「名前くらいは、聞いておこうかしら?」  
「通りすがりのゴーストスイーパーです」  
「覚えておきや?」  
 
 古代王の亡霊に憑依された黒衣のうら若き学院理事長と、千年に1人と言われる巨大な霊力を  
授かった光の巫女。この漫画における最大戦力を持つ少女たちの激突がこうして始まった。  
何百年も時が止まっていると称されるほど平穏な地であるはずのミコノス島において、現世の理を  
越えた巨大骸骨の攻撃が白亜の邸宅を揺るがし、大理石の柱や床を木っ端微塵に破壊する。  
「死んでまう! 死んでまうって、伊澄さーん!」  
「大丈夫、この程度では死なないわ。私の結界はこのくらいの霊的攻撃、すべてはじき返すわ!!(キリッ)」  
 不安がる友人の声に、普段の天然ぶりからは想像もできないほど頼もしい口調で返事をする伊澄。  
だがその言葉を聞いた途端、結界の一部がミシッと鈍い音を立てた。見上げた先には霊的攻撃から  
物理攻撃に切り替えるべく、柱の残骸を振りかざす骸骨の巨大な腕があった。  
「あ、ズルい……」  
「おいおい、それはなしやろ〜」  
 あっさりと結界を破壊され飛散する伊澄たち。このままでは危ない……そう判断した伊澄は、  
親友のヒーローである少年執事に声をかけた。  
「ハヤテさま、咲夜を連れて逃げてください。大きな術を使いますから」  
「え、でも……これは僕たちの問題なのに、伊澄さんを1人おいて逃げるわけには」  
「あの人はもう、ハヤテさまの知ってる女性(ひと)ではありません。それにあなたにもしもの事が  
あったら、ナギが悲しみます」  
「お嬢さまが……」  
 ナギの名前を出されては今のハヤテに抗する術はない。ナギの親友である伊澄の口から出た言葉には  
十分すぎるほどの重みがこもっていた。それに実際、傷ついた今の自分がここに留まったところで  
何かの役に立てるとも思えなかった。  
 
 ところが不承不承うなづきかける少年とは対照的に、その名を聞いて引っ込みのつかなくなった者もいる。  
「ちょー待たんかいっ!! そりゃないで伊澄さん! ウチは単なる足手まといかいな!!」  
「ごめんなさい咲夜、言い争ってる暇はないの、ここは言うとおりにして」  
「そうはいくかい! ナギと同レベル扱いされたら黙ってられへん! こういうバトルシーンにツッコミいれて  
コメディに引き戻すんが、ウチの役目やないか!」  
 たわわに実った胸を張りながら主張するミニスカ咲夜。お前は空気読め、という画面の向こうからの  
ツッコミは彼女の耳には届かない。こうなっては少年執事も説得する側に回るしかなかった。  
「無茶言わないでください咲夜さん、ここは伊澄さんの言うとおり、早く逃げましょう」  
「伊澄さんをおいて逃げられるかいな! これでもウチは一番上のお姉ちゃんやねんから、あんま子供扱いすな!」  
「子供扱いなんかしていませんって……」  
「それにやな、ハヤテは知らんやろけど、ウチは伊澄さんのバトルに付き合うの慣れっこなんや! 心配せんでええって」  
「心配しますよ、だって咲夜さんは……か弱い女の子なんですから」  
「……え?」  
「……(カチン)……」  
「……(ムカッ)……」  
 天然ジゴロの放つ悪意なき一言が、場の空気を凍り付かせ……数秒後、地底より吹き上がるマグマを  
解き放つ引き金となったのだった。  
 
「うっかりしていましたわ……私が殺そうと思っていたのは、ハヤテ、あなたでしたわねぇ?」  
「え、あ、アーたん? なんかさっきより禍々しさが増してるような……」  
「無神経で鈍感なのは全然変わっていませんのねっ!」  
「うひゃあっ!!」  
 
「うわっ! なんやなんや、急にウチらばっかり狙いだしたで、あの骸骨!」  
「ごめんなさい咲夜、私はか弱い女の子だから、自分を守るので精一杯……逃げきれることを祈っているわ」  
「ちょっ、伊澄さん結界に入れてくれへんのかいな! わっ! ひっ! あかん、しゃべっとったら舌かみそうや!」  
 
 こうしてアテネと骸骨の攻撃は、咲夜を横抱きにしたハヤテの方に集中することになった。  
傷ついたハヤテの逃げ足は鈍く、自分の身を盾にしながら攻撃の直撃を避けるので精一杯。  
吹き荒れる爆風や飛散する小石まで避ける余裕はなく……あっという間にハヤテと咲夜の衣服は  
ボロボロの布きれへと変貌を遂げてしまったのだった。服の隙間からときおり覗かせる白い肌に  
引き寄せられてか、骸骨の攻撃はますます激しさを増していく。迫真にして垂涎の映像を読者に  
お届けできないことが非常に残念である。ああ、ここが2ちゃんねるエロパロ板でなければ!  
「さりげなくエロイラスト募集しとる場合か! へんなとこ実況しとらんと、さっさと決着つけんかい!」  
 当人はこう文句を言っているが作者の筆は止まらない。原作で畑先生が書かなかったこういうシーンこそ、  
2次創作者の腕の見せ所ではないか。それにこれまでの除霊シーンとその反応から察するに、  
こういう展開を読者が全く期待していなかったなどと言うことが、果たしてあろうか? いや無い!  
「断言すな、このアホ作者!」  
 
 こうしてドタバタコメディの舞台と化した天王洲家の傍らで。防御結界を解く時間的余裕を得た  
鷺ノ宮伊澄は、必殺技である術式八葉・建御雷神(たけみかづち)を放つべく呪文を唱えていた。  
しかし精神を集中していく脳みその片隅で、彼女はいささかピンポケな思考も働かせていた。  
《でも、確かに今回は咲夜に来てもらう必要なかったかも知れないわね……攻撃を引きつける役は  
ハヤテさまが居るし、それに……》  
 敵である天王洲アテネをじっと睨み付ける伊澄。その視線は彼女の胸元にある、  
豊満な丸い膨らみへと集中していた。  
《……お色気担当は、もう足りているもの》  
 
Fin.  
 

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