「やっ、ひゃんっ!綾崎・・・君!」  
「はぁ・・・っ!くっ・・・ハルさんっ!!」  
 
ここは愛沢家のとある一室。  
咲夜とナギが2人で遊んでいる間に・・・ハヤテとハルは2人、密かに体を重ねていた。  
 
「もう・・・もうダメっ!私・・・っ!!」  
「僕も・・・もうっ!!っ・・・!」  
ハルの中へ一気に突き込み、そのままハヤテの動きが止まる。  
そしてその脈動により注がれた熱いものにハルは体を震わせた。  
 
・・・・・・・・・  
 
「・・・ちょっと激しすぎでしたか?」  
すいません・・・と頭をかくハヤテ。  
 
「いえ、私も久しぶりでしたし・・・はぁ。気持ちよかったですよ、綾崎君。」  
気持ちの良いだるさが2人を包む中、ハヤテの携帯が鳴った。  
 
「あっ、お嬢さまが呼んでる・・・早く行かないと・・・。」  
「そうですか・・・じゃあ早く片付けちゃいましょうか。」  
「そうですね。」  
手早く後片付けをして何事もなかったかのように部屋を出る二人。  
 
「ではハルさん、また夜メールしますね。」  
「はい。ではまた。」  
 
・・・・・・・・・  
 
もうこんな事は1度や2度ではなかった。  
ナギが咲夜の屋敷へ行く度に、ハヤテとハルはこうして密かに付き合いを続けていた。  
 
ふとした事からフラグが立ってここまで来たのはほんの2ヶ月前。ちなみに今は7月である。  
お互いに主人がいたりハヤテは多忙だったりハルとは咲夜の屋敷でしか出会えないために、周りには内緒にして主にメールのやり取りで付き合いを深めていった。  
付き合いを深めていって、ついに行き当たった初めての時はどんな事なのか興味本位の面が強いものだったが・・・回数を重ねた今のそれは、なかなか出会えない2人にとってお互いの心を満たす重要なものになりつつあった。  
メイド服を破瓜の血で汚して、それを咲夜に尋ねられて必死に言い訳をしたのももう過去の事。  
ちなみにハルの正体を・・・ハヤテはまだ知らない。  
 
 
咲夜の屋敷からの帰り道、歩きながらハヤテは考える。  
 
(いつまでたってもこれじゃ・・・なんかハルさんに申し訳ないよな・・・。)  
なかなか会えないのは仕方のない事ではあったが、ハヤテはそこに負い目を感じていた。  
やっぱり付き合っている以上、もっともっと一緒に居られる時間が欲しいのだが・・・。  
(でも・・・僕にはお嬢さまもいるし、アーたんだって・・・今は居るし、第一今の僕は本当は女の子と付き合える資格なんてないのに・・・でも好きになっちゃったし・・・はぁ。)  
いくら自制していたって現実に好きになってしまったのだから仕方のない事。  
右手を頭に当てて、困ったなぁとハヤテはまた考える。  
 
「どうしたハヤテ。頭でも痛いのか?」  
思考の渦にはまっているハヤテはナギのその言葉に現実へ引き戻される。  
「い・・・いえ、そうじゃなくてですね・・・ゆ、夕飯のメニューを考えてたんですよ。」  
慌てて思考を切り替えるハヤテ。  
・・・夕飯のことなど微塵も考えていなかったのは言うまでもない。言い訳である。  
「そうか・・・今日は暑かったし、どうせならちょっと涼しいのがいいな。」  
「涼しいの・・・ですか。分かりました。」  
ナギの夕飯のリクエストも考えつつ、またさっきの事を考え始めるハヤテだった。  
 
 
 
一方・・・。  
 
「ハルさん今日もご苦労さん。ホンマ最近暑なったな〜。」  
帰り際に更衣室へ向かうハルに咲夜が声をかける。  
「はい。最近本当に暑くて・・・。もうだいぶ夏らしくなってきましたね。」  
「夏用のメイド服出したろか?いくら冷房ある言うてもそんなんやったら暑いやろ?」  
「結構大丈夫ですからもうちょっと暑くなってからでいいです。では・・・。」  
「ほんじゃまた来週な〜。」  
「はい〜。」  
咲夜に軽く一礼し、更衣室へと向かうハルだった。  
 
(・・・・・・・・・。)  
着替えながら考えるのは、ハヤテの事。  
(本当は一つ屋根の下に住んでるんだけど・・・言えないよな・・・。そんな事。)  
千桜からすれば毎日毎日ハヤテと出会ってはいて会話もする。  
でも「ハル」との違いが激しすぎて持ち前の演技力でそれを隠すしかなかった。  
ハヤテにだけこっそり伝えたとしても・・・不自然にならないように振舞うのはおそらく不可能だ。  
それに・・・あの屋敷にはヒナギクをはじめとして見知った人ばかり。  
もし何かヘマをして知れたりすれば・・・今帰る場所のない自分には行くところがない。  
何も厄介な事が起きて欲しくないのなら・・・現状維持するほかなかった。  
 
(でも・・・付き合っている人が目の前にいるのにいっぱい話せないなんて・・・辛いよな。)  
ハヤテと付き合うようになってから毎日、そんな悩みを抱えながら千桜は生活していた。  
 
そんな感じでそれぞれお互いの事を思いながら悩んで生活する2人。  
それでも久しぶりに出会って2人きりになってしまえば、お互い目の前の事にしか見えなくなってしまうもので・・・今日もこっそりと2人はベッドの上にいた。  
 
「ハルさん・・・。っ・・・!」  
「・・・どうですか?綾崎君。」  
ベッドに腰掛けたハヤテの前に跪いているハルの胸にはハヤテのものが挟まれていた。  
「すごく・・・いいです。あ・・・。」  
千桜はハヤテ以外に実経験こそなかったものの、年齢制限コーナーでバイトしてたり漫画や同人誌などでその手の知識だけは持っていた。  
その知識を生かして、今ハルは柔らかな2つのものでゆっくりとハヤテを扱き上げる。  
「本当は濡らした方がいいらしいんですけど・・・擦れて痛くないですか?」  
上目遣いにハルが聞く。その表情は好きな人へ奉仕する嬉しさと大胆な事をしているという恥ずかしさが混ざったものだった。  
「大丈夫です・・・でも気持ち良過ぎてこのままだと・・・もう出ちゃいそうで・・・・・・くうっ・・・。」  
ハルからもたらさせる快楽に耐えるハヤテ。  
「出そうになったら言ってください。服を汚しちゃったら大変ですから・・・。」  
「分かり・・・ました・・・。」  
そしてそれから程なくして、  
「もう、もうダメです!出ますっ!!」  
ハヤテが体を震わせると、ハルは急いでハヤテの先端をくわえ込む。  
「くっ・・・!」  
短くハヤテが呻くと、ハルの口内へ白濁を注ぐ。  
「・・・・・・んっ!ん・・・・・・。」  
息苦しく中でもこぼさないようにとがんばって何とか耐えるハル。  
 
ハヤテ自身も量に少し驚きながらも、ものは数回脈動を繰り返してようやく止まった。  
そしてようやくものから口を離す事が出来たハルに、ハヤテが申し訳なさそうに声をかける。  
「あの・・・大丈夫でしたか?あんなに出るなんて僕も思ってなくて・・・ってハルさん!?」  
ハヤテが驚いたのも無理はない。ハルはハヤテの放った白濁を・・・喉を鳴らして飲み込んだからだ。  
粘った液体が喉に絡みつくのか、ハルは何度も喉を鳴らして・・・最終的に一滴もこぼさずに飲み込んだ。  
 
「ハルさん、そこまでしてくれなくても・・・」  
「・・・結構大変でしたけど、せっかく私で綾崎君が気持ち良くなってくれた証ですから・・・ね。」  
そうはにかんだハルのその表情に、ハヤテは心を持っていかれそうになった。  
「・・・なら今度は僕がハルさんを気持ち良くさせないといけないですね。」  
「お願い・・・します。」  
 
「ああっ、ダメっ、ダメですっ!綾崎君、もう私・・・」  
ハヤテの手と口でもう絶頂の直前まで上り詰めてしまったハル。  
焦点の合わない濡れた目でハルはハヤテを見つめる。  
 
「・・・いいですか?」  
「・・・はい。」  
 
ハヤテはハルの返事を聞くと、自分のものにゴムを付け始める。  
ハルとする時はいつもハヤテはゴムを使っていた。  
まだ隠して付き合っている仲なのにもし責任を取らなければならないようなことになってしまったら困るし、何より「女性の相手をする上で・・・執事のたしなみです」とハヤテ。  
「じゃあ・・・いきますね。」  
ハヤテは先端をハルにあてがうと、そのまま・・・ゆっくりと突き入れた。  
「んんっ・・・!あ、入ってきました・・・。」  
自分のものではないものが入る感覚に体を震わせるハル。  
 
「動きますよ?」  
いつも動作の一つ一つで了解を取るハヤテ。本当ならあまり聞くものではないのだが、これはハルを大事にしたいという心の表れでもあった。  
「ん・・・大丈夫です。来て・・・くださいっ。」  
「分かりました。行きます・・・っ!」  
 
最初はなじませるようにゆっくりとしたペースで。  
「あっ・・・ん・・・。」  
「そろそろ上げていきますね。」  
「はい・・・ひゃん!」  
そのままオートマチック車のようにぐんぐんペースを上げていくハヤテ。  
ハヤテの先端は薄いゴム越しにハルの最深部を叩く。  
「あっ!やあっ!んうっ・・・綾・・・崎く、んっ!」  
上がっていくスピードに翻弄されハルは満足に言葉をつなげない。  
そして快感の波が次第に高くなっていく。  
「んっ、あ・・・うんっ!ああっ・・・!」  
「はぁ・・・っ!ハルさんっ!」  
ハヤテも速いペースの抽送にどんどん追い詰められていく。  
「もう!わた、し・・・!き、来ちゃいます!あっダメっ!怖いっ・・・怖いよっ!」  
「僕ももう・・・限界ですっ!」  
 
お互いもう上り詰めるところまで上り詰め・・・そして、  
 
「ううっ・・・ハルさんっ!!」  
「あっ!綾崎・・・君っ!!」  
お互いの名前を呼んで・・・二人は絶頂に達した。  
 
行為が終わって、そのままベッドに倒れこむ二人。  
 
息が整ってきたところで・・・二人は唇を合わせる。  
「ん・・・」  
この落ち着いて心が満たされた時間が最近の2人にとっては何よりの幸せな時間だった。  
でもその時間はそう長くはない。  
「ではそろそろ後片付けしないと・・・お嬢さまがいつお呼びになるか分かりませんし・・・」  
「ですね・・・」  
乱れたシーツを取り替える2人。  
 
 
「・・・・・・・・・。」  
そんな様子を僅かに開いていたドアの隙間から黙って見る人影が1人。  
(ハルさんとハヤテって・・・そんな仲やったんか・・・。)  
・・・・・・問題がまた1つ、2人の見えないところで生まれようとしていた。  
 
 
そのほんの少し前。対戦ゲームをしていた咲夜とナギだったが・・・  
 
「ん・・・ちょっとウチ、トイレ行ってくるさかい・・・ちょい中断や。」  
画面には体力ゲージが赤色になったナギのキャラと半分ほど体力を残した咲夜のキャラ。咲夜の圧倒的優勢である。  
「トイレ?仕方ないな・・・早くしろよ。まだ私は負けていないんだからな!」  
バトルを中断してポーズ画面に切り替えるナギ。  
「はいはい。まぁ行っとる間に逆転する方法でも考えとき。」  
「くっ・・・!!絶対後で吠え面かかせてやるっ・・・!!」  
咲夜の言葉に悔しさをにじませるナギ。実は9連敗中である。  
 
ゲームを中断して、トイレに行こうと咲夜は部屋を出る。  
(さて・・・ここまで9連勝中のウチやけど・・・今回はどないやってとどめにしたろかな・・・やっぱ一発キメて終わらせてしまおかな?)  
トイレから戻った咲夜は部屋へ戻る途中にそんな事を考えながら廊下を歩く。  
(まぁ9連敗中やし、ナギに考える時間でもやろか)と、咲夜は考えてたまたま遠回りをしていると・・・。  
「・・・・・・?」  
廊下の突き当りの使っていない部屋から人の声がしたような気がした。  
(ん?誰かおるんかな?)  
 
咲夜は少し気になって突き当たりのその部屋へと近づく。見ると、いつも閉まっているはずの扉が少し開いていた。  
そして・・・  
「綾崎君・・・今日はどうでしたか?」  
「どうって・・・今日のハルさんは何だか積極的な感じで新鮮でした。」  
(えっ、ハヤテとハルさん!?)  
聞き覚えのある二人の声が中から聞こえ、咲夜は身を硬直させる。  
「そうですか。綾崎君が喜んで頂けたなら私はそれでいいですけど・・・」  
(何でこんなとこにおるんやろ・・・)  
男女二人きり、目の届きにくい部屋・・・咲夜は想像した事を頭から追い払う。  
(いやいやまさか・・・そんな事ないやんな・・・)  
気づかれないように咲夜は息を潜めてわずかに開いたドアの隙間から部屋の中を伺う。  
 
「ん・・・。」  
 
(うわ・・・。)  
隙間からまず最初に見えたのは・・・ハヤテとハルのキスシーンだった。  
乱れたベッドのシーツ、タイを外し胸元が開いているメイド服、わずかに香る生臭いような独特の匂い・・・そのような事は学校の授業程度でしか習っていない咲夜でも、2人がこの部屋で何をしていたかどうかは容易に想像がついた。  
 
(ハルさんとハヤテって・・・そんな仲やったんか・・・。)  
目の前の衝撃的な光景に、咲夜は動揺を隠せない。  
自分の見知った人の生々しい場面を見てしまうのは誰でもショックを受けるものである。  
(前からメイドさん好きの気はあるような気はしよったけど、ハヤテのヤツホンマにハルさんと付き合っとるとは思わんかったなぁ・・・。)  
そんな事を思いながら咲夜が覗いていると・・・。  
「ではそろそろ後片付けしないと・・・お嬢さまがいつお呼びになるか分かりませんし・・・」  
「ですね・・・」  
(・・・ヤバっ!)  
キスを済ませてベッドから起き上がる2人に、慌てて咲夜は覗くのをやめてドアの裏へ隠れる。  
そして気づかれないように足音を立てずに引き返して、部屋へと戻った。  
 
「ハヤテ・・・ちょいええかな?」  
「はい。何でしょう咲夜さん。」  
その日、咲夜の屋敷からの帰り際に、咲夜はハヤテを呼び出した。  
「なんだ咲夜。ハヤテに用って。」  
「ん?まぁちょっとな。・・・こっちや。」  
「はい・・・」  
「あっ、ハルさんはウチが戻るまでナギの相手しとって。」  
「分かりました。」  
咲夜はナギをハルと自室に待たせて、別の部屋にハヤテを連れてきた。  
 
「それで・・・何でしょうか。」  
「ハルさんの事なんやけどな・・・。」  
「ハルさんですか!?」  
その名前にドキッとして、わざとらしく聞き返してしまうハヤテ。  
「・・・その、まぁいろいろ言いたい事あるけど・・・ウチは別に2人が好きやし、好きあってるんやったら何も文句は言わへん。」  
さっきの事もありハヤテを直視できずに、目線を外して少々顔を赤らめてぼそぼそと言う咲夜。  
(えっ!?)  
咲夜の口から出てきた言葉にハヤテは身を凍らせる。  
(見られた!?ひょっとして・・・見ちゃったんですか咲夜さん!?)  
ハヤテは冷や汗を流しながら咲夜の言葉を聞く。  
「けど・・・ウチは『ナギのお姉ちゃん』やから、もしナギを泣かしてまうような事になったら、ウチはあんたを許さへんからな。・・・それだけは言うとくで?」  
正直咲夜にとってもこの2人の仲については複雑な気持ちだった。  
ナギを泣かせるわけにもいかないが、もちろんハルも泣かして欲しくはない。  
結果、ハヤテには難しい課題を突きつける形になった。  
 
「はい・・・分かりました。」  
(咲夜さんが言いたいのは・・・いつかお嬢さまにもしっかり話をしろという事ですよね。お嬢さまならきっと分かって頂けるでしょうし多分・・・)  
第三者から見れば簡単に理解できる現状を不幸な事に全く理解していないこの執事は、知らず知らずのうちに新たな地雷を抱える事になった。  
 
「なぁ、ところで・・・これは別にまぁどうでもええねんけど、ハルさんがどこに住んどるかは知っとるんやんな?」  
(まぁあれだけの仲やったら向こうの屋敷でもええ感じにやっとるんやろうな)と咲夜は思いながら、ハヤテにそんな質問をする。  
「いえ、それが・・・」  
「何やねんそれ。そんなんでずっと付き合って来たんかいな?」  
呆れ顔で咲夜が言う。  
「すいません・・・全くお恥ずかしい限りです・・・。」  
頭をかきながら申し訳なさそうに言うハヤテに、咲夜はため息をつきながらその辺にあったメモ用紙にサラサラと何かを書いて、それをハヤテに手渡した。  
「これは・・・?」  
「ハルさんの住所。今度遊びにでも行ったり。」  
「・・・すいません。そんな・・・。・・・!?」  
と、メモ用紙を見たハヤテは愕然とした。  
(えっ、この住所は・・・!?)  
 
「・・・どないしたん?えらい驚いとるみたいやけど。」  
「あの・・・ここ、別の方が住んでますよ?」  
・・・・・・重ねて言うが、ハヤテはハルが千桜だという事には全く気づいていない。  
「んなわけあるかい。ここがハルさんの住所やで。」  
「ですけど、ここは・・・。」  
「・・・・・・なぁ、ひょっとして・・・・・・まさかやと思うけど、ハルさんの本名知らんとか言うんちゃうやろな?」  
「・・・・・・・・・。」  
 
事実を突かれて、ハヤテは何も言えなかった。  
一筋の冷や汗が流れる。  
「・・・・・・図星かいな。」  
「ハルさんが『秘密もメイドのたしなみですよ』って・・・・・・すいません。」  
あまりの情けなさに小さくなるハヤテ。  
ハルもハルで本名を教えられない事情があったのだが。  
ハヤテとしては嫌われたくないがためにハルに対して深い質問はした事がなかったというのもあった。  
「・・・アホかい。名前も知らんとヤる事だけヤっとったっちゅうんかいな・・・。はぁ。ホンマどうしようもないやっちゃな〜・・・。」  
その不思議とも言える状況に咲夜は大きくため息をつく。  
「じゃ、その部屋に住んどる人の名前は?」  
「えっと・・・春風千桜さんですね。・・・・・・咲夜さん、まさかだとは思いますが千桜さんが・・・ハルさんだと仰られるんですか?」  
ハルとは真逆の姿の千桜を思い浮かべるハヤテ。  
「あんなぁ・・・普通分からへんか?そりゃ髪型とか変わっとったりしとるからパッと見じゃ分からへんやろうけど、付き合うんやったらそれくらいすぐ気づけるようなカンのええ男にならなあかんで・・・。」  
「すいません。本当にすいません・・・。」  
年下からのお説教に痛いところを突かれまくられて、ハヤテは頭が上がらない。  
 
「まぁハルさんもハルさんで何か理由があって、言わへんかったんかも知れへんよ?けど・・・多分悩んどると思うから、今晩辺り会いに行ったり。」  
「すいません・・・本当にこんな・・・。」  
「ウチに謝らんでええ。でもあのさっき言うた事は本気やから、覚悟しいや。・・・・・・じゃ、ナギも待っとるし、もう行き。」  
「すいません・・・ありがとうございました咲夜さん!」  
結局、最後まで謝り通しのハヤテだった。  
 
 
その日の日付が変わる頃。  
 
「・・・千桜さん、まだ起きてますか?」  
ハヤテは小さい声でそう言って、千桜の部屋の戸をノックする。  
ちなみにこの時間はすでに他の住人はみな寝静まっている時間である。  
「ん?あ・・・綾崎君か。こんな時間に・・・何?」  
「ちょっと・・・いいですか?」  
「あぁいいけど・・・。まぁそれだったら廊下はなんだから上がりなよ。」  
「すいません・・・失礼します。」  
千桜の部屋へ上がるハヤテ。  
 
「で・・・何の用?今日は別に君のお嬢さまを預かってないぞ?」  
もう寝ようとしていたのか千桜は髪を下ろしていた。  
つまり、今の千桜は眼鏡こそかけているがハルの姿に近い姿をしている。  
「今夜はですね・・・千桜さんに用があって来ました。」  
「私に・・・?」  
そう千桜をまっすぐに見てはっきりと言うハヤテに、千桜の頬が若干染まる。  
「その・・・ずっと気づけてなくてすいませんでした!ハルさんはいつもこんなに近くに居らっしゃったのに・・・。」  
「綾崎君っ・・・!」  
申し訳なさそうに頭を下げるハヤテに、さらに頬の赤みが増す千桜。  
そして・・・。  
 
ドサッ。  
 
「うわっ!」  
突然ハヤテに千桜が抱きついて、突然の出来事にハヤテは体重を支えられずに床へ倒れこんだ。  
つまり・・・第三者から見れば千桜がハヤテを押し倒した格好に見えた。  
「千桜さんっ!?」  
突然の出来事にハヤテは驚いた声で返す。  
「本当はずっと・・・言おうか悩んでた。・・・辛かったよ。目の前にいつも綾崎君が居てくれるのにすごく遠かった。」  
ハヤテを見下ろしながら、千桜は目線を落として言った。  
「すいません・・・僕が鈍感なばっかりに辛い想いをさせてしまって・・・。ごめんなさい。」  
そのままの体勢でハヤテが謝る。  
「・・・・・・私、怖かったんだ。咲夜さんのところにいる時と今じゃ全然雰囲気・・・違うだろ?もし今の私が綾崎君の好みじゃなかったらどうしようと思うと本当に怖くって・・・だから言い出せなかったんだ。・・・私も悪かったよ。ごめん・・・。」  
「いえ、そんな心配なさらなくても千桜さんはハルさんでも千桜さんでもとても魅力的ですよ。それに千桜さんは大事な『僕のお嬢さま』でもありますから。」  
そう言うハヤテの笑顔は反則ものだった。  
そしてその笑顔に「やっぱり私は綾崎君が好きなんだ」と再認識させられる千桜。  
「ありがとう・・・綾崎君。」  
千桜の瞳から一筋の涙がこぼれる。  
それは「もう恐れなくていい」という安堵感と「やっと私の全部を綾崎君に知ってもらえた」という嬉しさ、その二つの感情が混ざったものだった。  
 
そのままの体勢でいる2人。すると千桜はある事に気がついた。  
 
「ん・・・?これは・・・?」  
「すいません・・・・・・。」  
苦笑いをするハヤテ。千桜の腰辺りに硬く熱いものが触れている。  
 
もちろんそれは自己主張しているハヤテのモノであって、昼間に2回果てたところで関係はなく勢い良く立ち上がっていた。  
「・・・・・・昼間咲夜さんちでもしたのに・・・。男の子ってそういうものなのか?」  
若干呆れ顔で千桜が言う。  
 
「まぁ・・・千桜さんなんかに押し倒されたりなんかしたらそりゃ・・・そうなりますよ。」  
「なっ・・・!」  
ハヤテの言葉に、千桜はようやく自分が大胆な事をしてしまったことに気づく。  
もし普段の自分が見ていたとしたら卒倒ものだろう。  
 
「まぁでも・・・これは放っておけばどうにでもなりますから大丈夫です。・・・・・・節操なしに求めるのは執事として紳士になる以上よろしくないですからね。」  
ハヤテはそう惜しげもなくサラッと言う。  
「は〜・・・。綾崎君は本当に人畜無害な男だなぁ・・・。・・・だったらさ、その・・・・・・・・・・私が『綾崎君が欲しい』と言えば・・・どうなるんだ?」  
自分から事に及ぼうなんて言うのは恥ずかしかったが、ハヤテは相手の事を思いやって行動する・・・つまり極度の受け身である以上、欲しいなら言うより他なかった。  
それを言う千桜はもちろん恥ずかしくて、最後の方は恥ずかしさで消え入りそうな声で言った。  
「・・・・・・それってつまり・・・。その・・・。」  
「・・・・・・2度も言わせないでくれよ?」  
「いいんですね?」  
「・・・・・・・・・。」  
千桜は顔をさらに赤くして頷いた。  
 
「それじゃ、行きますね・・・。」  
「いいよ。んんっ・・・!」  
 
ゆっくりとハヤテが腰を押し込んで、ハヤテと千桜はこの日2度目の結合を果たした。  
「ん・・・やっぱりハルさんなんですね。」  
「何変な事言ってるんだよ?・・・ひゃっ!?」  
千桜が言い終わらないうちにハヤテが千桜を突く。  
「はい・・・でもなんか、まだハルさんと千桜さんが同じ人なんて信じられなくって・・・、でもこれで分かりました。一緒です。」  
・・・ハヤテが言っているのは千桜の中の感触の話である。  
(でもなんかこれ、全然別の人としてるみたいだ・・・。)  
感触こそ同じだが、目の前で乱れている姿はまるで別人。  
その新鮮味がハヤテの性欲をさらにかき立てる。  
 
「あっ・・・!」  
ハヤテの突きこみに千桜は声を上げる。  
「あの・・・あんまり声は出さない方が・・・。」  
「・・・えっ?」  
壁の厚い咲夜の屋敷とは違い築30年のこのアパートは壁も床も薄い。ちょっと声を出しても場合によっては聞こえてしまう。  
ましてや皆が睡眠中で静まり返っているこの時間は余計である。  
声のせいで誰かが起きてこようものなら大惨事は避けられない。  
千桜もようやくその事に気づくと手で口を押さえる。  
「・・・んんっ!んっ・・・」  
それでもハヤテの抽送のスピードが上がっていく。  
「んう・・・んんっ・・・・・・。はぁ・・・はぁ・・・。」  
快楽の嬌声を必死に押し殺す千桜の姿を見てハヤテの興奮も増す。  
そして・・・  
 
「もう・・・あっ、で、出ます・・・っ!」  
「んっ!んんんんんっ!、あっ・・・!」  
千桜の最奥でハヤテは果てる。  
そして薄いゴム越しに感じるハヤテが注いだ熱いものの感触に千桜も達した。  
 
「はぁ・・・ん・・・。」  
「ふぅ・・・・・・。」  
繋がったまま布団に倒れこんで息を整える2人。  
 
「あっ・・・。」  
そして、落ち着いてきたところでハヤテは千桜からモノを引き抜く。・・・先端の液だまりに多量の白濁を溜まらせて。  
「・・・・・・すごく出たんだな。」  
「ええ。なんかすごく燃えたのもありますし・・・それでですかね?」  
まぁよく分からないんですけどね、と言いながらハヤテは後始末をする。  
 
そして後始末を済ませて、  
「あの・・・もうここで寝てもいいですか?多分朝にはもういないと思いますけど・・・。」  
「・・・いいよ。ちょっと狭いけどな。・・・おやすみ。」  
ハヤテは自室に戻ることなく、そのまま一緒に千桜と眠った。  
好きな人と眠るその寝顔は・・・まさに至福そのもの。  
 
翌朝。日曜日の朝といえどハヤテの朝は早い。  
(もう朝か・・・。でも昨夜はよく寝れた気がするな・・・。千桜さんのおかげかな?)  
横で寝ている千桜を起こさないようにハヤテは慎重に布団を這い出て、そして扉の音をなるべく立てないようにして部屋から出た。  
(さあ、今日もがんばらないと・・・。)  
そのまま千桜の部屋の前で執事服のジャケットを着直して、タイを締めているとハヤテは廊下にもう一人誰かにがいるのに気がついた。  
 
「ハヤテ君?」  
「あっ、ヒナギクさんおはようございます!今朝はお早いですね。」  
いつもの挨拶を返すハヤテ。  
 
「うん、おはよう・・・ていうか、今・・・ハル子の部屋から出てきたわよね?」  
「えっ!?あ、えっと・・・それは・・・。」  
(しまった・・・!)  
言い訳が出来る言葉が出ないハヤテ。大ピンチに陥る。  
(えっ・・・こんな時はどうすれば・・・)  
そしてヒナギクの言い訳が出来ないまま月曜日学校で愛歌に「本当に恋仲になったのね」と冷やかされたのはまた別のお話。  
ハヤテと千桜、この2人が大っぴらに付き合えるようには・・・これからもまだまだ前途多難そうである。  
でも今回は・・・ここでおしまい。  
 
完  
 
 

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