「くっ・・・本当に借りてきてしまった。」  
 
三千院ナギは、ベッドの上に転がっている3本のビデオテープを睨みながら冷や汗をかいていた。  
今をさかのぼること3時間前。ナギはワタルに借りていた「初代ビックリマン」のビデオ(ヘッドロココが誕生する辺り)を返しに、一人で『レンタルビデオVタチバナ』に行った。  
 
「ワタルー。・・・・サキさーん?」  
 
しかし、どういうワケだか店内に人影が見当たらない。どうやら開店していながら留守のようだ。  
三千院グループを自力で越えるとか吼えてるが、こーゆー細かいトコが杜撰だと積み上げは望めまい。ナギはそう思った。  
仕方が無いので返却手続きは自分で勝手にやらせてもらう事にした。仕事放棄している店主のためにわざわざ帰ってもう一回来る気は無かったし、ここに家出した時にもレジの仕事は経験していたのでやり方は熟知している。  
 
一通りの手続きを終えたナギが何の気なしに横を見ると、そこには在庫整理の途中だったと思わしきビデオテープの山が積まれていた。  
 
「こんな積み方したらビデオが痛まないのか?」ナギは親切心から、山を適当にバラけさせた。そこでやっと気付いた。ビデオテープの山が全て『アダルトビデオ』だった事に。  
ナギは動揺した。この店には何度も来ているが当然アダルトコーナーに入ったことは無い。興味がまったくないワケではないが、知り合いが店員をやってる店でアダルトを漁るワケにはいかないし、かと言って知り合いが店員じゃなくても普通につまみ出されるだろう。  
何より13歳の女の子が堂々とそんな場所に行けるワケもない。というワケで、今までナギは本物のアダルトビデオを目の当たりにした事が無かったわけだが・・・。  
 
辺りを見回した。誰も居ない。  
ナギは通常の3倍の速度でレンタル手続きを行った。自分の名義でやると後でバレた時に咎められるので、ここはクラウスの名義にしておく。これでクラウス以外は誰も迷惑しない。  
こうして彼女は初めて手にするアダルトビデオを手提げ袋に入れ、『レンタルビデオVタチバナ』を後にした・・・。  
 
「マリアさん、さっきお嬢さまが凄いスピードで自室に入っていきましたけど、何かあったんですかね?」  
 
綾崎ハヤテは、今しがた目撃した雇い主の挙動不審な有様について、マリアに質問した。  
しかしマリアも、ビデオを返しに行って帰ってきたという事以外は分からなかったので、軽く首を傾げて見せるだけだった。  
 
「まぁ、あの子の行動全てを心配しても居られないですけど・・・。」  
「けど・・・今更ですけど、休みの日にアニメビデオばっかり見てるのはまずいでしょう。引きこもりにターボがかかっちゃいますよ。」  
 
それはマリアも常日頃から考えている事だった。だからといって無理やり外に連れ出しても、何だかんだと文句を言いつつ屋敷に帰ろうとするだけなので、これといった対策は打てないままだった。  
しかし屋敷に勤めて日が浅いハヤテは、マリアほどには諦めていなかった。  
 
「よし!せっかく晴れてるんですし、僕がお嬢さまをピクニックに誘ってみます!」  
「え?ピクニック?」  
 
マリアは「ありかもしれない」と思った。考えてみれば、ナギが自発的に外へ行く最大の原動力はハヤテとのデートなのだから、その路線で攻めてみるのも悪くない。  
ただマリアの心配の種としては、これ以上ナギの熱を上げてしまうと勘違いがバレた時のダメージが──────とか思ってるうちにハヤテは行ってしまった。「まぁいいか」。マリアは今日のところは成り行きに任せる事にした。  
 
 
生まれてから今までで、こんなに背徳感の混じった興奮は初めてかもしれない。デッキにビデオを刺す瞬間、ナギはそんな事を考えた。  
部屋を暗くして雰囲気を出し、音声が漏れないようにイヤホンを装備する。我ながら凄い入れ込みようだ。  
 
(しかし・・・ハヤテとこれから付き合っていくなら、いつかは通る道!今はいいとしても数年後に困らないために予備知識をつけておくのだ!)  
 
ナギの性知識は乏しい。学校の性教育で教える範囲を最低限抑えてるだけで、それ以上の雑学を知らないし、実際どういう光景なのかも具体的に想像できない。年上に囲まれて生活しているだけに、その辺にやや焦りがあった。  
 
ビデオが始まった。  
会社名クレジットなどが出たあと、年端も行かない自分と同じくらいの少女が画面に現れた。どうやらカメラマンにインタビューを受けているようで、どうでもいい質問に笑顔で答えている。  
 
(これがアダルトビデオ・・・?)  
 
ナギはちょっと訝ったが、退屈な時間はすぐに終わりを告げた。カメラを固定するとカメラマン自らが少女に近付き、服を脱がせ始めたのだ。  
カメラマンはかなり不恰好な男だったが、可愛らしい少女がそんなカメラマンにいたずらされているという美醜のコントラストがナギの興奮をあおった。  
 
そして、カメラマンの手が少女の胸や股間に伸びていく。少女の吐息に熱がこもり始めた。ナギの心臓も早鐘を打つように鼓動を激しくしている。  
そのとき部屋の扉の外から不意に声をかけられた。「お嬢さまー、入ってよろしいですかー?」。今度は驚きで心臓が止まるかと思った。  
 
「わっ!バ、バカ!ちょっと待て!入るなよ!?」  
 
ナギは慌てふためいてビデオを止めようとした。しかし慌てて動いたせいか、イヤホンがTVから豪快に引っこ抜けてしまった。「あ〜〜〜!やめて〜〜〜!!」。少女のあえぎ声が部屋の外まで聞こえる。  
 
「お嬢さま!どうしたんですか、今の声!何かあったんですか!?」  
「うわあああ!入ってくるなあああ!!」  
 
ナギの制止の言葉も空しく、心配したハヤテが扉を開けてしまった。パニック状態のナギはTVの電源を消す事すら思いつかなかった。  
 
ハヤテは状況の把握に数秒を要した。あまりにも想像外の状況だったからだ。  
TVには不細工な男に体を弄られてる少女の姿が映っている。どう見てもアダルトビデオです。ありがとうございました。  
そして真っ暗な部屋の中心で、TVから抜けたイヤホンを耳からぶら下げて、我が主が肩を震わせて俯いている。  
 
(こ・・・これは・・・入ってはいけない場所に入ってしまったのでは・・・!)  
 
ナギの表情はよく見えないが、しゃくりあげているように見える。泣いているのだろう。  
そりゃ思春期の興味としてコッソリとアダルトビデオを見ている時に、毎日一緒の屋敷で生活してる執事が踏み込んできたのだ。泣きたくもなるだろう。恐らくナギの人生で最大の恥だ。  
 
「(ど、どうしよう・・・!とにかくフォローしないと・・・!)あ、あのー。お嬢さま・・・。」  
「・・・・軽蔑するか?こんなもの見てて・・・」  
「い、いいえ・・・誰でも興味を持つものです。恥ずかしい事じゃ・・・・」  
「恥ずかしいに決まってるだろ!!このバカ!!バカ!!バカ!!」  
 
傷ついてるようなので何とか慰めようとしたが、迂闊な言葉は逆効果のようだった。  
ナギはあらん限りの罵声(ほとんどバカとしか言ってないが)を浴びせながら、ハヤテに向かって残りのビデオを投げつけた。とっさに受け止めたビデオにはそれぞれ『ロリコン天国』『少女の楽園』といった怪しいラベルが貼られていた。  
 
「あの・・・お嬢さま・・・」  
「何だ!何か文句でもあるのか!!」  
「いや・・・えっと、一緒に見ましょうか。」  
「・・・・・は?」  
 
ハヤテの意外な言葉に、逆ギレしていたナギも一瞬勢いが止まる。ハヤテは更に続けた。  
 
「2人で見ちゃえば僕も共犯ですよ。もう一緒に恥かいちゃいましょ♪」  
 
ナギは戸惑っていた。TVには相変わらず弄ばれている少女が映っている。  
そしてベッドに体育座りして見ている自分の横には、同じように体育座りしているハヤテが居る。イヤホンは1つずつ分け合っている。  
 
(と、隣にハヤテが居ると落ち着かないものだな・・・)  
 
ビデオの内容が頭に入ってこない。隣に居る男が何を考え何を感じているか、それだけが気になって仕方が無かった。  
一方のハヤテも、落ち着いているとはいえなかった。ナギの羞恥を和らげるために一緒にビデオを見る事にしたとはいえ、やっぱり異常なシチュエーションだ。何よりビデオの内容がロリコン向けなのが一番困る。自分は恋愛対象にも性対象にも子供を含まない健全な16歳だ。  
 
(まずいなぁ・・・。こんなビデオ延々見せられてたら、お嬢さまの事まで変な目で見ちゃいそうだよ。)  
 
ハヤテは横目でちらっとナギを見た。ナギは画面の方を向いているので、視線には気付いていない。  
まだ成長期の体のラインは、セーターの上からでは胸の膨らみすら確認できない。だがミニスカートから伸びる白く細い太ももは、滑らかなで「触ったらさぞかし気持ちいいだろう」と思わせてくれる。  
 
(って、何考えてるんだ!相手はお嬢さまだぞ・・・!)  
 
ハヤテは首をぶんぶん振った。そんな葛藤の間にもビデオの内容は進んでいく。  
カメラマンがズボンとトランクスを脱いで下半身を晒した。モザイク越しとはいえ、ナギは生まれて初めて勃起した男根を目にした。  
 
「な、なぁ・・・。ハヤテのも・・・興奮したらあんな風になるのか?」  
「え?あ、あー・・・・そうですね。一応男なもので・・・。」  
「・・・・今、興奮しているか?」  
「へ?」  
 
お嬢さまの様子がオカシイ。普段の無邪気な顔、偉そうな顔、そのどれとも違う艶っぽい表情で話しかけてくる。興奮してもう恥がどうこうという次元は超えたようだ。  
 
「なぁ、見せてくれないか。ハヤテの・・・。」  
「あー・・・・お嬢さま・・・。」  
「雇い主の私の命令が聞けないのか?クビにするぞ。」  
「・・・・それは困りますねー・・・。」  
 
命令には逆らえるわけも無い。ハヤテは仕方なくズボンのベルトを外し始めた。  
その様子をナギはじっと見つめている。これじゃあさっきと逆で、今度は自分がお嬢さまに辱められてるみたいだ。ハヤテは、女装させられたとき以上の羞恥で頭がオーバーヒートしそうだった。  
 
ズボンを下ろすと、バリバリにテントを張ったトランクスがお目見えした。正直、裸の下半身を晒すよりも下着一枚の時のほうが勃起が目立つ。ナギは息を呑んだ。  
 
「凄いな・・・ビデオを見て興奮したのか?」  
「いや、実際ビデオはそんなに・・・・。」  
「ん?じゃあ、なんだ?」  
「あ、いや、その・・・・。」  
 
問い詰められて、視線がうっかりナギの太ももに行ってしまった。その視線を追って、自分の足を見下ろすナギ。慌てて短いスカートの裾を引っ張って、太ももを隠そうとする。  
 
「・・・・ハヤテって意外とスケベだな。もしかしてずっと見てたのか。」  
「そ、そんな事は─────」  
「説得力ないぞ、こんなにしておいて・・・。」  
 
ナギがトランクスの上からハヤテの怒張に触れてきた。ハヤテにとっては他人に触られる経験は初めてだった。「にゃあっ」。思わず声が出る。その声が余りにも素っ頓狂だったので、ナギはケラケラと笑い始めた。ナギはテンションが相当上がってるようだ。  
 
「あはは。・・・いいぞ、触りたいなら触っても。ほら。」  
 
ナギはベッドの上に足を投げ出して長座の体勢になった。普段は意識しない子供の足が、魅力的な女性の脚線に見えてしまう。ハヤテは唾をゴクリと飲み込んだ。しかし最後の理性が行動を押し留める。  
 
「けど、お嬢さま・・・。いいんですか?」  
「いいと言ってるだろ。お前なら・・・ハヤテならいい。遠慮するな。」  
 
その言葉で吹っ切れたように、ハヤテはそっとナギの太ももに手を伸ばした。弾力はあまりないが、決め細やかな肌触りがハヤテに快感を与える。ハヤテは撫でたり揉んだりしながら愛撫を続けた。  
 
「ハヤテ・・・アレやってほしい」  
 
ナギがTVを指差しながら言った。ハヤテが画面に目を向けると、キスシーンの真っ只中だった。  
 
「いきますよ───・・・お嬢さま。」  
「ん・・・・。」  
 
ナギのあごを指で支えて上を向かせる。目を閉じたナギの顔がハヤテのすぐ目の前にある。  
お嬢さまってこんなに可愛かったんだ。ハヤテは改めてナギの美少女ぶりを堪能しながら、そっと口付けた。  
軽く唇を当てるだけのキスから、自然とお互いに舌を絡ませる。拙いキスだが、2人にはそれで十分に刺激的だった。何度も何度も触れ合う。  
 
「はぁ・・・ハヤテぇ・・。」  
 
ナギが吐き出す色っぽい吐息に、一瞬ハヤテの頭がクラッとくる。まずい。これ以上はまずい。  
 
「あの、お嬢さま。今日はこの辺で・・・」  
 
これ以上この空間に居るとアッサリと一線を踏み越えそうだったので、ハヤテは役得を名残惜しみながらも、切り上げようとした。そもそもキスしているのも、普段の自分を考えれば有り得ない。この部屋の空気は人をオカシクする。  
しかしナギは、そんなハヤテの言葉を意に介さず、もう一度トランクスに触れた。  
 
「終わりにするなら、その前にこれ。」  
 
好奇心旺盛なお嬢さまは、ハヤテの勃起を見るまで引き下がる気は無いようだ。ハヤテはさすがに躊躇した。マリアに裸を見られた時も相当恥ずかしかったが、この至近距離で自分自身を見せるのは恥ずかしいなんてレベルではない。  
 
「いや、お嬢さま。それだけはちょっと────」  
「えいっ」  
「ひゃあ!」  
 
口ごもっているハヤテを無視して、ナギは思いっきりトランクスをずり下げた。そこには、中性的なハヤテの顔や痩せた上半身からは想像も付かないような、男性の昂ぶりがあった。  
天を突くような勢いで勃起している肉棒を目の当たりにして、ナギは硬直していた。  
 
「こ、こんな形をしているのか・・・」  
「お嬢さまぁ・・・勘弁してくださいよぉ・・。」  
 
ハヤテが泣きそうな声で哀願する。いや、目にはうっすら涙を浮かべているかもしれない。こんなにも可愛らしい男なのに、股間には女を貫く凶器がちゃんと備わっている事が、ナギには不思議でならなかった。  
 
「んむぅ・・・ん・・・(クチュクチュ)」  
 
聞こえる声のトーンが変わったので、ハヤテは反射的にTVを見た。そこにはカメラマンの股間を口で愛撫する少女の姿があった。  
 
(うわっ、凄いな・・・)  
 
ふとナギの方に向き直ると、ナギもTVに目を向けていた。顔を真っ赤にして呆けている。フェラチオという概念自体が、彼女の頭の中に無かったのだろう。だとすれば今ナギが受けている衝撃は察するに余りある。  
 
「・・・・ハヤテもあんな事して欲しいのか?」  
 
(して欲しいのか・・・って、頼んだらしてくれるって事!?いやいや、そうじゃなくてお嬢さまに、そんな僕のものを舐めさせるだなんて、駄目だ駄目!・・・でも本当にしてくれるなら・・・いや、そうじゃなくて!)  
 
ナギの思いがけぬ言葉に、ハヤテの頭の中は上へ下への大混乱だった。  
ハヤテとて年頃の男の子。夜に部屋で一人になればヤラシイ妄想で自分を慰める事もある。その時にはマリアやヒナギクをおかずにしたりもするし、現実には絶対に出来ないフェラチオなんかも妄想の中でさせたりする。  
しかしそんな妄想の中にも、ナギだけは出てきた事が無い。彼の中でお嬢さまは特別なのだ。  
 
「い、いや、でも─────うぅ・・・・」  
「そんなに恥ずかしがるな!わ、私だって恥ずかしいんだ!」  
 
赤面して狼狽しているハヤテに、同じく首から上が真っ赤に染まっているナギが怒鳴りつける。彼女としても相当覚悟をきめて言った言葉らしい。  
 
(ここで断る方が、お嬢さまに恥をかかせる事になるかも・・・)  
 
ハヤテは吹っ切れた。あとでちょっと気まずくなるかも知れないが、今はその事は考えないようにしよう。それよりも「ナギお嬢さまの口奉仕を受けてみたい」という下半身の命令に素直従って、快楽に身を任せてみたい。  
 
「じゃあ、お嬢さま・・・お願いします。」  
 
ハヤテは両手でナギの頭を優しく掴んだ。そしてゆっくりと自分の方に向けて押し倒す。  
 
「うわわ」  
 
驚いたナギはベッドに手を突いた。が、腕立てする力も無い彼女は腕で支えきれずに、あぐらをかいているハヤテの太ももの上に倒れこんだ。大きく膨らんだ肉棒が顔の前数センチの所にある。ナギは息を呑んだ。  
上を見ると、ハヤテもこっちを見ている。期待している眼差しだ。  
 
「お嬢さま。」  
「う、うむ・・・。」  
 
ナギは意を決してハヤテの男根に手を伸ばす。初めて触るそれの感触は、熱く、そして固い。人間の体がこんなに固くなる事があるのか、とナギは驚いた。  
指の腹で勃起の側面をそろそろと撫でてみると、ピクンピクンと反応する。気持ちいいのだろうか。ナギが上目遣いにハヤテの表情を確認する。目を閉じて息を荒くしているようだ。  
 
(ビデオと同じようにやればいいんだな・・・)  
 
ナギは今もなお上映中の参考資料に従って、ハヤテの股間へと顔を近づける。一種独特の匂いが鼻を突くが、これもハヤテの匂いだと思えばイヤではない。  
いざ口に含むには勇気が要ったので、まずは舌を伸ばした。チロチロと舌先で亀頭をくすぐる。ハヤテが「うっ・・・」という声を漏らした。  
 
ハヤテは快楽と興奮と背徳感がないまぜになった気分で、自分の股間に顔を埋める少女を見ていた。  
あのお嬢さまが、プライドが高く自分本位で負けず嫌いのお嬢さまが、自分の汚らわしいものに口で奉仕してくれている。フェラチオの感覚よりも、シチュエーションそのものがハヤテの気分を高揚させる。  
いきなり咥えこむことは出来ないのか、舌でペロペロと舐めているだけだが、それで十分に気持ちいい。  
 
「うう・・・お嬢さま・・・気持ちいい。」  
「そ、そうか?」  
 
ナギは何だか嬉しそうに笑った。体の柔らかさを褒められた時のように、屈託の無い笑顔で自分が認められた事を喜んでいるようだった。  
ナギは勢いに乗ったのか、今度は口をあーんと開けて、ハヤテの肉棒を飲み込むように咥えていった。油断すると歯が当たりそうになるので、その辺は気をつけた。まぁ気をつけても慣れてない以上はちょっと当たるのだが。  
 
「んぐっ・・・ぐぅ・・・む・・・・」  
「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・・」  
 
息苦しそうに男根をしゃぶる少女の声と、その気持ちよさに浸る少年の声が、まるでアダルトビデオのワンシーンのように聞こえる。ハヤテはだんだん頭がボーッとしてきて、知らず知らずのうちにナギの頭を抱えて自分の股間に打ち付けるように前後させていた。  
ナギはそんな扱いにも健気に耐えて、ひたすらハヤテに快楽を送り込む事に専念した。  
 
ハヤテの手がナギのセーターの裾を捲り上げていき、白い背中がじょじょに露わになっていく。上半身を裸にして胸を触ろうと言う意図は明らかだ。  
ナギは慌てて左手でその動きを止めようとした。だがハヤテは構わずにずり上げて、ナギの胸に手を伸ばす。ナギはいったん肉棒から口を離して抗議した。  
 
「こ、こら!やめろ!」  
「何でですか?」  
 
ハヤテがトロンとした目で不思議そうにこちらを見ている。  
 
「何で・・・って、私の胸なんて触っても仕方ないだろ。小さいし・・・。」  
「・・・・気にしてるんですか?お嬢さま。」  
「気にしてなどいない!」  
 
気にしてるらしい。ハヤテはそんなナギの態度に苦笑しながらも、「僕は触ってみたいな」などと言いながら再びセーターの中に手を突っ込んだ。もう抵抗は無駄だと悟ったのか、ナギはまたフェラチオに戻った。ブラジャーの上からハヤテの手が乳房に触れてくる。  
 
(・・・あー・・・)  
 
ナギはハヤテの手の動きにビクビクしながら、それを振り払うかのように男根への奉仕に没頭する。  
素肌の上をなぞる愛しい男の手。ブラジャーが外され、裸の胸にその手があてがわれる。控えめな乳房が、初めて男に触られている。  
ナギは思った。頭がオカシクなりそうだ。  
 
合計すると30分くらいの出来事だったのかもしれない。しかし2人にとってはとても長い時間のように感じた。  
終わりは唐突に訪れた。ナギの胸と唇を堪能していたハヤテが、限界に達したのだ。  
 
「ああああ・・・・お嬢さま、もう出ます!顔を離して!」  
(え?出る?)  
 
あ、射精か。性教育で習った知識をナギが思い出す前に、ハヤテのペニスは我慢しきれずに、ナギの口の中へと精を放った。「むぐっ!?」。ナギは慌てて口を離したが、今度は顔に向かって次々と精液が放たれる。  
 
「うわぁ・・・!」  
「あ!お嬢さまスイマセン!」  
 
謝ったとて射精が収まるわけでもなく、困惑するナギに向かってハヤテはたっぷりとザーメンをぶちまけた。髪の毛から顔にかけて、ドロリとした白い液体で汚されたお嬢さまの顔は、ある種ハヤテに新たな興奮を与えたが、ナギ本人はそれどころではなかった。  
 
「何で我慢できんのだ!あ〜・・・こんなに汚れてしまって・・・」  
「あうぅ・・・スイマセン!あ、僕が拭き取りますんで!」  
 
慌てふためいたハヤテは、側にあったティッシュでナギの汚れを取った。射精を切っ掛けに、部屋の空気がいつの間にか通常のものに戻っている。アダルトビデオもすでに終了している。  
 
「あの・・・今日はその・・・」  
 
精液を拭きながらハヤテが口ごもる。冷静になると相当とんでもない事をした。13歳のお嬢さまに自分のものをしゃぶらせて、挙句の果てに胸や太ももまで楽しんで、性的はけ口にした。自己嫌悪でいっぱいだ。  
 
「気にするな。私が望んだんだ。」  
 
ナギの方は、照れながらも罪悪感などは無いらしい。むしろ愛するハヤテと具体的なスキンシップが出来て、ちょっと満足しているくらいだ。  
 
「ハヤテが良ければ・・・またしないか。」  
「え・・・・!う、あ、はい。」  
 
ハヤテは「今後どうなるんだろう」と不安になりながらも、一方でこの淫靡な空気に浸っていたいという雄の欲求もあり、何となく肯定の返事を返してしまった・・・。  
 
 
 
了  
 

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