ハヤテが三千院家に仕えて2年ちょっと。今年もまた、桜の季節がやってきた。  
今日は、ナギにとって大事な日。  
 
「う…ん」  
 
窓から射す日差しに、いつもより早く起きる。  
 
「ふぁ…まだ7時か…」  
 
上にかけてある布団を二つ折りにたたみ、ナギはリビングへ。  
 
「あら、おはようナギ。」  
「お早うございますお嬢様。」  
「ああ、お早う。」  
 
「もう私たちは支度しましたよ。」  
「さ、お嬢様も早くお着替えください。」  
「うん。」  
 
ナギはマリアから服を受け取ると、部屋へ戻っていった。  
 
 
時計が短針も長針も12の場所を指した。  
 
「今年はヘリコプターで行くんですよ。」  
「去年は散々だったからな。ハヤテが全然こないせいで。」  
「ええ、僕のせいですか?元はお嬢様が迷子になるからじゃないですか!」  
「迷子になんかなってないもん!」  
「だってお嬢様が急に電車から降りて…」  
 
ドスンッ!  
 
ハヤテの足に重い一撃。  
 
「○×△□!!!」  
「うるさいうるさい!ハヤテのバカバカバーカ!」  
「まぁまぁ、喧嘩しないで。」  
 
 
約1時間後─  
 
「見えてきましたよ。」  
 
近くにヘリを寄せると、ナギはすぐ降りて「部屋で寝る!」と言い残し行ってしまった。  
 
「…」  
 
ハヤテはヘリの隅で暗い雰囲気になっている。  
1時間ひたすらハヤテはフォロー等を行ったが、逆にさらに怒らせてしまったようだ。  
 
「え、えーと…つきましたよ?ハヤテ君?」  
「…はい…」  
「まぁ、ナギのことなら気にしないで部屋で休みなさい。夜にはあの子も機嫌直ってるハズだから…」  
「いえ…今謝ってきます!」  
 
ハヤテは素早くヘリを飛び出すと、屋敷へ走っていった。  
 
「あ…ハヤテ君っ」  
 
 
「まったく…ハヤテは本当にまったく!」  
「迷子になって可愛いとか、ハムスターと仲良くなれてよかったとか…お子様扱いして…」  
 
布団の上で仰向きに寝ながら、ぶつぶつ呟いている。  
 
「…でも足踏んだのは悪かったかな……後で謝っておこ…」  
 
ガチャッ  
 
ドアをあけて入ってきたハヤテは滑り込みからの見事な土下座を決める。  
 
「お嬢様!さっきはどうもすいませんでした!」  
「お、おう…随分と綺麗な土下座だな…。」  
 
綺麗すぎる土下座にナギは少し黙ってしまうが、  
 
「い、いや 私も悪かった。足を踏んだりすぐすねたりして…」  
「いえ、そんな…僕こそ色々と失礼なことを言ってしまって…」  
「ハヤテ、足を見せろ。腫れていたりしたら大変だぞ。」  
 
「え、いやそんな、全然痛くないのでもう大丈夫ですよ。」  
と全て言い切る前に、ハヤテの元に駆け寄り、靴と靴下を脱がせる。  
 
「あ、爪の間から血が出てる…」  
「あ、もう止まってるので大丈夫ですよ。」  
「そんなわけにもいかんだろう!」  
 
ナギは絆創膏を取り出し、ハヤテの親指にそっと貼った。  
 
ペタペタ…  
 
「…(お嬢様の私服…少し大きいのか間から胸が見える…)」  
「(って僕は何を考えているんだ!?違うぞ、僕はもっと普通の人のはずだ…)」  
 
「…これでいいな。……ハヤテ?どうしたのだ?私をじっと見…」  
 
ナギは視線が自分の胸元にあること、胸が見えることに気付いたらしい。  
 
「ハ、ハヤテェェ!」  
「わわ、す、すいません!!」  
「すいませんで済むかァ!人が親切に接していれば…この変態!」  
「うぐ…」  
「ドジ!マヌケ!バカ!阿呆!ゴミ屑!!」  
「…」  
 
…はっ  
 
私はまた…  
 
ここまで言わなくてもいいのに…  
 
「ハ、ハヤテ…ごご、ごめん 言い過ぎたよ!」  
「…はは、どうせ僕はクズですから…。申し訳ありません。」  
 
─無理に笑わなくてもいいのに  
 
「僕って昔から、肝心な所でダメなんですよね…。」  
 
─私が酷い事を言っただけなのに  
 
「すいません、お嬢様…」  
 
─ハヤテが謝るところじゃないのに  
 
「僕が嫌になったらいつでも追い出していただいて結構ですから…」  
 
─やめて  
 
「もともと僕は…」  
「ハヤテ」  
「え…」  
 
ハヤテの口を、自分の口で塞ぐ。  
15秒ほど口を合わせ、そっと唇を離す。  
 
「お、お嬢様…!?」  
「ハヤテ、ごめん。私が言い過ぎた…だからもう、それ以上言うな。」  
「…」  
「私はお前が好きだ。お前が居なくなったら私を守るものがいなくなる。そんなの許さないぞ。」  
「お、お嬢様…」  
 
 
どっとハヤテが涙を流す。ナギもつられ泣きをしそうになっていた。  
 
「…ハヤテ…」  
 
どんっ!  
 
いきなりナギはハヤテを押し倒し、上に乗った。  
 
「…お、お嬢様!?」  
「ハヤテ…」  
 
ハヤテが動揺している間に、パンツを脱ぎ、ハヤテのズボンを下着ごとおろす。  
 
「お、お嬢様!?何を!?」  
「ハ、ハヤテ…」  
 
ナギは軽く苦痛の声を漏らしながら、ハヤテのモノを自分の中へと入れていく。  
 
「う…お、お嬢様…一体…」  
「少し…黙っておれ…」  
 
そう言うとナギは、自分の腰を上にあげ、再び下ろす。  
ハヤテはもはやされるがまま、どうしていいのかも分からず止めようもない。  
というよりハヤテは、既にこの快感に浸ってしまっていた。  
 
ナギが腰を上げ下げする度に、音がする。  
 
「っ、ん…んっ」  
 
ナギの口から自然と声が漏れる。  
 
「はぁ…はぁ…」  
 
ハヤテもナギも息が荒い。  
 
「…おっお嬢様…もう…マズイです…!」  
「いい…!このまま…このままでいい…!」  
「お、おじょう…さまっ…?」  
「ぐすっ…!このまっま!このままっ…でっ!」  
「う…でっ、でもこれ以上は…!」  
 
ハヤテがナギをどかそうと動くが、見た目以上の力に押さえつけられてどかせない。  
しかし動いたからか、熱いモノはさらに込み上げてくる。  
 
「ふぁ…あっ…」  
「うっ…出っ……!!」  
「あっ…!あ"あ"あ"あ"あ"ーーー!!!」  
 
どくん!  
びくん!  
 
寸前にハヤテがナギをグッと持ち上げる。  
中へ出すのは防いだが、ナギの股へと凄い量の液体が勢いよくかかる。  
 
ハヤテとナギの精液が混ざってハヤテの股へとたれる。  
 
「っ…」  
 
ふらっ…  
 
ナギの上半身は前へ崩れ落ち、どっとハヤテの上に倒れる。  
 
「はぁ…はぁ…お、お嬢様…」  
「…ごめん…なさい…」  
「…え…」  
「わた…し…ハヤテに守ってもらっ…てばかり…で…ハヤテのこと傷つけてばかり…で…」  
「お嬢様…」  
「だから…私…すごく悲しくて…何もできないのが…悔しくて…」  
 
「…お嬢様、何言ってるんですか…お嬢様は…僕の命を助けてくれたじゃないですか…」  
 
「お嬢様が僕と出会ってくれた事…それが、あなたが僕にしてくれたことです。」  
「…!ハヤテ…ハヤテぇ…!」  
 
ナギが声を上げて泣き始める。  
 
「うわああああああん!」  
 
ハヤテはナギを両手で抱き締めると、一言「ありがとう」と言った。  
 
─泣いている間、ずっとハヤテが私の頭を撫でていてくれた。  
 私はハヤテのことが好きだ。異性としても見ていた。  
 ハヤテが笑うと、母の顔が浮かぶ。親の姿とハヤテを重ねていたから。  
 でも、私はどっちもいいと思った。異性としても、人としても好きだから。  
 ハヤテの笑顔は、私を笑顔にさせてくれる。  
 
出会わせてくれて、ありがとう  
 
 
 
夕方、目が覚めるとナギはベッドに寝ていた。  
ハヤテの姿が見えないので、心あたりのある場所へ向かう。  
案の定、墓の前でハヤテは、また母の墓に話しかけていた。  
 
「お母様、僕はまだ執事を続けたいと思っています。  
 お嬢様はいつもすぐ怒ってしまいます。でも、すぐ機嫌を直して笑ってくれます。  
 お嬢様が僕をお母様やお父様と同じ立場で見てくれているのでしょうか。」  
 
「これからも僕がお嬢様をお守りします。だから安心してください。」  
 
「言ったなハヤテ。」  
「…!聞いていたのですか!」  
 
ハヤテは少し赤くなる。  
 
「ふん、そんなに執事を続けたいというなら、続けさせてやる。しかし今以上の労働を覚悟するのだぞ…。これからもその…よろしくな。」  
 
ナギは段々と声を小さくしながら言った。ハヤテはすぐ、にこりと笑った。  
 
「…了解です、お嬢様。」  
「うむ、それじゃ帰るぞ。」  
「お嬢様、お母様お父様に挨拶しないでいいのですか?」  
「私が言うことは何もない。お前が言ってくれたからな。」  
 
ハヤテがこくり頷くと、二人は手を繋いで館へと戻る。  
 
木陰からは去年と同じように、マリアがそっと二人の様子をマリアが見守っていた。  
 
 

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