活気と希望に満ち溢れた白皇学園の朝。  
 しかし、校門の前に陰を背負った少女がひとり、ぽつねんと立っていた。  
いつもなら明るい学園の中心であるはずの彼女が。  
「おっ!ごきげんよう。ヒナギク」  
「あ…おはようございます、ヒナギクさん…」  
 生徒会長桂ヒナギクは気後れの含まれるハヤテの挨拶にびくりと身体を震わせる。  
「お…おはよう、ハヤテ君…ナギ」  
 ものすごく怪訝そうなナギをしりめに、ヒナギクは落ちつかなげに指を  
交差させながら、ハヤテに目配せする。  
 ハヤテはその意味を悟って、小さく頷いた。  
 
 放課後の時計塔。  
「お嬢さまには先に帰ってもらいましたけど…生徒会のみなさんは?」  
「…補習中よ。まったく…あの娘たちは」  
「…はは。それはなんと言うか、いろんな意味で具合が悪いですね」  
「ほんと、やんなっちゃう…もっと、やになっちゃうことがあったけどね…」  
 ヒナギクはそう言って、ハヤテを怒りと恐れと何かの混じった眼でみた。  
ハヤテのゆるんだ表情が生真面目さと深刻さをおびる。  
「あの…昨日のことは本当にすみませんでした。お嬢さまを悲しませないことなら  
何でもやりますから言ってください」  
 真摯な態度のハヤテだが、ヒナギクは頭にきた。言葉の耳ざわりは良いが、  
このごにおよんでナギを優先しているのだ、この男は。  
 いや…ヒナギクが本当に怒っているのは、ナギに嫉妬している自分になのか?  
「…分からないの」  
「ああ…昨日の今日ですからね。剣道でもされてはどうですか?お相手しますよ」  
 加害者のくせにカウンセラー顔のハヤテ。ヒナギクはかぶりをふって言い直す。  
「…あなたの事が。それと自分があなたの事をどう思っているのか…」  
 ハヤテの眼に昨夜の狂気がかげったようにも、ヒナギクを友人として深刻に  
心配しているようにも見えて――  
「だから昨日のことを…もう一度してくれない?」  
 
「は?…えーっと…気はたしかですか?ヒナギクさん」  
「私は正気よ!」  
 激昂がヒナギクの中をつきぬけて、ハヤテをゴチンと殴打して、言い募る。  
「ナギが悲しまないことなら何でもするんでしょ!バレなければいいのよ!  
バレなければ!ずべこべいわずに…私を…抱きなさい」  
 けっきょく最後は真っ赤になっているわけだが。恥ずかしさをごまかすために  
いっそうハヤテをボコボコにするヒナギク。  
「いだだっ、分かりました…分かりましたからっ、ヒナギクさん。落ち着いてっ」  
 フーッ、フーッと猫のように息を荒げたヒナギクは涙目で睨みつける。  
うすら笑いのハヤテは両手を顔の前にかかげて言う。  
「あの…たいへん申しわけないのですけど…僕、あまりあの時のこと  
はっきり覚えていないんです。…どういう風にすれば」  
 と呆れることを言いながらも、やる気はあるらしく軽く抱き寄せてくる。  
「そ、そんなの恥ずかしくて言えるわけないでしょ!ハヤテ君の好きにしてよ…」  
「…ではお嬢さまには内密に」  
 昨日ほどの攻撃性はないけれど、自己正当化に長けているところや据え膳は食べる  
ところはハヤテらしさのようだった。けっして誉められた性質ではないのだが…  
ハヤテなら許せる気がするのが不思議だ。  
 
「あむぅん…ッ」  
 ゆっくりと滑らかな動きで唇をついばまれる。昨夜は顔から血の気が引いたのに  
今度は顔に熱いものが集まってくる。  
「えっと次は押し倒したんでしたっけ?」  
「きゃんっ…」  
 柔道オリンピック選手か?と思うほど、やすやすと床に転がされる。痛みもない。  
ハヤテの身体が覆いかぶさってくるのを期待――じゃなくて予想して目を閉じるが  
意表をついてパンティを脱がされ、股を押し開かれる。  
「やっ!…そんなところ、みないでっ!」  
「もちろん、みるだけじゃなくて触りますよ」  
「ばかっ!」  
 ヒナギクの抵抗は口先だけで身体はなすがまま。ハヤテは懐かしの場所のふちを  
丹念になぞるとヴァイオリン奏者の指先を侵入させる。  
「あ!…うぅん…はぁ」  
 恥ずかしさのあまり袖で顔を隠しながら愛撫に耐えるヒナギク。  
「見てください!ヒナギクさん」  
「えっ?」と顔をあげると無邪気な笑顔でハヤテが目の前で人差し指と親指を離す。  
その間にはキラキラと光る粘液の橋ができていた。  
「キャアアアアアァ――ッ!」  
 旧校舎で犯されている時にもあげなかった悲鳴がでる。ハヤテが人差し指を舐めて  
「ヒナギクさんの味がしますね」というのを聞くと涙さえこぼした。  
…ヒナギク味もいっぱいこぼしていたが。  
「ひっく…ハヤテ君…いじわるしないで」  
「…ココはいじわるされるの大好きみたいなんですが…いじわるせずにヒナギクさん  
お待ちかねのモノをさしあげますか」  
 ハヤテは己のものをとりだしてヒナギクに誇示するとゆっくりと圧力を加えていく。  
接触して肩を震わせ、先端をうけいれていやいやをし、全て入るとうっとりと息をつく。  
「大丈夫ですか?」  
 ヒナギクは頷きながら、昨日のハヤテは容赦なく犯してきたのにと思った――  
まさか昨日のハヤテに惚れてしまったのだろうか?あんなに酷いことをされたのに…。  
 ハヤテはヒナギクの身体をおさえこむと腰を引き、ピストン運動をはじめる。  
鐘つきのようなゆったりしたリズムにあわせて卑猥な水音と甘美な喘ぎがもれる。  
「んっ…ヒナギクさん。いいですよ」  
 ハヤテが囁きながら首筋を甘噛みしてくる。ヒナギクの何かが解放された。  
 
「やあんっ…ハヤテ君…もっとヒナをいじめてぇ…」  
「こうですか?」動きが力強く速くなる。  
「んんん…ハヤテ君にめちゃくちゃにされたいの…犯されて中出しされて孕みたいの…」  
「…ヒナギクさんは変態さんですね」嘲笑するように煽るように響く声。  
「そう…なの。ヒナは変態なの。ハヤテ君があんなことするからいけないのよ…」  
 肉体より先に精神が達してしまったのか、普段のヒナギクなら死んでも言わないような  
ことを口走る。  
「ハァハァ…そろそろイきますよ。大好きな中にたっぷりと出してあげます」  
「あ…きてきてぇ、ハヤテくん…ヒナの中をいっぱいにして――」  
 ふたりの先走りと愛液に包まれた空間を、勢いよく噴出した精液が埋め立てていく。  
ハヤテは腰の位置をあげ、肉棒を小刻みに動かし、最後の一滴までヒナギクに注ぎ込む。  
ROCO氏の執念でも乗り移ったかのような絶対孕ませてやろうという射精っぷりだった。  
 
「はぅうう…私の中がハヤテ君のでいっぱい…」  
 呆然自失状態のヒナギクが落ち着くまで抱いてやり、名残惜しげに身体を離すとハヤテは  
立ち上がった。飲み物を探して歩き出そうとすると裾が引かれる。  
「ハヤテ君…私まだ…分からないの」  
 捨てられた子犬のような眼でヒナギクが見上げてくる。  
 己の道に目覚めてしまったのは、ヒナギクだけではない。ハヤテのも同様なのだった。  
溜息をついて口元を歪める。  
「物覚えの悪い生徒会長さんですね…これで生徒会は全員補習ですよ?」  
「ごめんなさい…でも…ハヤテ君の授業…もっと受けたいんです」  
「しかたありませんね…でも、さすがの僕も昨日今日で疲れていまして…」  
 わかりますね?と顔で言って、半勃ちになった肉棒をヒナギクの整った顔に擦りつける。  
こくりと顎を動かしてヒナギクはそれを口に含んだ。  
「おおっ!」  
 思わずヒナギクの頭をつかんで呻きを漏らす。快感とかそれ以前に、あの高飛車な白皇の  
生徒会長にしてアイドル、桂ヒナギクを征服しているという事実がハヤテの脳幹を痺れさせる。  
 あっさりと硬さと太さをとりもどしたけれど、この状態をもっと味わいたくて、ヒナギクに  
奉仕を続けさせ、頭を揺すって咥内に先端をこすりつける。もう限界だ。  
「ヒナギクさん…こぼしたら補習はなしですよ?」  
 涙目にそう囁き、舌の上に精液を叩きつける。  
「ん〜ッ!ッ!」  
 ヒナギクは呻きながらも必死に包みこみ、一滴も逃すまいと嚥下する。そのいじらしさに  
頭を撫でてやりながら、衰えない肉棒を引き抜き、ヒナギクを立ち上がらせる。  
 
「よくがんばりましたね。その執務机に両手をついてください」  
「はい…あっ…」  
 精液がふとももを垂れるのに気付いて惜しそうな顔をする。  
「そんな顔しなくても今からたくさん追加してあげますよ…」  
 ズチュッっといやらしい音をたてて挿入を再開する。ヒナギクの横顔が恍惚として輝く。  
「はっ…ん…ヒナギクさん、今どういう状況か分かります?説明してみてください」  
 机につっぷしたヒナギクは歓喜と羞恥にどもりながら要望に応える。  
「ひゃっ…んん…ヒナはハヤテ君に後ろから…犯されてます。あんっ…いつも仕事してる  
机に押し付けられて…あぁ…おち○ちんでおま○こを…掻き回されてるの――」  
「はは…執務机でセックスして悦んだ変態生徒会長は、ヒナギクさんが初めてなんじゃない  
ですか?」  
 …いや、マリアさんが生徒会長を勤めていたような学園だ。そのくらいの変態はいたかも。  
 ハヤテは考えを改めるとヒナギクを机から引き剥がして持ち上げた。  
「え!…何をするの?」  
「楽しいことですよ…ちょっと眼をつぶっていて頂けます?」  
「?…うん」  
 あれだけいじめられたのに従順なヒナギク。ハヤテにされるのならいじめられることすら  
期待しているようだ。  
 三点保持でヒナギクを支えるとハヤテは明るい方に歩いていく…。  
「ヒナギクさん、目を開けてもいいですよ…」  
 微風で自分がどこにいるのか勘付いているのだろう。ヒナギクはこわごわと目を開いた。  
「キャッ…!」  
 ベランダからの絶景に短く悲鳴をあげ、押し殺す。声に気付かれて下から見られたら…  
今までとは別種の恐怖がヒナギクを襲う――もちろん高所恐怖も。  
 ハヤテはがくがく震える足を床に立たせ、手は欄干をつかませる。  
「しっかり掴んでてくださいね。手を離したり目をつぶったりしたら中に出してあげませんよ」  
「そんなぁ」と情けない声で涙ぐむヒナギクの中で運動を再開する。その背中越しに白皇学園が  
一望できてヒナギクを通じて学園まで支配しているような錯覚に気分が昂揚する。  
「どうですか?白皇学園の眺めは!素晴らしいでしょう」  
 蚊のなくような悲鳴。  
「ここから見えるってことは向こうからも見えるってことなんですけどね。  
僕たちに気付いている生徒がいるかも…それどころかヒナギクさんに憧れて望遠鏡で  
覗いている生徒だっていないとも限りませんねー」  
 ハヤテの言葉に顔色は青ざめるが膣の方は痛いくらいに締めつけてくる。それでも、  
行為をやめはしない。ヒナギクの身体が浮くくらいに突き上げる。  
「や…やめて。落ちちゃう…落ちちゃうよ」  
 ヒナギクの膝は痙攣するように落ち着きがなく、声も本当に泣きが入っていた。  
そして――  
 シャアアアァ…ピチャッピチャ…ポトッポトポ…  
「…あの…ヒナギク、さん?」  
「…うわあぁーん!ハヤテ君のバカバカ!変態!イジワル!」  
 時計塔からふる金色の雨に涙をくわえながら、ひさしぶりにヒナギクが罵倒する。  
「…いや、でも…歴代の生徒会長が絶対にやってないことをやりとげたじゃないですか?」  
 と強引にフォローするハヤテ…当然にらまれる。やむなくヒナギクの身体を反転させて  
背中を欄干におしつける。  
「これなら安心できますか?ここでエッチするのに慣れれば、そのうち高いところに  
立つだけで気持ちよくなるようになりますよ」  
 ハヤテは至近距離からヒナギクの顔をのぞきこんで、エヘっと笑う。ヒナギクはぷいっと  
顔をそむけて、  
「私はパブロフの犬じゃないんだから…そんな風になるわけないでしょ」と切り捨てる。  
 小声で「ハヤテ君のメス犬だけど」とつけくわえていたりするが。  
 
 そして、ふたりは行為に没頭する。とくにヒナギクは背中の向こうについて一秒でも  
忘れていたいらしく、熱心にハヤテを求めてくる。  
 ハヤテのピストンは本当に子宮に侵入しようかというほど苛烈で、ヒナギクはつま先だけで  
ベランダに立っている状態だった。欄干がギシギシと不気味な音をたてて揺れる。  
 ヒナギクには天上におしあげられるようにも、地獄につきおとされるようにも感じられる。  
「ひあぁっ…ハヤテ君、ハヤテくぅん…っ。もう何にもわかんなくなっちゃう!ダメぇ〜」  
 ハヤテは熱く荒い息をヒナギクの顔にふきかけながら快楽をむさぼり…溶けたガラスのように  
熱く粘る液体を再びヒナギクの内部に放出する。ヒナギクは全てを迎えいれた。  
「うあぁぁあっ!っひゃあ――あっ……」  
 
 
 ヒナギクの声は学園中に響いたという、聞いた者はみんな空耳だと思ったが。  
 さすがのハヤテも冷や汗をかいて、焦りを沈めるのに必死だった。ヒナギクはソファーの隣に  
腰掛けて頭をハヤテの胸に預け、余韻にひたっている。  
 エレベーターがあがってくる音がすれば、何気ないふうをよそおうだけの間を残しているあたり  
ふたりとも抜け目がない。  
 ハヤテは紅茶を口に運んで、手の震えを沈めると、優しくヒナギクの腰を抱いて聞く。  
「で、ヒナギクさん。知りたいことは分かりましたか?」  
 無気力な声でヒナギクは答える。  
「…どうでもよくなっちゃった。でも…もう普通の恋はできないのね…私たち」  
「もともと僕に恋をする資格なんてありませんよ。まきこんでしまったヒナギクさんには  
もうしわけないですけど…」  
 ヒナギクはあの活発な瞳をとりもどしてハヤテを見上げる。  
「いいよ。ハヤテ君だから…それと…ふたりきりの時は敬語をやめてくれない?」  
 ハヤテは淡雪のように微笑んで、  
「分かりました…じゃなくて分かったよ、ヒナギク」甘いキスをした。  
 
 活気と希望に満ち溢れた白皇学園の朝。  
 そして、校門の前に笑顔の少女がひとり、燦然と立っていた。  
道行くすべての生徒と明るく挨拶を交わしながら。  
「おっ!ごきげんよう。ヒナギク」  
「あ…おはようございます、ヒナギクさん…」  
 生徒会長桂ヒナギクは気後れの含まれるハヤテの挨拶にびくりと身体を震わせる。  
「お…おはよう、ハヤテ君…ナギ」  
 ものすごく怪訝そうなナギをしりめに、ヒナギクは落ちつかなげに指を  
交差させながら、ハヤテに目配せする。  
 ハヤテはその意味を悟って、小さく頷いた。  
 

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