閉ざされた扉にもたれかかり、指をくわえる。  
 
「・・・・・ハヤテ」  
 
ハヤテに会った。会ってしまった。  
幾度も夢に見た光景が現実になってしまった。  
 
あの夢――――――あのロイヤルガーデンで過ごした日々の夢を見続けることで、  
何度も意味もなくあの花園に訪れては、来るはずのない人を待ち続けた。  
いったい、今日という日が来るまで、何度あの場所で、意味のない時間を過ごしたか・・・・  
私だけしか、知らない。  
今の執事であるマキナの目を盗んでは訪れていたから、今日が来るまで彼にも気付かれなかった。  
 
「・・・・・はあっ」  
私はそのまま自室に戻り、ベッドに飛び込んだ。  
「ハヤテ・・・・・」  
あの悪夢から何年も過ぎてしまった。泣き虫だった彼も成長し、  
今では強く――――――いや、まだ押しの弱い人相が残っていたが、  
それでも、あの時よりは逞しくなっていた。写真で見た時よりも、ずっと伝わった。  
 
それでも、やっと会えたというのに・・・・  
まだ、私はハヤテと会うことは出来ない。彼よりも優先すべきものがある。  
 
それでも私は!  
ハヤテに、名前で呼んでほしかった!  
あの幼稚なあだ名で・・・・  
 
“アーたん”って――――――  
 
・・・・・・・・・・・  
・・・・・・・・  
・・・・  
 
「―――――ん」  
 
ここは・・・・どこかしら?  
 
「―――――たん」  
 
別に、どうでもいい すべて、投げ出したい  
 
愛しい人と一緒にいることが出来ないなんて  
これほどの地獄があるだろうか  
 
「アーたん」  
 
「―――――!」  
 いつの日か聞き覚えのある声で、私の意識は覚醒する。  
「ここは・・・・・」  
ここは――――――あの城、ロイヤルガーデン。そうか・・・・。これは、夢だ。  
また、いつもの悪夢が繰り返されるのね、あの日々のループを―――――。  
「!!」  
そう思った私が、いつもと違う『変化』を見つけてしまった。  
 
「まさか・・・・何で・・・・」  
「アーたん。おはよう」  
 
彼が―――――ハヤテが、いた。  
この城の夢はハヤテと別れた日から何度も、何度も見た。いつも見る夢は  
ハヤテの声で目を覚まし、  
他愛ない日々でも掛け替えの無い日々を過ごし、  
そして、あの悲劇で終わる。  
そんな天国から地獄への転落を象徴する夢だったが―――――今は、違う。  
 
 だって、いつも見るハヤテの姿は子供のままなのに、  
 今は、あの時花畑で再会した姿―――――“成長した姿のハヤテ”だった。  
 
「ほら、アーたん。起きて」  
「・・・・・・・・ハヤテ」  
 信じられない、いくら夢の中といえど、いつも見る悪夢にここまで変化が起きるなんて・・・・。  
「!!」  
 まさかと思ったが、私はすぐさまベッドから降りて室内の壁に設置されている鏡を見る。  
 そこには私の姿があったが、やはり違った。  
 夢の世界では、いつも覗き込む鏡には『私の幼い姿』が映っては憂鬱な気分になるはずだったが―――――  
 今は、あの頃と異なる成長した姿 いわゆる、“現在の私の姿”になっていた。  
「アーたん?どうしたの?」  
 おそらく、これはいつもの夢だけど、いつもと違う。  
 あの時、ハヤテと再び巡り合った―――――“その目で彼を見た”ことで、  
 私の夢が現在の背景とシフトされてしまったのかしら?  
「あ、やっぱり『朝のいつもの』、してほしいの?」  
「へ?」  
 珍しく私の口から間抜けな声が出てしまった。確かにいつものことなのに、  
 私はハヤテの言葉でドキドキしてしまう。  
 
「そ、そうね・・・・じゃあ・・・・」  
 もうっ!いつもならここまでドキドキしないはずなのに、  
 ハヤテがいつもより・・・・その、カッコよくなっているせいで、  
 私の方が子供みたいに思えてきてしまうじゃない。  
「・・・・んっ」  
 私はゆっくりと目を閉じ、彼を待つ。  
「ではでは」  
 愛しいハヤテが近づいてくる。そして―――――  
 
 誰にも気づかれない二人の影は、ひとつになった。  
 夢の中だけど―――――涙がこぼれそうになるほど幸せだった。  
「んっ・・・・」  
さあ、この後は同じことの繰り返し。幸せな日々と悪夢が待って―――――!!  
 
 いきなり、ハヤテが私をベッドに押し倒した。  
 
「ハ、ハヤテ!?一体何を―――――」  
「何って・・・・“いつもの”じゃないの?」  
「それは、その、キスじゃ――――」  
「何言ってるの?それだけじゃないでしょ?朝一番の“えっち”するんじゃないの?」  
 
 え?  
 ええええええええええええええええっ!?  
 
「なっ!ハヤテ!いくらなんでも私たちはそこまで――――」  
「ふぇ?いつものことでしょ?何言ってるの?」  
 ・・・・流石、いつもと違う夢の世界ね。  
 私の考えの正反対のシチュエーションに流れていくとは・・・・。  
 夢の中の私たちは既にそこまで進展しているのね。  
 未だに現実世界の私は性交の経験なんて一度もないのに。  
「あのね・・・・いくら私達の関係がアレでも、そう容易くすることじゃ・・・・」  
「僕、アーたんのコト、好きだよ?」  
「うっ・・・・」  
 ハヤテは既にあの頃よりも大きくなったはずなのに、  
 その瞳の輝きは決して消えてはいなかった。  
 無邪気で、愛らしくて、母性をくすぐる目・・・・。本当に吸い込まれそうな瞳だった。  
「だって、アーたんとえっちするのは、気持ちいいだけじゃなくて、“幸せ”って感じになるもん。  
 やっぱり、好きな人とするからじゃないかなー?えへへー」  
 もう・・・・外見は成長しても口調があの頃のままなんて・・・・  
 余計そそるじゃない。  
 
 でも、ハヤテとなら  
 この夢の世界なら―――――  
「・・・・しょうがないわね、そのかわり・・・・  
 あまり調子に乗っちゃ、ダメよ?」  
「うん!」  
 
といっても、私自体は経験がないからハヤテにいいように扱われるのかしら?  
それはそれで嬉しい分、屈辱的というか・・・・。  
「じゃあ、あらためて―――――」  
「あっ・・・・」  
再び私たちは唇を交わす。でも、今度はハヤテが私の口内に舌を入れ始めた。  
「ん・・・・あむっ・・・・むちゅ・・・・」  
「・・・・んっ!」  
口内の異物感に少々抵抗感はあるものの、ハヤテの侵入であるならば私は断るわけにはいかない。  
刹那か、長かったのか―――――。  
「・・・・ぷはっ」  
「あっ・・・・・」  
名残惜しかったけど、ハヤテの唇が私から離れた。  
その女の子のような美しい口元には私の唾液が糸となって引いていた。  
その卑猥な光景で私自身の雌としての欲求が目覚めつつある。  
「ハヤテ・・・・あっ・・・・」  
彼はなにも言わずに黒のドレスの上から私の乳房に手を添えた。  
あの小さかった手が、ここまで大きくなるなんて想像もつかなかった。  
そして手に力が入り―――――  
「くっ、んっ・・・・はっ・・・・あっ!」  
ゆっくりと、彼の手が動くたびに私の乳房が圧迫感に襲われ、  
私の喉から弱弱しい声が漏れ、脳髄までもが犯される感覚に陥る。  
 
だが、それでもハヤテだからこそ許せる行為だった。  
彼になら、何をされてもいい。それほど私はハヤテを愛していた。  
 
「アーたんのおっぱいって・・・・とっても大きいね〜。  
 やわらかくて、ムニュムニュしてて美味しそうだよー」  
「ば、馬鹿なこと言わな・・・・きゃっ!」  
 ハヤテの手に力が入り、乳房が突き上げられて甲高い声を出してしまった。  
「ぎゅーってするよ?」  
「言う前にするなんて・・・・あっ・・・・んっ・・・・くっ・・・・」  
 何度もハヤテの逞しくなった手によって乳房が蹂躙されていく。  
 しかし私の中では不快どころか愛する人のぬくもりをその身で感じることで  
 快楽が湧き上がる。  
「あ・・・・あんっ、ああっ!・・・・あっ、ああっ、あああんっ!!」  
「アーたん、アーたん・・・・」  
 ハヤテが私を呼ぶ度に手に力が入り、動きも激しくなって―――――。  
「ダメ!ハヤテっ!もう少し・・・・ふぁっ!あああああああっ!」  
 
「あ・・・・はぁっ・・・・」  
 完全に、私の負けだった。  
 既に衣服も乱され、ボロボロになってベッドから体を起こすことが出来ない。  
 そんな・・・・ここまで手玉に取られるなんて、思いもしなかった。  
 もしかして、現実のハヤテもこんな風になってるのかしら・・・・。  
「あ・・・・・」  
 既に私の秘穴はハヤテの寵愛のせいで受け入れる準備が出来てしまっている。  
 でも、その、“初めて”は結構痛いものらしいけど・・・・大丈夫かしら。  
「ね?アーたん。そろそろおちんちん入れてもいい?」  
「なっ!」  
 いきなり大きくなったハヤテから卑猥な言葉が出たせいで余計気恥ずかしくなってしまう。  
「僕、もう我慢できないよ・・・・アーたんとひとつになりたいよぉ・・・・」  
 ハヤテも顔を火照らしながら私を見ていた。  
 その真っ直ぐな表情が、どれほど可愛らしいことか―――――。  
「・・・・んっ・・・・い、いいわよ・・・・でも、できるだけ・・・・優しくして・・・・」  
「うん・・・・」  
 私自身もハヤテを受け入れる為に準備をする。  
 ハヤテの前で・・・・はしたなく足を広げ、ゆっくりとスカートを引き上げた。  
「アーたんのぱんつは黒!」  
「いちいち言わなくてもいい!」  
 その、ハヤテに指摘された黒のショーツを自らの手で下ろした。すると―――――  
「アーたん!」  
「きゃっ!」  
 いきなりハヤテは私に飛びついてきて、股に顔を寄せた。  
 
「アーたんの大事な場所・・・・甘い匂い・・・・」  
「そ、そんな匂いするはず・・・・ひゃっ!」  
 ハヤテは子犬のように私の秘部を舐め始めたことで、今まで以上の快楽に襲われる。  
「ん・・・・れろ・・・・ちゅ・・・・むぅ・・・・」  
「ああっ・・・・ハヤテ・・・・ハヤテぇっ!くっ!ああっ!」  
 もう―――――私の方が我慢できない!  
 ハヤテに犯されたい!繋がっていたい!  
「んひゃっ!あっ!ハヤ、テ・・・・はや、く・・・・」  
 
「―――――じゃあ、いくよ」  
 そう言ってハヤテは執事服のズボンを下ろした。  
「あ・・・・これが・・・・ハヤテの・・・・」  
 女顔のせいでもっと可愛いものかと思っていたが、  
 ハヤテに生えていたペニスは男であることを主張するかのように、雄雄しくビクビクと神経を走らせていた。  
「アーたん・・・・」  
 そしてハヤテは私に接近して、それを私の秘穴にゆっくりと当てて・・・・。  
 
「失礼―――――します」  
「あっ、んんっ!くっ・・・・ああっ・・・・・・あああああああっ!!!!」  
 初めての侵入――――――かと思いきや、特別な痛みには襲われなかった。  
 むしろ、それを忘れるような快楽に飲まれた。  
「ど、どう・・・・・気持ちいい?」  
「あっ・・・・はあっ・・・・いいわ・・・・・ハヤテ、とても上手よ・・・・」  
「えへへー、だって・・・・毎日同じことしてるもん。  
 アーたんも最初は痛がってて凄く怖かったけど・・・・もう大丈夫!」  
 ああ・・・・そういうことね。夢の中では私たちは“体験済み”のようね。  
 脳内に記憶はされてないけど、夢の体は記憶されてるみたい。  
 そのおかげで、もう怖くないわ。  
「じゃあ、動いて・・・・もう好きにしてもいいわ・・・・」  
「うん!じゃあ――――――んっ!」  
「ひゃっ!ああんっ!ああっ!ああああああっ!!!」  
 ハヤテの腰が激しく動くことで、私の体も痙攣するように動く。  
 ――――凄い!信じられないほど気持ちいい!  
 セックスがここまでのものなんて思いもしなかっ・・・  
「ふぁっ!んんっ!アーた・・・・」  
「きゃっ!ハヤテ・・・・・っ!もっと!もっと―――――――!」  
 最初は恐怖に怯えていた私が、逆にハヤテを強く求めるように――――――。  
「ふあっ!アーたん・・・・キツクて・・・・・すごい・・・・ひゃう!」  
 膣壁に力が入ってしまい、ハヤテも同様に快楽へと押し流す。  
 これで―――――二人そろって気持ちよくなれる。  
「ハヤテ・・・・・ハヤテ、ハヤテぇ―――――――!」  
「アーたん、アーたん、アーたあああああああああああああああああああん!!」  
   
 ハヤテの愛情が私の中に溶け込んだことで  
 共に天国へ行くような浮遊感に包まれた――――――  
 
「はぁ・・・・はぁ・・・・ハ、ハヤテ・・・・」  
「あぅ・・・・アーた・・・・」  
 その時、ハヤテの首がガクッと下に降りた。  
「え?ハヤテ!?ハヤ・・・・何だ、よかった・・・・」  
「アー・・・・たん・・・・むにゃ・・・・・」  
 ふふ、セックスで疲れて眠っちゃったのね・・・・。  
 私はハヤテをそのままベッドに寝かしてあげた。  
 全く・・・・成長しても、寝顔は可愛いわね。  
 いつも私の方が眠ってばかりだったから、その寝顔に悪戯したくなっちゃう。  
 本当に、幸せなひとときだった。こんな幸せがずっと続けば・・・・・  
 
 その時、部屋全体が―――――いや、“世界”そのものが歪んだ。  
 
「これは・・・・・」  
 まるで背景全てがモザイクになるように不気味な色へ変わり、解けてなくなろうとしている。  
 この意味は・・・・いえ、既に覚悟していたこと。  
「そうね、この夢も―――――これで終わるのね」  
 現実の境界線が近づいてきた。所詮、夢は夢でしかない。夢とはあくまで一時的なもの。  
 この世界が崩壊すれば、私は目覚め、また彼のいない世界へと戻る。  
 
 でも―――――もう大丈夫  
 
 本当に幸せな夢を見たから  
 もう悪夢を見ることに、恐れることはないわ  
 
 壊れ行く世界の中で、私は最後に愛しい人を強く抱きしめ―――――そっと頭を撫でる。  
 
 あなたが私を“アーたん”と呼び続ける限り―――――私はあなたを想い続ける。  
 だから、私が“やるべき事”を終えてから  
 もう一度現実の世界であなたと会える日まで  
   
「ハヤテ――――――さようなら」  
 
                              THE END  
 

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