ハヤテをアナルで受けいれることを覚えたナギは飽くことをしらないかの
ように機会があるたびに求めてきた。どんなに賢くてもそこは子供の考え、
好きならばしたいだけ、(アナル)セックスしてもよいと考えているようだ。
ハヤテとしてはナギの貞操(処女)を守っているのか自分の貞操を守って
いるのか分からない状況で、マリアやクラウスに出張にだしてくれるように
懇願するほど追い込まれていた――ナギにというより、ナギを無茶苦茶に
したくなる自分に、だが。
ついに思い余ってマリアに相談する。
「お嬢さまのことでお話したいことが…」
「あー…うすうすは感づいていたんですけどね…どこまで進んでいるんです?」
「その…」
処女を奪う以外は全部しちゃいました、と説明されてマリアは卒倒しかかり
ハヤテに抱きとめられて真っ赤になる。ナギにいま「愛してます」といっても
ここまで赤くはならないだろう。
ハヤテはパッと手を離し、マリアはさっと姿勢をただす。
「う゛〜、コホンッ!…ハヤテ君はナギのこと、どう思っているんですか?」
「えっと…好きでもはじめはそういう気持ちじゃなかったんですけど――今では
女性として愛してます…」
マリアさんでもこんなに狼狽することがあるんだ、とハヤテの冷静な部分が
思うほどマリアは動揺していた。もう、まともな意見は期待できない気がする。
それでもマリアはマリア。しばらく考えこむとアドバイスをくれる。
「そこまで関係が発展してしまったのならハヤテ君を引き離してもナギが哀しむ
だけでしょう…。ナギのこと、抱いてあげてください」
「え?」
「せめて…その…ぉ…でする前にいってくれれば…しようがあったんですが、
今のままじゃ、へ…その…おかしいですよ?」
「すみません。僕、お嬢さまの処女を守ることしか頭になくて…」
しゅんとなるハヤテを慰めるようにマリアは微笑する。
「ですから、ちゃんとナギを女にしてあげてください。私もあなた達の関係を
秘密にするの、手伝いますから」
「ありがとうございます!マリアさん…」
「ただし、ひとつだけ条件があります。三千院家のメイドとしてではなくて、
ひとりの女として、ナギの姉代わりとしてのお願いなのですけれども…」
「はい」
マリアは優しさと強さを共存させた聖母のような表情で指をつきつける。
「ナギを幸せにできる一流の執事…いえ、素敵な男性になってくださいね」
それはむしろハヤテが思い悩んできたことを払拭させる一言だった。
ハヤテは力強くうなずく、決意に瞳の奥を燃やして。
「わかりました!愛するお嬢さまのために僕は…絶対、立派な男になって
お嬢さまを幸せにしてみせます!」
それは執事とお嬢さまの物語の終わり、綾崎ハヤテと三千院ナギの物語の始まり、
そしてつぼみのまま花開くことなかったいくつかの恋の終わりだった。
ハヤテが立ち去った後、マリアは溜息をもらして、あのクリスマスの日に拾った
少年への密かな想いを心の箱にしまい、涙の鍵を閉じた。
もう、この箱が開くことはないだろう……
ナギは自室でハヤテを待っていた、大事な話があると聞いて。
心が浮き立つような期待を感じると共に、この関係を終わりにしようといわれる
のではないかという恐れに胸が張り裂けそうにもなる。
(ハヤテ…私のハヤテ…疾くきて…)
「ナギお嬢さまッ!」
その想いに応えるように扉があけはなたれ、待ち望んでいた少年の姿が現れる。
「ハヤテッ!」
叫びながら駆け寄るが抱きつくことはできなかった、花束があったからだ。
ハヤテは花束をナギに手渡すと受けとらなかった方の手をとって甲に唇をおしあてる。
そして、ニッと笑う彼は宇宙一カッコいい男だった。
「お嬢さま…今日は、あなたの純潔をいただきに参りました」
「え?えっ?」
両脇を支えるように軽く抱きとめられる――花束を手落としてしまった。
「…それはもう――」ささげたんじゃ…と聞き返すナギにハヤテはすまなそうに、
「実はお嬢さまは、まだ処女なんですよ。僕…あの時ちょっとしか入れなかったんで」
と打ち明ける。
驚くナギをさらに抱き寄せて、
「ですから…あらためて僕からお願いします。お嬢さまを抱かせてください」
「そんなの…答えは決まっている…」
目を閉じてお礼をうけた。
時が止まったように長いキスの後、優雅な動きでベッドに横たえられ再びキスされる。
ふたりとも言葉がない。一言でも発すればこの空間にかかった魔法がとけてしまうと
でもいうように、喋らなくても想いは伝わると信じるかのように、無言のまま――。
服を脱がしあうがナギは瞬く間に全裸にされてしまう。執事服はボタンが多すぎる。
「ずるいぞ」という表情のナギに「がんばってください」とハヤテはすこしイジワルな
顔で返して首筋を吸い、未発達な身体を味わっていく。
ナギの女性はハヤテに「君が欲しい」と言われて口付けられてから、びしょびしょに
濡れてしまったままで前戯など必要なかったのだが、愛情表現としての愛撫をナギは
甘受した。まるで自分の身体がキャンディになったかのようにハヤテに舐めまわされ、
味わいつくされていく。
(私、ハヤテに食べられちゃってる…ハヤテ、私をもっと食べちゃって…)
身体中が性感帯のようで――それともナギの性感はハヤテの舌や指にあるのだろうか?
――ちょっとした刺激で簡単に達してしまう。これでハヤテのを挿入してもらったら
狂ってしまうかも知れない。挿入してもらえなくても狂ってしまうのだから、どちらを
選ぶかは自明のことなのだが。
いつのまにかハヤテも全裸で――ハヤテが脱いだのかナギが無意識に脱がしたのか、
記憶がはっきりしない――ナギのお腹にあの熱い感触がはしる。
何でもお金で手に入れてきたナギがこれまでの人生でしたことがないほど物欲しそうな
表情でハヤテの顔をうかがう。「欲しいのはあなた」
ハヤテは少し間をおくと優しく微笑みかけて、ナギの視界を覆いながらゆっくりと
結合を果たした。
「…ぁ……」
快感と痛感の電気が交じり合いながらナギの神経を駆け巡り、脳に達したところで
大きな喜びへと変わる。
私はハヤテとひとつになったのだ。
見つめ合うとハヤテもまったく同じことを感じていることがわかって、心まで繋がって
いる多幸感にさいなまれる。
ハヤテが小さく軽快に動く。それだけで視界が白く染まり魂が天界へも昇る心地になる。
リズムが徐々に激しく、動きが大きくなってくると極彩色の世界さえ垣間見えた。
快感に打ちのめされながらもナギは貪欲にハヤテを求め続け、ハヤテもそれに応えた。
ハヤテのペニスは次々と精液を放出しながらも硬さを保ち続け、ナギの膣は一滴も
逃すまいというかのようにきつく隙間なくハヤテをしめつけたが、あまりの量と激しい
動きに、抽送を繰り返すたびに精液の新旧が入れかわっていく。
ハヤテの女性的な顔立ちからは想像もつかないほど多くの精子がナギのために製造され
ひとつも残すまいと投入されていくようだ。
ナギの子宮が溢れかえるほど満たされているように、ナギの精神も溢れかえるほどの
ハヤテへの想いで満たされて、熱くとろけていった。
(ハヤ…テ…ハヤテ!ハヤテ――ッ!――――――――――………………、)
――3ヵ月後
「ハーヤテッ」
ハヤテが書きものをしているとナギが足に羽が生えたかのような嬉しげな顔で部屋に
入ってきた。
「何かいいことあったんですか?お嬢さま」
「良いことがあったというか、これから起こるというか…」
ナギはお腹に手を当てるとポッと頬を赤く染めて、
「できちゃった…」
「…はい?」
「だから…ハヤテとの赤ちゃんができたの!」
「…あの、お嬢さまって生理まだですよね?」
「うん。今もまだ、きてないぞ。どうも…初めての排卵で妊娠したらしい」ずがーん。
「……」
(ぶっちゃけ、ありえねーっ!)
ハヤテは真っ白に固まってしまう。
初エッチから一月ほどはマリアの黙認をいいことにまるで新婚夫婦のようにセックス
しまくっていたとはいえ――最近はセックスなしで互いの愛情を確信できるようになって
ペースが落ちている――確率論的に。
「わかってると思うが…産むぞ」
いつものプレッシャーに母性的なものまで加えてナギは宣言する。
あれ?もしかして僕、尻にしかれる?と現実逃避気味にハヤテは思った。
「…とりあえず子供の名前を考えましょうか」
「そうだな。やはり風に関するものが良いかな?男の子だったら――」
ハヤテにはこれからも多くの苦労や不幸が襲いかかるだろう。
しかし、彼は絶対、泣かない、くじけない、あきらめない。
何故なら、必ずいつも隣にナギがいて、決して途切れない想いがあるのだから。
〜〜完〜〜