「あれ……気がつきましたか? ヒナギクさん」  
 
ヒナギクには一瞬何が何なのかもわからない。  
彼女にできたのは突然意識を刺激した声に反応して、びくりと全身を震わせることだけだった。  
目を開けているのにもかかわらず、彼女の目にはただ眼前の闇しか映らない。  
そして少しずつ彼女の身体に感覚が戻ってくる。  
自分の腕は両方とも後ろ手に何か堅いものでがっちりと固定されている。  
膝を折って何か温かいものに跨っている。  
そして自分の脚の付け根をずしりと覆っている痛みと、温かさと、むず痒さにも似た――。  
 
「貴女のおかげで僕はせっかくの職を失うことになっちゃいましてね」  
ハヤテの声が続ける。  
「この度は、前々から一度でいいからやってみたかった」  
唾液が口腔の内を這い回るような舌なめずりの音が聞こえる。  
「自分の人生に対する鬱憤を誰かに受け取ってもらうっていう」  
ハヤテの冷たい手がヒナギクの頬を撫でる。  
「とっても健康的なストレスの発散法を」  
手がヒナギクの腰に滑り降りていく。  
「ヒナギクさんで実践してみようと思って」  
 
ヒナギクは自分が何も着ていないことに気づき、ぎくりと体を強張らせた。  
「ちょっとハヤテ君、これは……」  
そこまで言いかけて自分が跨っているのは声のする位置からして、  
ハヤテの腰だということに気づいた。  
「え? え?」  
ヒナギクの顔はみるみる紅潮していく。  
「そうなんですよ、ヒナギクさん」  
まるで悪戯を見つかった少年のようなハヤテの声が応える。  
「そういうことなんです」  
「ちょっ」  
ヒナギクが体を動かそうとして身をよじると脚の付け根と自分の内に鋭い痛みが走った。  
「いッ」  
「ヒナギクさんの寝てる姿見てたら我慢できなくて」  
「く…… 」  
ヒナギクの顔が少しずつ認識し始めた確かな痛みにゆがみ始める。  
「いッ……あ」  
ヒナギクが立て続けに体を揺する。  
「ああ、ごめんなさい。ヒナギクさんが起きたらまた元気になっちゃったみたいで」  
ハヤテの逸物の脈動が、今しがた破られたばかりのヒナギクの純潔の証を刺激しているのだ。  
「そろそろ動いていいですか?」  
ハヤテの両手がヒナギクの腰に添えられる。結合部からくちっという液体の音がした。  
ヒナギクは顔をゆがませて、覚醒から徐々にピークに達した痛みに耐えている。  
「だ、ダメ、動かないで……本当に痛いんだから」  
内臓を抉られるような鈍重な痛みに耐えながら、息継ぎも苦しそうにヒナギクがつぶやく。  
「どっちが命令できる立場かわかってるんですか?」  
ハヤテがあきれたような声で答えた。  
「まぁいいですよ、いくらでも刃向かって下さい」  
ハヤテの手がヒナギクの身動きのとれない裸身を撫でまわす。  
「ただし……」  
ハヤテが身を起こしてヒナギクの耳元でささやく。  
「ここ僕の股の上ですけど」  
ハヤテが両手をヒナギクの腰に回して体を固定する。  
吐息がヒナギクの耳にかかり、ヒナギクはぶるっと体を震わせる。  
それを見たハヤテがにやりと嗤う。  
「……」  
ヒナギクは真っ赤にした頬を隠すようにハヤテの肩に顔を埋める。  
「そういえば気づいてますか? ヒナギクさん」  
ハヤテが再びささやく。  
 
「僕、ゴムつけてないんですよ」  
一瞬雰囲気に浸っていたヒナギクは、  
その言葉の意味が頭に染み渡るかどうかのタイミングで暴れ始めた。  
「ちょっと、やめてハヤテ君、抜いて、お願い!」  
「いやですよ〜」  
ハヤテはヒナギクの後ろ手に縛られた腕の上でがっちりと指を組み合わせていた。  
「あまり暴れないでくださいね。それ、ちょっと気持ちいいですから」  
体を離そうとして暴れていたヒナギクの動きがぴたりと止まった。  
「動きすぎると、出ちゃうかも」  
「ちょっと、それだけはやめて!」  
ヒナギクが叫び声をあげた。ヒナギクの体がぶるぶると震え始める。  
「ちょっと揺らしてみたりして」  
ハヤテがヒナギクの体を抱きしめたまま腰を揺する。ベッドがぎし、と音を立てた。  
「キャー! バカバカ動かないでよ!」  
ヒナギクが必死で身をよじってハヤテの拘束から逃れようとする。  
「バカ!! ヘンタイ!! いじわる!!」  
必死の抵抗も空しく、ハヤテがヒナギクの体を固定したまま、  
腰を律動に乗せてゆっくりと動かし始める。  
「あっはっはっ、僕はお嬢様の執事なので……」  
ハヤテの動きは徐々に大きくなっていく。  
「お嬢さまのもとへ帰れるのなら獣にも悪魔にも……」  
ハヤテはヒナギクの耳を舐めながらつぶやく。  
まるで世界をのろう呪文を唱えるように。  
「もー!! バカー!!」  
ハヤテの頬に伝う涙には気がつかずに、  
ヒナギクは悦びを覚えていく自分に気づきながらも叫び続ける――  
 

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