○月×日 (晴れ)
今日も伊澄さんと咲夜さんがいらっしゃいました。
一時期はハヤテ君とナギのすれ違う愛に色々と気を遣いましたが、今となってはそれすらも懐かしく思うばかりです。 あの日……ナギが勇気をもってハヤテ君に告白をした日から、全ては一瞬にして変わってしまいました。
今こうやって日記を書いているときにもハヤテ君の部屋から、どたばたとあわただしく動いている音が聞こえてきます。 あの扉の奥で一体何が行われているのか、想像に難くありません。
そういえば、ハヤテ君が変わる前に撮った写真を今日みつけました。大事にとっておこうと思いましたが、もし私がこれを持っていることがハヤテ君にばれたときには……一体何をされるのかわからなかったので、破って捨てました。
私はそこでペンを止め、いつのまにか感じていた喉の渇きを癒すためにキッチンへと行きました。
ハヤテ君の部屋から遠く離れたキッチンであっても、小刻みの振動とギシギシというベッドがきしむ音、そして伊澄さんの苦しんでいるような、悦んでいるようなどちらともつかない声が響いてきます。
それにしても、何があの日にあったのか。 確かにハヤテ君はナギのことを好いてはいましたが、年下は恋愛対象ではない、と言っていたほどですし、私から見てもハヤテ君がナギを女性として見ることはほとんどないだろう、と思っていたんですけれど。
あの日、ナギが物心ついてから始めて私と一緒に寝なかった日……私がどうも落ち着かなくてずっと音楽を聴きながらすごしていた夜に何があったのか。
伊澄さんの声が、明らかに悦びを含んだ一際大きい声の後、ぷっつりと切れました。
もう終わりなのでしょう。 ですが、あの化け物は一日中体力を消費することしているというのにも関わらず止まるところを知らないかのようにあの扉を開けて外に出てくるのでしょう。
敵は日に日に強大になっていきます、一昨日までは最後の防衛線である私で食い止められたものの、昨日はついに私を気絶させて外へと出てしまいました。
今度は誰が虜にされたのか、今日庭の掃除をしていたところ、門のところで熱に浮かされた表情をしたヒナギクさんがうろうろしているのを見かけましたから、おそらくは……。
私が自分の部屋についたときには既にハヤテ君は下半身の自己主張の激しいモノを剥き出しにしたまま、何も言わずそこに座っていました。
私はソレをちらりと見ただけで、指先がちりちりし、瞳の奥が熱くなるのを感じてしまいました。
腰から下の力が抜けるような虚脱感を感じ、いやらしいぬめりが一点に集中していきます。 そのぬめりは、ハヤテ君のそそり立つ肉棒についている粘液と同種のもので……。
「マリアさん、この写真はどうしたんですか?」
今まで気付きませんでしたが、ハヤテ君は右手に何かの紙片を持っていました。
それは元々一枚だったものがバラバラにされているようで……見つかったらハヤテ君にもっと甘い言葉を投げかけられてしまうと思って捨てた写真でした。
その写真はセロハンテープできれいに元の形にされてあり、染みもくっきりと映ってしまっています。
「こんなものでオナニーしてしまうほど溜まっていたんですね。 すいません、僕の気がきかないもので……」
そうじゃない……そうじゃないのに……ハヤテ君は澄んだ瞳でこちらを見てくるたびに胸が苦しくなってしまいます。
「でも大丈夫です。 今度からはマリアさんも僕の部屋に来れるようにナギお嬢様に頼みますから。 はは、ナギお嬢様が認めてくれるかどうかわかりませんけどね」
嘘だ……ナギはすでにハヤテ君に骨抜きで、ハヤテ君の言うことならばなんでも従うでしょう。
万が一、ナギが拒否したとしても、はいと言うまで、イキそうになる寸前で肉棒を引き抜くという拷問のような寸止めを繰り返すでしょう。 それでもナギが聞かなかったら……想像すらしたくないです。
あの部屋に入ってはいけない。 あの部屋に入ってしまったら、私は私でいられなくなってしまう。 理性はここにとどまれと私に語りかけますが、本能は私に進めと背中を押してきます。
恐らく今拒絶したとしてもハヤテ君は何も言わないでしょう。
ですが、それをしたところで私があの部屋に足を踏み入れてしまうのは時間の問題であると認めざるを得ません。 結局のところどうあがいてもハヤテ君には勝てないのです。
負けが決まっているゲームで一体得るものはなんなんでしょうか? このままいっそ全てハヤテ君にゆだねてしまったら……。
私は慎重に言葉を選び、ハヤテ君に対して答えを返しました。
●月+日 (はれときどきぶ…)
かゆ うま