「ふっ、なかなかやったが所詮僕の敵ではなかったですね」  
 白皇学園五つの行事のうち一つのマラソン自由形。  
 これに僕とお嬢様が参加したのですが、のっけからスタートのタイミングを逃すなどハプニングを起こしながらも、裏道を全力で走りなんとか五位まで上り詰めました。  
 しかしここでもう一つの関門が現れてしまいました。  
 ネクタイの君の襲撃です。  
 「僕は、お金が大好きだからね」と信じられないほど爽やかに言ったネクタイの君が、優勝候補として見られている僕たちに襲いかかってきたのです。  
 普段の僕であれば、もしかしたらネクタイの君の攻撃をかわし、逃げ切ることができたかもしれません。  
 が、そのときには疲れ果ててへとへとになったお嬢様を抱えていました。  
 しかも先日サメやら爆弾やらによって負った怪我が完治していない体……到底逃げられることはできないだろう、と腹をくくったとき、二人の白と黒のメイドが現れました。  
 メイドブラックマックスハートとメイドホワイトマックスハートと自称する二人は、なんと僕を助けてくれるらしいです。  
 てゆーか見たまんま、サキさんとマリアさんなんですが……。  
 まあとにかく、そのお二人がネクタイの君を食い止めてくれるそうなんですが……。  
「……マリアさん!         とサキさん! 大丈夫ですか!?」  
「ハヤテ君!? 何で戻って来たの……て、あ」  
「……なんで一瞬の空白が見えるんでしょうか?」  
 お二人はネクタイの君の薔薇攻撃を受け、傷だらけにもかかわらず、なんだか元気でした。  
 が、やはり殺人拳を使えそうで使えないらしいマリアさんと、  
戦闘という言葉にもっとも遠い天然……もといちょっとお茶目なメイドさんのサキさんでは自他共に認める一流の執事であるネクタイの君に勝てるわけがありません。  
「ふふ……ハヤテ君、戻ってきてくれたんだね……だけど自分の主人を放っておいて執事を名乗ろうと思うその態度は気にくわないな」  
「大丈夫です! 絶対安心して預けられる人に預けてきましたから!」  
「だが置いてきたのは置いてきたのだろう?」  
「くっ……そのことは否定しませんが、ここで貴方を倒さなければ、お嬢様の身の危険は一層多くなると判断しました。 よって、ここで貴方には手早く退場願います」  
 僕はいつになく燃えていました。  
 お嬢様は、偶然であったヒナギクさんに土下座して頼み込んだら、少々悦な顔をして二つ返事で引き受けてくれたので安心です。  
 ヒナギクさんは地面に額をこすりつけて頼む僕を見てなんだかサディスティックな笑みを浮かべ、  
「マラソンが終わったら生徒会室に来なさい」とか言っていたのがやや気がかりではあります。  
 が、まあとにかく、ヒナギクさんは義に厚い人ですからお嬢様をちゃんと保護してくださっていると思います。  
 とはいえ、戻ったらお嬢様と共にマラソンを再開しなければなりません。  
 マリアさんとサキさんの力……いや、サキさんの力は別にいらないや、とにかくマリアさんの力を借りて、ネクタイの君を撃退しなければ。  
「手負いでしかも手早く片を付けるとは……僕も舐められたモノですね。 手加減はしませんよ」  
 ネクタイの君からの猛烈な殺気が僕の足をふるわせます、ですが、ここで勝たねば……全ては終わってしまいます。 臍下丹田に力を込め、全力で踏み込みました。  
 立っていた場所には薔薇が刺さり、ネクタイの君も移動をします。  
 ネクタイの君は流石に一流の執事だけあって、薔薇投げ以外にも近接格闘性能においても僕よりも数段上にいるでしょう。  
 唯一僕がネクタイの君と張り合えるものがあるとするならば、体力と運動神経……しかし体力は今後も残さなければなりません。  
 運動神経も怪我がうずいていつもの100パーセントの力は出せません。  
 ですが……  
 
 
 負ける気がしない!  
 
 
「ちょこまかちょこまか逃げているだけでは僕を倒せませんよッ」  
 一体ネクタイの君は何本薔薇を隠し持っているのか。  
 さっきからずっとかわしていますが、底をつきることはないようかに投げてきます。  
 僕は適度な間合いをとり、近づきも遠ざかりもしません。  
 ネクタイの君は真っ向からぶつかって勝てる相手ではないのです。  
 中距離攻撃用の武器と言えば、そこいらに転がっている石ぐらいしかありません。  
 無論、それを拾おうとするものならば、一瞬の隙をつかれ一瞬で薔薇の剣山のようにされてしまいます。  
 しかし、ネクタイの君は僕との戦いに酔っているようで、僕サイドにマリアさんがいることを失念していました。  
 サキさんは、まあ、僕としてはいなくてもいいかな、と思ったりしますが……とにかく。  
「止まりなさい! ネクタイの君とか言う人!」  
 マリアさんの声が響きました。  
 マリアさんはがっちりとちびっこい子どもを捕まえています。  
 よく銀行強盗がマンガとかで子どもを人質にとっているシーンを彷彿させます。  
「マラソン自由形は二人ペアでクリアしなければならないんですよね? ならもうあなたのパートナーはこちらの手にいます! 大人しく降伏してください!」  
「!!」  
 ネクタイの君はためらいもなく薔薇を投げました。  
 無論、その薔薇はネクタイの君のご主人様に命中しました。  
「痛ッ! 痛いッ! そ、そんなためらいもなくッ!?」  
 作者がキャラと名前を忘れているので、大した台詞もなく、その子は気絶してしまいました。  
 とにかく、ネクタイの君がその子を抱えていっても、  
その子の持っている薔薇はマリアさんの手によって薔薇なだけにバラバラにされてしまったので、マラソンの完走は不可能です。  
 と、いうわけで僕は特にバトルもせず、うっかりもののネクタイの君に勝利しました。  
「……くっ、引き際を濁すことは一流の執事のすることではありません。  
 ハヤテ君に出し抜かれたのは少々歯がゆいですが、ここはその狡猾なお姉さんに免じて退くことにしましょう……  
 おぼっちゃまにお仕置きをしなければなりませんしね」  
 ネクタイの君はものすごく自分勝手でした。  
 この自分勝手さも一流の執事として必要な素養なんでしょうか?  
 
 まあ、とにかく、適当にバトルシーンは終わり、ほっとします。  
「あ、ありがとうございました、マリアさん」  
「ええ、どういたしま……って、私はマリアという人じゃありませんッ! メイドブラックマックスハートで……ハッ!? も、もう私行きますッ! さらばッ、です」  
 僕は逃げだそうとしたマリアさんの手を掴みました。  
「な、何をしているんですかッ、は、離してくださいッ」  
 マリアさんは僕の手を振りほどこうともがきましたが、僕がにっこりと微笑んであげると、僕の意をくんでくれたのか、顔を青ざめさせました。  
 まるで昼のテレビドラマを見るような目つきでサキさんがこちらを見ていますが、今回は無視です。  
 僕も一度見られながらシてみたかったのもありますが。  
「だ、駄目よ、ハヤテ君……い、今マラソン中でしょ?」  
 
「いえ、僕も一応見習いとはいえ三千院家の執事です。  
 受けた恩を返さずにしておくことは三千院家の名誉を傷つけることになりますので……マラソンなんかよりお礼をすることの方が優先事項です」  
「い、いいわよ、お礼なんて。  
 困ってる人を助けてあげるのが……その……私たちの使命ですから」  
「そういうわけにはいきません……ですが、僕は一億五千万の借金があるただの執事です。  
 しかも今はマラソン中ですのであなた方の力になるということもできません……ただ、僕が先輩のメイドにいつもしてあげている『お礼』をあなたにしてあげたい!」  
 
 びくりとマリアさんは反応しました。  
 油の切れかけた機械のように、鈍い音を立てながら僕から目をそらそうと顔を動かします。  
 そしてその細身の体からは信じられないような力を出して、逃げようと足を動かしました。  
 が、手を掴まれたまま逃げることなんてできません。  
 しばらく藻掻いて疲れさせたところを、マリアさんの体を力一杯引き寄せます。  
 
「きゃっ。 だ、駄目よハヤテ君……さ、サキさ……じゃなかったホワイトが見てます……そ、それに今日は外でなんて……」  
「『今日は』外で? 『今日は』、『今日は』ってなんですか?」  
「い、いや、そ、その……それは……」  
「別にいいんですよ、メイドブラックマックスハートさん。  
 あなたが本当は誰であるかなんて僕は気にしません。 僕は他の誰でもないメイドブラックマックスハートさんにお礼をしたいんです」  
「だ、駄目。 そんな……はぅっ」  
 
 まだ何かを言いたいそうにしていた口を無理矢理塞ぎ、手をそっとそのプリズムーな胸にマリアさんの這わします。  
 マリアさんと出会ってからほんの一ヶ月ほどしか経っていませんが、まるで一年ぐらい経ったかのようなとても濃密な時間を過ごしてます。  
 年頃の男と年頃の女が一つ屋根の下で暮らしているということで、僕とマリアさんの関係はイくところまでイっているのです。  
 今こうしてマリアさんの耳元で甘くささやき、ときおり軽くみみたぶを噛んでやっているだけで、だいぶマリアさんの体温が上がってきました。  
 開は……げふんげふん、僕とマリアさんの努力の結果で、どうやらマリアさんは普通の体より遙かに快楽に敏感になっています。  
 一旦火が点けば、あとは適当にあおってやればマリアさんの中で段々と燃え上がってくれるはずです。  
 
「……あっ……だめ……は、ハヤテくぅん……」  
「ん? なんですか?」  
 
 ゆっくりとほぐすように愛撫していた手を止めてマリアさんの言葉に耳を傾けます。  
 マリアさんの顔はもう真っ赤になって、目尻はとろんと下がり、瞳は潤みきっていて、すっかりできあがっていました。  
 ですが、ここでそのままマリアさんの望むものをあげるわけにはいきません。  
 
「……なんですか? ブラックさん」  
 
 マリアさんは手を止められたことが不満なのか、少し拗ねたそぶりをしました。  
 僕は敢えてそれを無視し、更にマリアさんに詰めよります。  
 
 ほんの少しだけ胸を触っていた指を動かしましたが、それはマリアさんに気持ちよくなってもらうための動きではなく、  
むしろ、もう少しでかゆいところに手が届いたのに、という感じをマリアさんに与えるためのものであり。  
 マリアさんはますます拗ねてしまっているような表情をしました。  
 ぷいと僕と顔を合わせないように向き、自分の不機嫌を精一杯表現しています。  
 が、僕の腕の中にいて、快楽に溺れている弱みを僕に見せまい、しかしこの感覚を手放す真似はしたくはない、といったジレンマがありありと見えてきました。  
 それが、いつものクールで知的な雰囲気を持ったマリアさんとのギャップを産み、たまらなくかわいらしく見えるんですが。  
 
「どうしたんですか、ブラックさん? ……やっぱり気持ち良くなれませんか……」  
 
 だからそっと手を離しました。  
 するとマリアさんは明らかに落胆の声をあげ、反射的にこちらに振り返ってきました。  
 僕は残念そうな顔を作り、身を退きます。  
 マリアさんは僕と目が合うなり、またぷいっとそっぽを向いてしまいましたが、もじもじと手を動かしていて。  
 今すぐに後ろから抱きしめて、「嘘ですよ」と言ってやりたい衝動を抑え、一歩二歩と歩いていきます。  
 恐らく、マリアさんも僕がこのままマリアさんの見えないところまで行ったら、  
なんとか自分の意思をとりもどし、二本足でがっしり立って、ちゃんと頭の中で七桁のかけ算ができるぐらい意識を回復していたでしょう。  
 そう、僕がマリアさんの見えないところまで行ったら。  
 もちろん、僕はそんな馬鹿な真似はしません。  
 そっと、もう片方のマックスハートさんに近寄っていきます。  
 
「……どうも、メイドホワイトマックスハートさん、さきほどは危ないところを救って頂き、ありがとうございました」  
 
 礼儀正しく、地面でへたりこんでいるサキさんに対して頭を下げました。  
 さきほどのマリアさんとの行為を見て、興奮してしまったのか、顔が真っ赤で呆然とした目つきで僕を見上げてくる恰好でいます。  
 ホワイトマックスハートの変装衣装のせいで、いつものエプロンドレスよりももっとふんわりと広がったスカートが地面に大きな円を作っていました。  
 
「え? あ? はい? ど、どうも……」  
「で、細かいことははしょりますが、お礼をさせていただきます」  
 
 僕はしゃがんでサキさんのほっぺに軽いキスをしました。  
 サキさんもまだまだウブで、ただ頬に唇が触れただけくらいのことなのに顔を真っ赤にしています。  
 
「な? な? な……な、なにゅを!?」  
 
 戸惑うことは予測の範囲内です。  
 手を伸ばし、逃げられないようにサキさんの頭をホールドし、今度は唇と唇が触れるキスをしてあげました。  
 
「む、む、むぅぅむぅぅ」  
 
 もちろんのようにサキさんは抵抗します。 マリアさんの比じゃないほどに。  
 そりゃあ、僕とサキさんと知り合ってからまだそんな日が浅いですから。  
 
「……どうでした?」  
 
 サキさんは潤んだ目で僕をにらみつけてきました。  
 なんでこんな酷いことをするの、というメッセージがひしひしと感じられ、僕の心の奥底に罪悪感ともっと彼女のそんな表情が見たいという残酷な願望が浮かんできました。  
 心の奥底に潜むS性に少し戸惑いながら、僕は口を開きました。  
 
「ホワイトさんを見ていると、とある女性を思い出します。  
 彼女は僕の主人の許嫁のメイドさんなんですけれど……」  
 
 サキさんは面食らった様子できょとんとしていた。  
 僕の主人……つまりはお嬢様の許嫁のメイドさんはつまりサキさんのこと。  
 まさかここで僕の口からサキさんのことが出るとは流石の、というかいつも通りにサキさんにとって思いもしれなかったことだったのでしょう。  
 
「その人はとってもいい人なんですよ。 優しくて、真面目で……まあおっちょこちょいなんですけど」  
 
 僕はちょっと意地悪い笑みを浮かべて、くすりと笑いました。  
 
「そういえばこの前、ワタル君のコレクションルームに、超強力磁石放り投げちゃってましたね。  
 ワタル君、カンカンでしたけど、僕は友人の秘密を言いふらすのが趣味じゃないので犯人はサキさんだとわかってないようですけど。  
 でも最近思うんです、黙っていてあげることが本当にサキさんのためになるのか……ワタル君だって自分の貴重なコレクションを失っているんですから、  
 サキさんにも何かしらの罰がなければ駄目なんじゃないでしょうか? でも、今回、ものすごくワタル君怒ってましたから、もしバレたらサキさんクビになっちゃうかも……」  
「ひ、秘密にしといてくださいッ!」  
「……? なんでメイドホワイトマックスハートさんがそんなに言うんですか?」  
 
 サキさんはどきりとした様子でこっちを見てきます。  
 僕は首を斜め六十度ほどに傾け、疑問を持った表情でサキさんと向き合います。  
 ここであんまり追いつめすぎると、サキさんはその性格ゆえに自爆する可能性大です。  
 
「あ、そうか、メイドホワイトマックスハートさんは正義の味方ですからね。 そういうのは放っておけないんですね。  
 いいですよ、ホワイトさんもそう言っているんですから、このことはワタル君に秘密にしておきましょう。  
 サキさんだってもう反省しているでしょうし」  
「はっ、はい。 そうです。 私は正義の味方で、反省して……」  
 
 やっぱり自爆しちゃったか。  
 まあ、いいや、聞かなかったことにしておこう。  
 そっちの方が面白いから。  
 
「まあそんなことはいいんです。 サキさんは、えーと、とっても潔癖そうです。  
 ワタル君はレンタルビデオ屋をやっていまして、もちろんアダルトビデオも扱っているんですが、  
 サキさんはそんなアダルトビデオを陳列するときにいつも顔をしかめて、  
 ワタル君にことあるごとに「こんな真似はしないでくださいね」って言うんです。  
 でも、本当のところは……」  
「あ、あわわわわっ、い、言わないでくださいッ」  
「言わないでって、サキさんはとんでもないエッチな人だってことをですか?」  
「そ、そうですッ! そんな恥ずかしい……あ」  
 
 僕はおもむろにサキさんに抱きつきました。  
 大丈夫、僕ならできる。  
 
「で、まあお礼ですが……」  
 
 僕はサキさんを抱きしめながら立ち上がりました。  
 サキさんも僕に引っ張られる形で立ちます。  
 まだ何か言おうとしていたサキさんの口を再び塞ぎます。  
 
「ん……ふっ……んんっ……」  
 
 今度は舌を奥深くまで潜り込ませました。  
 するとサキさんの舌も、応えてくれるように僕の舌に絡まってきます。  
 サキさんの舌を味わいながら、僕はサキさんの歯茎を舐めていきます。  
 
「……ん……」  
 
 やはり感じているのか、時々ぴくぴくとサキさんの腰が動くのを感じます。  
 僕はそっと右手を降ろしていき、サキさんの肉付きのよいお尻を触りました。  
 最初はその柔らかな感触を味わうように手を動かします。  
 
「……ん……んん……」  
 
 そしてゆっくりとその手を上にあげ……ちょうど尾骨辺りをクリッと刺激してやります。  
 
「んんッ!?」  
 
 サキさんは不意な刺激にびっくりしたのか、目を見開きました。  
 僕はゆっくりとサキさんの口の中から舌を抜きます。  
 銀色の糸がサキさんの口と僕の舌を繋いでいるのが、なんだかいやらしく見えました。  
 
「どうします? 人間やめますか? それともここでやめますか?」  
「……や……イヤです……」  
「はい?」  
「い、イヤですッ!! 最後まできっちりしてください!」  
「ふふ、わかりましたよ。 ホワイトさんもサキさんに負けず劣らずエッチですねぇ」  
 
 サキさんの顔がかああと赤くなっていきました。  
 僕はそんなサキさんに対して……  
 
 ちょんちょんと僕の服が後ろに引っ張られました。  
 ようやく我慢ができなくなったのか、もしかしたら冷めちゃったのかとちょっと不安になりましたが。  
 後ろを振り向いてみたら、顔を下に向けて、僕の服を掴むメイドブラックマックスハートさんがいました。  
 
「どうしたんですか? ブラックマックスハートさん」  
「あ……あの……」  
「僕は今ホワイトさんにお礼をしているんです。 用は後にしておいてください」  
「え? ……そ、そんなの……」  
 
 再びサキさんの方へと向くと、サキさんはもうすでにスイッチが入っていたようで、子どもっぽく唇をつんと突き出し、目をつぶってキスをねだってきました。  
 あれほどキスの方法を教えてあげたというのに、もう忘れているみたいです。  
 まあ、そこがサキさんらしいといえばサキさんらしくていいんですが……。  
 ゆっくりサキさんをリードしながら、再びべーゼを交わしました。  
 
「では……」  
 
 そっと腰に巻いていたものをほどくと、その下からはいつものサキさんのメイド服が見えてきました。  
 スカートの端を掴み、そっと上にたくし上げます。  
 
「あ、これくわえておいてください」  
「へ?」  
「くわえて、落ちないようにしておいてくださいね。 もし落としたら……どうなるかはまぁ……僕の気分次第というか……と、とにかく落とさないことに越したことはないですから」  
 
 軽く脅しの言葉を述べてから、そのスカートの端をくわえさせます。  
 ……別に僕はくわえてください、と言いました。  
 でも手を使っちゃいけないなんて一言も言ってないんですが、そんなことも気付かずにサキさんは両手をぎゅっと握り、体の横で肘を突っ張った状態にしています。  
 まあ手を使ったら使ったで、手を使うのは禁止、と言うんですがね。  
 
「……まだ触る前から濡れてますね。 あはは、サキさんにそっくりだ」  
 
 こういうときに他の女の人のことを言うのはマナー違反だとわかっていますが、よくよく考えれば目の前の人はサキさんであって。  
 しかもサキさんはマリアさんとは違って、僕がまだメイドホワイトマックスハートがサキさんだってことに気付いていないと思っているみたいです。  
 だから、僕が今言っていることは本音だと思っているはず。  
 そっとサキさんの下着ごしに、サキさんの大事なところに触れます。  
 サキさんは二十歳にしては子どもっぽい白の木綿生地に赤くて小さいリボンがついているものを着ていて……。  
 そっと触れるだけでも、手に水分が感じられます。  
 僕はほぐすことはせずに、そのまま下着ごとぐっと人差し指をサキさんの中に埋めていきました。  
 
「む……むっ!?」  
 
 さすがにいきなりそこまで乱暴なことをされるとは思っていたかったのか、びっくりした表情になりうっかり口を開きそうになってしまいました。  
 震えながら声を出さないように耐えるサキさんのほっぺに軽くキスして、僕はしゃがみこみ、さしこんでいた指に回転をくわえました。  
 サキさんの下着の生地を巻き込み、ぐいぐいと……左に回したと思えば右に、右に回しきったら今度は左に。  
 
「ぐっ……むぅぅ……ッ!!」  
 
 サキさんは辛そうな声を上げ、快楽に耐えているみたいです。  
 ちょうどよい頃合いを見計らい、指を抜いてあげました。  
 下着がゆっくりとサキさんの中から出てきます。  
 ゆっくりとサキさんの中から漏れる液体がサキさんの足を伝い、膝近くまで垂れています。  
 
 僕の指もびっしょりで、口の中に入れると少ししょっぱい味がしました。  
 
「じゃ、次は……と」  
 
 サキさんの下着をするすると脱がし、それはぽいと後ろに放り投げました。  
 サキさんの大事なところは、言うまでもなく綺麗でした。  
 ピンク色で、まるで処女のよう……。  
 これが僕のモノをくわえたなんてまるで嘘のように思えてきます。  
 外気に触れたそれはどこか寒そうで……ゆっくりと舌をのばして、割れ目の入り口を舐めました。  
 
「……んむぅぅぅ……」  
 
 スカートが大きく揺れ、サキさんがぶんぶんと頭を左右に振りいやいやします。  
 片手でサキさんのお尻にそっと手を伸ばします。  
 サキさんのお尻はとっても柔らかくて、それでいて弾力があって、とても触っていて幸せな気分になってきます。  
 
 不意に僕の服の首もとに強い力が込められました。  
 あまりにイキナリだったせいで、僕はうまく反応できなくて、仰向けに倒れ、次の瞬間には僕の顔を何かが隠してしまいました。  
 
「は、ハヤテくぅん……せ、切ないのぉ……」  
 
 どうやらマリアさんのようです。  
 流石に焦らしすぎたのか、我慢ができなくなってしまったみたいでした。  
 僕は僕の顔に跨ってこようとするマリアさんを押しのけ、そっと唇にキスをして、耳を軽く噛んであげました。  
 
 
 今度はサキさんが下、マリアさんが上になって重なり、足を開いてもらっています。  
 
「は、ハヤテ君……早くぅ……」  
「はいはい、今しますよ、ブラックさん」  
 
 すす、とじゃんけんのチョキの形した手を二人に近づけていきます。  
 十分潤った二人のそこに人差し指と中指は抵抗なく入っていきました。  
 
「あ……」  
「う……」  
 
 いれたまま何もしません。  
 ……そしてすぐにするすると抜きました。  
 
「さて、お礼はここで終わりです。 僕はもうマラソンに行かねばならないので……どうもありがとうございました、マックスハートさん達」  
「え?」  
「……は、ハヤテくぅん……そんな……」  
 
 わざとゆっくり歩いてマリアさん達に近寄りました。  
 呆けた目でマリアさん達は僕を見上げていましたが、そっと素早く僕のズボンの端を掴んできました。  
 
「ずるいわ……私たちをこんなにしておいて……」  
「そうです。 そのハヤテ君の大きいモノを中に……」  
「駄目ですよ。 よくよく考えてみたら、僕はマリアさんとサキさんに操を立てていたんです。 いくら恩人とはいえ、マリアさんとサキさん以外の相手ではちょっと」  
 
 さすがにマリアさんは頭の回転がいいのか、それとも僕とのつきあいが長いからか、僕が何を求めているのかわかったようです。  
 まあ、こんなことをする必要はないんですが、戯れの一つとして、ですね。  
 一流の執事たるもの細やかなことにも気を配らなければならないと思って。  
 えーと……。  
 その、なんですよ。  
 まあ、とにかくいろいろありまして。  
 
「は、ハヤテ君……そ、そんな前を大きくしてたら走りにくいでしょう? わ、私の体を使ってすっきりしてから?」  
「は?」  
「私は、その……性欲処理用のに、にく、肉便器よ。 だから、ね? た、ただの肉便器なんだから、マリアさんという人にも無礼にはあたりませんし……その、ハヤテ君?」  
「はい? なんですか? よく聞こえないんですけど」  
「だ、だから……ッ!!」  
「肉便器とか聞こえましたけど、そんなハヤテ『君』なんて言う人がそうであるわけないですよねぇ」  
「え……いえ、ハヤテ様……お願いです、もう焦らさないで……」  
 
 上下関係をばっちり明確にして、ようやくマリアさんご所望の僕の一物をそっと挿入していきます。  
 こう、マリアさんは僕のモノがとってもお気に入りらしく、曰く『女殺し』だのなんだの言われています。  
 僕としてもマリアさんが喜んでくれて嬉しいんですが。  
 
「あ、あああッ! 入ってくる、入ってきますぅ! ハヤテ君のがぁぁぁッ!」  
 
 下の方の肉壷にずぶりずぶりと音を立て、入ってくる僕の肉棒。  
 ただただ、サキさんの甘ったるい声と、マリアさんの「図ったな、シャア!」という風な落胆ぶりが見えるようです。  
 僕は素知らぬ顔をして、そのまま腰を前後に動かします。  
 とはいえ、マリアさんの手がこそこそと動いているのはめざとく見つけ、がしっと掴んで、にっこりと微笑みます。  
 
「何やってるんですか」  
「……」  
「駄目ですよ。 自分で慰めたりしたら……肉便器なんでしょう?」  
 
 僕も少々自分のことが悪魔に見えてきました。  
 今更、な気がしないでもないですけどね。  
 僕はマリアさんの濡れそぼっている箇所には指一本触れず、またマリアさんが自分で慰めないように腕をホールドしたままで。  
 
「もう……もういじわるしないでぇ……」  
「いじわるなんてしてませんよ」  
「うっ……うっ……してますよぉ……」  
「してませんってば」  
「……してる……」  
「してないです」  
「……」  
 
 マリアさんが本格的に泣きそうになりました。  
 こう、弱々しい一面を見て、サキさんの中に埋まっている僕の体の一部に血が集まってきました。  
 ですが、まだです。 まだヤれます。  
 執事たるもの、持久力には自信を持たねばなりません。  
 
「ホワイトさん……今日は中に出してもいいんですか?」  
「い、いいですぅッ! わ、私……は、ハヤテくんの赤ちゃんが欲しいぃぃぃんッ!」  
 
 と、いうことは危険日のようです。  
 サキさんてば、反応がいつも同じですからこう見極めは簡単で楽です。  
 嘘のつけない人ってこういうときに割を食いますよね。  
 まあ、危険日だからこそ中に出すのが通なんですが。  
 
「じゃ、出しますよッッ」  
「あ、ああああああああッッッッッ」  
 
 サキさんの体ががくがくと震え、その振動が僕に快楽の波を作ります。  
 最高ですよ、サキさんは。  
 
「あ、あつぃぃぃ! 中でドクドクッて……ハヤテ君のが一杯……」  
 
 サキさんの中で思いっきり放出しました。  
 サキさんはうっとりとした声を上げて、余韻に浸っています。  
 
 僕は一旦、サキさんの中から抜き、一物をマリアさんの入り口に添えました。  
 
「あ……」  
 
 マリアさんの中で期待がふくらんでいくのが分かります。  
 マリアさんのそこはひくひくと動き、今にも僕のものを飲み込んでしまおうとしていて……。  
 
「ブラックさん……」  
 
 マリアさんの中に、ありったけの腰の力を込めてねじ込みました。  
 
「ああああああああああああああああああああああッッッ」  
 
 うっ、や、やっぱり、マリアさんはいい……。  
 散々焦らしたのがよかったのか、マリアさんは獣のようなうなり声を上げたかと思ったら、その場でいきなりぐったりと倒れ込みました。  
 ……?  
 
 ……気絶しちゃいましたか……。  
 
「やっぱりちょっといじめ過ぎちゃったかな。 ごめんね、マリアさん」  
 
 マリアさんの目から溢れた涙に優しくキスをし、服を正しました。  
 
「え? は、ハヤテ君、気付いていたんですか?」  
「ええ、まあ、ナギお嬢様は気付いていなかったみたいですけど、サキさん」  
「わ、私のことまで? そ、そんな……知っててあんな酷いことを言ったんですかッ!!」  
「知ってたからこそ言ったんですよ。 他の人にサキさんの悪口なんて口が裂けてもいいませんから、安心してください」  
 
 まだ文句を言うサキさんにそっとキスをして。  
 
「じゃ、行ってきます。 サキさん、マリアさんをお願いしますよ」  
「は、はい……いってらっしゃいませ」  
「サキさん……愛してますよ」  
 
 マリアさんもですが。  
 
「か、かかかか、からかわないでくださいよ」  
「からかってないですよ。 じゃ、今夜、また三人で続きしましょうね」  
 
 僕は全速力で森を走り抜けたのでした。  
 
 
 
   おまけ♪  
 
 
 で、結局、その後、サキさんとマリアさん(メイドホワイトマックスハートさんとメイドブラックマックスハートさん)に励まされ、  
その実戦闘能力四倍になった僕は、チェックポイントで待機していたお嬢様を抱え、都合戦闘能力八倍の僕が奇跡の逆転劇をみせ、なんとか三千院の執事をやめることはなくなりました。  
 まあ、借金の方はちょっと色々あって、残っているんですけど……ははは。  
 それで、ヒナギクさんと約束したとおり、生徒会室にいったら「体育倉庫で待っています」という置き手紙があり、そこに赴いたのですが。  
 
「ハヤテ君、遅かったわね」  
「すいません。 ちょっと雪路先生に見つかっちゃいまして」  
「お姉ちゃんに? まあいいわ……」  
 
 ヒナギクさんは何故か体操服で、跳び箱に腰掛けていました。  
 そして僕の足下になわとびを投げました。  
 
「それで自分の足を縛りなさい。 ほどけないようにね」  
「はい?」  
「いいから。 ナギを預かってあげたんだから言うこと聞きなさい」  
「はあ……」  
 
 何がしたいのかよくわかりませんが、僕は言われたとおり、そのなわとびで足を縛りました。  
 なわとびは一人用のものではなく大人数用のがっしりとしたもの。  
 例え僕が全力で力を込めたとしても、縛られてしまったら切ることはできなさそうなものでした。  
 
「はい、縛りました」  
「よろしい。 じゃ、次は……って! なんで私の足を縛ってるのよ!」  
「え? だって今ヒナギクさんは『自分の足を縛りなさい』って」  
 
 ヒナギクさんが怒って跳び箱から飛び降りました。  
 が、足をなわとびで縛られているのでうまく着地出来ず、そのままうつむせに倒れてしまいました。  
 お尻を突き出すような恰好で地面に這い蹲ったヒナギクさんを見ていると、なんというかドキがムネムネしてきて……。  
 不意に跳び箱の横にどさどさどさと落ちるモノがありました。  
 それは、女の人が縄に縛られている写真が表紙の本で……所謂SM専門誌とかそういう……。  
 
「あ……」  
 
 表紙には「桂 雪路 勝手に持ち出し厳禁」と書かれていました。  
 うわー、あの人、ずぼらそうだけどこんなところだけはマメだなー。  
 ぴらと表紙をめくってみると、そこにあったのは、体操服を着た女性が縄に縛られ、ブルマの隙間から紫色のバイブをくわえている写真でした。  
 
 僕の頭が高速に回転し、今の状況がどういうものなのか計算しはじめます。  
 出た答えは……  
 
 まず、ヒナギクさんが雪路先生の部屋でこの雑誌をみつけました。  
 こんなものを持っているとは言語同断と没収し、生徒会室に持ち出し、興味本位と読んでいる間にドキドキと胸が高鳴って……。  
 それでマラソン大会で僕が「お嬢様を預かって頂ければ何でもします!」と頼んだので、ヒナギクさんの被虐魂に火がついて……。  
 
 ちらとヒナギクさんを見てみます。  
 全身が……特に紺色のハーフパンツがふりふりと揺れ、僕を誘っているように見えます。  
 
 や は り そ う か ! !  
 
 僕にはそういう趣味はありませんが、ヒナギクさんが求めているというのならばやぶさかではありません。  
 あたりを見ると、平均台、跳び箱、マット、バトンに縄跳び、その他にも色々と道具はそろっています。  
 しかも、ここに来る人は滅多にいないし、外から覗かれることはありません。  
 
「は、ハヤテくん……は、早くほどいてよ……私は縛られるほうじゃなくて、縛るほう……」  
 
 ヒナギクさんのハーフパンツに手をかけ、それを下着ごとずりさげました。  
 ヒナギクさんのアソコと後ろの穴が丸見えになりました。  
 
「ひゃっ! な、なななななな、なんで脱がすのよ……」  
 
 ヒナギクさんはちょっと怖いのか、少し声が震えていました。  
 でも大丈夫。  
 ヒナギクさんのぴっちりと閉じた性器を開き、中をのぞきこみました。  
 
「ひ、ひあああああッ! やだっ、見るな、見るなぁぁぁぁ」  
 
 ヒナギクさんのそこは綺麗なピンク色で、まだ誰の侵入も許していない印が……。  
 なるほど、怖がるはずです。  
 なんてったって初めてですからね。  
 でも、ヒナギクさんなら大丈夫でしょう。  
 初めてで、SMを求めてくる淫乱な女の子なんですから。  
 
「心配しないでください……初めてでも、僕はヒナギクさんを満足させることができる自信がありますから」  
 
 ヒナギクさんが準備したのか、SM雑誌の横に置いてあったローションを、バトンに塗りたくりました。  
 ヒナギクさんの股を開かせ、バトンを性器に押しつけてフトモモに挟ませます。  
 素股のようになったバトンを、ゆっくりと前後に動かして。  
 
「やっ、ち、違うッ、こうじゃない! そのローションはハヤテ君のお尻に……」  
 
 バトンは動かしたまま、ローションの余りを小指に塗り、そのままヒナギクさんのお尻の穴に。  
 
「あっ、あああああああああああああああああああああああ!!! いやっ、抜いて、抜いてぇぇぇぇぇぇぇ!!」  
 
 うん、ヒナギクさんもいい声で鳴いてくれます。  
 こういうところは雪路先生に似てますね。  
 まあ、ヒナギクさんには雪路先生とは違って恨みはありませんし、今回のこともご恩に報いるためにやるので、雪路先生みたいにはしませんけど。  
 
「大丈夫ですよ、ヒナギクさん。 こういった経験はまだ僕にもありませんけど、ヒナギクさんがこれなしでは生きていけなくなるくらい頑張りますから♪」  
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  
 
 
 その後、ハヤテの「女殺し」の虜にされたのはヒナギクだけにとどまらず、生徒会役員全員がヒナギクとハヤテの策略によって手込めにされたとかされなかったとか。  
 
 終わり  
 
 

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