機甲都市伯林

 薄暗い部屋の中に、少女が一人横たわっている。 
 少女の瞳は二色。蒼い人間の眼と、猫のような虹彩を持つ 
茶色の眼。全身を拘束されているにも関わらず、少女の眼に 
脅えの色はない。 
 少女は拘束されることに慣れていた。まだ学校に通ってい 
た幼い頃から、G機関に迎えられたつい数年前まで、少女の 
身柄は常に追い求められていたと言っていい。 
 だから、拘束されているということ自体は問題ない。 
 ただ、気になることがあるとすれば…… 
「……あの、ベルガーさん?」 
「どうした、ヘイゼル・ミリルドルフ?」 
「どうして、私はこんな格好で縛られているんですの?」 
 床にうつ伏せになったヘイゼルの後ろ、高々と突き上げら 
れた臀部の向こうで何事か作業に没頭していたベルガーは、 
ああ、と気のない返事を返した。 
「では考えてみようか、ヘイゼル。君の記憶に残っている最 
 後の出来事は何だ?」 
「えっと……たしか、夕食の後、ベルガーさんの部屋でお茶 
 をご馳走になりましたわ」 
「ふむ。で?」 
「それからお茶を飲んでいる最中に急に眠くなってきて…… 
 意識が戻ったら、こんな格好で縛られてました」 
「どうやら君の記憶は正常らしいな。で、その経緯から君は 
 どんな状況を想像する、ヘイゼル・ミリルドルフ? よく 
 考えて答えるんだ、その方が君の身の為だからな」 
 微かに低くなるベルガーの声。だがヘイゼルはその声に含 
まれた剣呑さを無視して、即座に回答した。 
「ベルガーさんが私を縛って変態的なプレイを楽しもうとし 
 てらっしゃいます」 
「80点だな、ヘイゼル」 
 ベルガーが肩を竦めたらしい気配が、背中越しに伝わって 
くる。 
 ……そういうプレイがお好みなら、言って下されば合わせ 
て差し上げますのに…… 
 猫人だという生まれが影響しているのか、ヘイゼルには特 
殊な嗜好に対する嫌悪感が割合に少ない。多少の傷ならば風 
水治療が叶うこともあるし、ベルガーの趣味がそうであるな 
ら付き合ってかまわないとも思う。 
 と、不意に、ヘイゼルの下半身にひんやりとした感触が触 
れた。 
「ひゃっ!?」 
 尻の上を、何か金属質のものが這い回っている。 
 ……これは、ベルガーさんの義手……? 
 だが、それが直接肌に触れているということは。 
「まず、自分の下着が取られていることに気づかなかったこ 
 とで10点減点だ。ちなみにスカートは残してあるから安 
 心しろ」 
 そう言いながら、義手は尻の頂を越えて、二つの膨らみに 
挟まれた谷間に下りてくる。その冷たい指先が、薄茶色のす 
ぼまりに触れて、ほぐすかのようにゆっくりと揉み始めた。 
「ベ、ベベベベルガーさんっ!? あの、そ、そこは違うの 
 ではないかと思うんですけれどっ!」 
「そうか? でも、あらためて電灯の下で見ると、こっちは 
 こっちで趣があるんだよなー」 
「で、電灯の下って……」 
 考えてみれば、ヘイゼルは先ほどからうつ伏せになって尻 
を高々と上げた姿勢をとっていたことになる。そして、下着 
は既に取り去られていた。 
 ……ということは、つまり…… 
「おう、全部しっかり見えたぞ。そりゃもう何からナニまで」 
「ベ、ベルガーさん!?」 
 ヘイゼルの顔が途端に真紅に染まる。 
 その間もベルガーは、指でねちねちと菊門を嬲りながら、 
「それでまあ、もう一つの減点理由なんだが」 
「そ、そんなことより早くこの縄を解いてください!」 
「そう言われても、解いたら君は逃げるだろうが」 
 ベルガーはヘイゼルの太股を咥え、軽く歯を立てる。痛み 
よりも興奮を煽り立てられるような感覚に、ヘイゼルの腰が 
跳ねた。 
 その拍子に機械の指が菊門に潜り込み、ヘイゼルに呻き声 
を立てさせる。 
「じゃ、じゃあせめて、そっちじゃなくて前の方に触ってく 
 ださいません……?」 
「……」 
 ベルガーはしばし沈黙。指を捻る動作は止めないまま、呆 
れた口調で、 
「……君の言動は天然なのか誘ってるのか、時々判断がつか 
 なくなるな。自分がどれだけ恥ずかしいことを口走ってる 
 か、分かって言ってるのか、ヘイゼル?」 
「だ、だって、そっちは、お尻は本当に気持ち悪いんですも 
 の!」 
「そこは安心していいぞ。何しろ俺は世界で二番にアナル責 
 めが得意な男だからな」 
「そんなもの、得意でなくていいですーっ!」 
 完全に涙混じりになった声で、ヘイゼルが叫んだ。 
 と、ベルガーの指が止まった。 
 ヘイゼルの直腸に深々と埋まっていた指が引き出される。 
腸ごと引きずられるような、異様な感覚。指が抜き取られる 
際のずぷりという湿った音が、ヘイゼルの背筋を震わせた。 
 ヘイゼルは、縛られたままの体が許す限界まで肩を落とし 
て、大きく吐息。体内に異物が入れられていた不快感を払お 
うと、深呼吸を繰り返す。 
 ……遺伝詞交換には慣れましたけど、これはさすがに…… 
 普段の遺伝詞交換の感覚とはまた違う、体の奥深いところ 
を揺さぶられるような感覚。違和感の奥に痺れるような何か 
を内包したそれは、一度慣れてしまうと虜にされるのではな 
いか、という本能的な恐怖さえ与えるものだった。 
「……ところで、なあ、ヘイゼル?」 
「何ですの、ベルガーさん……ていうか、そろそろ解いて下 
 さいませんか?」 
 だが、ベルガーはヘイゼルの要求を無視。明らかに面白が 
っている口調で言葉を続ける。 
「実は先ほどから、特等席で君のアレやらソレやらを見物し 
 ているわけなんだが」 
「やっぱり私、ベルガーさんは局部フェチだと思いますの……」 
「深呼吸してる時って、尻の方も閉じたり開いたりするもの 
 なんだな」 
 沈黙。 
「ベ、ベルガーさんが本物の変態にーーーっ!? って言う 
 か、ど、どこを見てるんですのッ!」 
「何を失礼な、俺は世界で二番の変態に過ぎないんだからな。 
 ちなみに一番はシュバイツァーの奴だが」 
「……そういうこと言ってると、怒られても知りませんわよ?」 
「いや、アイツはレーヴェンツァーンに給仕時代の制服を着 
 せて楽しんだりしてるに違いない。俺には分かる」 
 至極真面目な声でベルガーは言う。 
「……そして、こんな事をしてるんだろうしな」 
 その声は、ヘイゼルの肌のすぐ傍で聞こえた。声を発する 
時の息が、生暖かく脚の付け根を撫でていく。 
「え?」 
 その意味にヘイゼルが気づくよりも早く。 
 ベルガーの舌が、先刻からの指責めで緩んでいた括約筋を 
押し広げて、ヘイゼルの体内に潜り込んでいた。 
「ひ……ひゃあっ!」 
 濡れた舌が、ゆっくりと回転しながら柔らかい排泄口に捻 
り込まれていく。それ自体が柔らかいせいか、それとも慣れ 
たせいか、指を入れられた時ほど不快感は強くない。いや、 
それどころかむしろ――気持ちいい。 
 秘唇を舐められた時とは違う、むず痒さを伴った快感。剥 
き出しにされた神経を直接刺激されているような、怖いほど 
の快楽ではない。薄皮一枚隔てて刺激されているような微妙 
な気持ちよさは、だが、それだけに体の芯から蕩かされる気 
分だった。 
「は、ぁ……!」 
 声が漏れる。ベルガーの舌が大きくうねる度に、跳ねた腰 
が縄に引き戻される。 
 ……ひょっとして私、今、すごいことをされてるんではな 
いでしょうか…… 
 縛られて。剥き出しにされた下半身を高く突き上げて。本 
来なら触るどころか、他人に見せることすらないはずの排泄 
口を舌で嬲られて。 
 ……お尻、舐められてるんですよね…… 
 そう思った途端、ベルガーが思い切り深く舌を突き込んで 
きた。 
「ひ――やぁっ!」 
 甲高い嬌声。 
 ……だ、だめ……! こんなコトされて、こんな声を出す 
なんて…… 
 そう思っても、一度快楽に気づいてしまった体は自分の意 
思では抑えきれない。途切れ途切れに声は喉から迸り、腰は 
より強い快感を求めて自らベルガーに擦り寄っていく。縄が 
許す僅かな範囲で、ベルガーの舌の動きに合わせてヘイゼル 
の尻が艶かしく動く。 
 ……や……と、止まって下さい……! 
 激しく動く尻の上に、うっすらと汗の湿り気が広がってい 
く。白磁の壷のような丸い双丘が、電灯の鈍い光を反射して 
ぬらぬらと輝く。 
 汗の玉は、いつしかヘイゼルの全身に浮き出していた。 
 体の律動に揺さぶられて、その汗が肌の上を滑って落ちて 
いく。その微かな感触さえ、敏感になった今のヘイゼルにと 
っては快感となる。 
 もっと多くの汗を、もっと感じやすいところに落とそうと、 
ヘイゼルの動きが激しくなる。首筋を伝う汗の滴が、まるで 
誰かに舐められているかのように優しく肌を刺激する。重力 
に逆らって半球形を保ち続けている胸を、汗の滴が伝い、先 
端の硬く尖った突起に集まっていく。 
 だが、その愛撫はあまりに弱すぎる。 
「や……ベルガーさん! お、お願いです、胸も触っ……噛 
 んで、くださいぃ……」 
 散々に弄ばれ、開発されつくしてしまった胸が、より強い 
刺激を求めて激しく疼く。ほとんど物理的な痛みさえ覚えそ 
うな、激しいもどかしさ。だが、ベルガーはそれに答えず、 
ひくひくと震える排泄口を弄ることに熱中する。 
「ベルガーさん……! お願いですから、いじわるしないで……」 
 無言。 
 そのとき、激しく揺れるヘイゼルの胸が床を擦った。 
「ひぁ……っ!」 
 服の生地越しとは言え、鋭い摩擦が乳首を苛む。 
 ……これ、なら…… 
 熱に浮かされたようなヘイゼルの眼に、欲望の光が浮かん 
だ。体を捻り、胸の先端が床を擦るように位置を調節する。 
 激しく体が揺れる度、その振動で乳房が重く震える。狙う 
は、その先端。痛いぐらいに硬く膨らんだ桃色の突起。 
 強く押し付けすぎないように、先を擦るようにして床板で 
自分の乳首を愛撫する。背徳的と言うのも馬鹿馬鹿しい、ひ 
どく浅ましい行為。だが、そう思えば思うほどヘイゼルの体 
は熱く火照ってくる。 
 ……私、こんな、自分から……でも、気持ち、いい…… 
 ベルガーの舌は、まるで本物の犬のように長く伸びてヘイ 
ゼルの直腸を蹂躙していく。体内で蛇のように舌がのたくる 
感覚に、ヘイゼルの体は熱く火照って、全身の感覚が信じら 
れないくらい鋭敏になる。 
 そして、敏感になった肌を嬲っていく汗の滴。まるで何十 
人もの男に体中を羽で撫でられているような、でなければ犬 
の群れに舐めまわされているような、泣きたくなるほどのむ 
ず痒さ。 
 それに胸を愛撫する床の摩擦が加わって、三箇所から送り 
こまれる快楽に、ヘイゼルの体は喜びの声を上げて跳ね回る。 
 だが。 
 だが、まだ足りないものがある。 
「ベ、ベルガーさぁん……」 
 泣きそうな声でヘイゼルが男を呼ぶ。いや、事実、彼女の 
眼には涙が溜まっている。口の端からは涎が垂れ、彼女を苛 
み続けている快感の強さをはっきりと示している。 
 その声を聞いて、ベルガーは動きを止めた。 
 舌をずるりと引き出し、閉じきらないままピンク色の粘膜 
を見せて未練がましく震えている尻穴に構わず、ゆっくりと 
立ち上がる。 
「もう、もういじわるしないで下さい……さっきから、ずっ 
 とお尻ばっかりで、私、もう……」 
 言葉を紡ぐ度、ヘイゼルの口元から涎がこぼれる。そして、 
涎を垂らしているのは口ばかりではない。彼女の秘唇も上の 
口と同様に、ことによるとそれ以上に涎を垂らして、物欲し 
そうに口を開いていた。 
 拘束され広げられた両脚の間で、濡れそぼった桃色の襞が 
いやらしく息づいている。その様子ははっきりと見えている 
はずなのに、ベルガーはとぼけた口調で、 
「何を言ってるんだ、ヘイゼル・ミリルドルフ。俺は世界で 
 二番に優しい男だぞ?」 
「う、嘘ばっかり……そんなに優しいのなら、お願いですか 
 ら、早く……」 
「いやいや、優しい男というのはジェントルマンだからな。 
 相手の要望が分かるまで軽々しく動かないもんだ」 
「ベ、ベルガーさん……」 
「だからな、ヘイゼル」 
 ベルガーは背中から抱え込むようにヘイゼルを抱きしめる。 
そして、その首に手をかけて振り向かせると、 
「何をしてほしいのか、正確かつ情熱的に百字以内で述べよ」 
 ベルガーの唇がヘイゼルの唇に重なる。それと同時に侵入 
してきた舌が、口腔の中を縦横に嘗め回した。口中に溜まっ 
ていた唾液をすすり、歯茎をなぞり、マーキング行為のよう 
に丹念に口の中を嬲っていく。 
 ……これ、さっきまで私のお尻に入ってたんですよね…… 
 キスされてからそのことに気がついたが、既に遅い。それ 
に、そんなことがどうでもよく思えるくらいにヘイゼルの体 
は絶頂を求めていた。 
 自分からベルガーの舌に自分の舌を絡め、火照った体の奥 
で燻るものをより強く煽り立てようとする。生温かく柔らか 
い舌を軽く歯で押さえ、舌の先端同士を触れるか触れないか 
の微妙な感覚でつつき合わせる。 
 たっぷりと口腔を嘗め回してから、ベルガーの舌はようや 
く離れていった。 
 二人の口の間を唾液の糸が繋ぎ、ヘイゼルは下を伸ばして 
その糸を掬い上げた。音を立ててそれを啜り、期待に潤んだ 
眼でベルガーの顔を見上げる。 
「お願い……します。ベルガーさんの遺伝詞を、私に下さい……」 
 だが、ベルガーは頭を振った。 
「ダメだな、ヘイゼル。それじゃあまだ何のことだか分かり 
 にくい」 
「そんな……!」 
 ……これ以上のことを言え、と……? 
 ヘイゼルの顔に逡巡の色が浮かぶ。 
 厳格なドイツ軍人の娘として育てられた幼少時の思い出が 
脳裏を過ぎる。そんなはしたないことは、年頃の娘が口にし 
ていいものではない。 
 いいものではない、が…… 
「……ベ、ベルガーさん、の……」 
「お?」 
「ベルガーさんの、それ、を、私の恥ずかしいところに入れ 
 て……いっぱい、愛して下さいな」 
 途切れ途切れの声で、ヘイゼルは辛うじてそれだけを言っ 
た。 
 この火照った体を鎮められるのなら。 
 この泣きそうなくらい辛い時間が終わるのなら。 
「オーケー。まあ、合格点ということにしてやろう」 
 ベルガーが笑って、自分のズボンを引きずり下ろす。そし 
てヘイゼルの脚の間に立つと、 
「それじゃあ、ご褒美だ……っと!」 
「ぁ、ひぁぁぁぁっ!」 
 いきなり腰を突き上げられて、ヘイゼルは高く声を上げた。 
 肉を割って入ってきた硬いものが、胎内を激しく行き来す 
るのが分かる。 
 意識が白く塗りつぶされていく。圧倒的な快感の前に、何 
も考えられなくなっていく。 
「い、いぃです! ベルガーさん! もっと、もっと強、く!」 
 うわ言のように、途切れ途切れに叫ぶヘイゼル。 
「き、気持ち、いひ! いぃ、です……!」 
「それなら、こっちも気持ちよくしてやろうか……?」 
 そう言いながら、ベルガーは片手をヘイゼルの腰から離す。 
片腕だけで支えて腰を動かしながら、空いた方の手でヘイゼ 
ルの尻肉を大きく割り広げた。 
 その中央では、先ほどまで弄られていた菊門が、秘唇と連 
動するように小刻みに震えている。ベルガーは指を唾で濡ら 
すと、二本揃えてそこに思い切り突き入れた。 
「ひ、うあああああああああああっ!」 
 ヘイゼルが悲鳴を上げる。 
 だが、そこに苦痛の色はない。意識を吹き消してしまうほ 
どの快楽に対する、恐怖と悦びの艶声。 
 ほとんど根元まで潜り込んだ指で直腸をかき回しながら、 
ベルガーは激しく腰をヘイゼルの尻に叩きつける。 
「どうだ、ヘイゼル!? 随分と嬉しそうじゃないか!」 
「はっ、だ、だめぇっ! わ、私もう、私もう! だめです、 
 おかしく……! こ、壊れちゃうぅ!」 
「いいさ、壊れてしまえよ! どうせ俺しか見てないんだか 
 ら!」 
「はっ、はひ……っ! だ、だめ、もう、も、だめっ! わ、 
 私、もうだ、ふあぁぁぁぁぁっ!」 
 絶叫と同時に、ヘイゼルの体が思い切り引き絞られた。頭 
の中が白く灼け、媚肉が中のベルガーを強く締めつける。 
 その感触を味わいながらベルガーも一際深く腰を突きいれ、 
白濁した欲望をヘイゼルの中に解き放った。 
 そしてヘイゼルは、胎内に広がるその暖かさを感じながら、 
途切れる寸前で張り詰めていた意識を微睡みの中に沈めてい 
った…… 

 
 

 その部屋の中には、一組の男女がいた。 
 一人は、右腕を義腕に換装した大柄な男。そしてもう一人 
は、茶色の髪を編んだまだ若い娘。 
 耳に付けていたイヤホンを外して、義腕の男――シュバィ 
ツァーは静かに問うた。 
「……で? こんなものを自分に聞かせてどうしようという 
 のだ、レーヴェンツァーン?」 
 男の声には明らかな疲れの色がある。 
 それに対して、答える娘の声には十二分に元気と熱意が有 
り余っていた。ことによると、必要量を大幅に上回っている 
ほどに。 
「決まっているでしょう?」 
 挑発的に答えて、男に流し目を送る。 
 娘――レーヴェンツァーンは、何故かG機関本部で給仕と 
して働いていたときの制服を着込んでいた。 
「たしかに”新世界”は”救世者”に敗れたかもしれない。 
 だけど、生きている限り再戦の機会は必ずある……そうで 
 しょう?」 
「それは分かるが……」 
 娘は、困惑した様子の男の腕を掴んで、 
「ということで、まずは女の戦いで再挑戦! とりあえず女 
 としての幸せでは私が勝つのよっ!」 
「ちょ、ちょっと待て、レーヴェンツァーン……! しかし 
 自分には任務が……」 
「あ、それなら大丈夫。長の権限で一週間ほど強制的に休暇 
 にしておいたから」 
 レーヴェンツァーンの言葉に、シュバィツァーは絶句。 
 その隙をついて、彼女は男の体を寝台の上に引き倒す。 
「それから、ベルマルクに偽の命令書を渡したのも私。これ 
 だけ周到に仕組まれてるんだから、諦めなさい」 
「し、しかし……!」 
 言いかけた男の口を、女は自分の唇で塞ぐ。 
 そして、数分後。 
 録音機から流れていたものに勝るとも劣らない嬌声が、ボ 
ルドーゾンのとある小屋から響いていた。 

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