく締め付け、彼の身体の上で前後に腰を振りながら、彼の腹部に置いていた両手を彼の乳首  
へと移動させた。人差し指と親指で二つの乳頭を摘んで刺激すると、彼の口から「んんっ!」という喘ぎ  
が漏れて反応を見せる。自分の唾液が付着した指で乳頭に触れられるのは奇妙な感覚だった。  
 孝の細かな反応を愉しみながらも、冴子は向かいに座っている麗に鋭い眼差しで睨もうとした。だが、  
膣内でどんどん膨らみをます孝の肉棒の感覚に表情が崩れてしまい、結果として媚びるような眼差しにな  
ってしまっていた。それに気付いていながらも、冴子は冷静を装って麗に向かい口を開く。  
「何だ……あっ、はぁっ……『気持ち良くできる』などと……っ、啖呵を切っておきながら、んふっ、あっ、 
結局、自分が気持ち良くなりたいだけでは……はぁんっ、ないのか……っ?」  
「んっ、違うわよ……だって先輩が孝のおちんちんを……んはっ、独り占めしてるからぁ……っ、私は準備して待ってるのぉっ!」  
 秘裂を舐め回される快楽に酔い痴れながらも、麗はニヤリと口元に妖しげな笑みを浮かべた。  
「それともぉ――……今すぐ代わってくれる?」  
「断固として……んっ、断るよ」  
 麗の問い掛けに即答する冴子。その表情は学校で初めて会った時、「宜しく」と孝やコータに向けられ  
たものと同じ笑顔だった。拒否しながらその笑顔を作るというのは、相手にとっては嫌味にしかならず、  
麗は小さくぷくっと頬を膨らませた。  
 嫉妬心を露にしている麗のその表情は同性である冴子から見ても可愛らしい。だから冴子は半ばお預け  
状態になっている彼女に対して、まだ光沢を放つ右手の人差し指と中指をピンと立てて彼女の口元に持っ  
て来た。  
「ほら……孝の唾液がたっぷりと付着した私の指だ――……如何かな?」  
 麗は躊躇う素振りも見せなかった。  
 
「――はむっ、んっ……んちゅっ、ちゅぱっ、じゅるるる……」  
 冴子の指を身を前に乗り出して咥えた麗が、盛大に品のない音を立てながら指に付着した液体を啜り上  
げる。まるでフェラをするかのように口に含んでは吸い上げながら前後に口を動かしたり、指の横へと顔  
を動かして第二関節や付け根を舐めたりと、孝の唾液が付着しているだけだというのに恍惚とした表情を  
浮かべていた。  
 くぅっ、一体何なんだこの状況はっ! 僕は夢でも見ているのか――文字通り目と鼻の先にある麗の小  
さな菊座を見飽きた孝は一旦瞼を閉じて視界を闇色に染めながら、必死に込み上げる射精感を堪えてい  
た。今も尚冴子が前後に腰を動かしている以上、彼の肉棒に与えられる刺激は増していく一方で、鼻腔を  
擽る女の臭いと口と舌に触れる柔らかくてヌルヌルとした感触が彼をより興奮させる。  
 確かに、夢だと思いたくなるような状況だ。複数の女に自分の身体を取り合いにされるなど、男の妄想  
でしかなく、ありえない事だと彼は思っていた。  
 否、ありえない事などないのかも知れない。  
 この世界は今、ありえないと思っていた事が現実に起こっているのだから。  
 目に見えないところから聞こえる何かを舐める音に耳を澄ましながら、孝は瞼を開いた。視界に広がる  
のは先程と全く同じ景色だ。視界は麗のお尻で埋め尽くされており、その他に映るのはせいぜい天井ぐら  
いだ。  
 そんな中、孝は徐に冴子の方へと両手を伸ばし、何かを掴もうとして何度か空振りを繰り返した後、彼  
女の前後に移動するお尻を鷲掴みにした。  
「んくっ……孝……?」  
 麗の股間に埋められて顎の辺りしか見えない彼の顔に視線を落とす冴子。  
 その瞬間だった。  
「――んっはぁぁああああっ!!?」  
 孝は床に転がしていただけだった足を広げると膝を折り曲げ、両足の裏を床に着けると同時に腰を上下  
に振り始めた。腰の動きに呼応させるように鷲掴みにしている尻肉を上下に動かし、彼女の身体の動きに  
合わせる。  
 彼は自分のペースで絶頂を迎えようとしているのだ。  
 唐突に子宮口を強い力で突かれ、冴子はその不意打ちに思わず麗の口内の指に力を入れてしまう。口内  
の奥に侵入したその指は喉の奥に到達し、何か小さくて柔らかいものが触れる感触があった。麗はそれに  
驚きながらも慣れているのか咳き込む事もしなかった。引き続き冴子の指を舐めていた彼女だったが、大  
きく喘ぐ冴子の姿を見てピンと閃く。  
「んぁっ、あっ、ああっ、はぁあっ!! 孝、それ激し過ぎ……ぃっ!! 頭の中……あっ、んんっ、真っ白になっちゃうぅ……ふぁあっ!!」  
 ずぷっ、という小さな音を立て、麗は冴子の指から口を離して立ち上がる。下で彼女の股間から解放さ  
れた孝が荒っぽく呼吸する音を聞きながら、彼女は冴子の後ろへと回った。その位置からははっきりと孝  
の肉棒が冴子の膣口を出入りする様子が見える。  
 へぇ、後ろから見るとこんな感じになってるんだ――麗はそんな事を思いながら、冴子の背後からゆさ  
ゆさと揺れる彼女の両胸を力強く握り締めた。  
 
 麗が閃いた事は単純明快だ。冴子が早く絶頂を迎えれば、その早さの分だけ自分の出番が回ってくるの  
が早くなる。  
 だから、麗は手伝う事にしたのだ。  
「んぁあっ! はぁっ、んくっ、んっ、ああっ!! みっ、宮――……ふぁあっ! そんなに激しく……  
っ、揉まないでくれぇ……っ!!」  
「んっふふふ……やっぱり胸は私の方がおっきぃ〜」  
 冴子の胸を揉みながら、その大きさを改めて確認する麗。女同士で風呂に入った際、麗は痴女のように  
振る舞い、全員の胸を揉みしだいていたのだ。大きさの順番で並べると、静香、沙耶、麗、冴子となる。  
とは言えこの中で一番小さな冴子でもDカップあり、揉み心地を愉しむには充分な大きさだ。  
 胸の大きさで優劣を付けたがる浅はかな麗を嘲笑したい冴子だったが、胸と膣を同時に責められるとそ  
んな余裕など消え失せる。彼女の口から漏れるのはただ甘い吐息だけだ。  
 だが、これはまだ序の口に過ぎなかった。  
「麗……耳だ」  
「〜〜っ!?」  
 孝の突然の裏切りとも呼べる言葉に、冴子は言葉にならない声を上げる。彼は冴子に言ったように、彼  
女を辱めたいのだ。弱点を告げ口した自分を睨み付けようとする冴子を尻目に、孝はニィッと笑顔を作っ  
て返す。  
「えっへへへ〜……頂きます、先輩! あむっ♪」  
「ひぁあっ!!?」  
 麗の小さく開かれた口が冴子の耳朶を咥え込んだ。美味しそうに頬張る彼女は両手を胸から離し、右手  
を冴子の前へ、そして左手を後ろへと移動させる。麗の手が狙いを定めたのは二点。一点は秘裂の上部に  
ある小さな突起――淫核と、もう一点は菊座だ。それと同時に孝も両手を動かし、空きになった胸に手を  
伸ばした。  
「麗、同時に始めようか……せーのっ!」  
 孝の掛け声を合図に、彼は冴子の乳房を揉みながら器用に指を動かして乳首を指の間に挟んだ。乳頭を  
転がすようにして刺激を与える。麗も同様で右手の指を包み込むように冴子の淫核に触れた。円を描くよ  
うにして指を動かしていく。左手の指先はちょん、ちょんと菊座に触れるだけだったが、やがて指先に力  
を入れて侵入を果たした。冴子は菊座を急激に締め付けて異物を吐き出そうとする。だが、一度入ってし  
まえば後は楽だった。麗は完全に指が抜けてしまわないようにだけ注意しながら、ピストン運動を始める。  
「んはぁぁああっ!! んあっ! はぁっ! あっ! あっ! あぁあああっ!!」  
 女体の敏感な箇所を同時に責められる冴子に与えられる快楽は想像を絶するものだった。  
 膣壁を肉棒で抉られる感覚。淫核を捏ねられる感覚。腸内を掻き回される感覚。乳房を揉みしだかれる  
感覚。耳朶を舐め回される感覚。  
 それら全てが同時に冴子を襲う。  
 何も考えられなくなる。頭の中が真っ白になる。  
 冴子はもう、得も言われぬ快感に、完全に堕落してしまっていた。  
「しゅごい! しゅご過ぎぃっ! おまんこもおっぱいもお尻もぉ! 気持ち良過ぎぃっ!! ああっ!  
 あふっ! んはっ! ぁあっ!!」  
 
 自我を失っている、という訳ではないのだが、冴子の顔はもう冴子ではなかった。今まで誰にも見せた  
事がないような顔をしている。何処か品を漂わせるその顔付きは何処へやら、口の端から涎を垂らし、目  
をとろんとさせて喘ぐその顔はまるで漫画やアニメで見る“アヘ顔”そのものだ。物欲しそうに口からち  
ょこんと顔を出す舌は、生憎孝と麗の手はどちらも塞がれているため、結局何に触れる事もない。  
 冴子は自ら腰を上下に振るようになると、孝もそれに合わせて腰を動かしていく。  
 ――パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!  
 その度に冴子の柔らかな尻肉が波打つ。彼女の汗と唾液が小さな礫となって飛び散る。込み上げる快感  
が彼女を限界へと迎えさせる。  
「い……っ! イキそうっ!! 来るぅっ、何かしゅごいのが来るぅぅぅっ!!」  
「僕ももう……っ、もうっ!!」  
 射精感をずっと我慢していた孝だったが、彼女と同じく限界を迎えていた。彼女の膣内にある肉棒を外  
へ出すタイミングを図り始める。最初の挿入時は中に出してしまった彼は、もう二度と同じ失敗は踏むま  
いと思っていた。今後の事を考えると、今この場で妊娠させてしまう恐れある行為はこれ以上避けたかっ  
たのだ。  
 冴子の尻肉を再び鷲掴みにする孝。射精する瞬間に身体ごと持ち上げて肉棒を引き抜く算段だ。  
 だが、冴子がそれを許さない。  
「らめぇっ、らめらめらめぇぇぇっ!! 中に出してぇっ!! 孝の熱い精液でぇっ、私を満たしてぇぇぇっ!!」  
 うわぁ〜、先輩が先輩じゃなくなってる。でも、男の子ってこういうギャップが萌えるんだよね。孝、  
必死に腰動かしてるし息荒いし……私も普段はクールビューティ気取ってみようかなぁ――と麗は冴子の  
豹変ぶりに目を丸くしながらも、もうすぐ自分の番が回ってくる事に心躍らせた。彼に秘裂を舐めさせた  
事も相俟って、彼女はいつでも肉棒を受け入れられる準備が整っていた。その証拠に次から次へと麗の膣  
口から溢れる淫液が床に垂れて小さな水溜りを形成している。  
 そして、その時が来た。  
「――イクぅっ! イクイクイクイクぅぅぅっ、イっちゃうぅぅぅぅぅっ!!!」  
 ビクン、と冴子の身体が跳ねる。ぎゅっと締め付けられる膣壁はまるで孝の肉棒から精液を搾り出そう  
としているようで、そして彼もそれに委ねて怒号を解き放つ。亀頭から飛び出す孝の熱い精液は、二度目  
の射精だというのに量は最初に放たれたものより多かった。膣内に入り切らなかった精液が、膣口と肉棒  
の僅かな隙間から溢れ、白濁色が彼の陰毛を濡らしていく。  
「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ! 熱いぃ……孝の精液熱い、よぉ……お腹が一杯ぃ……っ!」  
 絶頂を迎えた冴子は全身を細かく痙攣させていたが、やがてぐったりと脱力して孝の身体の上に圧し掛  
かるようにして余韻を愉しんでいた。  
 キラン、と目を妖しく輝かせる麗は、冴子に充分な余韻を愉しませる時間すら与えない。  
「よっこいしょ、っと」  
「あふん……っ」  
 冴子の身体を後ろから横へ押し倒すと、肉棒から解放された彼女の膣口からどろりと白濁色が垂れる。  
彼女は床にうつ伏せに突っ伏したまま、荒々しく呼吸を繰り返すだけで、動こうとする気配も見えない。  
彼女の淫液と自らの精液が付着して光沢を放つ肉棒の方は案の定、まだ太さを保ったままだが柔らかくな  
り掛けている。  
 ぐったりとしているのは孝も同じだった。短時間で二回も射精する事は体力を著しく消耗してしまうと  
ともに、これ以上は本当に彼の逸物も悲鳴を上げていた。  
 だがそれでも、男のそうした性質を理解している上で、麗は先程の冴子のように孝の腰の上に跨った。  
 
「れ、麗! ちょっと休ませてくれよっ!」  
「何よ孝! 先輩とはエッチできて私とはできないって言うの!?」  
「そうじゃなくて……もう二回も出したんだ、時間置かないと勃たないって!」  
「勃たぬなら、勃たせてみせよう、ほにゃららら」  
 麗の様子は明らかにおかしかった。こんな訳の分からない事を言い出すなら尚更だ。  
 孝はすっかり忘れていた。麗の顔が赤い理由が、もう一つあったという事に。  
 ――この時、それを思い出してさえいれば、ある意味最悪の結末を迎えずに済んだかもしれない。  
 孝の太腿の上に一旦座った麗は、後ろについた両手と両足で身体のバランスをとると、彼の腰の上で前  
後に腰を振り始めた。ヌルヌルの秘裂に半勃起の逸物が擦れる、クチュクチュといういやらしい音が響く。  
「はぁっ、はぁっ、んはぁっ……んっふふ、気持ちいーい? 私は気持ち良いよぉ?」  
 膣口に入りそうで入らない、ただ亀頭が秘裂に触れる感覚を愉しむ麗。永にした事があるのだろうか、  
その“素股”と呼ばれる行為を行う彼女は慣れているようだった。  
 孝の逸物を勃たせるためにはフェラやパイズリなど、他の行為も考えられたのだが、麗は身体を移動さ  
せるのも億劫なのか、何分も同じように“素股”を続ける。彼の逸物も挿入時とはまた違う心地良さに耐  
え切れず、痛みを走らせながら鎌首を持ち上げ始めていた。彼の表情は苦痛に歪んでいるだけで、その表  
情からは気持ち良さなど一片の欠片も読み取れない。  
 一日に四、五回ならまだ分かる。だが、一時間で三回はどんなに健全な男でも無理がある。これでまた  
射精するようならば、どれ程孝が溜め込んでいたかが窺えるのだが、それを曝け出す事を躊躇する孝。も  
っとも、冴子と麗がどちらも名器の持ち主だった、など様々な言い訳は考えられた。当然、それも曝け出  
す事は躊躇されるのだった。  
 勃つな、俺のムスコっ! もうこれ以上はマジでキツいんだよぉぉぉ――と孝は歯を食い縛るが、無駄  
な抵抗だった。  
 やがて孝の逸物がピンと反り返るのを見て、麗は「ニヒヒッ」と笑う。  
「さぁって……私がイクまでちゃんと付き合ってよね、孝!」  
 麗は容赦がなかった。腰を持ち上げて膣口に亀頭を押し当てたかと思うと、そのまま一気に腰を落とした。  
「あぁぁぁっ!! あん……っ、孝のおちんちんってぇ、永のよりおっきぃっ!! 凄いぃっ!!」  
「くぅ……っ!」  
 肉棒を包む柔らかく暖かな感触は冴子のものとはまた違っていた。膣壁に擦れるような窮屈な感覚は一  
切なく、何に邪魔される事なくスムーズに子宮口に亀頭が到達する。だがその瞬間、麗が力を入れたの  
か、肉棒は急激に膣壁に締め付けられた。まるで離すもんか、と言っているようだ。  
「あっ、はぁっ、あっ、あ、あ、あっ、ぁああっ、んぁあっ!!」  
 孝が動くまでもなく、麗は甘い声を漏らしながら自ら腰を上下させて肉棒の出し入れを繰り返す。  
 だが、麗のお楽しみの時間は長くは続かなかった。  
 不意に、麗の動きが止まった。孝の腰の上にお尻を落としたまま、何かを堪えているかのようにぷるぷ  
ると小刻みに肩を揺らす。  
「……うっぷ」  
「え……?」  
 小さな呻き声に孝はようやく思い出した。麗が酒を呑んでいた事を。  
 とてつもなく嫌な予感が脳裏を過ぎり、助け舟を求めて冴子へと視線を向ける孝。だが冴子は彼に背を  
向けたまま、相も変わらず床の上でぐったりとしていた。  
 この状況から逃げ出そうにも、麗が真上に乗っている以上、逃げる事などできやしない。苦しげな表情  
を浮かべていた孝はその顔色を蒼白させる。  
 そして、孝の嫌な予感は的中する事となった。  
「――……うぉぇぇぇぇぇぇ……っ!」  
「うぉおあああぁぁあぁぁぁっ!!?」  
 酒を呑んだ後、激しい運動はするものじゃない。乗り心地の悪いものに乗るものじゃない。  
 麗の吐瀉物が降り注ぎ、聞きたくない嫌な音と異臭が鼻腔を劈く中で、孝は思う。  
 い、色々な意味で……何て日だ、今日は――と。  
 こうして、初めて過ごす淫らな一夜は、唐突に終わりを迎える事となった。  
 
 
 天国から地獄へ叩き落されたような気持ちの中、孝は身体に付着した麗の吐瀉物を一通り拭った後、麗  
をベッドへと運んでいた。彼におんぶされている彼女は裸ではなく、彼の手によってシャツとパンツを着  
せられている。孝はと言うとパンツとズボンだけを穿いて、上半身は裸のままだ。薄い布越しに背中に伝  
わる豊満な胸の感触を愉しむ余裕は彼にはなく、重い足取りで廊下を歩いていた。  
 孝の口からは何度も溜息が漏れる。鼻を衝く異臭を早くシャワーを浴びて洗い流したいのだ。  
 背中の麗は酔っ払っているものの嘔吐したせいか気分が良くなっているらしく、わざとらしく彼の首を  
ぎゅっと抱き締めるようにしながらクスッと笑う。  
「孝……臭い」  
「誰のせいだよ……」  
「眠いよぉ〜……ね〜ぇ〜、このまま孝の背中で眠っていーい?」  
「勘弁してくれよ。もうすぐベッドだから我慢してくれ」  
「え〜〜」  
「もし眠ったらこの廊下に裸で寝させて風邪をひかせてやる」  
 孝がそう返したきり、麗は喋らなくなった。最後に言葉を発してからものの数秒で眠りについている事  
に気付いたのは寝室の前に辿り着いた後だった。小さく寝息を立てている彼女は、彼の背中がよほど居心  
地が良いのか、幸せそうな顔をしている。  
 顔を後ろに向け、そんな麗の顔を見て再び溜息を吐く孝。言い付けを守らなかった彼女を本当に廊下に  
捨てて行こうかと思ったのだが、彼はそこまで鬼ではない。ガチャリ、と寝室の扉を開けてベッドの前ま  
で歩くと、そのままベッドに背中を向けて麗を下ろした。彼女は完全に眠ってしまっているようで、やや  
乱暴にベッドに下ろしても寝息を立てたまま特に反応を示さなかった。代わりに、その拍子にシャツが捲  
れ上がって彼女の下乳が露になる。  
 短時間で二回も射精した孝は暫くはセックスをする気力などなかったのだが、その光景にゴクリと生唾  
を呑み込んだ。シャツをそのまま全部捲り上げて、乳房を生で触りたくなる衝動が込み上げてくる。  
「……やめとこ」  
 ぽつりと呟くと、孝は寝室を後にした。  
 
 台所へと戻る途中でばったりと出くわしたのは冴子だ。さすがに彼女も裸ではなく、調理していた時と  
同様のパンティにエプロンの姿だ。真正面から見るとワンピースを着ているようでそれほど破廉恥な格好  
ではないのだが、彼女とのセックスを思い出した彼は彼女の姿を直視できずに目を逸らした。  
「お疲れ様、孝」  
「……いえ」  
 そんな孝の挙動を見て、冴子は首を傾げる。  
「どうした? 元気がないようだが?」  
「冴子……さん、と一線を越えたのが実感が湧かなくて……これからどう接したら良いものかと思いまして……」  
「そういう事は本人に相談する事ではないな、ふふっ」  
 冴子は可愛らしく手を口に当てながら笑った。彼女の言う事はもっともだ。つられたように、孝はポリ  
ポリと頭を掻きながら苦笑する。彼がそう悩んでいる証拠に、彼の冴子に対する口調は敬語に戻っていた。  
「はは、ですよねぇ……」  
「……これまでと同じように接してくれていいよ――……というのは難しいか。私自身も、これまでと同  
じように君と接していられる自信がないよ。だから、良い考えがある」  
「何ですか?」  
 コホン、と冴子は小さく咳払いをした後、静かに口を開いた。  
「早い話、割り切った関係になるか、それとも親密な関係になるか……そのどちらかにしよう」  
 つまり、俗に言うセックスフレンドになるか、恋人同士になるか、という二択だ。今日のセックスの事  
をなかった事にするなどという考えは持ち合わせていないのだ。否、なかった事になどできる筈がない。  
孝にとっても冴子にとっても初めてのセックスなのだ。初体験はどう足掻いても頭から掻き消す事などで  
きやせず、思い出として心の奥深くに刻まれる。例えそれがどんなものであろうとも。  
「私はその……どちらでも構わないのだが……君が後者を選んでくれれば、嬉しいかな」  
「さ、冴子、さん……は、どっちにしたいんですか?」  
「さっきみたいに呼び捨てで呼んで欲しいよ。私も君の事、呼び捨てで呼びたいから……これで、答えに  
ならないかな」  
 頬を赤らめながら呟く冴子の姿が可愛過ぎて、その姿を見た瞬間にどちらを選ぶか孝の中で決定され  
る。もとより、彼は彼女と同じ思いで、彼女も彼と同じ思いなのだ。  
 衝動を堪え切れずに行ったセックスではあったが、それは必ず互いに好意があったから成就されたもの  
だ。迷う事など、何一つとしてない。  
「……大好きだよ、冴子」  
「私もだ、孝」  
 恋人同士になった証として、孝は冴子に顔を近付けて口付けを交わそうとする。だが、それを制したの  
は他ならぬ冴子だった。  
 ぴたっ、と近付く孝の唇に人差指を押し当て、にこっと笑う。  
「その続きは、二人でシャワーを浴びてからにしようか」  
 まずは“麗の臭い”を洗い流してからにしよう、という事だ。第三者の臭いが漂う中ではせっかくの雰  
囲気や気持ちも和らいでしまう。孝もそれを悟ってバツが悪そうに小さく笑った。  
 二人は風呂場へ向かって並んで歩き出す。暫く経った頃、冴子は隣の孝の手をぎゅっと握り締めた。も  
う二度と離すまいと言っているかのように、強く、強く。彼もその手を力強く握り返した。彼女が何を思  
っているのか、それだけで伝わるような気がしたのだ。  
「今度は最初から最後まで、私を愛してくれ――……」  
 数十分後、この日、孝は三度目の射精を迎える事になるのだが、ここから先はまた別の物語である――……。  
 
 

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