12月27日午後4時。
「ハヤテ君は年上と年下、どっちが好みなんですか?」
三千院のお屋敷で、ハヤテとマリアは掃除をしていた。
屋敷はとても広く、常人であればたった二人でくまなく掃除することなど不可能に近いものなのだが、見習いとは言えど先人曰く「秘密道具を持っていないドラえもん」である執事のハヤテにとってそれは可能なことであった。
驚くべき手際と力技で屋敷は綺麗にされ、その分、タマやエイトなどの騒動の種が散らかしていく。
あまりマリアにとってハヤテ中心に何度も騒ぎを起こして、散らかった屋敷を片づけるのはあまり嬉しくないことではあったが、前は一人でしなければならなかった掃除に男手であるハヤテの存在は頼れるものであった。
だがしかしハヤテはただ騒動を起こしたり巻き込まれたり、掃除が上手い、ということよりも遙かに重要な意味を持つ人物でもあった。
三千院遺産継承者であり、この屋敷の主人である三千院凪に好かれているということだ。
それも尋常じゃないほどに。
誘拐犯に貞操を奪われそうになったとき颯爽と現れて自分の身を顧みず助けてくれたという恩があるうえに、変に力の入って誤解のしやすい誘拐の台詞を聞いたからって、これはないだろう、とマリアが思うほど。
元々、彼の全身から漂う「小物オーラ」は何故か肉食動物の前に震える小動物のような感じがして、ナギのようなお嬢様には好まれる易い人だった。
もっとも、ナギは思いこみの激しい半引きこもりのうえ身近に男性もいないせいかほれっぽく、押しに弱い性格だったのが偶然と偶然を重なり合わせてしまったのだった。
先日、マリアは気絶していたハヤテに下着をはかせるために四回もフェラチオをしてしまった。
本人曰く「あれは人工呼吸のようなもので……」という言い訳をしていたが、今頃考えれば何も口で奉仕することはなく、手でもなんでも使えば良かったことに気づかなかったことに対し、様々な後悔をしていた。
そのことが引け目になって、あまり恋愛事情に押し入って聞くことはいくらナギのためとは言えばかられたのだが、状況がそれを許さなくなっていた。
なにしろ一億五千万もの借金をナギは肩代わりしたのだ。
自分の一存で二人の中を上手くしようとしないことは、流石にマリアとしても荷が重い。
これも自分の人生の経験と、ナギのためだ、と思ってマリアは一歩踏み出したのだった。
「え? それはつまり女性のタイプということですか?」
ハヤテは何も知らないような顔をして言った。
実際、マリアの目論見もナギの誤解も何も知らず、ナギが自分のような貧乏人を人情で雇ってくれているということに感謝して、真面目に働いている人間なのだ。
毎回毎回迫りかかる不幸のせいか、ハヤテは自分のいる立場が何一つ分かっていない。
「ええ、まあ、そういう事です。 もしかして実は年下が好みなんじゃ」
「違います!」
特にナギが自分に惚れているなどもっての他の考えで、そもそもハヤテのストライクゾーンからナギは明らかに外れていて。
むしろハヤテにはマリアのような女性の方が好ましかったのだ。
故に、年下が好みなのでは、という問いかけにうなずくことはできなくて。
ハヤテの心中には「マリアさんエンディングのフラグが立った?」などとそういった考えが、ハヤテのうちに駆けめぐる。
「や……やっぱ断然年上がいいですよ!! 年上が!! 年下の子は可愛いとおもいますけど、やっぱり恋愛対象にはなりませんからねー!!」
「あ〜、やっぱりそうですか……」
ハヤテは期を失せずに突貫すべく意気込んで答え、マリアは予想通り現状が一枚岩でないことを改めて認識させられた。
この子、私に気を持っている、と。
こう態度があからさまなのにくわえ、ハヤテが元々嘘がつけない人間だというのに、わからない方がおかしいわけで。
いつの間にかほんのわずかなショックで瓦解してしまう微妙な三角関係が構成されていたことに、マリアは嘆息した。
マリアはハヤテに好かれていることに対しては悪い思いはしなかったのだが。
「ハヤテー! ちょっと来てくれー」
マリアはこれからどうしようかと今後のことを考えていたちょうどそのとき、ナギが階段の下の方に来て、ハヤテを大声で呼んだ。
「はーい。 今行きますよー」
ナギのお気に入りなだけに一日に何度も呼ばれ、遊び相手話し相手に日常の細やかな世話までハヤテは務めていた。
非情に有能で、今まで貧乏人だったとは思えないほど話題もある。
駄目両親とまだ設定だけしか存在せず原作には一度も出ていない行方不明の兄を持っているという家族構成のせいか、人のあしらい方を良く知っていた。
もっとも青春時代の大半をバイトに費やし、遊びにいくことなど滅多になかったせいか、女心というものは全く理解していなかったのだが。
「じゃあ、また後で。 マリアさん」
ハヤテはそういって、ナギのところへと走っていった。
すぐに階下でハヤテとナギが談笑している声がマリアのところへと届く。
ふとマリアは一人で掃除をすることに初めて寂しさというものを感じ、箒を動かす手を止めた。
「……」
ハヤテはマリアにとって新しい風だった。
この屋敷に住むのは三人で、ナギとマリアと倉臼。
倉臼は普段外出して滅多に戻ることはなく、ナギは大抵昼間はゲームをしたりタマと遊んだり、と一人暇つぶしをしている時間が多い。
もちろんその間はマリアは一人になるわけだ。
掃除をする手を止め、マリアは今まで感じたことの無い不思議な感覚に戸惑いながら、自室へと向かった。
自室に向かいながらも、背後から聞こえてくるナギとハヤテの楽しそうな声が、なぜだかわからないがとてつもなく耳に入るたびにマリアの体のどこかが痛んだ。
そっと後ろ手で自室のドアを閉めると、もはや声は聞こえなくなり、ただ自分の足が床につく音だけのみ感じられ。
しかし、何故かマリアの耳にはナギとハヤテの笑い声がこびりついて離れない。
落ち着かない気を紛らわせようとテレビをつけてみても、どうにも収まらず、五分もしないうちにテレビの電源を消した。
結局のところもやもやは消えず、マリアは一時間ほどそわそわと部屋の中を歩き回っていた。
「え!? ナギが私の役に立つことを?」
ナギとハヤテがマリアの部屋に来て、「何か手伝うことはないか」と尋ねてきた。
最初ハヤテがドアの間から顔を出したとき、スッとマリアの心は霧が晴れたかのように鮮明になり、次にナギが顔を出した途端、再びテンションは下がり。
しかしそれを表情に出さず、マリアは二人を応対した。
「でも役に立つことをしたいなら、大人しく部屋で本でも読んでてくれれば十分ですけど……」
「そ、それはどういう意味だぁ!!」
ふとマリアは食卓に飾る花が無いことに気が付いて、それをナギに頼んだ。
ナギは、任せろと胸を叩き、元気よく部屋から出て行く。
「おい、ハヤテも来い!」
「は、はい。 今すぐ……」
ハヤテもナギの後を追い、部屋から出て行ってしまった。
一人残されたマリアは、再び釈然としない気分に揉まれ。
と、思っていたら、再びドアが開いてハヤテがちょこんと首をだし。
「あ、あ、は、ハヤテ君!? ど、どうしたの?」
「花は夕飯前にまで用意しなければならないんですよね? 何時くらいに帰ればいいのか、聞こうかと思いまして」
自分でも驚くほどにマリアは平常心を失って。
「どうしました? 顔が真っ赤ですけど……」
「な、なんでもないです。 そ、そうですね、大体六時前くらいに帰ってきていただければ……」
はい、わかりました、と答え、再びドアが閉じられる。
マリアはとりあえず、窒息しそうなほど止めていた息を吸い、大きく溜息をはいた。
心臓がまだ大きく拍動し、マリアはカァッと顔が熱くなるのを感じた。
どうやらマリアはあの三角関係が更に複雑になったことを悟ったわけで。
ナギはハヤテに好意を持ち、ハヤテはマリアに気があって、更にマリアはハヤテに……。
更に大きな溜息をついて、その場でぼおっと思案をめぐらすマリア。
自分の拾われた日に、ハヤテがナギに拾われた。
奇妙と言えば奇妙な共通点だとマリアは思っていた。
運命というものは特に信じているわけではなかったが、ハヤテが来てからは、それが存在していて欲しいという気持ちがあり。
「…………」
マリアは自室の窓に歩み寄った。
窓からは、ナギやハヤテ達が向かっている裏庭が見える。
マリアは窓枠の横の壁に体重をかけてよりかかり、そっと中から見ていることを見つからないように外を覗いた。
ふとどうして自分がハヤテに惹かれてしまうようになったのか、マリアは手を動かしながら考えた。
貧乏性と苦労がにじみ出ている顔、悪くはないが良くもなく。
性格、好ましいとは思うが決定的ではない。
体力、とても優れているが化け物みたいだと思うときもあり。
女装姿、流石に見惚れたがそれで相手に惚れるとなると自分の人格が異常としかいいようがない。
ならば。
水音がはっきりマリアの耳に届き、マリアは手を止めた。
マリアの下着はマリアの予想以上にが濡れていた。
頭の中には、あの事件で直視してしまったハヤテの一物が浮かぶ。
「や、やだ……私、はしたない……」
言葉で自分をとがめたが、マリアはあの剛直をすぐに忘れることはできなかった。
始めて見るといってもいい男性器の記憶にあてられ、マリアは興奮していく。
無論マリアはハヤテの肉棒だけが目当てに惹かれたというわけではなく、ハヤテの総合的なものがやはり決め手といえたのだが。
マリアの手はあろうことかスカートをめくり、白い下着を覆っている。
指は一本一本うごめき、湿り気を帯びた下着の上からマリアの秘部を刺激していく。
「あ……ふぅ……いぁ……ぁん……は、ハヤテ……くぅん……」
熱く、呆けるような声がマリアの口から漏れた。
マリアは指を動かして自分を慰めながら、窓の外を覗いた。
まだハヤテとナギは外に出ていないようで、誰もいない。
もしかしたらまだ屋敷の中にハヤテがいるかも、もし自分が上げている声がハヤテに聞こえて部屋に入られたらどうしよう、と考えて、マリアはますます興奮の度合いを深めていった。
ドアをノックされた音が響く。
しかし熱気に当てられていたマリアにはそれに気づくことはできなかった。
「呼びました? マリアさん」
ドアが開かれ、ハヤテが現れる。
マリアは顔を真っ青にして、スカートを戻した。
今までずっとハヤテに見られることを想像して興奮していたが、実際に見られたら一気に冷めてしまった。
「どうしたんです?」
ちょうどマリアとハヤテの間にはソファーがあり、ハヤテからはマリアの痴態が見えなかった。
ハヤテは何も知らない、といったように様子のおかしいマリアに声をかけた。
「あ、いえ。 なんでも、ありません」
見られた、という気持ちで何を考えればいいのかわからなくなったマリアは、とにかくごまかそうとした。
マリアはハヤテに自分の無様な恰好を見られたと思って疑わず、とてつもない焦りがマリアの心を支配していた。
自分の愛液で濡れた手を背中に回し、出来る限りの愛想笑いをする。
どうすればハヤテの記憶を抹消できるだろうか、と無駄なことを延々と頭の中で考え続けていた。
「本当に大丈夫ですか? さっきからずっと顔が赤いですけど……ひょっとしたら風邪を引いたんじゃ……」
マリアの様子がさっきから気になっていたハヤテが、部屋に踏み込みマリアに近づいた。
一歩一歩ハヤテが近づいてくるにつれ、マリアの思考は完全に乱され、正常な思考がますますできなくなっていく。
そんなマリアの様子に気づくことなく、ハヤテはマリアのすぐ近くまで来て、そっと手をマリアの額に当てた。
思わぬハヤテとの接触に、何か言おうとして失敗してただ口をぱくぱくさせるマリア。
「……熱があるみたいですね。 駄目ですよ、体調が悪いときは無理しちゃ。 お嬢様には僕からいっておきますから、休んでください、マリアさん」
ハヤテがそういって心配そうにマリアの顔を覗いたとき、緊張の糸が切れ思わずマリアは腰砕け状態になってしまった。
腰と膝から力が抜け、マリアはその場でへたりこんでしまった。
あまりの恥ずかしさに耐えきれず、一瞬意識が飛んでしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
それを風邪のせいだと信じて疑わないハヤテが、マリアの肩を揺すった。
目は虚ろでいきなりへたりこむとはただごとではないと思い、ハヤテはマリアの体を支えた。
「どどどどど、どうしよう? どうすればいい? と、とりあえず救急車を……」
とにかく手近な電話のところまで走ろうとしたハヤテの手を、マリアはしっかりと掴んだ。
「え?」
「だ、大丈夫……です、から……」
息を切らせたマリアがいった。
「大丈夫ですから、救急車は……」
「大丈夫じゃありませんよ! こんなに熱があるのに! ほら、手にもこんな汗が……ん? 汗?」
ふとハヤテは自分の手首を掴むマリアの手がやけに濡れていることに気が付いた。
その液体はどうみても汗の類ではなく、どちらかというと唾液などの分泌液のようで。
「……あ、あのー?」
いまいち事態を飲み込めていないハヤテは、ようやくなんだかマリアが複雑な事情にまみれていることに気づいた。
マリアの手についた液体が一体何かわからなかったが、それがなにかしらの意味を持っているのだと感づき。
マリアは更に力を込めてハヤテの手を引っ張った。
ハヤテは一瞬体勢を崩し、マリアの眼前まで迫った。
「あの、私を、私の寝室まで……連れて行ってくれませんか」
マリアはもはや我を忘れていた。
「……マリアさん。 お嬢様に言われた通り伝えてきましたけど」
そうマリアの寝室のドアを後ろ手に閉めたハヤテがいった。
ハヤテはさきほどまで一緒に裏庭に花を取ってくるはずだったナギに、「マリアに急に用ができたので、自分は手伝わなければならない」といってきたのだ。
本当はハヤテと二人っきりになりたいがためにナギはマリアに手伝いをすると言い出したのだが、マリアの体調がどうやら悪いと聞いてナギはハヤテを無理矢理連れて行くことが出来なかった。
一旦、腰の力が抜けて立ち上がれなくなったマリアを寝室に連れて行ったとき、マリアにそうしろといわれ実行したのだが、どうもいまいちその理由がハヤテにはわからなかった。
もう一度マリアの寝室に訪れてみたら、マリアの体調はどうやら回復しているようで、二本足で立っていたし、顔の赤みもうってかわってひいていた。
一体どうしたのだろう、と尋ねる前に、マリアはいきなりハヤテに近づいてきた。
「……見ましたよね。 ハヤテ君」
「見た? 見たって、何をですか?」
「とぼけないでください。 私を、私を見たんでしょう?」
「え? 見たって……マリアさんを? マリアさんを見たっていえば見ましたけど」
いまいち状況が把握していないハヤテは、マリアに押し切られるままに見たと答えてしまった。
マリアはハヤテの答えを聞くと、ハヤテの手を引っ張った。
「ちょ、ちょっとマリアさん……一体?」
何をされるのかと思いつつも、マリアには逆らえずハヤテはされるがままの状態で。
ハヤテは思いっきりマリアのベッドの上に突き飛ばされた。
痛ッと声を漏らし、なんでこんな目にあうのか、と考えた。
思いつく要因はたった一つもない。
そうしてまごまごしているうちに、マリアは自分の寝室のドアの鍵を閉めていた。
妖しげな笑みを浮かべ、ハヤテを見下ろすマリア。
そこまでまずいことをしたのか、と恐怖に身をよじり、マリアを見上げるハヤテ。
「見たんですよね、ハヤテ君。 でも、ハヤテ君だけ見るなんて不公平ですよね」
「は? はぁ……見たって一体なにをでしょうか?」
「不公平ですよね? 不公平だと思いません?」
「……だから見たって一体何を……」
「不公平?」
「……不公平です」
マリアの迫力に、思わず肯定するハヤテ。
マリアは返事を聞き、満足した笑みで。
「じゃあ、ハヤテくんのも見せてください」
ハヤテは痛恨の表情を浮かべた。
勢いに負けてうなずいてしまったものの、依然とマリアの何を見たのか、ならば自分は何を見せればいいのか、全くわからなかったからだ。
とりあえず、事情を知っているかのように肯定して、結局は知ったかぶりをしていたと白状するのは少し恰好がつかないと思ったハヤテは必死に心当たりを探った。
もちろん、ハヤテの知らぬことであり、いくら考えてみても答えは浮かばない。
そんなハヤテに痺れを切らしたマリアは、ベッドに腰掛けるハヤテにゆっくりとのしかかった。
「な、何を……マリアさん、何をするんで……」
なんとかしてこのような凶行をやめさせようとするハヤテは、次の瞬間、マリアに唇を奪われた。
脳が臨界点を突破し、あっという間にオーバードライブするハヤテ。
なんとかマリアから逃げようともがこうとしても、所謂ファーストキッスによって体から力が奪われていて、ろくな抵抗ができない。
ようやくハヤテが解放されたとき、ハヤテの脳と体は痺れてしまい、全く動けなくなってしまった。
「……ふぅ……いいですよ、ハヤテ君。 ハヤテ君がそんなに強情だったら、私が勝手に見させてもらいますから」
ベッドに横たわり、力なくうなだれているハヤテのズボンを、マリアは優しい手つきで脱がしていった。
ハヤテのトランクスにはテントが張り、力強く怒張が主張している。
マリアはそのとんがりを、そっと撫で。
「あ、ああぅ……」
触られていないようで触られている快感にハヤテは体をふるわせた。
マリアはそれに喜び、そっとトランクスを腰から脱がす。
ハヤテの腰に自分の腕を通し、隙間をぬうように指を滑らせる。
すっぽりとトランクスがハヤテの腰元まで行けば、あとは多少力を込めて引っ張れば、あっという間にハヤテの下半身は完全に外気にさらされる恰好になる。
「ま、マリアさん……何を……」
腰から下が涼しくなってようやく脳の痺れがとれたのか、ささやかな反論をするハヤテ。
とはいえ、体が動かせず、マリアのなされるままで。
ちょうど、さっきマリアが自慰をハヤテに中断され近づかれたときのように。
「こんなに……大きくなって」
大浴場の脱衣所でみたときと同じぐらい、いや心なしか大きく見えるそれを、マリアはうっとりとした目つきで見た。
愛しい人のそれは、マリアの思考をどんどん黒い欲望で染めていく。
今回は前回と違い、ハヤテが気絶していない。
どこをどう攻めたらどんな反応を見せてくれるのか、と考えると、マリアは背筋がぞくぞくするのを感じた。
そっと、マリアは白くて細い指をハヤテの怒張に絡める。
ハヤテは面白いほど反応をしめし、小声で「やめてやめて」と繰り返す。
反応すればするほど、「やめて」と弱々しく呟けば呟くほど、マリアの欲求は増大していった。
「ハヤテ君。 あいかわらず大きいですね。 これで何人女の子を泣かしてきたんです?」
まるで手慣れた女性のように振る舞うマリア。
マリアは経験は一度もないが、それでももだえ苦しむハヤテを目の前で虚勢が張りたくなり。
そっと指を上下に動かしながら、ハヤテに詰め寄るように問いただした。
「泣かす……って……そんな……僕は、まだ……」
「へぇ〜、童貞なんですか。 こんなに大きくて……いやらしい……」
「そ、そんな……あぁ……」
マリアは擦る速さを巧みに調節し、ハヤテにしゃべらせたいときには速さをゆるめ、黙らせたいときには速さを増してハヤテを攻めていった。
生殺しの気分と、高ぶりの気分を両方味合わされ、ハヤテはより饒舌になっていく。
「キスしたのはいつですか? 正直に答えてください、ハヤテ君」
「あ……あぁ……さっきの……マリアさんのが始めてですぅ……」
「へぇ、じゃあそれじゃ、私とハヤテ君はファーストキスを同時に無くしたんですね」
「え? そ、それじゃ……あッ、や、そ、とめてくださいぃぃ!」
ハヤテを絶頂付近まで追い立てて、直前で指を止めて逃がす。
マリアは強弱を巧みに使い分け、自分に有利な雰囲気を作っていった。
「オナニーは一日何回してるんですか?」
マリアでさえ自分で何を言っているのかわからぬほど雰囲気に酔っていった。
正気を保っていたら、こんなことを口にした瞬間自殺を決意する言葉も、すらすらと出てくる。
もちろん、責めさいなまれるハヤテは、それより何倍も恥ずかしい答えをいわなければならず。
「ほらほら、早く答えてくださいよ。 早くしないと……」
マリアの手がハヤテを握る。
思わぬ圧力に声にならない叫びをあげるハヤテ。
海老ぞりになってもだえたが、マリアはがっちりとハヤテのモノを掴んだままで。
「痛ッ……痛いです、マリアさん……お願いしますから……握らないで……」
「なら早くいいなさい、ハヤテ君。 このまま握り潰しちゃうわよ……ふふ、握りつぶしたらハヤテ君は女の子……そうしたら堂々と女装させることもできますねー」
マリアの今の発言に演技がかっているのは誰が見てもわかることだったが、この異常な状況に追い込まれ、正常な思考ができないままであるハヤテにそれを嘘だとわかることはできなかった。
それにくわえ、先日の女装騒動のときのトラウマがハヤテの心に新しい傷としてできており、タマやクラウスに襲われた記憶がフラッシュバックし。
もう二度とあのような目にはあいたくない、ましてやこれから一生ああして生きていかなければならない、と考えれば、到底ハヤテはマリアにあらがえるはずもなく。
「い……一回……です」
ハヤテのモノを握るマリアの力が強くなる。
「……ほっ、本当です本当です。 やめて、痛い……本当に痛いんですよッ」
正直に言ったのに、と裏切られた気持ちになってハヤテはがむしゃらに助けを求めた。
さきほどからのマリアの誘導に誘われ、逃げるという選択肢はとうになくなっていて、ハヤテがこの痛みから逃げるためにはマリアにすがるしかなかった。
「嘘……一日四回はしてますよね?」
「そ、そんなにやってな……ひぅぅっ!!」
貧乏人であるハヤテにとって、余計な体力を消費するオナニーは邪魔なものでしかなく、本当に週に一度しか行わないことであった。
というのも、クラウスにガンダムと言わしめたハヤテにとって、普段の性欲コントロールなど朝飯前でそれほど必要なかったのだ。
マリアに迫られている現在の状況は、長い間の貧乏生活に改善の余地が見え、少々予想外な展開だったため脳から独立している一物の自律神経が暴走しているのだが。
「ね? 四回、やってますよね?」
マリアは期待する目でハヤテを見、ハヤテの股間を掴む力をぎりぎりと強くしていく。
たまったものではないのはハヤテで、遠回しのマリアの要求に答えなければ苦痛に逃れられない。
とはいえ、マリアに屈服することはハヤテにさらなる精神的ダメージをもたらすことになり。
考えているうちにも刻一刻としてマリアの手がぎゅうぎゅうとハヤテのモノを潰してしまおうと強く握ってくる。
プライドか否かという選択を急に迫られて、とにかくハヤテは首を縦に振ってしまった。
「し、してますぅ……マリアさん、してますから……」
ようやく満足したのか、マリアの手の力がふっと抜け、ハヤテの一物が解放される。
「じゃあ、誰を考えてオナニーしているんですか?」
さらなる要求にハヤテは息を飲んだ。
そこまで内心を暴露して平気なほど、ハヤテの心は頑丈ではない。
しかし、答えなければ息子がなくなってしまう。
ジレンマに悩むハヤテ。
「ねぇ、ハヤテくん。 ひょっとしたら……ナギのことを考えてシテるの?」
マリアの妖艶な笑みがハヤテを圧倒する。
「ち……違います……お嬢様を考えながらなんて……第一お嬢様は子ども……」
「へぇ、そうですか……」
くすくすと小さく笑うマリアに、ハヤテはいいようのない恐怖に襲われる。
一体何をさせたいのかハヤテには皆目見当が付かず、ただ珍棒が最後まで残るようにマリアのご機嫌をとることしかできない。
シュッシュとこすられる肉棒は、痛いほど勃起している。
が、マリアの巧みな指使いのせいでまだ頂点に達することはできていない。
「じゃあ、ひょっとして私のことを考えてシテるの?」
「いいえ、違います」
即答だった。
マリアの考えを図りかねたハヤテに下された罰は、激痛だった。
「私のこと?」
「……はッ……はい、マリ、マリアさんのことを考えて……ッッ……」
マリアはそっとハヤテから手を離す。
マリアの苦痛から解き放たれたハヤテは、肩で息をし、その場を動くことができなかった。
ただ呆然と、マリアが服を脱ぐ衣擦れの音を耳で聞いている他にできることがなかったのだった。
「まぁ。 私のことを考えてシテるんですね。 どうしましょう、ハヤテ君の頭の中で私が犯されちゃってる……」
ふっとハヤテの視界に舞い戻ったマリアは、下着姿。
あの角度によって大きさが変わっているように見える胸も今日は一際大きく見え、秘部を隠す布きれは前が濡れそぼっている。
ハヤテを攻めてはいたが、それでもマリアは恥じらいのせいか顔を赤らめている。
ハヤテはマリアとは逆ベクトルの顔色をしている。
「ハヤテ君。 現実で私を犯さないでくださいね?」
意味深な言葉をいうマリア。
ハヤテはその言葉を理解できなくて。
「え? ああ、まあ……はい、わかりました」
承諾した。
マリアはほぅと息を吐き、誘っていることに気づかないハヤテにあきれ果て。
やっぱり年上の自分がリードしなければ、とマリアは考えた。
マリアは意を決して、ベッドに横たわって身を小さくしているハヤテに飛びかかる。
「ひゃあ! な、何をするんですか、マリアさん!」
「ハヤテくんを犯すんです」
「え? な、な、冗談ですよね?」
「ハヤテ君は私が冗談をいうと思っているんですか?」
「や、や……ひああああああ!」
マリアは自分がしつらえたハヤテの執事服をはぎ取った。
「な、なななななな、何をするんですマリアさん。 いや、さっきからずっと思っていましたが、敢えて言わせて貰いますよ、何してるんですかっ!」
多少の冷静さを取り戻したハヤテが大声で叫ぼうとする。
が、マリアに口を塞がれ、くぐもったうめき声しか出せない。
「ハヤテ君……なんでそんなに鈍いんですか?」
もが? と声をあげるハヤテ。
そっと、マリアはハヤテの口を塞ぐ手をどけて、口づけをした。
目を見開いて驚くハヤテ。
思わぬ大人への階段のステップアップで、うれしさ半分、驚き半分、といった表情をしている。
そっと口を離し、体勢を整えて、マリアは背中に手を回した。
「あ」
ふわりとマリアの胸を覆う物が落ち、ハヤテの眼前にプリズム胸が晒された。
やや下から見るそれは豊満な形態であり、ハヤテを満足させるものだった。
今更になって、ハヤテはマリアの柔らかな感触を感じはじめた。
もぞもぞと腰を動かし股間に勃つものを隠そうとするが、それを見越したマリアが手でハヤテの腰を抑えた。
「あ、マリア、さん……や、やめて……」
「ハヤテ君は嫌なんですか? 私も一応、女の子なんですけど……」
ハヤテはマリアが女の子だからこそ困っているのだが、マリアはそんなことお構いなしに振る舞う。
再びそっとハヤテの肉棒に手を添える。
今度はさっきとは違って、優しく、撫でるように。
ぴくぴくと反応するそれをいとおしく見つめるマリア。
秘所は妖しく濡れそぼり、おおよそ処女には見えぬそれに、ハヤテの手を掴んで誘導する。
「「あっ」」
ハヤテは動揺の、マリアは愉悦の声を上げる。
素早く手を引っ込めようとするが、マリアは許さずそのままハヤテの手を使って自分の秘所を愛撫させる。
ぼーっとしていたハヤテも次第に段々と興奮してきて、マリアが自分を誘っているのだと理解してきた。
ただ動かされていただけの手を、ゆっくりと自分の意思で動かしていく。
「あ……ようやく……気づいてくれた……のぉ……」
マリアが熱い吐息を吐いた。
ハヤテも自分の読みが間違っていなかったことにより確信を持ち、更に手の動きを激しくしていく。
ゆっくりとハヤテのモノをつかんでいたマリアの手も上下するスピードを増し、ハヤテをよろこばせる。
先に果てたのはハヤテだった。
長い間相手からいじられていたのはハヤテの方で、またハヤテもまだ年若かったから当たり前の結果だったのだろう。
だが、ハヤテはそのことをたまらなく恥ずかしく思って心持ち頭を垂れた。
「一杯出しましたね……」
マリアはそっとハヤテのちょっとへたれた肉の棒を口に含んだ。
白い精液がこびりついているソレは、マリアの口に苦く、また懐かしい味がして。
「あ、あっ……マリアさん、き、汚いです、そんなところ……」
「まあ確かに汚いといえば汚いですけど、今更ですし」
マリアの手慣れた口淫は、浴場の出来事があったせいか、ツボを巧みに刺激してすぐにハヤテを元気にした。
「ふふっ、元気ですね。 じゃあそろそろ私も……」
一旦マリアは立ち上がりするりと足から下着を抜いた。
生まれたままの姿になったマリアを、見上げるハヤテ。
今更ながら顔を真っ赤にして、目をそらした。
「醜い……ですか?」
「え? あ、いや、そのそういうわけじゃないんですけど……」
どこまで行ってもウブなハヤテを、リードするマリア。
そっとハヤテの顎に手を当て、自分の方へと顔を向けさせる。
真っ赤にして慌てるハヤテの唇と、再度マリアは自分の唇で塞いだ。
「うっ……むぅ……」
マリアは舌を入れ、ハヤテの舌に絡ませようとする。
一方ハヤテは、いくらマリアの舌と言えど自分の精液がついたものを舐めようとは思えず、おえっと吐いた。
「……嫌なんですか? 私が……こんな女だと知って幻滅したんですか……」
拒絶されたマリアはしょげかえる。
無論演技ではあるが。
それでも十分ハヤテを動揺させた。
「い、いや、違うんです。 その、なんというか……」
ふっとマリアは上目遣いでハヤテを見上げた。
目尻には精一杯涙を溜め、チワワのような訴える瞳で。
ようやくハヤテの堅すぎる理性のダムが決壊した。
半ばやけっぱちになったようにマリアの唇を奪い、貧乏生活で鍛え込んだ腕で力一杯マリアを抱きしめる。
ベッドの上にマリアを押し倒し、そしてそのままマグナムの位置を調整した。
「え? え? ちょ、ちょっと待ってください、私まだしょ……」
何の経験もなかったくせにハヤテは完璧にねらいをさだめ、そのまま吶喊した。
結果、ハヤテの剛直が今までなにものにも侵入を許さなかった地に強引に押し入った。
こなれていたとはいえ、そこはまだ前人未踏の地。
処女膜を突破したあと、血が出ないわけがない。
「あ? え……?」
ハヤテが違和感を感じ動きを止めたが、もはや後の祭り。
マリアの顔が苦痛に歪み、目尻から大粒の涙を流していることを見て、初めてハヤテは自分の犯した過ちに気づいた。
無論、ハヤテはマリアが処女ではないという思いこみがあったからこそ、犯した過ちだとは言え。
ハヤテは猛烈に、僕は腹を切って死ぬべきだ、と思った。
「ご、ごめんなさ……」
すごすごと体をひき、ハヤテが土下座して謝ろうとした瞬間横っ面を思いっきり蹴っ飛ばされた。
「……謝らないでくださいよ。 私がみじめになるじゃないですか……」
ハヤテにとっては、みじめになるならないの問題ではなかったのだが。
ただハヤテは、痛い思いをさせてごめんなさい、と言いたかったのだ。
僕なんかが処女を奪ってごめんなさい、という考えがハヤテの頭に全く無かったのは決して思い上がりでもなんでもなかったのだけれど。
マリアはハヤテのことを小さい人間と思っているからこそ生まれた誤解であった。
これも一つのほろ苦い初体験での失敗談である。
ともあれ、一旦中断したソレを若い二人が完全に止めるなんてことはなく。
二匹のケダモノ達は、未だ踏み入れたことのない境地へと向かって疾走していく。
「こ、今度はゆっくり……してくださいね」
先ほどの痛みがまだ響いているのか、若干震えたままハヤテにしがみつくマリア。
ハヤテはマリアのことを気遣いながら、ゆっくりと珍なる棒をマリアの中にインサートしていく。
マリアはしばしばまだ慣れていない行為に、痛みを顔に表してしまうが、その度にハヤテは動きを止め、マリアを気遣う。
マリアは常に「大丈夫です」を言い続け、ハヤテを催促するが、ぶっちゃけハヤテには全然大丈夫そうには見えなくて。
「マリアさん。 やっぱり止めましょう。 もう少し時間を置いて……」
「ハヤテくん、それ以上言ったら、殺しちゃいますよ」
「……ハイ……」
こうしてマリア主導権のまま、コトを致していったわけである。
ハヤテはそれなりに気持ちよかったがやはり気は休まらず、反対にマリアは痛みがあったものの実に効率よくこなれていった。
両者の関係が反転するのはそう遅いわけではなさそうな性交。
ハヤテはマリアに脅されながら、ようやく全ての男性器をマリアの中に埋めた。
その場で一旦動きはストップし、二人とも肩で息をする。
「大丈夫ですか、マリアさん」
「大丈夫ですよ、ハヤテくん」
マリアはキスを催促した。
ハヤテはそれを受け、三度目になる接吻をする。
ようやく二人の気分が同じくらいの割合になった瞬間だった。
「もう……動いていいですよ」
元来マリアは我慢強いタイプの人間で、多少の苦痛よりも相手のことを気遣い人種である。
まだ身を引き裂かれそうな痛みに襲われているものの、それでもハヤテが気持ちよくなってくれるように、と心遣いをした。
しかし、ハヤテは動かない。
「……どうしたんですか?」
「あ、いや……どうせならマリアさんも気持ちよくなれるぐらいになってからと思いまして」
負い目があるハヤテはマリアを主体に考えていて。
うっかり再び涙腺が緩くなってしまいそうになったマリアは、指先でハヤテの額をこづいた。
「生意気ですね、ハヤテ君。 私が動いていいっていってるんですから、ハヤテ君は何も気遣わず動いたらいいんですよ」
「いやでも……痛いのをずっと我慢するってことは辛いことですよ。 せめて、もう五分くらいは……」
頑として譲らないハヤテ。
辛酸をなめてきた人生を送ってきたからか、人の心を気遣うということは慣れているようで。
しょうがなくマリアは、ハヤテのおでこにデコピンを一発するだけでハヤテを許した。
そこから両者の気まずい五分間が始まった。
互いにこのような状況で何を話せばいいのかわからず、たまに出てくる世間話も二秒ももたず。
愛してる、などという言葉はまだ二人にとって気恥ずかしくて。
「そ、そろそろ五分経ちますね……動いていいですよ」
マリアはそう切り出した。
実際まだ四分と経っていなかったのだが、肌に密着した状態での沈黙は息を詰まってしまう苦しみをともなっていたのだ。
ハヤテもどうやら同じような感じであり、ゆっくりと動き出す。
マリアはときおり痛みに顔を歪め、そのたびにハヤテは動きを止める。
痺れを切らしたのかハヤテはいった。
「あの、マリアさん……やっぱり、今回はここまで……」
途中で、マリアはハヤテの首を手で掴み、そのまま絞めた。
「ま、マリアさん、な、何を……」
頸動脈を閉じぬように、そして気管を締めるようにマリアはハヤテの首を絞めた。
「私、言いましたよね。 それ以上言ったら、殺す、って」
そういって、マリアは手をゆるめる。
「で、ですけど……」
「いいんですよ、ハヤテ君。 私がしたいからしてるだけです。 私がかわいそうだとかそういうことは考えず、ハヤテ君は気持ちよくなって欲しいんです」
「は、はぁ……」
「まあ、ハヤテ君は小心者だっていうことはわかりますが、それでも……やっぱり私は」
マリアのそういう気遣いに感動したのか、ハヤテはマリアの苦痛にならないように再び動き始めた。
「あっ……う……」
ハヤテとの心のつながりをより深めたマリアは、前とは比べものにならないほど感度があがった。
まだ痛みは残っているものの、ハヤテと結合していることによって慕情の念がマリアに快楽を与える。
マリアの秘部から愛液が溢れ、口からは快楽の声が漏れる。
ハヤテもそんなマリアの姿を見て、一安心したのか腰の動きをより一層速くしていく。
「あっ……あっ……は……やて……くぅんッッ!」
もはや痛みは感じなくなったのか、全身で悦楽を感じるマリア。
ベッドのシーツは、大の字に開かれた手足によってしわを作り、ぽたぽたと垂れる愛液で濡れる。
「ハヤテ君ハヤテ君」と呂律の回らない口で名前を連呼されているハヤテも、乱れるマリアを見て一層感じ。
「あっ……あっ……あぁ〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
マリアは絶頂の一歩手前までたどり着いた。
しかし、このまま頂点まで上り詰めようという思惑を無視し、ハヤテの動きが止まった。
「へ? ……ハ……ハヤテ君……どうして?」
マリアが停止の意味を聞こうとしても、ハヤテは何も答えない。
今まさにオルガスムを経験しようとしていたマリアには、それで満足できるわけがなく。
「ね、ねえ……ハヤテ君、どうしたの?」
ハヤテはマリアの問いかけを無視して、ゆっくりと腰を引こうとした。
マリアは逃がさぬように足でがっちりと捕まえたが、ハヤテはそれでも逃げようとして。
マリアには、前髪で顔が隠れ表情の読めないハヤテが少し不気味に見えた。
「ねえ、なんで? ハヤテ君。 私、もう少しでイケたの。 ひょっとして私じゃ満足できなかったの?」
哀願してもハヤテは逃げようとする。
がっちりと組んでいた足はハヤテの怪力で外されそうになり、慌てるマリア。
「ちょ、ねぇ、ハヤテ君。 もうちょっとなの。 だから、止めないで……」
マリアがぐいっと迫った瞬間、ハヤテの目が大きく開いた。
蛇口は捻られ、白い液体がマリアの最奥部に注がれる。
「あ」
とマリアが呟いたときにはもう遅い。
恐らく食いしばっていたであろうハヤテの歯茎からは血がにじみ、少量が口から出てきていた。
「あ……そーいえば、今日は危険日だったかな〜……って。 ハハ……」
追撃されたハヤテはその場でノックダウンした。
まあ、なんとかセーフだったらしいが。
数日後、ハヤテとマリアが関係を持ったからといって、世界経済が破綻したり、敵性宇宙人が襲来したり、地底人が現れたり、
スーパーロボットが日本に集結して悪と戦ったり、ジ○ンがコロニー落とししたり、ショッ○ーのテロ活動が開始したり、
独り言格闘術の達人と吐血女ゴルゴとイケイケギャルのおとぼけ三人組が公務員戦隊と戦ったり、
ということは全くなく普通の生活が続けられていた。
だが、そんな平穏な生活を打ち破るかのように現れたお笑いお金持ち愛沢咲夜に、ハヤテは「落語・ときそばを完璧に演じ咲夜に気に入られる」という咲夜ルートのフラグを発生させてしまい、
あっさりお持ち帰りされてしまった後、色々とあってマリアとの愛欲の日々で培ったテクニックでメロメロにするのだが……。
それは次回の話だったりしなかったりする。
【続く?】