「ひゃあ!!」  
 
それは白皇学院で学年末試験が後半にさしかかっていた頃のある日のこと―――  
ハヤテが勉強に集中できるようにとナギが気を利かせて彼に暇を出し、  
その間の執事の空白を補う為にクラウスが手配し、三千院家へとやってきたのが“メカ執事”こと、13号。  
彼と対面した際には、ナギ、マリアともに不安・・・を通り越して露骨な失望を露わにしたものであった。  
・・・が、そんな彼女たちの先入観をいい意味で裏切って、彼は卓越した性能を発揮する。  
あのナギを一瞬にして懐柔してしまう驚きの手腕を目の当たりにして、マリアも彼に対する評価を改めざるを得なかった。  
そんな彼と掃除に向かおうと、廊下に出た、その時―――  
 
「な!! 何を・・・!!」  
 
いきなり背後から“ぐりっ”と肩を掴まれて、マリアは思わず声を上げる。  
 
「あ、すみません。 でも動かないでください。  
 なんだかちょっと・・・肩がこってるみたいなんで・・・」  
「え?」  
 
確かに・・・と、マリアは思う。  
ハヤテが屋敷に来て以来、マリアの通常作業としての仕事量は多少は減りはしたものの、  
主に部屋の破壊等に伴う予定外の片付けや修繕作業の様な厄介な仕事はむしろ増えている。  
そんな作業に率先して取り組んでいたマリアに疲れが溜まりつつあったとしても、そこに不思議はなかった。  
そして・・・  
 
「んっ・・・」  
 
13号の不意の行動にはじめは驚き警戒したマリアも彼の予想外の手腕に徐々に緊張をほぐし、  
思わずため息を漏らしてしまう。  
 
「あ・・・ありがとう、13号君」  
「いえいえ、これくらいは」  
 
丁寧に、丁度良い強さで肩を揉まれる心地よさにマリアはすっかりリラックスし、  
されるがままに彼に身体を預けてしまっていた。  
 
「・・・さて、肩の方は大分ほぐれたようですね、それじゃあ次は・・・」  
「はい? 次、ですか・・・・・・ひゃああ!?」  
 
さわっ、と・・・スカート越しに尻を何かが撫で上げる感触に、  
マリアは先程、不意に肩を揉まれた時とは比較にならない程の大きな声を上げる。  
 
「ふふ、緊張しないで下さい、今度はこちらを解して差し上げますから」  
「や、ちょ、ちょっと、13号君!? いや、そこは別に・・・!」  
 
年頃の少女の尻を撫で上げるという―――  
真っ当な思考をする人間なら普通は躊躇うような行為を、例え何かの間違いにせよ実行してしまうあたり、  
高性能な様に見えても、やはりメカはメカ、なのかとマリアは考えるのだが・・・  
例え相手がメカであろうがなんであろうが、気軽に触らせていい場所ではないのだ。  
しかも彼は、“彼”、つまり男性型であり・・・そこに邪な意図が無いとしても、そんな行為を許すには抵抗が強すぎた。  
 
「あの、13号君! そ、そこは別に凝ってないですし・・・・・・!  
 それにあなたはメカだからわからないかもしれませんが、  
 女性のお尻を触るのははっきり言って失礼なことですよ!」  
「はい、それはわかっています」  
「え・・・?」  
「ですがマリア様・・・肩凝りだけじゃなく、僕は欲求不満も解消して差し上げることができるのですよ」  
 
「欲求・・・不満・・・って・・・」  
 
そんなやりとりをしている間にも13号は片手でマリアの肩を掴んだまま、  
もう一方の手で彼女の尻を撫で回す。  
そればかりか、はじめは彼女の尻全体を撫で回すようだった手つきはいつの間にか、  
左右の尻肉に挟まれた谷間に沿って、上下に指を這わせるように動き出す。  
 
「そ、そんな欲求不満なんて! 別に私はそんなもの感じてなんかいませんっ!」  
 
ぞくり、と、マリアの身体が身震いする。  
スカート越しに感じる指先の感触に、身体の奥から滲み出るような震えが走り、  
マリアは忘れたはずの・・・思い出したくも無い、おぞましい感覚に囚われる。  
 
「と、とにかく13号君! こ、これ以上すると怒りま――――――」  
 
そんな記憶を振りほどこうとするかのように、マリアは振り返って怒気を孕んだ声を彼に浴びせようとして―――  
13号が差し出したモノを目の当たりにし・・・声と、動きが凍りつく。  
彼女の視界に飛び込んできたのは、ビー玉ほどの大きさの黒い球体が、棒状に連なった物体。  
マリアは、それを知っていた。  
それが何と呼ばれているか、どういう用途で用いるものか、とか、そういう一般的な知識としての意味ではなく、  
今現在13号が彼女の目の前に差し出している“それ”そのものを知っていた・・・  
覚えて、いた。  
それは・・・・・・  
 
・・・  
 
 
 
『うぁ、ひぁ・・・! や、やめてぇ・・・牧村さんっ! ひ・・・ぁあ!』  
『うふふ・・・マリアちゃんったら、すっかり可愛い声で鳴くようになっちゃって・・・いい子ね♪』  
『おねが・・・っああ! お願い、ですからぁ・・・もう・・・やめてぇ・・・』  
 
それは、5年程も前のこと。  
きっかけは、着替えているところを牧村に密かに撮影されてしまったこと。  
 
『あら、そんなコト言いながら、ココをこんなにしてる子は誰かしら〜?』  
『そ、それは・・・ぁっ! ま、牧村さんが・・・ぁあ!』  
 
いくら当時からマリアが優秀で隙の無い生徒だったとしても、  
“高等部”の校舎の設備は当時の彼女の身長に比べればどれも大きく、  
彼女の目の届かないところに仕掛けられたカメラの類の全てを察知することは当時の彼女には困難だったのだ。  
そんなカメラの一つに収められた下着姿の恥ずかしい画像・・・  
それを公表しないという約束の代償として、マリアは牧村の求めるままにその幼い身体を弄ばれていた。  
何度も何度も身体中をまさぐられて、彼女はそれまで知らなかった、  
むず痒く、そして微かに甘美な感覚を、覚えさせられていたのだった。  
そんな、ある日のこと―――  
 
『ねぇマリアちゃん、これがなんだかわかる?』  
『な・・・なんですか、それ・・・』  
 
牧村がマリアの目の前に差し出したのは・・・ビー玉くらいの大きさの球がいくつも繋がった、棒状のモノ。  
それが、マリアが初めてその道具のことを知った時であった。  
 
『うふ・・・今日はね、マリアちゃんにまた一つ、オトナのお遊びを教えてあげようと思ってね♪  
 これはねぇマリア、あなたのナカから気持ちよくしてあげるオモチャなんだよ〜?』  
『なか・・・から・・・・・・』  
 
そう聞いて、マリアは思わず自分の“女”としての部分―――  
牧村に何度も弄られて、幼い身体に不似合いな程に敏感になってしまったそこを、慌てて両手で覆い隠す。  
 
『や、だめです! 牧村さん、それだけは、ココだけは・・・!』  
 
涙目になってあとずさるマリアを牧村は淫靡な笑みを浮かべながら追い詰めて、  
 
『ふふふ、安心してマリアちゃん♪  
 あなたの大事なはじめては、ちゃーんと取っておいてあげるからね♪』  
『え・・・・・・じゃ、じゃあ・・・』  
『これはね〜、そっちに使うモノじゃないのよ?  
 これの名前は、アナルパールって言ってね・・・・・・』  
『あ、アナ・・・・・・って、や、やぁ!?』  
 
幼いマリアはまだ身体も小さく、何より恐怖が身を竦ませて、まともに抵抗することもできずにいた。  
 
『だ、ダメ! ダメです牧村さん! そ、そんなの、無理! 入りません! やだ、やめて下さいっ!』  
『平気だよマリアちゃん、痛くないようにホラ、こうやってローションをたっぷり塗ってあげるから、ね〜♪』  
『ひ・・・! いや、イヤ・・・』  
 
目の前で潤滑用の粘液にまみれてゆく責め具は、黒々とした表面に濁った艶を纏い、  
幼いマリアにはどうしようもなく生々しくおぞましく、グロテスクなものに見えた。  
 
『や・・・やぁ・・・っ・・・やです・・・お願い・・・牧村さん・・・イヤ・・・いや・・・』  
『大丈夫大丈夫♪ やさしくしてあげるからね〜♪』  
 
どこまでも相変わらずの明るい調子ながら、眼鏡の奥の目には隠しきれない興奮と情欲の色を湛え  
そんな彼女が手にした責め具は余計に禍々しく見えた。  
その責め具が、本来は排泄のためにある器官の入り口にあてがわれ、  
 
『いやっ! イヤぁ! イヤですっ! 牧村さん、お願い! お願いですからっ! 許し・・・っひ!?』  
 
つぷ、つぷ、と・・・ゆっくりと、時間をかけて、ローションにまみれた粒が一つ、そしてまた一つ、と・・・  
幼い少女の菊門へと呑み込まれてゆき―――  
 
『ひぃいっ! いや・・・ふぇぇ・・・イヤぁ・・・もうやだ・・・ぐすっ・・・イヤです・・・っ・・・やだぁああっ!』  
 
・・・・・・  
 
・・・  
 
 
 
「思い出されましたか? 記録こそ残らず抹消されていましたが、牧村博士がおっしゃっていました。  
 “動画も画像も残ってないけど、あんなに気持ち良さそうにしてたんだもの、  
マリアちゃんが、っていうかマリアちゃんの身体が、コレのコトも、それで気持ちよくなっちゃったコトも、  
忘れるハズがないよね〜” ・・・と」  
「そんなこと・・・あ・・・ありませんわ・・・っ」  
 
即座に否定の言葉を口にはすれど、マリアの内心は穏やかとは言い難い。  
たった一日だけの出来事、一度きりの過ち。  
幼かった身体に余りにも不釣り合いな不浄の悦楽に身を焼かれ、あられもなく乱れ、悶え、上り詰めてしまった・・・  
消してしまいたい、記憶。  
一度はその悦楽に流されてしまった少女は、それでも自制の心を失わず、甘い快楽を強い決意で跳ね退けた。記録を全て抹消し、真夜中に襲ってくるあの悩ましい疼きにも耐えた。  
鮮烈過ぎた快楽の記憶は身体に刻み込まれたように忘れられず、幾日経とうとも薄らいではくれなかったが、  
決してそんな身体を己の手で慰めようとはしなかった。  
一度でもそんなことをしてしまえば、きっと歯止めが効かなくなる。  
たとえ牧村や他の誰にも露見せずにいられたとしても、自身の身体はきっと、その快楽に流されて・・・  
毎夜のように己自身を慰めることになる。  
幼いながらも、それはマリアにとって己を律することの出来ない恥ずべき姿に他ならず、  
“そうあるべきではない”  
という強い意思の力で己の内に燻る情欲を律していた。  
 
疼く身体に身悶えて眠りに就くことすらままならない夜を過ごすことも度々ではあったが、  
そんな時・・・隣にいつもナギの寝顔があったことも、マリアの決意を助けてくれた。  
その頃から捻くれた性格の子ではあったが、構えを解いて穏やかに眠る少女の顔はまさに天使のそれと言ってしまっても良いくらいにあどけなく、可愛らしく・・・  
そんな少女と同じベッドの中で己を慰めるような真似は余りにも恥ずかしく、  
また・・・彼女の無垢な寝顔は、浅ましい情欲に乱されかけたマリアの心に、本来の穏やかさを取り戻させてくれた。  
 
そうしてマリアは悪夢のような悦楽を抑え込み、その記憶を徐々におぼろ気に薄れさせてゆき、  
ついにその身体から、肛悦の爪痕を・・・性の悦びの記憶を完全に追い出すに至ったのだ。  
・・・その、ハズだった。  
夢の中で思い出し、悩ましく悶え乱れることもすっかりなくなり、  
自分はもうあの呪縛から完全に逃れたと、解放されたのだと、そう思い込んでいた。  
 
だが、今・・・あの時、まだ幼かった己の身体をもてあそび、悦楽を刻み込んだ“ソレ”を眼前に突きつけられたマリアは、  
心で、そして身体で・・・“ソレ”がもたらす感覚を・・・快楽を、一瞬にして思い出していた。  
じくり、と・・・一瞬、身体の芯を寒気が走り、その冷たさがじわ、じわ、と・・・熱に変わり、火照りが身体を浸蝕する・・・  
 
「ん・・・くっ」  
 
あの日、屈してしまった背徳的で甘美な悦びの記憶が甦りゆく感覚に、マリアはぞくりと震え、思わず目を閉じる。  
目を閉じて、じわじわと身体を浸蝕するような火照りに抵抗しようと、マリアは全身に力を込めて身を固くする。  
身を引き締めることで、思い出しつつある快楽の記憶に呑まれることなく、理性をもって抵抗しようとしたのだ。  
・・・が。  
目を瞑ってしまった、目の前のモノから逃避してしまった時点で、マリアは既に・・・  
 
「・・・っひぅう!?」  
 
逃れる術を失っていた―――13号からも、そして望まぬ悦楽からも。  
 
「や・・・っ! そこ、は・・・ぁ!」  
 
過去の忌まわしい記憶を振り払うことばかり意識してしまい、  
本来この場面でもっと気をつけるべき、最も注意すべきコトを完全に失念してしまったのだ。  
それは、勿論―――  
 
「そこ・・・それ・・・っ! 当てない・・・でぇ!」  
 
13号が手にしていた、それ。  
目の前に現れたことで、それだけでマリアの心を乱したそれそのものが、  
今度は感触を伴って彼女を更なる深みへと引きずり込もうとする。  
 
「如何ですか? こうしてお尻にあてがわれると、より一層思い出せませんか、コレのことを」  
「や・・・知らな・・・っ、知りませんわっ!」  
 
あてがわれたとは言えど、まだスカートの上からソレを突きつけられたに過ぎない。  
だが、その先端は正確にソレがかつてえぐった場所―――マリアの不浄の穴を捉え、  
スカート越しにでもそうだとわかるように、圧力が加えられる。  
 
「ひ・・・や、13号君・・・やめ・・・やめなさ・・・ぁ!」  
 
マリアは下から突き上げられるような責め具の圧力から逃れようとするが、  
肩に置かれた手が彼女の動きを封じ込め、一歩も踏み出すことが出来ない。  
ならばせめてと爪先立ちになって上に逃れようとすると、それは思いの外呆気なく叶ったが―――  
 
「―――っ!」  
 
踵を上げた分だけ責め具も標的のすぼまりを追随するように持ち上がり、今度は踵を下ろすことすら許されなくなる。  
普段の冷静なマリアならこのような間違いは決して犯さなかったであろう。  
だが、今は・・・  
 
「ひ・・・ぃ、ん・・・っ! じゅ、13号君・・・そ、それを・・・」  
「はい、これがどうしましたか?」  
「―――っ!? くひ・・・ぃっ!」  
 
責め具を後ろの穴にぐり、とより強く押し当てられて、マリアは悲鳴にも似た上擦った声を上げてしまう。  
ソレを見せ付けられたことでかつて飲み込まれかけた―――否、一度は飲み込まれてしまった悦楽を思い出させられ、  
身体にその感覚が甦えらんとした・・・正にそのタイミングで、今度はその感覚そのものを与えられたのだ。  
甦りくる、羞恥にまみれた・・・それなのに抗いがたい程の快楽をもたらす禁断の感覚・・・  
マリアの心身は増幅する悦楽と削られゆく理性の間で翻弄され、冷静な判断を下すことなど出来る筈がなかった。  
 
「13号・・・君・・・っ、やめ・・・やめ・・・ぇ・・・っ」  
 
スカートとショーツの布地を挟んで与えられる刺激はいくら圧力を増そうとも、  
決して不浄の穴のへと侵入してくることは有り得ない。  
だが、かつてその穴の奥まで責め具を埋め込まれたことのある、そしてその感覚が甦りつつあるマリアにとって、  
この責めは残酷なまでに彼女の心を崩しにかかる。  
心では、理性では拒もうとしているのに、身体に刻まれた悦楽の記憶はこの焦らしに早くも屈してしまいそうな程に火照り・・・  
責め具をぐり、ぐり、と押し当てられる度に、身体の奥が淫らな炎で焙られたように熱く、  
その熱でマリアの女の部分が溶けるような、蕩けるような・・・浅ましい雌の劣情が湧き上がってくるかのような錯覚に囚われる。  
 
「ひは・・・っ、は・・・ぁ、ぁ・・・ぁあ!」  
 
それでもマリアは懸命にこの責めから逃れようと震える足に力を込め、膝を伸ばし、踵を上げて腰の位置を高く保とうとする。  
だが・・・全身を緊張させて必死に劣情を抑えようとしながらでは、いつまでも爪先立ちの不安定な体勢を保つこともままならない。  
身体はがくがくと震えだし、踵が落ちそうになっては、  
 
「っくひっ! ひ、ぁ・・・っ、くぁあ!」  
 
ぴたりとあてがわれた責め具の尖端に布地越しに入り口をえぐられて、マリアは一際高い声を上げさせられる。  
それでも懸命に、崩れ落ちそうな踵と膝を真っ直ぐに伸ばして逃れようとするが・・・  
数度もそんなことを繰り返せば、膝も足首も疲労で力は抜けてゆき・・・  
 
「ひは・・・ぁ、あ! あぐ、ぅ、あ、ぁあっ! あひ、イヤっ、ぁ・・・ぁあ!」  
 
自力で身体を支えられなくなれば、腰の位置は下がらざるを得ず、  
だがあてがわれた責め具の位置がそのままであれば、必然的にマリアの身体は、彼女の腰は、両足と責め具の三点によって支えられることとなる。  
そして彼女自身の体重のうち、力の抜けた両足で支えきれない分は全てその責め具によって支えられることとなる。  
マリアの不浄の穴にあてがわれた、その責め具に。  
 
「ひぎ・・・っ! いぁ、ぁあ! いや、イヤぁっ! やめ、はぅ・・・んぁ、あぁあ!」  
「ふふ・・・マリアさん、やっぱりこれが欲しかったんですね。そんなに腰を捻って、お尻を押し付けて・・・凄くいやらしいですよ?」  
「ち・・・っ、ちがぁ! あひ、ぃひぃいっ! ちがうっ、違うのぉ! こん、な・・・ぁあ! あっ、ひ・・・ぅ、うぁあ・・・ぁひ・・・っ!」  
 
いくら小柄で細身のマリアといえど、その体重の大半を責め具の先端の一点で支えようとすれば、  
当然そこには多大な荷重がかかる。  
スカートとショーツで遮られていても、その先端が布地の先にあるすぼまりに与える圧迫感はマリアの肉体に刻まれた記憶とあいまって、  
既に乱された彼女の精神をさらに揺さぶり、脅かす。  
三千院家のメイドが纏う衣服も、直に身につける下着も、当然上等なものであり簡単に破れたりするような代物ではないが、  
ただの一点でマリアの全身を支えるには布地二枚ではあまりにも頼りない。  
いつこの最後の防壁が破れ、陵辱具によって不浄の穴を貫かれるかもしれないという恐怖から、  
マリアは疲弊しきった身体を必死に捩って逃れようとするのだが・・・  
一歩も踏み出せない今の状況でいくら身を捩っても、結果としてはわずかに腰を捻る程度の動きしか出来ない。  
そしてその動きは、端から見れば衣服越しに突き立てられた先端に自らの尻穴の入り口をぐりぐりと押し当てているようにしか見えないのだ。  
実際にその通り、圧迫感に加えて腰を動かしてしまったことによる捻りまでが加わって、  
まだ内部にこそ侵入されてはいないものの、既に責め具は本来の目的に沿った形で機能を発揮しつつあり・・・  
マリアの尻穴と、そして彼女の心を、僅かずつ、だが確実に―――犯し始めていた。  
 
「ひぃ・・・っ、ひ・・・はっ! あ・・・は・・・ぁ、ん・・・っ、あ・・・!  
 や・・・っ、ひ、いや! いやぁ! や、はひ・・・っ! はい・・・っ、て、ぇええ!」  
 
上等な生地は丈夫であると同時に柔軟でもある。  
二枚の防壁は責め具の貫通こそ許さなかったものの、破れない代わりに責め具に絡みつき、巻き込まれる形で責め具と一体となり・・・  
ついにその先端、パールの一粒目が、巻き込んだ衣服もろともにマリアの尻穴へと侵入する。  
 
「ひはぁっ! ひや、いやぁあっ! 抜いて、ぬいてぇっ・・・・ひぁあ!」  
 
スカートとショーツを巻き込んで抉り込まれた先端は、  
かつて実際にそれで貫かれた際の記憶をはるかに上回る圧迫感と存在感をもってマリアを責め立てる。  
その刺激が呼び水となって・・・マリアは今、数年前に同じ器具で尻穴を犯された感触と、刻み込まれた快感を、はっきりと思い出す。  
本来は排泄するための器官に異物を挿入され、抽送される・・・そんな背徳的過ぎる行為に、  
浅ましく身悶えし、喘ぎ、よがり、達してしまったあの恥辱と、悦楽・・・  
まだ入り口を抉られただけのはずの排泄器官は、一瞬にして快楽を得るための背徳の器官として目を醒まし、  
一刻も早く淫らな欲求を満たしたいと主張するように疼きだす。  
 
「やだ・・・ぁっ! やだ、いやぁ・・・! ちがっ、違うの・・・こんな・・・いやぁあ!」  
 
己の肉体が呆気なく陥落し、更なる刺激を求め熱く火照り疼き出したことを、もはやマリアは認めざるを得ない。  
鋼の意思と理性で一度は忘却の彼方に押しやったはずの、常軌を逸した行為。  
それなのに・・・淫らな劣情は、決して消えないどころか、たったこれだけのことで蘇ってきた。  
無機的な器具による不浄の穴での性交・・・それは、生殖行為と呼べる代物ですらない。  
つまり、女としての本能に従ったと弁解することも出来ない。  
淫らな、快楽を得るためだけの・・・ヒトとしての女性ではなく、ケダモノの、雌としての本性・・・  
それが、今の自分自身の姿なのではないか、と・・・  
 
イヤなのに、恥ずかしいのに、異常な行為だと十分過ぎるくらいに認識しているのに、  
ろくな抵抗も出来ず、物欲しげに疼いてしまうマリアの心に、そんな陰が射してくる。  
 
「ちが・・・ぁっ! ちがうっ! ちがうのっ! こんな・・・ぁあ! ひぁ、あぐ・・・んぁあ!」  
 
その陰―――淫らな己の肉体の声を受け入れてしまえば、自分は簡単に堕ちてしまうだろう―――  
かつて堕ちてしまったことがあるからこそ、マリアは確信を持ってそう判断できる。  
堕ちてしまうのは容易いし、それは他に比するもののない程の悦楽を与えてくれる、それも知っている。  
だが・・・その浅ましい姿を、はしたない己を受け入れてしまうほど、マリアの心は弱くもなく・・・  
同時に、今だけは従ってしまおう、今回だけ流されてしまおう、と割り切れるほど図々しくもなかった。  
ぐりぐりと不浄の穴の入り口を抉られながら、目に涙を浮かべ全身をがくがくと震わせながら、  
劣情と理性の狭間で悶え苦しむマリアの心中を、果たしてどこまで理解しているのか・・・  
それとも、すべて見通して、もしくはこの状態が既に彼の手のひらの上のことであるのか・・・  
マリアの背後でほとんど身動きすることなく彼女自身の身動きだけで責め立てていた彼―――13号が、  
静かににやり、と“メカ”らしからぬ不穏な笑みを浮かべる。そして・・・  
 
「ふふ、それではマリアさまも我慢できなくなってきた様ですし、そろそろ部屋に移動しましょうか」  
「っひ! ぃ、い、移動、って、な、何・・・っ、ぅく! なに、を・・・」  
「それは勿論」  
「っいひぅう!?」  
 
それまではマリアが腰を下ろすに任せて自分ではほとんど動かすことのなかった責め具を、  
捻りを加えながら押し上げて、衣服もろともマリアの尻を突き上げる。  
マリアの身体はびくんっと跳ねて、思わず一際高く上ずった声を漏らしてしまう。  
 
「続き、ですよ♪」  
「いひっ、ひぁあ! あひ、ひぃっ! ひぃいっ!」  
 
やはりメカとは思えない、無機質でありながら楽しげな声で囁きながら、13号はマリアの尻を責め立てる。  
それまでは自分の身体の重さを荷重として責め具に押し付けることで刺激されていた尻穴に、  
今度は13号の手による突き上げ、抉り込みが加えられ・・・  
いよいよ、マリアの身体はびくびくと震え出す。  
 
それまで快楽の記憶と予感に疼き続けていた不浄の器官は、  
ついに与えられた刺激にむさぼりつくように反応し、悦びのパルスを脳髄に送り込む。  
まだ、入り口からごく浅い部分を抉られているに過ぎないというのに、  
快楽への期待で敏感になりすぎていた後ろの穴は蕩けるような甘美な刺激として感じ取り、強制的にマリアに認識させてしまう。  
 
「ひあっ! ひぐ・・・んぁ、あひ・・・ぃいい!」  
 
ぞくっ、ぞくぞく・・・っ、と・・・  
背徳的な、だが逆らいようのないくらいに甘美な刺激が心身を犯し、身体は更なる疼きに襲われる。  
責められているところとは違う場所、女の身体の最も深いところで燻っていたおき火のような熱は、  
送り込まれる快楽によって一気にその温度を上昇させる。  
だが、その熱は決して炎として燃え上がることはなく、湿気たような勢いの悪さもそのまま・・・  
否、むしろ潤ったとでも言うべきようなじめじめとした熱さで、マリアの身体の奥底を焦らすように灼くのだ。  
 
「い・・・っひぁ、ひやぁああっ! やめ、ひ・・・っぐ、んぁ、あ・・・ひぁあぁ・・・」  
 
燃え上がることのない炎に焙られて、マリアの女の部分は物欲しげに涎を垂らすかのように、じとり、と湿り気を帯びてくる。  
だが、今のままでは決して燃え上がることはなく、満たされることもない。  
マリアは、彼女の身体は知っているのだ・・・このままでは、半端な快楽に焦らされ続けるだけ。  
もしも、これ以上を望むなら・・・全身が燃え尽きてしまうような快楽に身を任せたいと望むなら・・・  
 
「あぅ・・・っ! んく・・・ぅう!」  
 
そこまで考えて、マリアは慌てて思考をリセットする。  
あの時は、戻ってこられた。  
だが、既にあの快楽を知っている今、もう一度それを受け入れてしまったら・・・もう二度と、戻れないのではないか、と。  
そう思って揺らぐ心を立て直そうとするマリアを、13号の無機質な言葉が襲う。  
 
「マリアさま、流石に廊下で立ったままでは、これ以上する訳にも参りませんので・・・ そろそろ、マリアさまのお部屋へと向かいましょうか」  
「こ・・・っ、これ、これ以上って、ぇえぇえっ! いやぁ! だめ、ダメなのに・・・ぃいっ、ひぁあっ!」  
「このままではいずれお嬢さまやあの執事にもマリアさまの素敵な啼き声やお姿を露わにすることになってしまいますが・・・あぁ!  
 マリアさまにそういうご趣味があるのでしたら、このまま、ここで・・・」  
「いっ! イヤぁあ! ダメっ! それは、それはぁあ!」  
 
部屋へ行ってしまえば、この行為が次の段階―――本格的な陵辱に曝されることになるのは、今のマリアにも十分に理解できる。  
そして、今の状況ならマリアの答えなど聞かずとも、13号の思うようにどうとでも出来る。  
だが、ナギやハヤテにこんな姿を見られることは、マリアにとって何よりも絶対に耐えられないことであり・・・  
 
「さ、それじゃあマリアさま、お部屋はすぐそこですから、歩いていきましょう♪」  
「は・・・はひ・・・わかり、ました・・・ぁあっ!? いぁ、それ、それ抜いて・・・ぇぁあ! ひぁ、あぁあ!」  
「はは、大丈夫、すぐそこですから、ホラ♪」  
「ひぐ・・・っ、ひんっ! いひ・・・ぃああ!」  
 
マリアは、自らの意思で部屋へ向かうことを了承させられる。  
自らの意思で、更なる責めを受けいれることを、選択させられたのだ。  
懸命に抵抗しようとするマリアの心はこうして削り取られ、僅かずつ、だが確実に・・・堕とされてゆく。  
 
肩に置かれた手から拘束力が消え、足を前に出せるようになると同時に、  
それまで真上に突き上げるようだった責め具を押し当てる角度が変わる。  
後ろから押されるように責め具を当てられて、震える足を半ば強制的に進めさせられる。  
がくがくと震える足をなんとか支えながら進めるその一歩一歩が、堕ち行く道のりに他ならないことに・・・  
マリアは気づくことは出来ない。  
ただ、ただ快楽に流されまいと、それだけを念じながら、更なる恥辱の舞台へと歩まされてゆく。  
 
 
 
 
 
(続く)  
 

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